にげうまメモ

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16/04/23 National Hunt Racing

*Sandown Good (Good to Soft in Places)

英国障害競馬における15/16シーズン最後の開催。W. Mullins師とP. Nicholls師のトップトレーナー争いが僅差になっており、話題になっていた。いずれの調教師も各レースに多数の有力馬を参戦させており、トップトレーナーの座に対する執念が感じられた。

 

bet365 Juvenile Handicap Hurdle (C2) 1m7f216y

そのW. Mullins師の管理するVoix Du ReveとP. Nicholls師の管理するTommy Silverが人気になっていたレース。第一障害の前になにかアクシデントがあったのかAshokaが早々に競争中止。逃げるのは例によってBig Mcintosh。好位からDarebin、Nabhan、Doubly Clever。Tommy Silver、Voix Du Reve、Wolf Windleshamなどは後方から。残り4障害からBig Mcintoshのリードはなくなり、同馬は後退。Tommy Silverが内から抜け出しを図るが、これをWolf of Windleshamが一気に外から交わす。そのまま真ん中から差し込んできたVoix Du Reveの追撃を抑えきり勝利。

Wolf of WindleshamはJCB Triumph Hurdle Trial (G2)の勝ち馬。1月のCheltenhamでは極端な重馬場に泣かされたものの、3月に平地を勝ってここに挑んできた。ただしむしろ評価したいのが2着のVoix Du Reve。勝ち馬とは半馬身差とほぼ差はなく、斤量も4st余計に背負っていた。やや勝負所で置かれる加速力の問題でおいていかれた感もあるが、どちらかというとこちらを上に取ったほうが良いだろう。

 

bet365 Oaksey Chase (G2) 2m6f164y

三連覇を狙うMenorahが出ていたレース。

逃げるのはThird Intention。これを追うのがRocky Creek。三番手集団からMenorah、Valseur Lido。後方からSaphir Du Rheu、Ballycasey、Wonderful Charm。Rocky Creekは残り4障害辺りから遅れる。代わって先頭に立つのがMenorah、Valseur Lido。Valseur Lidoの追撃をMenorahが1馬身ほど凌ぎきって勝利した。離れた3着には盛り返してきたRocky Creek。

Menorahはこのレース3連覇。どうやら特殊な障害配置のあるSandown競馬場と春の季節が良いようだ。5stのハンデ差があるValseur Lidoを抑えきったことは評価してよいだろうが、如何せん好走には条件の付く馬なのでその辺りが問題だろう。どうせなので海外遠征して欲しいところだが。Novice G1勝ちのあるValseur Lidoは惜しい2着。やや飛越にスムーズさを欠くところがあり、その辺りが課題だろう。Third Intentionは左に斜飛する悪癖が目立った。Grand Nationalからの参戦組はさすがに厳しかった模様。

 

bet365 Celebration Chase (G1) 1m7f199y

連覇を狙うSpecial Tiaraが回避したが、QMCCの勝ち馬が3頭も出ていた豪華なレース。

逃げるのはUn De Sceuaxかと思いきや、Sire De Grugyが内から絡んでいく。これを追うのがUlck Du Lin、Sprinter Sacre。Dodging BulletsとSolar Impulseは早々に遅れる。Un De Sceauxは飛越にスムーズさを欠き、途中で踏み切りが極端に遠い飛越を見せるなどややリズムを崩す。ペースはSandown競馬場らしくミドルペースで進行。Railway Fenceを越え、Pond FenceでUn De Sceauxが大きなミス。ここで一気にSprinter Sacreが先頭に立つと、そのまま後続を突き放す一方で15馬身差の圧勝。2着にはUn De Sceauxが入った。3着には追い上げたDodging Bullets。Sire De Grugyは途中から手ごたえが怪しくなり、最後は一杯になって大敗。

Sprinter Sacreはこれで今シーズン負けなし。昨シーズンこそ心房細動の影響か全盛期のパフォーマンスを取り戻せずにいたが、今シーズンはShloer Chase (G2)の圧勝を皮切りにこれで4連勝。特にSpecial Tiaraの作り出したハイペースを追走し、後続を抑えきったQMCC (G1)は非常に強い競馬であった。ここでもその加速力と卓越したトップスピード、素晴らしい飛越能力を遺憾なく見せ付けた。これこそ歴史に残る短距離Chaseにおける名馬のパフォーマンスである。

Un De SceauxはP Townend騎手を鞍上に迎えてのレースであったが、やや鞍上とは息が合わずにSprinter Sacreには完敗の内容。ピッチ走法で小脚を使って踏み切りをあわせる馬で、前脚で踏ん張る筋肉がやや弱いため着地に少々難がある。今回は鞍上と息が合わず、飛越が終始安定していなかった。特に踏み切りが遠くなったミスは致命的だろう。ただし、トップスピードと加速力ではSprinter Sacreに敵わないことはQMCCではっきりしており、かつRuby WalshにはDouvanというお手馬もいる。やや来シーズンに関しては不安の残る内容となってしまった。

Dodging Bulletsは結局昨シーズンの力を取り戻せず。今回も後方からの競馬で前の馬とはかなり差があるだろう。Sire De Grugyはかなり無理をして追走したが、最後は脚が上がって大敗。現状ではやや短距離Chaseの一流どころとはスピード能力の点で見劣ることは否めないだろう。

 

bet365 Gold Cup Chase (G3) 3m4f166y

第一障害からいきなりBishops Roadが落馬する事象。Drop Out Joe、Saint Are、Dynaste、The Young Masterなどが前に行く展開。中段からSauthfield Theatre、Sausalito Sunrise、Just A Par、Theatre Guideなど。後方からSir Des Champs、The Druids Nephewなど。ペースはSaint Areが握ったためさほど上がらず、淡々と進行。Railway Fenceはゆっくり飛び、Pond Fenceから一気にペースが上がるいつもの展開。その中から抜け出してきたThe Young Masterが昨年の勝ち馬Just A Parの追撃を振り切って勝利。3着にはSausalito Sunriseが入った。

The Young Masterは昨シーズンの上がり馬。今シーズンはやや調子を落としていたが、前走Hurdleを使ったのが馬にとって良い刺激になったかもしれない。超長距離のスローペースからの持久力争いという典型的な超長距離ハンデ戦のレースであるが、ややスピード能力に見劣る同馬のよさを存分に活かしきった競馬であった。Just A Parは最後よく追い詰めるも2着まで。おそらくSandown競馬場が合うのだろう。Sausalito Sunriseは11st12lbのトップハンデを背負いながら僅差まで頑張った。このペースであればこの馬にはチャンスがあるということだろう。やや気になったのがSir Des Champs。Grand Nationalを使ってきた馬だが、The Chairで飛越拒否した形での落馬。今回もやや飛越を躊躇いながら跳んでいるように見えた。元々は非常に能力の高い馬だけに、やや心配な負け方であった。

なおこのレースの結果でP. Nicholls師がトップトレーナーの座に輝くことが決定した模様。