にげうまメモ

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17/10/08 Czech Racing - Velká Pardubická - / Crystal Cup Result

*Pardubice 4.0 (pružná)

当日の中継のオンデマンド配信はこちらから。

 

127. Velká pardubická s Českou pojišťovnou

Steeplechase crosscountry L - 6900 m, cena, 6letí a starší 5.000.000 Kč

同日のメインレース。ひとしきり雨が降り続いていたようで、馬場は珍しく重くなっていた。最終レースということでかなり掘れている部分もあり、見た目通りに厳しいコースとなっていた。なおNikasに騎乗する予定だったLukáš Matuskýは第4レースでの落馬のためPetr Tůmaに乗り替わり。また、フランスから参戦したVirtus d'Estruavalに騎乗する予定であったJan Faltejsekは背中の痛みのため騎乗を取りやめ、Virtus d'Estruvalはそのままスクラッチとしたようだ。人気は昨年の勝ち馬Charme Lookから。続いてZarif、No Time To Lose。フランスからはSonge d'Estruval、Urgent de Gragaineが参戦。レースは5:39くらいから。

Universe of Gracie、Bridgeur、Song d'Estruval、Templář辺りが出てくる展開。さらにKasim、Charme Look。TaxisにてTemplářとParetoの2頭が落馬。Irish BankではSonge d'Estruvalが落馬。この辺りでIrish Bankにて素晴らしい飛越を見せたBridgeurの単騎逃げの格好になる。好位からUniverse of Gracie、Ter Mill、Urgent De Gragaine。続いてCharme Look、Power Zar、No Time To Loseなど。Nikas、Zarif、Delight My Fireは後方から。そのままBridgeurはマイペースで引っ張り、隊列はかなり長くなる。Velký vodní příkopからUrgent De GragaineがBridgeurに代わって先頭に。これについていくのがCharme Look、Bridgeur、Ange Guardian。Universe of Gracie、Ter Millは遅れる。やや離れてNo Time To Lose、Delight My Fire、Zarifと続く。Suchý příkopにてDelight My Fireがミスをするも立て直す。Urgent de Gragaineは軽快に逃げ、これに唯一ついていくのはAnge Guardianだが、Havlův skokにてミス。一旦は後続に決定的なリードをつけたUrgent de Gragaineだが、最終障害を越えて迫ったNo Time To Loseが1馬身ほどUrgent de Gragaineを交わしたところがゴール。3着にはDelight My Fire。遅れてZarif、Ange Guardian。Universe of Gracie、Bridgeur、Kasimまで完走したようだ。Charme LookはSteeplechase Courseに入る辺りで大きく遅れPU。

去年から斤量が2kg増になった同レースであり、昨年はそのためか慎重なレースになったのだが、今年はBridgeurの存在によってペースが流れ、結果的には非常に厳しいレースとなった。No Time To Loseは遡ればイギリスの平地を走っていた馬なのだが、2013年からチェコに移籍、少しずつ力をつけ昨年のCena Vltavy (Stcc NL)を勝利と出世街道に乗っていた。今シーズンはkvalifikaceを走り、2戦とも後ろから足を伸ばすも惜しい2着。Pardubiceの障害にも慣れ、かつ地面を強力に掴むような走りは重馬場巧者そのものの走りである。中段からレースを進める馬だけに、今後飛越に際して不利を受ける可能性こそあるのだが、それでも今回激しいペースの中でただ一頭見せたロングスパートは強力な武器となるだろう。

なお、イギリス時代の調教師はかつての管理馬がチェコ最高峰のレースを制したことを聞かれ、なにやら開き直っていた模様だが、管理するのはチェコの伝説Josef Váňaである。潔く負けを認めるべき。

フランスからの参戦馬Urgent de GragaineはVirtus d'Estruvalと比べるとあまり評価されていなかったようだが、途中から先頭を奪い、あわやのシーンまで作り出す素晴らしいレースを見せた。小型の馬でCheltehamの定量戦は避けたという事情があるのだが、初のPardubiceのコースにも関わらず地元馬顔負けの飛越を繰り出す高い技術は、さすがはフランスのベテラン障害馬というところだろう。飛越にはほぼミスはなく、Felix de Gilesとの呼吸も合っていた。Cheltenhamで器用な飛越を見せたレースを想起させる。なんでも途中から行きたがったとは鞍上の弁だが、今後もInternational Cross Country Horseとしての活躍が期待される。またCheltenhamに来ないだろうか。

唯一の牝馬Delight My Fireは3着に健闘した。本来テンポの速い飛越を生かしたレースが持ち味の馬なのだが、今回はそもそもペースが速くなった上に馬場も悪化し、この馬にとっては持ち味を出し切るレースとはならなかった。出来れば良馬場で、かつスローの中を前々からロングスパートをかける展開が理想だろう。それでも何度かミスがありながらも3着まで浮上した能力は侮れない。古豪Zarifは後方から少しずつ進出し、結果的には4着まで食い込んだ。これがこの馬の形であり、今回も安定したレースを見せたのだが、どうもここで勝ち切るには少々足りない。完全に脚が上がったAnge Guardianを交わしたという印象もある。

昨年の2着馬Ange Guardianは状態が戻っていたのだろうか。Urgent de Gragaineに真っ向勝負を挑んで、最後は脚が上がっての5着。結果的にバテはしたが、昨年Charme Lookを気分よく行かせた反省を生かしたレース。このようにリスクを背負ったレースをしないと勝ちに至ることは出来ない。Universe of GracieはやはりIrish Bankで遅れた。今年もTaxisを最初に飛越しphotogenicなレースをしたのだが。気性的なものなのか、どこかズルい部分があるかもしれない。ここ数年のTaxisの写真では必ずこの馬がとても目立っている。前半までペースを作ったBridgeurはこれでいいだろう。そもそもある程度リスクを背負って前に行くことで結果を残してきた馬であり、同様のレースをしたここでも途中までは見せ場を作った。最後は完全に脚が上がったが、これは重馬場の分かもしれない。いずれにせよ、今後展開を引っ掻き回す可能性がある馬として要注意だろう。古豪KasimはそのBridgeurから9秒近く遅れての入線。さすがにこの馬場とペース、距離はこの馬にとっては苦しかった。特に賞金が出るわけでもなし、なぜ完走させたのかよくわからないが。

以下競争中止した馬。昨年の勝ち馬Charme Lookは自分の形を作れず。それでも途中までは抵抗したが、さすがに苦しくなった。馬場、ペースともにこの馬には不利な条件であり、途中行きたがるところも見られた。いずれにせよ、これにはMarek Stromskýにどうこうというのは無理だろう。葦毛のTer Millはワンペース型の馬だが、今回はこの馬にとってのオーバーペース。これでは何もできない。Power Zarは案外。おそらくSteeplechaseの辺りで大きなミスをしており、そのまま棄権したのではと思われる。Nikasはさすがに年な印象。Templářは映像を見ると明らかにTaxisでの飛越の距離が足りていない。これでは落ちるのも仕方がない。Val De Guyeは途中まで馬群に食らいついたのを褒めるべき。Songe d'EstruvalはIrish Bankの上りで躓いて騎手が落馬した模様。Irish Bankは上りを斜面と水平に胴を保ちつつ一気に頂上に足をかけ、そのまま重心を低く落としたまま降りるという動作が必要なのだが、さすがにあれはハイテンションで突っ込みすぎだろう。