にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

15/10/14 National Hunt Racing Guide

*イギリス・アイルランド障害競馬入門(17/02/15更新)

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ここに書いてあることは全て下のホームページに移しました。また、情報(特にリンク先)もアップデートしています。少しずつコンテンツを増やしておりますので、適当に遊んでやってください(18/07/29)

 

日本競馬ファンにはあまり馴染みが無いだろう英愛障害競馬についての初歩的な解説。適当に読み飛ばしつつ大枠を掴んで頂ければ。

なおNational Hunt Racingとは英愛仏障害競馬を指すが、フランスは微妙に事情が異なるのでここでは英愛についてのみ述べる。また、馬名に関しては英語読みする馬やフランス語の馬などが存在し、アナウンサーによっても発音が異なる。例えば2014 Queen Mother Champion Chase (G1)の勝ち馬Sire De Grugyをサイアデグルージー、シアデグルージーと発音する両方の場合が存在する。このような事情に起因する表記ゆれが嫌いなので全ての固有名詞はアルファベット表記する。人によっては若干抵抗感があるかもしれないだろうが、情報収集する際はあちらの表記に慣れていたほうが便利なのでどうかご容赦されたし。加えて、斤量、距離などは全て英国で使用している単位に統一して表記する。

 

*Introduction

世界的に見ると、障害競馬は平地競争と比べるとマイナーである。例えばドバイや香港は平地競争しか行っておらず、賞金が高いことで世界的にも有名な日本でも平地競馬と比べるとレース数は少なく、メディアへの露出も少ない。しかしながら、イギリス・アイルランド等の障害大国については話は別である。中でもイギリス・アイルランドはたった2カ国において世界中の障害競馬の約50%を行うほど障害競馬が活発である。まずイギリスでは11月から4月は競馬開催のほとんどが障害競走であり、平地競争はわずかにAWで行われるのみである。また、アイルランドでは通年障害競馬が行われており、平地競馬に比べて障害競馬の方がレース数が多い。さらに、人気・売り上げと言った点でも両国で平地競争を障害競馬が凌駕していることは良く知られている。例えば英国における大手競馬専門情報サイトRacingpost誌が以前に行った有名競争馬人気投票では障害馬(Arkle、Desert Orchid、Red Rumなど)が上位を独占したことは有名なエピソードである。

また、イギリス・アイルランドにおける障害馬・障害騎手の水準は非常に高い。例えば愛国のBlackstairmountain(2014引退)が日本の中山グランドジャンプ(G1)を勝利したことを覚えている競馬ファンは多いだろう。また、英国Cross CountryのチャンピオンBalthazar KingはフランスCross Countryにおける一大レースである2014 Grand Cross Country de Craonで勝利を挙げた例や、14/15シーズンの英国Hurdle長距離路線の有力馬Un Temps Pour ToutがフランスHurdle路線の最高峰である2015 Grande Course de Haies d'Auteuil (G1)を圧勝した例など、英・愛国調教馬が国外のレースに遠征し活躍した事例は枚挙に暇がない。騎手のレベルも非常に高く、アイルランドのトップジョッキーRuby Walshは世界各地に遠征し、オーストラリア(Bashboy)、日本(Blackstairmountain)、アメリカ(Rawnaq)でも各国の大レースを制している。

このように、イギリス・アイルランドはまさに障害競馬の聖地といえよう。そのハイレベルでスペクタクルな障害競馬は、新たな競馬の楽しみを教えてくれるものだろう。

 

注) Crystal Cup

欧州各国で行われるCross Country Serious。各レースの着順でポイントがつき、合計ポイントを競う。日本のサマー2000シリーズなどの欧州Cross Country版だと思っていただければよい。詳しくはCrystal CupのHPを参照されたし。開催国はイギリス・アイルランド・イタリア・チェコなど多岐に渡り、かの有名なチェコのVelká pardubickáもCrystal Cupの一環として行われる。Crystal Cup出走馬は主に開催国の馬が多いが、ある程度馬の交流もある。主にCross Country大国であるフランスの調教馬が活躍することが多いが、ドイツSeejagdrennen(いわゆる池の中を泳ぐ障害のある障害競馬)にて活躍しているKazzioはベルギーの2015 ING Grand Steeple Chase of Flandersに出走し、2着と健闘している。

 

 

*Racing Categorys

・National Hunt Flat Race / Hurdle / Chase (+Cross Country)

