*障害競馬ニュース10選
独断と偏見で選ぶ今年の障害競馬関連ニュース10選。異論は多いに認める。出来る限りレース映像へのリンクを貼り付けておいたので、お正月のお供にでも宜しければどうぞ。なおこのブログにはアフィなどなく、アクセス数が増えたところでわたしには一銭のメリットも無いことは強調しておく。むしろ座りっぱなしで腰が痛い。
・Retirement of Legendary Jump Jockey "Sir AP McCoy" (UK)
やはりまずはこれだろう。英国において20年連続でチャンピオンジョッキーの座に君臨し続けた伝説的障害騎手AP McCoyの引退である。忘れもしない2月7日、Mr MoleにてBetfair Price Rush Chase (G2)を勝利した際に引退を表明。そこから残りの英国障害シーズンはMcCoy一色であった。Cheltenham FestivalではUxizandreにてRyanair Case (G1)を勝利。最後のGrand National (G3)では2014 Irish Grand National (G3)の勝ち馬Shutthefrontdoorに騎乗して一番人気に押されるも、5着に敗れた。現役最後の騎乗機会となったSandown開催ではMcCoyの引退を記念してAP McCoy Celebration Chase (G1)が開催され、自身もお手馬Mr Moleに騎乗して積極的な騎乗を見せるものの、Special Tiaraの3着に敗れた。流石に万事がバラ色の引退とはならなかったが、その活躍振りは英国障害ファンの誰しもが認めるところである。12月31日、その謙虚な人格と類稀なる活躍が認められ、"Sir"の称号が与えられることが発表された。これに際してMcCoyはこう述べている。「家族や近しい友人にはSir Anthonyと呼ぶよう頼んだけれど、ほかの人は(今までどおり)APとか、Tonyとか、好きなように呼んでください」。
なお、AP McCoyの現役最後の数ヶ月に密着したドキュメンタリー映画"Being AP"が製作されている。DVDは比較的安く買えるので興味のある方は是非。なおこれを買って頂いてもわたしには一銭のメリットも無いことは強調しておく。
・Coneygree, A Novice! (UK)
英国障害競馬長距離Chaseにおける最高峰、Cheltenham Gold Cup (G1)。2015年3月13日、この大舞台で英愛の強豪が集まった中、自ら序盤から厳しいハイペースを刻み続け、激しい消耗戦に持ち込んだ上に粘り勝つという素晴らしいパフォーマンスを見せ付ける馬が現れた。そして驚くべきは、この馬はNoviceの身ながらこの大舞台に挑戦したという事実である。その馬の名はConeygree。暮れのKauto Star Novices' Chase (G1)を勝利して頭角を現し、続くDenman Chase (G2)でも長距離の強豪相手に力の違いを見せ付ける勝利を挙げていた。しかし、Noviceの身ながらCheltenham Gold Cup (G1)を勝利したのは1974年のCaptain Christy以来であり、Coneygreeは歴史的快挙を挙げたと言える。
Coneygreeは15/16シーズンは初戦こそ力の違いを見せ付ける勝利を挙げたが、残念ながらその後故障が判明し15/16シーズンは全休することになった。早期の復帰を祈る。
・Nikas sparkles in Velká pardubická s Českou pojišťovnou (Stcc, L) (CZE)
母方はチェコの土着血統、父方はポーランドの土着血統。世界の主流血統とは程遠い血統ながらも、類稀なる持久力と精神力、そして卓越した障害飛越能力を持つチェコの古豪Nikas。一昨年の同レースの2着馬が、ついにここでチェコStccのチャンピオンの座に君臨することとなった。Velká cena města Pardubic XXIII.ročník - I. kval.na 125. Velkou pardubickou s Českou pojišťovnou (Stcc NL)の勝ち馬、Universe of Gracieが挑発的なハイペースを刻む中、中段から徐々に進出し、Stchにて一気に先頭に立ち押し切るという強い競馬。同レース3連覇を達成した伝説的牝馬Orphee Des Blinsが引退し、主役不在となっていたチェコクロスカントリー路線において、新たな主役の出現を告げるパフォーマンスであった。
動画はチェコのテレビの映像だが、下のクソ記事には素晴らしいPardubice公式映像とそれには見合わないようなレース解説と称した駄文が書き連ねてあるので宜しければどうぞ。
・Tallyho Twinkletoe, Look at his tremendous speed! (NZL)
