にげうまメモ

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15/8/5 New Zealand Racing

*Canterbury Racing-Canterbury J.C. @ Riccarton Park (NZL) Dead5

Hospitality New Zealand Canterbury 126th Grand National Hurdles (PJR) OPN HDL 4200m

英国のGrand Nationalを頂点として、これに範を取ったレースは各国に存在する。例えばアイルランドのIrish Grand National、チェコのVelka Pardubicka、スウェーデンのSvenskt Grand National、日本の中山グランドジャンプなど。このレースはNew ZealandにおけるHurdle路線において、Great Northern Hurdle (PJR)と並び頂点となるレースである。

なおPJRとはPrestige Jumping Race、要するに重賞である。Grade1などのカテゴリー分けがされているのは平地のみらしい。また、Dead5とは馬場状態を示す。馬場状態が良いほうから順に、Fast-Good-Dead-Slow-Heavyである。(Fast: Very firm surface, Good: Firm surface, Dead: Track with give in the ground, Slow: Rain affected, Heavy: Very rain affected)

とりあえず8/4時点のTAB(Totalisator Agency Board、要するにニュージーランドブックメーカーと思ってもらっていい)の人気順に見ていく。全てのレース映像はNZracing公式で見れるので、そのリンクを下に貼り付けておく。ニュージーランドのHurdle競争は英愛のもの違って出入りが激しく、比較的日本のものに近いので見ていて面白いと思う。

 

出走表↓ 該当レースのレース名をクリックすれば開く。

Canterbury Racing-Canterbury J.C. / RaceInfo / NZRacing

Drawは枠、RTGは公式のRating、WGTは斤量(kg)を示す。馬の名前の下にある、例えば8gという表記は8歳のセン馬(gelding)という意味である。その横にあるのは血統である。

やや抜けた1番人気になっているのが、わたしがtwitterで散々騒いでいたTallyho Twinkletoe。Hurdle初戦こそ7着に敗れたが、続く未勝利戦では後続に35馬身差を付ける大楽勝、続くRST OPN HDLでも向こう正面あたりから後方からド派手な捲りを見せ、直線入り口では先頭に立ち、結果としてLucky Tonightに7馬身差を付ける楽勝と、現在非常に勢いに乗っている馬である。平地でも実績があり、そのスピードは前走で見せたように障害戦ではずば抜けている。まだ荒削りな部分のある馬だが、勢いに乗ってどこまでといったところだろう。課題は初の4200mという距離、またこれまで比較的重馬場でのみ走ってきているという点だろう。

2~4番人気はやや並んでいる。7歳セン馬のGagarinは昨年のGreat Northern HurdleでWee Biskitの2着のある馬。当時はWee Biskitとは同ハンデだったのに対し、今回は3kg差というハンデを貰っているのもプラスだろう。ここのところはCoolibahに完敗の内容が続いているが、距離延長は少なくともプラス。ただしこの馬も馬場が課題か。それと中4日で使ってきたという点も気がかり。そのWee Biskitは前走Long Star Petone Cafe & Bar Wellington Hurdle (PJR)を勝利。ここにきて調子を上げてきている。内容としては8馬身差の圧勝。ただし今回はトップハンデを背負ってしまった点、及び予想外に良化してしまった馬場状態が課題だろう。前走下した組とは勝負付けは済んでいる感はあるが。いずれにせよ、たったの200ドルで取引された馬。ここを勝つとなると素晴らしいサクセスストーリーとなる。5歳セン馬のShamalは上がり馬。未勝利を勝利した後、いきなり重賞に挑戦して2着と好走。勝利したCoolibahは展開に恵まれた感もあり、この馬の評価も落とす必要は無いだろう。課題はなんと言っても相手関係と経験の少なさか。それと中4日で使ってきたという点も気がかり。

単勝9倍で並んでいるのがJust Got HomeとMahanadi。Just Got Homeは海外遠征帰りなのが気になるが、国内では重賞勝ちもあり、この路線の常連。ただし今回は69kgのトップハンデと馬場が課題だろう。Mahanadiは前々走Wee Biskitに完敗。さらに前走は落馬、その後中4日で使ってきた点が気になる。2013年のこのレースの勝ち馬だが、今回はどうだろうか。