これは説明するより見るほうが早いだろう。英愛障害競馬は大別して3種類のレースに分かれる。Hurdle、Chase、そして障害馬専用平地レース(National Hunt Flat Race)である。まずはHurdleから。

同レースは短距離(16f)Hurdle路線最高峰のレース。勝ったFaugheenは2017年1月現在13戦12勝2着1回という圧倒的な成績を誇るアイルランドの怪物である。

Hurdle競争は距離が2 - 3½ miles (1mile = 約1609m)、障害の大きさは3½ feet ( = 約107cm) 以上のものである。基本的には2m (=miles、以下この表記を用いる)の競争にて最低8個、及び1/4mごとに1個以上の障害を越えることになっているが、様々な理由で障害を迂回することがあるので必ずしもこの限りではない。障害としては比較的難易度が低く、馬が足をぶつけた際は簡単に倒れるようになっているため落馬は比較的多くはない(チェコニュージーランドのHurdle障害はこれと類似しているが、脚をぶつけた際に倒れないようになっている点が異なる)。ちなみによく後方でバテた馬がHurdle障害を倒していたり、倒れた障害をわざわざ選んで跳んでいたりするシーンが散見される。レースとしてはどちらかというと平地のスピードに近いものが求められるため、よりスピード感溢れる、出入りの激しいレースが展開される。海外障害馬が日本に遠征してきた場合は、馬のスピード能力を測るということでHurdle実績も見たほうが良いだろう。フランスではHaies、イタリアではSiepi、チェコではProutkyと呼ばれるレースがHurdle競争に相当する。

 

次にChase。チェコニュージーランドなどでは同様のカテゴリーをSteeplechase (STP)と表記するが、Steeplechaseという単語自体が障害競馬全体を指す場合もあり、英愛では単にChaseと呼ぶことが多い。もしくはFenceとかLarger obstacleと言ったらこのことである。これもとりあえず代表的なレースをば。

あえて2015年のものではなく、2014年のものを。Cheltenham Gold Cup (G1)とは長距離(24f)Chase最高峰のレース。ちなみに流星が可愛い勝った馬は人気薄。

Chaseは距離が2 - 4½m、障害の大きさは水壕障害を除いて4½ feet以上と定められている。障害は2mの競争で12個、以降1mごとに6回以上となっている。もちろん、様々な理由で障害を迂回することがあるので必ずしもこの限りではない。特筆すべきはその障害であり、搔き分けて飛越することが可能な日本やフランス、チェコオセアニアなどの障害と異なり、木の枝が固く束ねられているため搔き分けて飛越することはほぼ不可能である。従って、飛越に際しては障害の上まで身体を持ち上げる必要があり、日本とは対称的に決してスピードだけでは乗り切れない、高い飛越能力が求められるものとなっている。また、その幅も日本のものに比べてはるかに大きい。レースとしては決してスピード感溢れるものではないが、むしろ豊富なスタミナと強靭な精神力、そして高い飛越能力が求められる激しい消耗戦となる。

Hurdleと異なり、Chaseには様々な種類の障害が存在する。Plain Fenceとは障害の周囲に何も設けていないものである。Open Ditchとは障害の前に空壕が設けられたものであり、より高く、スピードをもって大きな幅で飛越する必要がある難易度の高いものである。従って落馬も多発する傾向がある。Water Jumpとはいわゆる水壕障害であり、比較的その高さは低い。落馬は少ないが、馬によっては嫌がる場合もある。なおフランスのSteeplechaseにはさらに多様な障害が存在する。

なお、かの有名なGrand National (G3)における障害(National Fence)は比較的柔軟な素材で出来たFenceの上部14 inches(約35cm)がトウヒの枝で覆われており、馬がトウヒの枝の部分を搔き分けて飛越することが可能になっている。英愛障害競馬といえばGrand Nationalを思い起こす人も多いと思うが、これはAintree競馬場のNational Courseにのみ存在する特殊なものである。さらにこのコースを用いるのは年に5回のみ、11月もしくは12月に行われるBecher ChaseとGrand Sefton Chase、及びGrand National Meetingに行われるTopham ChaseとFox Hunters' Chase、そしてGrand Nationalである。

 

