にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

18/12/08 National Hunt Racing

*Aintree Soft

Becher Handicap Chase (G3) (National) 3m1f188y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2018-12-08/aintree/501741/becher-handicap-chase-grade-3-national-course

散々スタートを失敗してからのStanding Start。ここからCall It Magic、Present Manなどが出てくる展開。Missed Approach、Ballyopticが出遅れる。前半は早々にFine Theatreが落馬する以外は大きなアクシデントなく進行。The ChairにてCall It Magicが斜飛した影響でHighland Lodgeが落馬。この辺りからMissed Approachが追い上げてきてCall It Magicと2頭で後続を引き離して逃げる格好となる。Missed Approachは2周目の後半からCall It Magicから遅れはじめ、一旦はCall It Magicが後続に大差をつける展開に。しかし最終障害で迫ったWalk In The MillがCall It Magicを捉えると、そのまま後続を突き放して勝利した。2着にはVieux Lion Rouge。Ultragold、Call It Magicと続いた。

Call It Magicはアイルランドから参戦してきた馬だが、さほど積極的に逃げるタイプでもなく、前半はだいぶ慎重なレース運びとなったようだ。一方で出遅れたMissed Approachはイギリスの超長距離戦で実績のあるスタミナ自慢の馬で、前々で運んでこそ力を発揮する。Missed Approachは出遅れた上にそのままの勢いで進出を開始したことにより、この馬が前に出て行った2周目あたりからはペースが上がる結果となった。結果として、隊列は長くなり、前々で淡々とレースを進行したかったPresent Manなどは早々に後れを取っている。Walk In The Millは重賞初勝利。クラス2~3辺りのハンデ戦の常連であり、C1ではどうにも厳しかったのだが、今回は10st3lbの軽量も生かして勝ち切ることが出来た。初のNational Fenceであったようで、若干飛越に戸惑う場面はあったが、あくまで許容範囲だろう。レーティング的にどこまでつくのかは不明だが、距離が延びることにもさほど不安はないだろう。Grand Nationalに向けて楽しみになる勝利であった。National Specialistで連覇を狙ったVieux Lion Rougeは追い上げて2着。一時は絶望的な位置まで下がっていたのだが、この距離であればしぶとく脚を伸ばすことが出来る。苦しくなった他馬とは対照的に、最後まで勝ち馬を追いかけることが出来ていた。ただしGrand Nationalは若干距離が長い感もあるだけに、やはりここで勝ち切りたかったという部分はあるだろう。

Topham Chase (G3)を連覇しているUltragoldは3着まで。National Fenceでは初めて距離を伸ばした形となるが、さすがにNational Specialistとして見せ場を作った。Grand Nationalで見たい感もあるが、距離の壁は大きいためColin Tizzard師がどのような判断をするのか。Call It Magicはさすがに最後はしんどくなっての4着。Nationalは初めてであったようだが、Missed Approachが絡んできたことでペースがあがり、かえって飛越にリズムを作り出すことができたかもしれない。人気を背負っていたBlaklionは途中でアブミを落とす場面があったようだが、それにしても走らなすぎの感もある。Highland RodgeはCall It Magicのミスによる落馬。レース前放馬する場面があったが、放馬による影響ではないだろう。

 

Many Clouds Chase (G2) 3m210y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2018-12-08/aintree/503353/betway-many-clouds-chase-grade-2

第3障害で早々にOne For Arthurが落馬。淡々と逃げたDefinitly Redがそのまま押し切り勝利した。2着にはDouble Shuffle。

Definitly RedはこれでCharlie Hall Chase (G2)から連勝とした。G2クラスの淡々としたレースを前で運んでそのまま押し切るというのがこの馬の最近の勝ちパターンとなっており、今回もその形を踏襲したものとなる。この後はGold Cupに直接向かうとの話で、24f路線にはNative RiverやMight Biteなど同型は多いものの、今年の6着よりも上に来ることが出来るのか、楽しみな存在となるだろう。Double Shuffleはこの馬のレースはした。One For Arthurは踏み切り位置を間違えたもので単なる凡ミスだろう。

 

*Sandown Soft

Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f119y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2018-12-08/sandown/503365/randoxhealthcom-henry-viii-novices-chase-grade-1

Diakaliが逃げると思いきやこれを制してOrnuaがハナに。これを追いかけてHighway One O One、Dynamite Dollars。Lalorはその後ろから。Diakaliは早々に手ごたえが悪くなり後退。Dynamite Dollarsが逃げるOrnuaを追いかけると、最終障害を越えてこれをねじ伏せて勝利した。Lalorは3着。

Dynamite DollarsはこれでChaseは3戦2勝とした。前走のArkle Trophy Trial (G2)はLalorの2着に敗れていたが、その借りを返した格好となる。ここまで目立った実績のない馬ではあったが、明らかに良馬場から重馬場への変更がプラスに出た格好だろう。5歳とフレッシュな馬であることも今後が楽しみになる材料。アイルランドのOrnuaは人気がなかったが見せ場を作った。Irish EBF Novice Chase (G3)を勝利しており、Chaseはすでに7戦目と経験がある馬で、飛越技術に関してはここでは一枚上のものを持っていた。ただしこの馬がアイルランドで戦ってきたメンバーはさほど強力でもないことはすでに判明しており、この路線に関しては例年通りアイルランド勢が大きな脅威となるだろう。Lalorは案外であったが、どうにも反応が鈍く、重馬場自体がいまいちよくないのだろう。能力は高い馬だけにある程度誤魔化しも効くようだが、やはり良馬場で見てみたい馬である。