ここから先はやや人気が落ちる。Kings Deepは2013年のGreat Northern Hurdleの2着馬だが、長期休養明けからは勝ち星がなく、前走も落馬、前々走もGagarin、Lucky Tonightに大敗と調子が上がってこない。Superturfも今シーズンの最初にOPN HDLを連勝したものの、重賞ではいずれも大敗とやや荷が重いようだ。Harry HillはここにきてRST OPN HDLを連勝。相手こそ楽だが、前走平地を一走してここに挑んできた。調子、ローテーションという点では良いだろう。課題はやはり相手関係か。Needastarは前走Coolibahに惜敗、その前はHarry Hillに惜敗。今回はHarry Hillに対してハンデが楽になる点はプラス材料だろうが、中4日というローテーションは歓迎できない。連覇を狙うGargamelはその後全く調子が上がってこない。中4日というローテーションもマイナスだろう。Red MagicはそもそもHurdle未勝利馬。前走も重賞で大敗と強調材料はない。

 

 

Townley Trenching & Electrical Open Hurdle (RST OPN HDL) 2850m

1着 - Tallyho Twinkletoe

Race 2: TOWNLEY TRENCHING & ELECTRICAL OPEN HURDLE / RaceInfo / NZRacing

 

Schweppes Great Northern Hurdle (PJR OPN HDL) 4190m

1着 - Wee Biskit 2着 - Gagarin 8着 - Just Got Home

Race 6: SCHWEPPES GREAT NORTHERN HURDLE / RaceInfo / NZRacing

 

Long Star Petone Cafe & Bar Wellington Hurdle (PJR OPN HDL) 3400m

1着 - Wee Biskit 2着 - Mahanadi 6着 - Superturf

Race 2: LONE STAR PETONE CAFÉ & BAR WELLINGTON HURDLES / RaceInfo / NZRacing

 

Racecourse Hotel & Motor Lodge Sydenham Hurdles (PJR OPN HDL) 3100m

(1着 - Coolibah) 2着 - Shamal 3着 - Needastar 5着 - Gagarin 6着 - Red Magic 7着 - Superturf 8着 -Gargamel B - Mahanadi F - Kings Deep

Race 1: RACECOURSE HOTEL & MOTOR LODGE SYDENHAM HURDLES / RaceInfo / NZRacing

 

Hospitality New Zealand Canterbury 124th Grand National Hurdles (PJR OPN HDL) 4200m

1着 - Mahanadi 4着 - Gargamel

Race 8: HOSPITALITY NEW ZEALAND CANTERBURY 124TH GRAND NATIONAL HURDLES / RaceInfo / NZRacing

 

Hospitality New Zealand Canterbury 125th Grand National Hurdles (PJR OPN HDL) 4200m

1着 - Gargamel

Race 8: HOSPITALITY NEW ZEALAND CANTERBURY 125TH GRAND NATIONAL HURDLES / RaceInfo / NZRacing

 

 

【結果】

Race 8: HOSPITALITY NEW ZEALAND CANTERBURY 126TH GRAND NATIONAL HURDLES / RaceInfo / NZRacing

ニュージーランドHurdle路線において新たなチャンピオンが誕生した。5歳のセン馬Tallyho Twinkletoeである。そのレース振りは圧巻の一言。今回のメンバーに対してはもはや決着を付けたと言っても過言ではないだろう。

レースはNeedastarがスローで引っ張る展開。ここ数年も序盤はスローから始まることが多く、3000m台のレースが多いニュージーランドHurdle路線において異色の距離を持つこのレースでは、騎手はかなり慎重に乗るようだ。好位からMahanadi、Kings Deep、Shamalなど。Tallyho Twinkletoeは後方の外、その内にトップハンデのWee Biskit。さらに後方からJust Got Home、Superturf、Red Magicなど。序盤で最後方にいたGagarinは落馬競争中止。馬は無事に走っていたようだ。2周目からややペースが上がり、外からGargamelが進出。Mahanadiは余力を無くしてきたのか、少しずつ後退。後方からの押し上げはまだ見られず、Gargamelが動いた以外は特に隊列に変化はなくレースは進行。レースが動いたのはコーナーの入り口。中段の外にいたTallyho Twinkletoeが動き始めると、一気に同馬は先頭に並びかけ、一瞬にして先頭に立つ。あとは同馬の独壇場。後続の追撃を意に介さず、むしろ突き放す一方で最後は7馬身差の圧勝。2着には好位で粘りこんだKings Deep、3着には後方から内を回って押し上げたWee Biskitが入った。