Cross Countryについて。とりあえずレース映像。

チェコではHurdle (Proutky)、Chase (Stch)、Steeplechase Cross Country (Stcc)と3種類に分かれるが、英愛などでは基本的にCross CountryはChaseに含まれる。英愛においてはさほどCross Countryのレースは多くなく、Cheltenham競馬場とPunchestown競馬場において行われるのみである。障害は見ての通り通常のChaseと異なり、Cheeze WedgesやSplit Fence、Aintree競馬場のCanal Turnのレプリカなど、様々なものが存在する。日本では考えられないほどの急カーブも存在する。出走馬はどちらかというとベテランや常連が多く、器用な飛越技術と経験がモノをいうレースになりやすい。ちなみに英愛と並んで障害大国であるフランスではCross Countryが盛んであり、ある程度英愛とも馬の交流がある。例えば映像で先頭集団を走っている葦毛のToutancarmontはフランスからの参戦馬であり、Crystal Cupの一環として行われるフランスの2015 Grand Steeple-Chase Cross Country de Fontainebleauの勝ち馬である。

 

National Hunt Flat Raceについて。これはこれから障害馬を目指す若駒が障害レースの距離や斤量、ペースに慣れるための平地レースである。基本的に障害コースに点在するHurdleを取り外して行われる。3月のCheltenham FestivalにおけるChampion Bumper (G1)を頂点として存在するが、あくまでHurdleやChaseへ転進することを目指して使われるレースである。

 

注) 障害の迂回

往々にして英愛障害競馬はコースを2周以上するため、1周目の障害で事故があり再度の飛越が危険と判断された場合はフラッグが振られ、該当する障害を迂回することになる。ラチと障害の間にはある程度の間隙があり、障害を迂回することができるように配慮されている。これは例えば1周目で落馬した馬が障害の近くに留まり、その場で治療または処分を行う場合などが挙げられる。故障馬の治療はシートで隠され、映像には映らないよう配慮こそされるものの、いずれにせよあまり見たくない光景である。例えば2015 Grand Nationalでは1周目のCanal Turnで落馬したBalthazar Kingの治療を行うため、2周目では同障害が迂回された。ちなみに同馬は一時は立ち上がれず心配されたが、落馬した際に他馬に蹴られたことによる肋骨の骨折であり、その後元気に回復している姿が報じられた。もし興味があり同レースの動画を見る場合、フラッグを振っている人に注目してみると面白い発見があるだろう。

他に障害を迂回する理由としては障害地点の太陽光の問題(日照不足や直射日光が当たるため眩しいこと)や、障害付近の馬場が酷く浸水しており安全な飛越が困難である場合など、様々なものが挙げられる。 

 

・Novice / Maiden, Beginners Chase

この辺りは知識として知っておけば十分な話。Novice競争とは当該カテゴリー(Hurdle、Chase)において昨シーズンまで未勝利である馬が出走するレースである。従って、如何に今シーズンにおいてHurdleを勝ちまくろうと、昨シーズンまでHurdleで未勝利であれば今シーズン限りはNovice戦に出走する権利がある。また、昨シーズンまでにHurdleでG1を勝ったほどの馬でもChaseで未勝利であれば今シーズンはChaseに出走する権利がある。Maidenとは未勝利戦、Beginners ChaseとはChaseにて未勝利である馬が出走するChase競走である。なおNational Hunt Flat RaceにNoviceクラスは存在しない。

ちなみに2015年の長距離Chaseの最高峰Cheltenham Gold Cupを勝ったConeygreeは前シーズンまでChaseで未勝利であったため、ChaseではNoviceの身ということになる。Noviceの身でCheltenham Gold Cupを勝利したのは1974年のCaptain Christy以来であり、Coneygreeは歴史的快挙を挙げたと言える。

 

・Distance

先にも書いたように、Hurdle競争は距離が2 - 3m5f (1fourlong = 約200m)、Chaseは距離が2 - 4m5fで行われる。2015年に競馬場の走行距離が再計測になり、夏には1m台のレースが行われるようになったが、基本的にはほぼ上記の範囲の距離で行われる。カテゴリーとしては、2mが短距離、2m5fが中距離、3mが長距離、それ以上を超長距離と考えていいだろう。Hurdleでは中長距離の区分があまりはっきりしないので、中・長距離は合わせて考える。また、3mを超えるような超長距離戦はハンデ戦でしか存在しない。

