にげうまメモ

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15/12/05 National Hunt Racing

*Aintree Soft (Good to Soft in places)

Fillies' Juvenile Hurdle (Listed) 2m209y

人気のJer's Girlが積極的に先手を取ると、最後は10馬身差の楽勝。

それなりに馬場は悪くなっているようだ。Jer's GirlはこれでHurdle2戦2勝としたが、あくまで未勝利戦、牝馬相手のもの。Juvenile路線にさほど中心的な馬はまだいないが、今後セン馬相手となったときが正念場だろう。

 

Novices' Hurdle (C3) 2m209y

やや引っ掛かり気味に逃げた人気の一角Agrapartが途中から一気に仕掛けると、後続は付いて来れず20馬身差の楽勝。人気のFlying Angelが見せ場無く2着に終わった。

Agrapartは鞍上の好騎乗もあっただろうが、重馬場への適正を見せた。Hurdleはこれが初勝利となり、少しずつ力をつけているようだ。

 

Becher Handicap Chase (Grade 3) (National Course) 3m1f188y

年に数回しか使われないNational Courseを使った重賞。2014 Grand Nationalの勝ち馬Pineau De Reや2015 Grand National2着馬Saint Areの参戦が話題を集めていた。

レースは第二障害でいきなりPineau De Reが落馬する波乱から幕を開ける。Saint Are、Thunder And Roses辺りが先手を取る展開も、Saint Areは徐々に後退。代わってHighland Lodge、Dare To Endeavourなどが先頭集団に。これをSollやVics Canvasらが追ってくるも、最後の直線で先頭に立ったHighland Lodgeが後続の追撃を2馬身ほど抑えて勝利した。その後ろは6着まで大混戦。2着は逃げたDare To Endeavour、3着は後方から追い込んだDolatulo、4着に先行したSoll、5着は果敢に仕掛けたVics Canvas、6着にこれも先行したFinancial Climateが入った。Saint Areは離れた7着、Unionisteはさらに離れた8着。

結果的には軽量馬が上位を占めるものとなった。Highland Lodgeは10st0lbという軽量に助けられた部分も大きかっただろう。一度経験のあるコースということで飛越こそ安定したものを見せていたが、さすがにこの結果が本番に繋がるかといわれると疑問符を呈さざるを得ない。最後もヨレたりしてやや余力をなくしているように見えた。上位に入った中で評価したいのは11st2lbを背負ったVics Canvasか。特に飛越のミスも無く、果敢に仕掛けて最後はスピード負けしての5着。12歳と高齢なだけにどこまで伸び代があるかはわからないが、超長距離戦の経験には長けた馬。本番でも斤量が軽くなれば楽しみはあるだろう。

Saint Areは先行するも途中から追走に苦労し大敗。調子が悪いのか斤量に苦労したのかはわからないが、いずれにせよ残念な結果である。トップハンデのUnionisteはNational Fenceは合っていないだろう。一時は引退も検討されたPineau De Reは残念な落馬。馬は無事とのことで、今回のミスは度外視してよいだろう。

 

'100K Cash Giveaway' Chase (Listed) 3m210y

Southfield TheatreとMany Cloudsが並んでゆったりとしたペースで逃げる展開。2周目辺りからMany Cloudsが先頭に変わり、徐々にペースを上げる。残り3障害で並びかけたDon Poliは一時はMany Cloudsに抵抗されるも、最終障害を並んで飛ぶと、最後は平地のスピードで4馬身ほど突き放し勝利。

Many Cloudsはスローな流れが向いただろう。ただしあくまで超長距離の持久戦に強い馬で、最後のスピード負けは仕方ない部分がある。加えて、最終障害をやや無駄の多い飛越を見せてしまった点が悔やまれる。Don Poliはこの辺りに助けられた部分が大きいだろう。勝利としてはさほど評価できないものである。Menorah、Southfield Theatreは付いていけず。これらは力負けだろう。

 

Grand Sefton Chase (C2) (National Course) 2m5f19y

軽量のTop Cat HenryやBennys Mistらが先行する展開。残り5障害から先頭に立ったBennys Mistが後続を突き放し、最後は2着のSeventh Skyに9馬身差をつける快勝。

Bennys Mistは一昨年の3着馬。コース経験、10st4lbという軽量に恵まれた部分も大きいだろう。Seventh Skyは何度かミスをしながらも2着まで。連覇が期待されたPoole Masterは徐々に位置を下げ大敗。調子と言う点で疑問符。Double RossはNational Fenceが合っていないようだ。飛越に苦労し、その度に位置を下げていた。いちおう完走はしているように調子は良いようだが。期待されたRocky Creekは良いところなくPU。調子という点で疑問符が残る結果となってしまった。

