にげうまメモ

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22/01/23 Weekly National Hunt / Jump racing

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*週刊障害競馬回顧 2022/01/17-2022/01/23

1/22(土)

Ascot (UK) Soft (Good to Soft in places)

SBK Mares' Hurdle (G2) 2m7f118y (Replay)

1. Molly Olly Wishes J: Harry Skelton T: Dan Skelton

Western Victoryが元気一杯飛ばす展開も、最終コーナーに入るところで一杯に。代わって先頭に立ったMolly Olly Wishesがじわじわと差を詰めてきたMy Sister Sarahを抑えて勝利した。Molly Olly Wishesはこれで重賞は3勝目。昨年のWarwick Mares' Hurdle (Listed)ではフランスのPaul's Sagaを抑えて勝利を上げていたが、どうにも牡馬相手だと苦しいようで、Coral Hurdle (G2)ではBuzzから28馬身離れた最下位に終わっていた。牝馬相手では距離問わず力量上位のようで、おそらくCheltenhamでもMares' Hurdle (G1)に行くことになると思われる。アイルランドのMy Sister Sarahはどうにも道中反応が悪いところを見せており、距離的にはこのくらいあった方がいいのだろう。Western Victoryはアイルランドで重賞勝ちのある馬だが、今回はややオーバーペース気味の逃げで、早々に捕まり離れた4着に終わった。

 

Clarence House Chase (G1) 2m167y (Replay)

1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

2. Energumene J: Paul Townend T: Willie Mullins

無敗のShishkinとEnergumeneの対決ということで注目が集まっていた。明らかに入着賞金獲得のために出てきた格下のAmoola Goldを除くと、この2頭の他には連覇を目指したFirst Flowのみということで実質3頭立てのレースになっていた。レースは前半からEnergumeneが決め打ちして出ていく展開で、First Flowはこれに対して競りかけず。ぴったりとマークするようにShishkin。勝負所から脱落したFirst Flowを尻目にEnergumeneが逃げ込みを図るが、最終障害から再度加速したShishkinがEnergumeneをゴール前で捉えて勝利した。離れた3着にFirst Flowが入った。

強すぎる馬というのは往々にしてその性質がよくわからないのだが、この強すぎる2頭が同時に走ったことで各々の性質が良く出るレースとなった。ShishkinはこれでChaseは7戦7勝。Hurdle初戦で一度落馬していることを除けば、"Under rules"では10戦10勝とした。全体的に飛越は障害に近すぎる面が残っており、第8障害でミスもあるのだが、それでも加速を掛けてからストライドを伸ばして延々と加速し続けられる強力なロングスパート性能が特徴的であり、ここまで加速力とスピード能力の違いで余裕綽々で勝ち切るこの馬のレースと違って、この馬の高いロングスパート能力を示す結果となった。最終コーナーの時点でまだエンジンをかけ切っていないEnergumeneと異なり、この馬は既に加速を掛けているのだが、そこからAscotの坂を登って最後までスプリントを維持する持久力は恐るべきものがある。

対するEnergumeneはChase6戦目で初の敗戦となった。道中の飛越のスムーズさはShishkinを上回っており、おそらく道中の航行能力という点ではShishkinを上回るのだろう。最終コーナーの時点でもまだ加速を掛け切っていないのだが、Ascotの坂を駆け上がるShishkinの加速に最後は屈することとなった。とはいえこの馬の16ハロンにおける航行能力の高さは驚異的なものであり、おそらく今後もこのスピードを武器とすることが想定される。Ascotは向こう正面に難易度の高いOpen Ditchが存在し、かつ最後の直線に厳しい上り坂が待ち受けているタフなコースだが、これに対してCheltenhamは大きな起伏が存在し、特に最終コーナー手前の下り坂での加速が非常に重要となる。この持っている武器の違う2頭がAscotとはまるで性質の異なるCheltenhamにおいてどのようなレースを見せてくれるのか、今から楽しみにしたいところである。

 

Haydock (UK) Soft (Heavy in places)

Patrick Coyne Memorial Altcar Novices' Chase (G2) 2m3f203y (Replay)

1. Minella Drama J: Brian Hughes T: Donald McCain Jr

好位の外から抜け出したMinella DramaがHardy Du Seuilに9馬身差をつけて勝利した。Minella Dramaは昨シーズンのMersey Novices' Hurdle (G1)の2着馬で、Chaseはこれで2勝目とした。ひとまずHenry VIII Novices' Chase (G1)で大敗したところから巻き返したことになるが、どうにも行きたがったりと乗り難しいところがあるようで、Brian Hughes騎手が意図的にか馬群から離して騎乗するところが印象的であった。抜け出す際のスピードはここでは上であり、運動能力の面で格上だったということはあるが、おそらくレース運びの面でやや課題が残るといったところだろう。