平地はスプリント、マイル、クラシックディスタンスなどで出走馬がはっきりと分かれるが、英愛障害競馬ではさほどそのような区分ははっきりとはしていない。勿論短距離メイン、長距離メインで使う馬は存在するが、短距離を使っていた馬が長距離に参戦することは平地ほど稀ではない。例えば短距離Hurdle路線の最高峰2014 Champion Hurdle (G1)の覇者Jezkiはその後長距離Hurdle戦であるPunchestown競馬場で行われる2015 World Series Hurdle (G1)に参戦し、勝利を挙げている。

 

・Grade and Class

G1~G3、Listed (準重賞)が存在する。G1は定量、G2はLimited Handicap(比較的斤量幅を抑えたハンデ戦)、G3はHandicapである。基本的にハンデ戦定量戦を使う馬は別であることが多い。G1ともなると流石にハイレベルなレースが展開されるが、G3でも権威ある重賞は数多く存在する。例えば件のGrand Nationalはハンデ戦であるためG3の格付けになるが、その賞金額、人気、馬券の売り上げなどで世界的に見ても殆どのG1を凌駕する。

Grade戦、Listed競争は全てClass1に属する。BHAの算出するレーティングによってClass1~6に分かれるが、日本の獲得賞金額に応じたクラス分けとは異なり、さほど厳密なクラスわけではなく、C2~C4あたりをウロウロしているような馬は多数存在する。また、Class6は基本的にOpen Hunters' Chaseと呼ばれる、比較的斤量を重くしスピードを抑えたアマチュア騎手による競争が行われる。

 

Category Summary

上のようなカテゴリーに加えて、3or4歳限定戦、牝馬限定戦、高齢馬限定戦というものも存在する。従って主な基本的な路線は以下の通りになる。ハンデ戦をメインに使う馬、定量戦を主に使う馬など多様であるため、このカテゴリーの下にも細かいカテゴリー分けが存在しているが、大雑把に言えば下記のようになるだろう。基本的にはこのカテゴリー分けに従ってレース路線が造られている。

[Hurdle]

短距離・中長距離 Novice Hurdle

短距離・中長距離 Hurdle

(3-4yo Juvenile Hurdle), (Mares' Hurdle), (Veterans' Hurdle)

[Chase]

短距離・中距離・長距離 Novice Chase

短距離・中距離・長距離 Chase

(Cross Country Chase), (Veterans' Chase), (Mares' Chase)

[NH Flat Race]

3-4歳限定Chaseというものは存在しない。また、牝馬限定Chaseは存在するものの、ほとんどが下級条件かせいぜいListedの競争がある程度で、またChaseを使う牝馬自体も多くないため路線としては整備されていない。Veterans' Chase(10歳以上限定戦)に関しては近年BHAが力を入れて整備しており、長らく走ってきたファンの多いベテラン馬が出走する非常に人気のあるレースである。

 

 

*Horses

・Weight

英愛においてはストーン・ポンド表示を用いる。例えば11st10lb (11ストーン10ポンド = 約74.4kg)である。1ストーン = 14ポンド = 約6.35kg、1ポンド = 約0.45kg。殆どの場合は10st0lb (=63.5kg)から12st0lb (=76.2kg)の斤量を背負う。ハンデ戦では時には9st台の馬が出現することや、Open Hunters' Chaseでは12st以上の斤量で走る馬が出現する。G1のような定量戦は11st10lb程度の斤量で行われることが多い。これを重いと見るかは人次第だが、世界的に見ると障害競馬では65kg~70kg (=10st3lb~11st0lb)で行われることが殆どである。

・Sex

ほとんどがセン馬(gelding)である。牡馬は若駒限定戦やNH Flat Raceに僅かに存在するものの、ほぼ100%がいずれ去勢されると言っていいだろう。これはフランス、ドイツ、チェコニュージーランドなどでも同様であり、世界的に見ると牡馬を未去勢のまま障害戦に用いる日本はむしろ特殊である。牝馬は比較的Hurdle戦に多く、Cheltenham FestivalにおけるOLBG Mares' Hurdleは近年G1に昇格するなど、牝馬Hurdle路線は近年整備されつつある。牝馬の障害馬の引退後は繁殖に用いるようだ。例えば2015 Cheltenham Gold Cup (G1)を勝利したConeygreeや2013 West Wales Nationalを勝利したCarruthersの母Plaid Maidは障害馬である。

 