 

Tingle Creek Chase (G1) 1m7f119y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2018-12-08/sandown/503367/betfair-tingle-creek-chase-grade-1

https://www.youtube.com/watch?v=XEay7i0Uhuo

登録段階ではアイルランドの暴走馬Great Fieldや、いつぞやのQueen Mother Champion Chaseの勝ち馬Special Tiaraなどもいたのだが、出走表明したのは4頭となった。しかし障害は15戦無敗、うちG1を6勝しているAltior、G1を9勝しているアイルランドの古豪Un De Sceaux、昨シーズンのHenry VIII Novices' Chase (G1)を勝利した上り馬Sceau Royal、前走Popular Square Chase (G3)を勝利し、なぜか陣営が超強気であったSaint Calvadosと、メンバーとしてはかなり豪華な顔ぶれとなった。

レースはSaint Calvadosが逃げる格好。Un De Sceaux、Altiorがその後ろから。Sceau Royalは例によって後方に構える。Railway Fenceの辺りからUn De Sceauxが前に出ると、そのままペースを上げて後続を突き放しにかかる。しかしこれにぴったりとついて行ったAltiorが最終障害を越えてUn De Sceauxを突き放して勝利した。Saint Calvados、Sceau Royalは大きく遅れた。

Saint Calvadosはフランス型の飛越を見せるタイプで、とびぬけて早い馬ではないのだが、Petit Mouchoirが執拗にハナを主張したArkle Trophy (G1)ではこれにムキになって絡んでいき、結果的に大失速しているという経歴がある。一方のUn De Sceauxは最初からよりペースを上げようと思えば上げることもできたのだが、Saint Calvadosに絡まれるとオーバーペースとなる懸念がある上にハイペースとなるとAltiorにとっては格好の標的となる可能性があった。さらに、Un De Sceauxはここのところ同厩舎のMinやDouvanとの兼ね合いの影響で20fを使っており、以前とは異なり前半から飛ばしていかなくてもレースができるという特徴を持っていた。そのため、前半はある程度Saint Calvadosに好きに走らせておき、Un De Sceauxの最大の特徴である早いテンポの飛越の持続力を最大限に生かして、後半からロングスパートをかけることでAltiorとの真っ向勝負に挑んだ、というのがRuby Walshの作戦であったと考えられる。Altiorに関してはこれで障害は16戦無敗とした。エンジンが瞬時にかかるタイプではなく、この辺りは同厩舎の伝説Sprinter Sacreとの大きな違いなのだが、その伸びのあるしなやかな肢体を生かした大きな飛越と、それをフルに稼働させる搭載したエンジン性能は歴代の障害馬の中でもトップクラスのものである。どちらかというとロングスパートをかけることで良さを発揮する馬だけに、元来厳しいペースとなる16fへの適性はもちろん、距離を伸ばすことも選択肢の一つとなり得るのだが、陣営がどのような選択をするのかは今後要注目といったところだろう。

Un De Sceauxは上述の通り、この馬の能力はフルに出し切るレースをした。SandownはRailway Fence、Pon Fenceと一旦減速がかかりやすいコース設定であるが、ピッチ走法で加速するこの馬にとってはAltiorに対して与しやすい条件であった。よりロングスパート能力が要求されるCheltenhamに代わって良いようには思えないが、やはりこの馬のスピードは16fでこそ見てみたい。Sceau Royalは最後脚が完全に上がっての敗戦。これは前の2頭を追いかけた結果だろう。Saint Calvadosは途中から前について行く余力はなかったようだが、ひとまずこの馬のレースはした。

 

*Navan Yielding

Irish Stallion Farms EBF Davis Novice Chase (G3) 2m1f

http://www.attheraces.com/racecard/Navan/8-December-2018/1335/

Dr Mikeyが逃げるかと思いきやUs And Themが逃げる展開。Ben Dundeeが途中から絡んでくるも、Us And Themがこれを一旦は振り切る。しかし残り2障害から前に出たHardlineがそのままUs And Themを振り切り勝利した。

HardlineはこれでChaseは3戦2勝とした。HurdleではNoviceクラスで重賞を勝っている馬で、もともと持っている能力はかなり高いようだが、ここではUs And Themがある程度注文を付けて引っ張る中、これをスムーズに追走して足を伸ばしたパフォーマンスは評価していいだろう。Hurdle時代にはさっぱり歯が立たなかったMengli Khan相手に走るのが楽しみである。Us And Themは道中の飛越はよかったのだが、勝負所の加速力で勝ち馬とはだいぶ離されてしまった。この辺りはもともとのスピード能力の違いだろう。