 

*Sandown Good to Soft

Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f119y 

Ar Madが積極的に引っ張る展開。Bristol De MaiやAs De Meeは好位から。これらが徐々に詰めてくる... と思いきや、むしろAr Madが差を広げ、最後は10馬身差の圧勝。

Ar MadはChase初戦こそ大敗しているが、2走目はC3を勝ってきた馬。ここでは人気の盲点となっていたことは確かだが、それにしても強い競馬を見せた。最後まで脚色が衰えることなく、バテた2着以下とは対象的である。期待されたBristol De Maiは2着。元々重馬場で良績のある馬なだけに、このようなスピード勝負は厳しかったのだろうか。

 

Tingle Creek Chase (G1) 1m7f119y

Special Tiaraが例によって軽快に飛ばす展開。Sire De Grugy、Vibrato Valtatは好位から。Mr Mole、Third Intentionは序盤から付いていけず後方から。第3障害でJosses Hillが落馬し、後続が不利を受けた関係で隊列は長くなる。Railway FenceのあたりでSpecial Tiaraがややペースを落としたのを利してSire De Grugyが強気に進出。Pond Fenceでは完全に先頭に変わる。事件があったのは最終障害。Sire De Grugyが左に斜飛し、ちょうど着地したSpecial Tiaraは大きく不利を受けてしまう。Special Tiaraは立て直して懸命にこれを追うも、Sire De Grugyがこれを凌ぎきり勝利した。

2013/14シーズンにて短距離Chaseで無敵を誇ったSire De Grugy。昨シーズンは精彩を欠き、今シーズンの初戦も落馬するなど、いまいちな状態が続いていた。しかし、このレースではSpecial Tiaraの逃げを自ら動いて勝利する、見事な復活劇を見せた。とりあえずはその復活を喜びたい。しかし、むしろ評価しなくてはいけないのはSpecial Tiaraである。トリッキーな障害が続き、自らの武器でもあるそのハイペースをやや変動させなくてはいけないSandown競馬場で後続の殆どを序盤の内にそのハイペースで潰し、最後は大きな不利を受けながら勝ち馬を追撃したその力はさすがの一言である。Sire De Grugy自身はその競馬場の特性を利した競馬をしており、加えて最終障害の事件がある。Special Tiaraはあの不利が無ければ勝利は間違いなかっただろう。雨で滑りやすい馬場が不得意な馬であり、展開と馬場には注文がつくが、短距離Chaseにおける有力馬であることは間違いない。

Vibrato Valtatは本来スローペースからの上がり勝負が得意な馬。今回は追走だけで精一杯となってしまった。前走の勝ちっぷりは鮮やかで戦前の評価は高かったが、この馬本来の特性を考えると今回は相手が悪かったとしか言いようが無い。Somersbyは飛越の下手な馬だが、今回は特にそのようなミスも無かった。さすがに年齢も重ねており、やや力落ちだろうか。Mr MoleとThird Intentionは力負け。勿体無かったのがJosses Hill。本来ハイペースの持久戦に強い馬であり、ここでも何処までやれるか見たかったのだが。

Sire De Grugyの復活は確かに素晴らしいものであるが、やや後味の悪いレースとなってしまった。乗っていた騎手にはペナルティが科されたらしいが、本当にそれでよいのか。競馬とは興行であり、ファンありきのものである。ファンが納得しないルールを施行している興行に未来は無い。公正なルールとは何か、またそれがファンを納得させるに足りるものなのか、これは「世界基準」などという空想的かつ安直で矮小な単語では片付けられない、日本競馬においても非常に重要な論点であろう。

 

London National (C2 Handicap) 3m4f166y

Sandown競馬場のTingle Creek Christmas Festivalを締めくくる超長距離戦。Welsh Nationalの勝ち馬Mountainousや2013 Scottish Grand Nationalの勝ち馬Godsmejudgeなどが実績どころであったが、勝ったのはNovice上がりながらも11st10lbを背負ったCarole's Destrier。この距離は初ながらも、最終障害で先頭に立つとSummery Justiceの追撃を抑える良いレースを見せた。この路線では面白い一頭だろう。6着まではほとんど差が無いが、この中で面白いのは10st10lbを背負ったMountainousか。徐々に今シーズンに入ってから調子を上げてきており、また超長距離戦の経験も豊富な馬。スピード勝負ではかなり分が悪いが、長丁場の持久戦ならば面白い一頭か。