 

Supreme Trial Novices' Hurdle (G2) 1m7f144y (Replay)

1. Jonbon J: Aidan Coleman T: Nicky Henderson

人気を背負ったJonbonが勝負所から前に接近すると、Richmond Lake、Might Iなどを抑えて勝利した。JonbonはこれでHurdleは3戦3勝とした。AscotのHowden Kennel Gate Novices' Hurdle (G2)では楽勝の内容であったが、今回はそれなりのペースで流れたにもやや苦労したという印象で、一頭だけ11st11lbを背負っていたこと、勝負所でDonny Boyが飛越直後に前に来たということもあるのだが、格下相手のレースとしてそこまで高く評価できるものではないだろう。どうにも行きたがって走る面もあるようで、汗をかいていたことも懸念材料で、アイルランドにも強力なメンバーが控えている以上、高く事前評価されるようであれば少々疑ってかかった方がいいかもしれない。

 

The New One Hurdle (G2) 1m7f144y (Replay)

1. Tommy's Oscar J: Danny McMenamin T: Mrs Ann hamilton

Navajo PassとGlobal Citizenが暴走気味に逃げる展開も、これを好位でのんびりと追いかけたTommy's Oscarが抵抗するGlobal Citizenを抑えて勝利した。Tommy's Oscarはこれで4連勝。重賞は初勝利とした。スタートの時点でかなり難しい仕草を見せていたNavajo Passを強引に出して行ったことで加速がつきすぎて暴走気味になった先頭集団に対して、一頭余裕でこのペースを追いかけていたパフォーマンスはここでは力の違いを感じさせるものであったが、メンバー的にここからG1クラスでどうこうという馬はいないことを考えると、おそらくChampion Hurdle (G1)に向けては大きなステップアップが要求されることが想定される。10歳馬Global Citizenは久しぶりの好走だが、かえってNavajo Passの暴走に付き合ったことが良かったのだろうか。Wind Surgeryが奏功したのであればよいのだが。12歳馬Hunters Callは人気の一角になっていたが、さすがにこのペースを追走するのは苦しかったようで、離れた3着に終わった。

 

Peter Marsh Handicap Chase (G2) 3m1f125y (Replay)

1. Royale Pagaille J: Charlie Deutsch T: Miss Venetia Williams

後方から進めたRoyale Pagailleがじわじわと位置を上げると、最終障害を越えてSam Brownとの叩き合いを制して勝利した。Royale Pagailleはこのレースは連覇とした。11st10lbとここでは抜けたトップハンデを背負っており、10st8lbのSam Brownと比べるとかなり厳し条件であった。昨年はCheltenham Gold Cup (G1)、Betfair Chase (G1)といずれも勝負に加われずに終わっているが、どうやらまたもやCheltenham Gold Cup (G1)を目指すようだ。Heavyクラスの重い馬場になれば浮上する可能性はあるのだが、レース運びを見る限りG1で好走するタイプというよりはスピードの持続性能で勝負するハンデ戦向きのタイプのような印象もある。昨年この開催でAltcar Novices' Chase (G2)を制したSam Brownが2着で、おそらくHaydockは得意とするのだろう。

 

Taunton (UK) Good to Soft

〇 Portman Cup Chase (C2) 3m4f85y (Replay)

1. Yala Enki J: Bryony Frost T: Paul Nicholls

すっかりこの時期の名物レースとなった競走で、例によって元気一杯引っ張ったYala EnkiがFull Back以下を抑えて勝利した。Yala Enkiはこれでこのレースは3連覇。12歳となった今年も元気なようで、やはりこの馬のペースで走ることができたときのしぶとさという意味では素晴らしいものを持っている。National Courseは2度挑戦して2回とも落馬に終わっているが、ここでの飛越は終始綺麗なものを見せていた。7歳とこの中では最年少のFull Backが2着。Elegant Escapeは久しぶりに格好をつける3着で、少しでも往年の実力が戻っていると思いたい。

 

1/23(日)

Lingfield (UK) Heavy (Soft in places)

〇 Fleur De Lys Chase (C2) 2m6f10y (Replay)

1. Two For Gold J: David Bass T: Kim Bailey

"Winter Million Festival"として今年から始まったLingfieldの開催。障害だけではなくAW競走も混じっている開催だが、3日間で100万ポンドの賞金が提供される。このFleur De Lys ChaseはClass2だが、1着賞金は£78,045であり、前日のClarence House Chase (G1)の1着賞金が£85,425、TauntonのPortman Cup Chaseの1着賞金が£26,015であることを考えるとかなりの高額賞金が用意されていると言えるだろう。レースはLieutenant Rocco、Dashel Drasherが逃げるも、そのDashel Drasher、Bristol De Mai、さらにTwo For Goldの3頭の叩き合いに。ここから最後頭を出したTwo For Goldが勝利した。