・Career and Age

一般的には、平地戦(NH Flat Race, 通常の平地戦)→Hurdle→Chaseというキャリアパスである。日本やニュージーランド、ドイツなどでは平地でのキャリアを諦めて障害転向というパターンが一般的だが、英愛においては最初から障害馬として育成されることが多い。勿論、もともと平地で活躍していた馬が入障することもあり、例えば2013 Qatar Prix De L'Arc De Triomphe (G1)にてTreveの5着に入ったPenglai Pavilionは2015年の夏からHurdleに転向している。また、フランスなど海外の障害戦を使っていた馬が英愛に移籍することも多い。Hurdle戦は比較的若い馬がメインであり、スピード能力の衰えと気性の落ち着き、飛越能力の向上に伴いChaseへと移行するパターンが多い。勿論生涯Hurdle戦を使う馬も存在し、例えばG1を22勝という最多G1勝利記録を持つ伝説的な障害馬Hurricane Flyはキャリアを通じてHurdleを使い続けた。年齢としては最も若い馬で3歳、キャリアの中心としては5~10歳、長い馬では11~17歳までに渡って現役を続ける。例えば2015 Grand Natioanlにおいて「最も完走しそうな馬」に選ばれたOscar Timeは当時14歳であった。ちなみに勿論完走を果たし、同レースをもって引退となった。なお、アイルランドでは平地とHurdleを兼用している馬も多い。いつぞやのジャパンカップに来日したSimenonはHurdle戦も数多く走っており、勝ち星も挙げている。

 

 

*Races

・Principle Races

列挙するのは面倒くさいのでリンクを貼り付けて誤魔化す作戦。

List of British National Hunt races - Wikipedia, the free encyclopedia

List of Irish National Hunt races - Wikipedia, the free encyclopedia

この中で特筆すべきは、幾つか。まずは12/26 (Boxing Day)にAscot競馬場にて行われるWilliam Hill Winter Festivalである。ここでは長距離Chaseの主要レース、King George VI Chase (G1)、短距離Hurdleの主要レース、Christmas Hurdle (G1)が行われる。次に4月にAintree競馬場で行われるGrand National Meeting。ここでは各路線のG1のほか、何と言っても英国障害競馬の最高峰、Grand National (G3)が行われる。また、5月の最初に行われるPuchestown Festival。これはアイルランド障害競馬シーズンの終わりを告げるものであり、アイルランド調教馬を主に各路線の主要G1が行われる。

しかし、なんと言っても一番の盛り上がりを見せるのは3月のCheltenham競馬場で行われるCheltenham Festivalである。ここでは超長距離のハンデ戦を除く全ての路線において最高峰となるG1が行われる。英愛障害を走る全ての馬はここのレースを目指してくると言っても過言ではなく、ここの祭典におけるレースで勝利した馬は"Festival Winner"として一生モノの名誉となる。

また、2015/16シーズンからはBetfair Chase (G1)、William Hill King George VI Chase (G1)、Cheltenham Gold Cup (G1)を同シーズンに勝利した馬に100万ポンドの賞金を与えるという、"£1m chase Triple Crown in honour of Kauto Star"が開始された。いわゆる三冠レース。

 

・Ground

あとはレースに関する細々とした話。まぁ基本的には観れば分かると思うが。

Hard-Firm-Good-Soft-Heavyという順に悪くなる。HardとFirmは馬場が固すぎるためむしろ避けられる傾向にあり、実際にレースが行われることはほとんどない。2014/15の冬はイギリスで大雨が続いたせいもあり、馬場が悪化した状態でレースが行われることが多かった。テムズ川の氾濫は有名だろう。良馬場であれば走りやすく、スタミナの消費も少ないため完走馬が多くなる傾向にあるが、馬場が悪化した状態ではスタミナの消耗が激しく、完走にはかなり厳しいレースとなる。さらに、重馬場と良馬場では日本のそれとは比べ物にならないくらい異質なコースになるので、当然得意とする馬、苦手とする馬が存在する。合わない馬場では全く走らない馬もおり、例えば重賞勝ちのあるMelodic RendezvousはHeavyでしか走らないことで有名である。

 

・Start

スタートは日本のゲート式と異なり、バリア式である。これは見ればわかると思うが、馬があるエリアに並び、スターティングバリヤーが上がることによってスタートする。しばしば馬が適切な位置に並んでいなかったという理由でスタートのやり直し(False Start)が宣言されることがある。これは多頭数のレースほど起こり易く、40頭もの出走馬を集めるGrand Nationalなどはその最たるものである。ちなみにイギリスのブックメーカーではGrand NationalにおいてFlase Startが生じるかというしょーもないBettingを行っている。