Tallyho Twinkletoeは完全に力が違ったと言っていいだろう。スローを追走する折り合い、この距離を走りきるスタミナ、馬場適性、馬群を捲るスピード、後続を一瞬にして突き放す瞬発力、どれをとってもここでは力が抜けている。最終障害では飛越をミスしていたようにまだ荒削りな部分のある馬だが、まだこれでHurdleはたったの4戦目ということを考えても、まだまだ伸び代のある馬だろう。課題はこれから斤量を背負うことになるだろうが、その際の耐性がどこまであるかといったところだろうか。

2~5着あたりまではやや力が拮抗している。Kings Deepは積極的な競馬で粘りこんだ。この馬自身2013年のGreat Northern Hurdleの2着の実績があり、距離適性という点では一日の長があったか。また、中4日となった前走は落馬と比較的消耗を抑えられたことも結果的には良かったのかもしれない。Wee Biskitは内を回って追い込むも3着まで。トップハンデを背負ってのこの結果は2着以下の馬の中では評価できるが、流石に勝ち馬とはスピード能力が違いすぎたか。Shamalは上がり馬だが、この強敵相手に善戦した。ただしこの馬をモノサシにすると、評判になっている3戦無敗馬のCoolibahはさほど評価できないだろう。連覇を狙ったGargamelも積極的な競馬で見せ場を作った。距離適性という点を最大限に生かしての5着だろう。

いずれにせよ、この結果からはTallyho Twinkletoeの一強という結論でいいと思う。この後のGreat Northern Hurdle (PJR)が楽しみである。また、国内に敵無しという状態であれば、かえって斤量を背負わされる国内よりもオーストラリアなど国外に遠征するのも面白いと思う。特にHurdleの形態が似ているイギリスなどどうだろうか。ついでに日本馬も行ってくれれば面白いのだが。

 

【その他の結果】

Trevinos Bar & Restaurant Maiden Hurdles 3100m MDN HDL

Race 1: TREVINOS BAR & RESTAURANT MAIDEN HURDLES / RaceInfo / NZRacing

レース映像を見た奇特な人がいたら言っておきたい(そもそもこの記事を見ている時点で奇特だと思うが)。笑ってはいけない。笑っては。これが未勝利である。いきなりZa Bruteが派手に斜飛していたり、後方で落馬している馬がいたり、これが未勝利戦である。しかしこの中から未来のTallyho Twinkletoeを見つけるのが楽しいのである。

レースはZa Bruteが引っ張るかと思いきや、スタンド前からSan Pedroが並びかけ、先頭に立つ展開。これに途中からSeeking redemptionが絡みに行き、あとは2頭のマッチレース。最後はSan Pedroが1馬身少々前に出て勝利した。3着のCloemmbaiは漁夫の利といったところだろう。

San PedroはHurdle2戦目にして初勝利。前走はBoyの2着に負けており、それなりに力は見せていた。Boyは上のクラスでもそれなりにやれる馬なので、この馬もそれなりに期待してよいだろう。ただし馬場が珍しくDeadとよいので、そのあたりは気をつけた方がいいと思う。

 

Racecourse Hotel & Motor Lodge 0-1 Win Steeplechase 0-1 Win STP 3200m

Race 3: RACECOURSE HOTEL & MOTOR LODGE 0-1 WIN STEEPLECHASE / RaceInfo / NZRacing

人気のGet Flashが逃げる展開。レースは動きなくそのまま淡々と進み、途中から先頭に並びかけたHezanakiladが最後Get Flashを競り落として勝利。後方からの押し上げはなかった。

Hezanakiladは未勝利ながらも前走はMDNでI've Got Thisの2着に来ている馬。Get Flashは重賞でHigh Fortyの2着もあり、ここでもやれると期待したのだが。そのI've Got Thisが3着。このあたりはあまり力差はないだろう。