Two For Goldは前走のDoncasterのC2から連勝とした。基本的にListed以上ではやや力不足で、C2ならではといった力量の馬だが、今シーズンは調子がいいようでGrand National (G3)という選択肢もあるのかもしれない。昨年のAscot Chase (G1)の勝ち馬Dashel Drasherは見せ場を作っての2着で、11st6lbと勝ち馬とは6lbの差があったことを考えると実質的には勝利と考えてもおかしくないだろう。距離はもう少しあってもいいかもしれない。古豪Bristol De Maiは惜しい3着だが、スタート直後から押していく仕草を見せながらもハナに行くことが出来なかったように、さすがにかなりスピード能力の面で衰えがありそうだ。Heavyと馬場もこの馬向きであり、ほぼ定量戦とかなり恵まれた条件だったのだが、やはり11歳と言う年齢を感じさせるレースであった。Itchy Feetは例によってズブいところを見せて4着。Master Tommytuckerはじわじわと進出したが残り3障害で落馬。映像からわかるようにかなりの重傷で残念ながら助からなかったそうだ。

 

Thurles (IRE) Good to Yielding (Good in places)

Coolmore N.H. Sires Mogul Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m4f63y (Replay)

1. Ballyshannon Rose J: Jack Kennedy T: Paul Fahey

好位から進めたBallyshannon RoseがJeremys Flameとの叩き合いを制して勝利した。Ballyshannon RoseはChaseはこれで2勝目とした。前走はFlorida Pearl Novice Chase (G2)の参戦するも最終障害で落馬に終わっていた。Hurdleでは不良馬場の24f戦で活躍してきた馬のようだが、とりあえず良馬場でも結果を残したことは好材料だろう。おそらく馬場云々というよりはある程度ゆったりとしたペースで進めた方が良いタイプだと思われ、今後は距離を延長してくることが想定される。この路線の常連のJeremys Flameは惜しい2着に入った。Mares Novice Chaseでは安定した成績を残しており、またどこかでチャンスはあるだろう。

 

Horse & Jockey Hotel Chase (G2) 2m4f63y (Replay)

1. Allaho J: Paul Townend T: Willie Mullins

ゆるゆると逃げたAllahoがそのまま勝利した。Allahoは昨シーズンのRyanair Chase (G1)の勝ち馬で、このレースはこれで連覇とした。John Durkan Memorial Chase (G1)ではややオーバーペース気味に飛ばすもJanidilを抑えて勝利しており、おそらく本番でも似たような戦術を取ることが想定される。Paul Townendとは久々のコンビだったせいかいまいちリズムが合わないところが目立ったが、後半はスムーズに走ることが出来ていた。昨シーズンはRachael Blackmoreとのコンビで、Cheltenhamでどのようなペースで走るかは気を付けておきたい。Fakir D'Oudariesが2着に入った、やはりAllaho相手だと苦しいようだ。Notebookは距離を延長してきたが、本来20fよりは16gの方がよいのだろうという負け方。Battleoverdoyenは最終障害で落馬に終わったが、長い不調から脱するような気配もあり、元々の能力は高い馬だけになんとか頑張って欲しい。

 

Pisa (ITA) Tempo Coperto - Terreno Pesante

Gran Corsa Siepi Di Pisa Euro 30.000 TRIO 3500m

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi -  GRUPPO III  - FANTINI) (Replay)

1. Zanini J: Pavel Slozil T: Josef Vana Jr

Nic Mountainが後続を大きく引き離して逃げるも、勝負所から後続が殺到。ZaniniがDominiqueを凌いで勝利した。3着にはBig City。

Zaniniは前走のCorsa Siepi Di Treviso (Listed)から連勝とした。Gran Corsa Siepi Di Merano (G1)でもLive Your Lifeの2着に好走した実力馬で、昨年からSiepiに戻しているのだがおそらく小型の障害でスピードを生かした方がいいのだろう。4月のGran Corsa Siepi Di Milano (G1)の勝ち馬Dominiqueはここ2戦はいずれに落馬に終わっていたのだが、さすがにまともに走ればこれくらいはといったところ。現時点のイタリアSiepiにおいてZaniniはトップクラスに位置する馬で、おそらくDominiqueも同水準の実力を持っていると判断してよいだろう。地元のBig Cityは人気薄ながら3着に頑張った。

 

その他

The amazing story of Tipperary Tim and the Grand National's biggest ever upset (Mirror)

1928年のGrand Nationalを単勝100倍で制したTipperary Timに関する記事。