にげうまメモ

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16/03/17 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

*Cheltenham Good (Good to Soft in Places)

一旦書き上げたのが全部消えた。死にたい。なのでわけわからんハンデ戦などは飛ばして主なところだけ。気が向いたら残りも加筆する予定。

Cheltenham Festival3日目。St. Patricks Day。馬場は前日に比較して乾いてきたようにも見えるが、3日目からはNew Courseを使っているのでその分掘れていなかったのかもしれない。なおOld CourseとNew Courseの違いは見ていれば分かる... と思う。

 

JLT Novices' Chase (G1) 2m3f198y

昨年はVautourが圧勝したレース。今年はアイルランドのBlack Hercules、5歳馬で昨シーズンは4歳路線を無視して格上挑戦を続けていたBristol De Mai、そのBristol De Maiを何度も下してきた重賞勝ち馬Garde La Victoireが並んで1番人気と、混戦模様となっていた。レースはやや問題のあるスタートから始まる。Zabanaが横を向いているところでロープが上がり、Outlanderがこれに接触する形でZabanaの騎手が落馬、競争中止。Black HerculesとBristol De Maiが先頭を伺う展開も、途中からBristol De Maiが単騎逃げの格好になる。ペースはさほど緩めず、ミドルペースで淡々と引っ張る。好位からGarde La Victoire。中段から後方にかけてL'ami Serge、Three Musketeers、As De Mee、Mount Gunnery。Outlanderは後方から。Garde La Victoireはペースに戸惑ったのか、前脚を障害に引っ掛けるミスを連発し、徐々に位置を下げる。残り4障害でそのGarde La VictoireとOutlanderが落馬。残り3障害辺りから先頭に取り付いたL'ami Sergeが一気に抜け出すも、残り2障害で左に大きく斜飛。これでBlack Herculesは不利を受けてしまう。しかしここからWalsh騎手の豪腕に応え、Black Herculesが猛然と反撃。最後は抵抗するBristol De Maiを3馬身抑え勝利した。最後苦しくなったL'ami Sergeは3着。

Black Herculesはこれで落馬を除くとChase3戦3勝。いずれも重馬場での実績であり、それがやや嫌われていた格好であったが、見事な勝利を上げた。特にBristol De Maiのミドルペースを追走し、不利を立て直してからの加速力、そしてトップスピードは素晴らしいものがある。着差はわずかだが、それ以上の完勝と言っていいだろう。それなりにペースは流れており、レースレベルとしても高いものがある。来シーズンも楽しみな馬だろう。

一方のBristol De Mai。どちらかというとトップスピードというよりはスピードの持続力に優れたマラソンランナーであり、それが仇となってトップスピードに優れた馬にやられることが多かった。今回は自らペースを作り出しての2着。この馬の力は十分に出し切ったと考えてよいだろう。どちらかというと馬場が渋ったほうがよいと思われるが。3着のL'ami Sergeは昨シーズン短距離Novice Hurdleの英国代表と見られていた馬。ここでも力は見せたが、最後苦しくなっているようにやや使える脚は短いようだ。瞬間的なトップスピードは特筆するものがあるが、苦しくなったときに我慢が効かないという点は今後に向けたマイナス材料だろう。Garde La Victoireはペースに戸惑ったのか飛越をミスし、余力をなくしての落馬。どちらかというとスローの上がり勝負で勝利を掴んできた馬だけに、今回のペースはやや厳しかったのだろう。

 

Ryanair Chase (G1) 2m4f166y

Cheltenham Gold Cupの有力馬の一頭と目されていたVautourが参戦してきたことで話題になっていたレース。英国障害ファンの反応を見るに、あまり好意的に見られてはいなかったようだ。理由は単純。ケチ臭い。

さて、その出方が注目されたVautourだが、いつもの逃げの手とは打って変わって好位で我慢する戦法。代わりに逃げるのはVillage Vic。好位に構えるのはRoad To Riches、Al Ferof、Josses Hill、Annacotty。Smashingは好位から進めるも徐々に遅れPU。Dynaste、Gilgamboa、Taquin Du Seuilは例によって中段から。Champagne Westは追走に手間取り早々にPU。ペースはハンデ戦を連勝してきた馬らしく、さほどVillage Vicは激しく引っ張らず、むしろスローで進行。第13障害辺りからVautourが先頭に並びかけ、これを猛然とRoad To Richesが追いかける。しかしこの追撃を尻目に、トップスピードの違いで一気に突き放したVautourが6馬身差の圧勝。2着には後方から鋭く追い込んだValseur Lidoが入った。

Vautourは昨シーズンJLT Novices' Chase (G1)を圧勝してきた馬。雄大なストライドから繰り出される踏切の遠い飛越はスピードを殺さないという利点はあるものの、苦しくなった際に落馬のリスクを伴うものである。King George VI Chase (G1)ではスローにこだわるSilviniaco Contiを行かせ、自身は2周目からペースを握り、徐々にペースを上げていき逃げ込みを図るという完璧な騎乗。それでも最後はCue Cardの前に屈していた。このようにVautour自身24f戦にはやや不安があること、また馬主のRichi Ricci氏はGold CupにはDjakadamという有力馬を出走させることもあって、VautourはRyanair Chase (G1)を選択してきた。Vautour自身はこれに応える見事な走り。特に好位で折り合うレースができたことは、これまでスピードの違いで逃げていた同馬にとっては大きな収穫だろう。しかしレースとしてはあくまでスローの上がり勝負。24f戦に向けた不安が払拭されたとは言い難い。