2015年8月5日、ニュージーランドHurdle路線において新たなスターホースが誕生した。5歳のセン馬、Tallyho Twinkletoeである。Hurdle初戦こそ7着に敗れたが、続く未勝利戦では後続に35馬身差を付ける大楽勝、続くRST OPN HDLでも向こう正面あたりから後方からド派手な捲りを見せ、直線入り口では先頭に立ち、結果としてLucky Tonightに7馬身差を付ける楽勝。続く大舞台、Hospitality New Zealand Canterbury 126th Grand National Hurdles (PJR)でもやはり後方からド派手な捲りを見せ、最後は7馬身差の圧勝。これでHurdleは4戦3勝。パフォーマンスを考えるともはやニュージーランドHurdle路線では完全に力が抜けていると考えて良いだろう。トップスピードで飛越した最終障害でややミスをするなど、まだまだ荒削りな部分のある馬。今後が楽しみな一頭である。
ついでにレースの詳細な解説記事も貼り付けておく。参考レースとしてTallyho Twinkletoeの3戦目(RST OPN HDL)のリンクもあるので是非。大きく隊列が伸びた状態で、ほぼ最後方に近い位置から先頭までブチ抜く捲りは必見。
・Up To Date, Dual Winner of the richest jump races in the world! (JPN)
日本の障害競馬、特に中山グランドジャンプと中山大障害はその賞金額が非常に高いことで有名である。最近ではオーストラリアやニュージーランドからの参戦馬こそ少なくなってしまったが、英愛における関心は今でも根強く残っており、レースの選択肢の一つとして挙げられるようである。愛国調教馬Blackstairmountain(2014引退)が2013中山GJを愛国チャンピオンジョッキーRuby Walshと共に見事な飛越で制したことは記憶に新しいだろう。日本障害競馬は長らくチャンピオンホースの相次ぐ故障で主役不在とされていたが、昨年はアポロマーベリックの活躍もあり、そして今年に入って春秋JG1連覇を成し遂げる新たなチャンピオンホースが誕生した。葦毛の怪物、鞍上の林騎手に言わせれば「僕のゴールドシップ」、アップトゥデイトである。その飛越能力の安定性とハイペース耐性、持久力は現役馬の中では卓越している。特に飛越の高さと安定性は特筆するべきものがあるので、是非英国遠征を、と言いたくなるのはわたしだけだろうか。練習すればChaseも飛べると思うので、現状ハイペースでぶっ飛ばす馬(Special Tiara、Un De Sceaux)のいるQueen Mother Champion Chase (G1)など面白いのではないだろうか。
ちなみに、小倉サマージャンプ (G3)にて快速馬オースミムーンとひたすら遣り合って、結果同馬を潰しきったレースはもはや圧巻の一言。
・Lizzie Kelly, first Grade 1 jumps success for a female jockey! (UK)
毎年12/26、Boxing Dayに行われるKempton開催のKauto Star Novices' Chase (G1)。昨年は上述のConeygreeが後続に大差をつける圧勝劇を見せたが、今年も歴史的なレースとなった。Lizzie Kelly、英国ではお馴染みの女性障害騎手であるが、Tea For Twoに騎乗しこのレースを制し、英国にて障害G1を制覇する初の女性騎手となった。Tea For Two自身はHurdleではListed勝ちがある馬であり、これがChase2戦目。スローの末脚比べとなった典型的なNoviceのレースであるが、December Novices' Chase (G2)勝ちのあるSouthfield Royaleをきっちりと下してきたことは評価してよいだろう。
それにしても、鞍上のLizzie Kellyは行きたがるTea For Twoを抑え、比較的トップスピードよりも持続力に秀でたマラソンランナーSouthfield Royaleを目標に乗ることで馬のよさを存分に発揮させる騎乗は見事である。More of ThatがCheltenham Gold Cup (G1)に向かうという噂もあり、このコンビにはRSA Chase (G1)での活躍も期待したい。
・German "Seekönig" Kazzio conquers GRAN PREMIO MERANO! (GER, ITA)
イタリアSteeplechaseの最高峰、GRAN PREMIO MERANO (G1)。イタリアのSteeplechaseは前から見ると騎手の頭しか見えないほど高くそびえ立つ生垣障害が特徴的である。今年は地元勢に加え、フランス勢、愛国のトップトレーナーMullins師の送り出すPerfect Gentleman、そしてドイツにていわゆる「池の中を泳ぐ障害のある障害競馬」(Seejagdrennen)を勝ちまくっているドイツのチャンピオンホースKazzioが参戦する非常に豪華なレースとなった。そして並み居る強豪を抑えて勝利したのはドイツのKazzio。前走ベルギーで行われたING Grand Steeple Chase of FlandersこそTaupin Rochelaisの前に屈したが、今回は流石の安定した飛越と素晴らしいパフォーマンスを見せた。ドイツではほぼ無敵を誇る馬だけに、今後も積極的に海外遠征して欲しいところ。特にその飛越の高さと安定性はずば抜けているだけに、Grand National (G3)への参戦も個人的には期待している。