 

・Pull Up / Fall / Unseated Rider

競争中止と一概に言っても原因は色々ある。ここでは代表的なものを3つ紹介したい。第一にPull Up (PU)。これは障害飛越とは関係なく、途中棄権と書いたほうがいいかもしれない。原因としては故障のほか、先頭から大きく離されてしまい勝機がなくなった場合、または馬が著しく疲労した場合などが挙げられる。第二にFall (F)。これは障害飛越の際の落馬転倒である。第三にUnseated Rider (UR)。ニュージーランドではLost Rider (LR)と表記する。これは飛越時に馬がバランスを崩し、鞍上が落馬した場合を指す。ちなみに珍しいものではRefuse to Race (RR)などもある。要するに発馬拒否である。これを繰り返すとBHAから出走停止を食らうことになる。気になる人はMad Mooseで検索されたし。要するに発馬拒否を繰り返して一時期Banされた馬である。その出走停止が解けた復帰戦、#Willhestartというしょもないタグが流行った。

 

 

*Live Watching, Replay and Database

そんなわけで諸々のお役立ちサイトの紹介。

・Live Watching

レース中継に関しては英愛では2つの企業が担当している。Racing UK (RUK)とAt the races (ATR)である。RUKは英国、ATRはどちらかというと愛国寄りの競馬場をメインに中継しているようだ。中継する競馬場の詳細はwikiるか、出馬表に書いてあるので参照されたし。

Racing UK international:http://intl.racinguk.com/ 有料

£29.99/month。RUKの国外向け中継サービスである。公式なので回線は安定している。一部のブラウザとは相性が悪いので注意。

At The Races:http://www.attheraces.com/home?ref=splash 有料

これも中継サイトである。RUKとは中継する競馬場が異なる。英愛のレース中継はRUKとATRが二分して行っている。広告は多いが視聴料はRUKよりも安い。Irish PTPは別の中継サイトになるので注意。観たい人いるか知らんけど。

2017年からChannel 4からITVに英国競馬の放映権が移ったのだが、ITVは地域制限のため日本国内からは視聴できないようだ。

その他、ニコ生やストリーミングサイトにて非公式に中継しているところもある。ストリーミングサイトに関しては海外スポーツ 中継とかでぐぐるべし。詳しい方法はここには書かない。

 

・Replay and Database

出馬表、結果、リプレイ、馬のデータベース、ニュースなど。

Racingpost:http://www.racingpost.com/

海外競馬を追いかけている人には常識だろう。ニュースのほか、出馬表、結果、データベースなどが詳細に掲載されている。有料会員だとレース映像の視聴が可能。

At The Races:http://www.attheraces.com/home?ref=splash 

中継サイトという側面だけではなく、様々なデータベースやニュース、出馬表、結果、リプレイなどが見られる総合競馬サイトである。現在リプレイを見るのに会員登録は不要。データベースも充実しており、ユーザーインターフェースが好みなので愛用している。また、様々なコラムや特集も充実しており、15/16シーズンは障害POGのようなものも開催していた。ただし、馬のデータベースはRacingpostと比較すると国外のものに弱いので注意。例えばBlackstairmountainの中山GJの2着馬はRikiai Taikanになっている。

Racing UK:http://www.racinguk.com/

こちらも中継サイトという側面だけでなく、総合競馬サイトとしての側面もある。ただしリプレイは要登録(しかもRUK Internationalとは別)なのでわたしは使っていない。

The Jockey Club UK:http://www.thejockeyclub.co.uk/

英国Jockey ClubのHP。RUK系のリプレイが視聴可能。登録も不要だがややアップデートが遅く、データベースとの相関はいまいち。

Sky Sports Racing:http://www.skysports.com/racing/

こちらも総合競馬サイト。何かとデータベースが充実していて使いやすい。RUK系のリプレイが視聴可能。ただし視聴にはSkybetへの登録が必要である。

Crystal Cup:http://www.crystalcup.org/GBR/News-2015.htm

欧州Cross Country Series、Crystal Cupの公式HP。可能な場合はレース結果や動画を上げてくれる。非英語圏の障害はなかなか追いかけにくいと思われるので便利。

なおこのクソブログでは説明にも書いてあるように、イギリス・アイルランド・ドイツ・イタリア・チェコニュージーランドなどの障害競走に関して、中の人が気になったレースを中心に取り上げている。