にげうまメモ

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17/03/15 National Hunt Racing - Cheltenham Festival - Queen Mother Champion Chase (G1)

*Cheltenham Good to Soft (Good in places)

Queen Mother Champion Chase (Grade 1) 1m7f199y

結果:http://www.attheraces.com/racecard/Cheltenham/15-March-2017/1530/

映像:http://www.thejockeyclub.co.uk/video/20170315/2671617/15991636

Ladies Dayの冒頭には、2013・2016のQueen Mother Champion Chase (G1)の勝ち馬で2016年秋に引退したSprinter Sacreのお披露目が行われた。

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(写真:Sprinter SacreとNicky Henderson調教師)

生涯で24戦18勝、うちG1を9勝、心臓疾患からの復活という劇的な現役時代を送った馬。強烈なまでに王者の風格を纏った堂々とした馬で、近づく者が思わず背筋を正すような凛とした雰囲気を放っていた。しかし眼にはどこか優しさも湛えており、洗練された仕草には緊張と余裕の両面を共存させていた。23年間競馬を見てきたが、これほど威風堂々たるオーラを誇る馬は他に見たことがない。思わずタオルマフラーと現役時代を綴った本を買ってしまった。総額40ポンド。

さてそんな16f Chaseの最高峰、Quee Mother Champion Chase (G1)なのだが、昨シーズン絶対王者に復権したSprinter Sacreが故障で引退。2014年のチャンピオンSire de Grugyは離脱、2015年のDodging Bulletsは精彩を欠き回避。しかし、ここまで13戦無敗のDouvanが新たな王者として期待され、ここでも圧倒的人気を集めていた。対するはここまでG1を3勝しているGod's Own。そのほか上がり馬Fox Norton、昨年の3着馬Special Tiaraなど。

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(写真:ちょっと怖い感じのDouvan)

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(写真:愛想のよいTop Gamble)

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(写真:気合の入ったGod's Own)

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(写真:ひょこひょこうるさかったSpecial Tiara)

Special Tiaraが例によって逃げる展開。Garde La Victoire、Douvanなどが好位を形成するも第4障害からSpecial Tiaraがペースを上げ単騎逃げの格好に。残り3障害辺りからDouvanの手ごたえが悪くなり万事休す。God's Own、Sir Valentinoが追っていくもなかなか差は詰まらず。最終障害を越えて追い上げたFox Nortonを凌ぎ切ってSpecial Tiaraが勝利した。Douvanはそのまま大敗。

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(写真:Special Tiara)

Special Tiaraは単勝29倍の最低人気だったMaghull Novices' Chase (G1)、空気を読まずに勝ったAP McCoy Celebration Chase (G1)に続き、G1は3勝目。2014年のDesert Orchid Chase (G2)でハイペースで逃げる形でBalder Succesに不意打ちを食らわせるような形で勝ってから、この形で実績を残してきた。Queen Mother Champion Chase (G1)はこれで4回目の挑戦で初勝利。良馬場で大雑把なコースでしか走らないという守備範囲の狭さはあるのだが、自らのテリトリーに入ったときの破壊力は優に一線級のものがある。細長い馬体と筋力にものを言わせて、遠い位置から無理を効かせてしまう大きな飛越が武器であり、この飛越を生かしたスピードで他馬を圧倒するレースが持ち味。昨年はこのハイテンポで序盤から飛ばすも、残り3障害辺りで一瞬緩めたところをSprinter Sacereの機動力にやられてしまったが、今年は第1~3障害は比較的ゆっくりと入り、そこからじわじわとペースを上げていくイタリア障害競馬に似たレース運び。これはこの馬の強靭なスピード持続力を十二分に生かし切ったNoel Fehily騎手の好騎乗だろう。Cheltenam競馬場のOld Courseは残り3障害辺りが急激な下り坂になっているのだが、ここで騎手が気合を入れて飛んでいる。このペースアップに付き合ったSir Valentino、God's Ownは最後息切れし、Douvanは脱落し、逆に動けなかったFox Norton、Top Gambleが最後追い上げているのは興味深い推移。Special Tiara自身は10歳とやや年齢を重ねているが、そろそろ走る条件も明確になってきた頃。この独特の競馬でどこまでやれるか楽しみである。

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(写真:手前がSir Valentino、奥がFox Norton

上がり馬Fox Nortonは最後まで差を詰め2着。もともとNoviceクラスではDouvanに敵わず、前走のExchange Chase (G2)ではAltiorに負けているが、スローではなくこのような厳しいレースになって真価を発揮する馬だろう。残り3障害地点では一瞬置いて行かれながらも最後まで差を詰める走りは高い持久力を示唆する。ただし何回か飛越にポカがあり、ある程度リズムを作って飛越させた方が良いかもしれない。Sir Valentinoは人気薄ながらも見せ場を作った。Desert Orchid Chase (G2)では緩い流れを作ったSpecial Tiaraに迫っており、この馬の機動力も高いものがある。Top Gambleは追い上げて4着。一旦は置かれてから足を使っているように、20fの方が良いかもしれない。God's Ownは勝ちに行く競馬をしたが最後遅れて5着。残り2障害でしょもないミスがあるのだが、それ以上に残り3障害辺りから一気に動いた分だろう。飛越のポカさえなければ20fの方がよいのだが。人気を背負ったDouvanはどうにも飛越のミスが目立った。無敗とはいえここまで緩い流れを運動神経の違いで勝ってきたレースが多く、16fにおける一線級の流れに戸惑った可能性はある。レース後には故障も判明したらしい。パドックで見る限りは相当気性が強く、操縦性に難のありそうな馬。これさえ改善されれば能力的には24fのCheltenham Gold Cup (G1)でも十二分に勝負になる馬だろう。万全の状態でターフに戻ってくることを期待したい。

以下Special Tiara。なぜかこの馬だけ勝ち馬用の馬服を着せてもらえなかった件。

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