そんなKazzioの母国でのレースの映像も載せておく。いわゆる「池の中を泳ぐ障害」もあるレース。ドイツでは障害競馬はさほど多く無く、出走馬もお馴染みさんばかりだが、他国への遠征結果を見ると流石は一競馬大国ということもあり、それなりに上位陣のレベルは高いようだ。
ついでにベルギーのING Grand Steeple Chase of Flandersの記事でも。
・Welcome Back, Sprinter Sacre and Sire De Grugy! (UK)
かつては連戦連勝、その全てが圧勝と向かうところ敵なしであった短距離Chaseの怪物Sprinter Sacre。その勢いのまま迎えた2013 Desert Orchid Chase (G2)、上がり馬Sire De Grugyとの対決ということで注目されていたが、残念ながら競争中に心房細動を発症し競争中止。レースはSire De Grugyが危なげなく勝利した。その後Sprinter Sacreは13/14シーズンは全休、14/15シーズンは復帰するも勝ち星無しと精彩を欠いていた。しかし、15/16シーズンの初戦となったShloer Chase (G2)で久しぶりの勝利を飾り、復活の狼煙を上げていた。
一方のSire De Grugy。12/13シーズンの後半から調子を上げ、13/14シーズンは無敵を誇るも、シーズンオフに骨折を発症し手術を余儀なくされ、復帰した14/15シーズンは同様に精彩を欠いていた。しかし、今シーズンの2戦目となったTingle Creek Chase (G1)で短距離Chaseの強豪Special Tiaraを下し、復調振りをアピールしていた。
レースとしてはスローの上がり勝負。2頭の叩き合いは最終障害をよりスピードを殺さずに飛んだSprinter Sacreに軍配が上がった。ただし、3着にこのような展開では滅法強いVibrato Valtatが入っていることは注意してよいだろう。同馬はこのようなスローからの上がり勝負では異様なまでの強さを発揮する馬であり、この馬を相手にしなかったこの2頭は流石と言うしかない。それにしても、2頭の歴史的な強豪が2年の時を経て、各々の疾患を乗り越えての再戦が叶ったこのレース。まさに関係者と馬の尽力の賜物だろう。このような感動的なレースが見られることに対して心から感謝の意を表したい。
ついでにSprinter SacreとSire De Grugyのかつての大舞台での勝利の動画を貼っておく。この2頭には来年も短距離Chaseでの活躍を期待してやまない。
・Bashboy records third win of Grand National with Irish Champion Jockey! (AUS, IRE)
オーストラリア障害競馬における大レースEcycle Grand National Steeplechaseにて3連覇を狙ったBashboy。この馬に騎乗したのはなんとアイルランドのトップジョッキーRuby Walshである。日本にもかつてBlackstairmountainで来日したことがあるので覚えている人も多いだろう。何でも元々主戦であったSteve Pateman騎手が騎乗停止を食らったので代打として騎乗したらしい。レースではEcycle Solutions Aust. Stpl.の勝ち馬Thubiaanを下し、見事な騎乗にて同馬を3連覇に導いた。Ruby WalshはこれでUK、IRE、Wales、Scotlandに加え、日本、オーストラリアのGrand Nationalを制覇することになった。もはや世界的障害騎手と言っても差し支えないだろう。再び愛国調教馬で来日してくれることを期待するばかりである。Racing UK, Anywhere(ドヤッ とかいう横断幕でも作ったろか。
なお、このレースの2着に入ったThubiaanは来年の中山GJに参戦を予定しているとか。
ついでにBlackstairmountain with Ruby Walsh @Nakayama Racecourse. 正確無比な飛越と一切の無駄の無い洗練された騎乗にはただただ感服するのみである。
・Many Clouds covers sky of Aintree despite of his heavy weight! (UK)
締めにはやはり世界一の障害レースを挙げておこう。2014 Hennessy Gold Cup (G3)の覇者、Many Clouds。Grand Nationalに挑むに当たっては11st9lbという酷量を背負うことになりながらも、連覇を狙う2014 Grand National (G3)の勝ち馬Pineau De Reの主戦Leighton AspellがあえてMany Cloudsを選んだということで話題になっていた。結果、早め先頭から軽量のSaint Areの追撃を抑え切る見事な勝利。ここ2年ほどは10st台の軽量馬が勝利しているということ、及び、これ以上の斤量を背負って勝利したのは1974年のRed Rumの12st0lbまで遡らなければならないことを考えても、この勝利の凄さが分かるだろう。