2着のValseur LidoはGrowise Champion Novice Chase (G1)の勝ち馬。20fから24fまでこなせる馬だが、今シーズンは4戦して落馬が2回とやや冴えない成績であった。シーズン初戦のJohn Durkan Memorial Punchestown Chase (G1)ではDjakadamに完敗しているように、Heavyよりは良馬場の方が良い馬なのだろう。やや一線級とは差があるが、メンバー次第ではこの馬もG1を取れる馬であることは間違いない。何故かこっちに出てきたRoad To Richesは積極的な競馬を見せるも最後はトップスピードの違いで突き放され3着。どちらかというとスピードの持続力に優れたマラソンランナーであるだけに、ここまでの上がり勝負は厳しかった。とにかくこの馬は自身がペースを握ったほうが力を発揮できるだろう。昨シーズンCheltenham Gold CupでConeygreeの超ハイペースを追走し、3着に粘った実力は間違いないものがある。20f戦の常連Al Ferofは4着まで。King George VI Chase (G1)でもCue Cardの3着があるが、やはり一線級と比べるとやや格下感が否めない。

その他。一昨年のJLT Novices' Chase (G1)の勝ち馬Taquin Du Seuilは後方から追い上げるも6着。さすがに長期休養明け2戦目でここは厳しかった。Ryanair Chase (G1)の勝ち馬Dynasteは大敗。24f戦では詰めの甘さが残る馬だけに20f戦は期待していたが、全く見せ場を作れずに終わった。やや力落ちだろう。Josses Hillは飛越がスムーズではなく、ハイペースになったほうが力を発揮できる馬。このようなスローでは出番がない。下級条件から4連勝で挑んだVillage Vicは積極的な競馬をするも9着。さすがにハンデ戦G3とここではトップスピードが違う。Vibrato Valtatは残念な落馬。16f戦のスローの上がり勝負では無類の強さを発揮する馬だけに、ペースが落ち着きやすい20f戦でも期待していたのだが、残念な結果に終わった。この馬に関してはペースが落ち着きそうなメンバー次第でレースを選択した方がよいかもしれない。

 

World Hurdle (G1) 2m7f213y

英雄Big Buck'sの引退、More Of Thatの離脱もあり、長らく主役不在とされていた長距離Hurdle路線。前評判としてはDoom Bar Sefton Novices' Hurdle (G1)を制し、今シーズンに入ってからはLong Walk Hurdle (G1)を含む3連勝と波に乗っているThistlecrackが主役と目されていた。

レースは昨年の勝ち馬Cole Hardenが逃げる展開。スローから入り、徐々にペースを上げていくといったレース運び。Kilcooley、Saphir Du Rheu、Martello Tower、2013 Cheltenham Gold Cup (G1)の勝ち馬Bobs Worthなどが好位。Alpha Des Obeaux、Whisperなどと並び、人気のThistlecrackも中段につける。後方からAux Ptits Soins、At Fishers Cross、Lieutenant Colonelなど。おそらく逃げたかっただろうKnockara BeauはCole Hardenとは離して逃げる戦法を取るが、早々に後方に遅れる。Thistlecrackは飛越のたびに位置を上げ、気が付いたら好位まで進出。残り3障害で逃げるCole Hardenに並びかけると、残り2障害で先頭に。追ってきたAlpha Des Obeauxを7馬身突き放して快勝した。3着にはBobs Worth。

Thistlecrackは今シーズンに来てこれで破竹の4連勝。相手が重戦車Deputy Dan、Ascotで並ばれてから異様なまでの強さを発揮するReve De Sivolaだったりと、個人的には相手関係や馬場状態に恵まれた感が拭えなかったが、それを払拭する見事な走りを見せた。とにかくCole Hardenのペースを難なく追走するスピード、安定した飛越能力、そして馬場への適応能力とトップスピードの持続力は現役馬の中では卓越している。長らく主役不在となっていた長距離Hurdleにようやくチャンピオンホースが君臨したと言っても差し支えないだろう。

Alpha Des Obeauxはまたもや2着。まさにシルバーコレクターここにありといった感である。どうやら良くも悪くも相手なりに走ってしまう馬であり、これで人気するようであれば疑って掛かったほうがいいかもしれない。かつての長距離Chaseのチャンピオン、Bobs Worthは一旦は置いていかれるも最後盛り返し3着。やはりトップスピードといった点では全盛期のそれには見劣るものの、精神力、持久力は一流のものを持っている。Chaseではなかなか結果が出ていないが、なんとかこれが馬にとってよい刺激になってくれれば良いのだが。昨年の勝ち馬Cole Hardenは自分のレースをするも最後は脚が上がり4着。昨年ほどの超良馬場にはなかった点、また昨年のように楽逃げさせてもらえなかった点が敗因だろう。とにかく重馬場は駄目な馬なので、良馬場でこそといったところだろう。

その他。ノドの手術明けのSaphir Du Rheuは大敗。ペースが上がったところで付いていけなくなったように、やはりノドの状態が芳しくないのだろう。実力は確かな馬だけに残念である。At Fishers Crossは妙に高く、背中を丸めるような飛越を繰り返し、早々に遅れPU。どこか痛いところでもあるのだろうか。

 

【追記3/18】

どうやらThistlecrackは来シーズンからChaseに転向するとのこと。長距離Hurdleで頭角を現してきたJezkiとの対戦が叶わないのは残念だが、World Hurdleで見せた高い飛越能力はまさに天才的な障害飛越センスを感じさせるものである。そのトップスピード、馬場適性、持久力、どれをとっても来シーズンの長距離Chaseにて楽しみな馬であることは間違いないだろう。