同馬は前走のCheltenham Gold Cup (G1)でこそConeygreeの作り出したハイペースの前にスピード負けしたが、元来一定のペースでひたすら走り続けることが出来る類稀なる持久力、高い飛越能力、重い斤量にも耐えうるパワー、そして強靭な精神力をもっている馬。15/16シーズンの初戦こそDon Poliの前にスピード負けしたが、シーズン初戦としては上々の内容であった。決して調子落ちは見られない。来年のGrand Nationalでも楽しみな馬である。
レース結果の解説と称した駄文は以前書き連ねておいたので宜しければどうぞ。同記事内にはレース自体と出走馬の解説へのリンクもあります。
ついでに、Many CloudsのHennessy Gold Cup (G3)の動画も。同レースはハンデ戦であるためG3の格付けであるが、英国障害競馬上半期における主要レースの一つである。むしろ同時期に行われるBetfair Chase (G1)よりもメンバーが集まる傾向にある。
*その他
あとは簡単に。Breaking Newsっぽいものからしょもないネタまで。
・Truimph of Un Temps Pour Tout at Auteuil (FR, UK)
レース映像消えてるんだけれど(怒) フランスのHurdle路線の最高峰、Grande Course de Haies d'Auteuil (G1)にて英国からの遠征馬Un Temps Pour Toutが10馬身差の圧勝。Un Temps Pour Toutは英国ではCole Hardenなど長距離Hurdleの一流どころ相手にいまいち足りないレースを繰り返していたが、フランス式障害が合っていたのかここでは他馬を寄せ付けない圧倒的なレースを見せた。15/16シーズンではChaseに転向。なかなか勝ち星を挙げられずにいるが、いずれも惜敗続きの内容。やや踏み切りに難のある馬なので、脚の使いどころが難しいようだ。
・Miracle Jockey "Brian Toomey" makes racing comeback (IRE)
2013年、Perth競馬場の落馬によって落命寸前の重傷を負ったBrian Toomey騎手。懸命の治療とリハビリによって2015年6月、奇跡の現役復帰を果たした。ほぼ生存の可能性は無いとまで診断された重傷からの復帰は数多くのメディアで取り上げられた。現在ではDavid Pipe師の下で騎手生活を送っている。復帰後はまだ勝ち星にこそ恵まれていないが、その成功は怪我からの復帰を目指す世界中の騎手たちを勇気付けることになるだろう。同騎手の成功を心から待ち望んでいる。
・Ländler wins Svenskt Grand National (GER, SWE)
ドイツからの遠征馬Ländlerがスウェーデンにおける障害競馬の最高峰Svenskt Grand Nationalを制覇したニュース。ドイツでは中々話題になっていた。スウェーデンの競馬はあまり馴染みはないと思うが、のどかな競馬場の中でアツい障害競馬が行われている光景は面白い。Ländlerはドイツを代表する障害馬の一頭である。前述のKazzioには完敗続きだが。
・Cue Card overcomes pelvis fracture (UK)
英愛障害馬には比較的多いとされる骨盤骨折。障害を飛越する際にはトモから背中の筋肉を用いて上半身を力強く持ち上げる必要があり、骨盤はこの時に筋肉の付着部位として支点となる。従って、障害飛越の際に骨盤に掛かる負担は非常に大きく、特に腸骨翼の部分の骨折は非常に多いとされている。Cue Cardは2013 King George VI Chase (G1)にてSilviniaco Contiの2着と惜敗した馬。その後Cheltenham Gold Cup (G1)への調整中に骨盤骨折を発症し、休養を余儀なくされていた。14/15シーズンは復帰するも成績が冴えず。しかし、15/16シーズンはCharlie Hall Chase (G2)で復帰すると2連勝。確かな手ごたえをもって悲願のKing George VI Chase (G1)に向かった。
そして迎えたKing George VI Chase (G1)。3連覇を狙うSilviniaco Contiが逃げる展開も、途中からアイルランドの怪物Vautourが先頭に立ち押し切りを図る流れ。Cue Cardはこれを最終障害で射程圏にいれ、最後の叩き合いで競り負かし、悲願のKing George VI Chase (G1)制覇を成し遂げた。骨盤骨折後は着地からの二歩目がおぼつかず、骨折の影響が見られていたが、今シーズンはそのような場面も少なくなり、ここで見事な大レースの制覇。まさに獣医医療と関係者、そして馬の尽力の勝利だろう。
今後はまっすぐCheltenhamに向かうとのこと。ハイペース耐性のある馬であり、Cheltenhamでも楽しみな一頭であることは間違いないだろう。
参考までに、惜敗した2013 King George VI Chase (G1)。
・Impressive Novice Horses (IRE, UK)
14/15シーズンのNovice路線はその水準を高く評価されるものとなった。Cheltenham Gold Cup (G1)を制覇したConeygreeが存在する3miles路線は勿論、2miles路線のUn De Sceaux、2m5f路線のVautour、いずれもBHAがシーズン終わりに発表するレーティングにて非常に高い評価を得た。まずUn De SceauxはQueen Mother Champion Chase (G1)の3着馬Special Tiaraと並ぶ168を獲得している。これはこの路線全体でも2位のレーティングであり、Un De Sceauxが15/16シーズンにおける短距離Chase路線の主役の一頭と目されていることを意味する。さらに驚くべきは、本来であれば中距離Chase路線トップの評価を下されているだろうRyanair Chase (G1)の勝ち馬であるUxizandreの上に、Vautourという馬がいるということだ。 しかもRatingは171という驚異的なもの。昨年NoviceトップのTaquin Du Seuilが159ということを考えても、この数字の凄まじさがわかるだろう。
総括はクソブログのタグ"Summary"というところから飛べる。ここでは動画のリンクのみ貼っておく。
・Retirement of Multiple Grade 1 winner, Hurricane Fly (IRE)
G1を22勝という驚異的な最多G1勝利記録を持つ伝説的な障害馬Hurricane Flyの引退。キャリア全体を通じてHurdleを使い続け、11歳となった今年まで現役を続けた。晩年になっても衰えが見られることはなく、最後のシーズンとなった14/15シーズンまでG1を勝ち続けている、しかも相手は2014 Champion Hurdle (G1)の勝ち馬Jezkiというのだから恐ろしい。引退後も競馬場にお披露目があったりと精力的に活動しているそうだ。それにしても、一体この馬を越える障害馬が今後出現するのだろうか?
もはや何を選んだらいいのか分からないが、とりあえず有名どころを。
・Pineau De Re makes another success after the winning of Grand National (UK)
12月13日のCarlisle競馬場、Pertemps Network Handicap Hurdle (C2)にて、2014年のGrand National (G3)の覇者、Pineau De Reが勝利。実はGrand National (G3)の勝ち馬がその後勝ち星を挙げたのは2002年のBindaree以来らしい。それだけ厳しく、馬にも負担の大きいレースということなのだろう。ちなみにPineau De Reは今シーズンの最初こそ引退の可能性も報じられていたが、馬は比較的元気とのこと。Becher Chase (G3)は落馬という残念な結果に終わったが、かつてのGrand National (G3)の覇者、来年のAintreeでの活躍も期待したい。
・Rainbow over the Canal Turn (UK)
最後はわりとしょもないネタを。愛すべきベテラン、今年で引退したThe Rainbow Hunterである。長らく長距離Chaseを使ってきた馬であり、実績としてはSky Bet Chase (Listed)勝ちがある程度だが、Grand National (G3)には2013、2014と出走。しかしそのいずれもCanal Turnで落馬するという残念な結果に終わっていた。Canal Turnは障害自体の難易度は勿論のこと、直後に直角のカーブが存在するため斜めに飛ぶ必要があり、余計に難易度が上がっている上に、馬が内側に密集するため多重落馬が発生しやすく、National Courseの中でも難所と言われている。同馬は2015 Grand National (G3)にも果敢に挑戦してきたが、その注目どころは勝ち負け云々よりもなんといってもCanal Turnへの挑戦と目されていた。ブックメーカーでは"The Rainbow Hunter Betting"と称し、同馬がCanal Turnを越えられるかというしょーもないBettingを行っていた。それくらい愛されていた馬ということだろう。結果は是非皆様の目で見届けて欲しい。レース映像へのリンクは上のMany Cloudsのところにある。ここでは残念な結果におわった2013のものを張っておく。
色々と明るい話題も悲しい話題も書いたが、いずれにせよeventfulな一年であったことは間違いない。来る馬もいれば去る馬もいる。来る人もいれば去る人もいる。これを繰り返しているのが競馬であり、出会いと別れをのサイクルの中で新たな出会いに期待し、競馬全体の発展を願うのが競馬の面白さなのだろう。来年はどのような年になるのだろうか。一頭でも多く素晴らしい馬にめぐり合い、一頭でも悲しい事故が少なくなり、そして願わくば世界的な競馬産業全体の振興の年になってもらいたいものだ。