にげうまメモ

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18/09/30 Italy Racing

*Merano Terreno Buono

Corsa Siepi Dei 4 Anni Euro 44.000 TRIO 3500m

per cavalli di 4 anni (Siepi - GRUPPO II - FANTINI)

https://www.youtube.com/watch?v=qGZrBGyIs3M&feature=youtu.be

スタート早々にTenerife Seaがどこかに行ってしまうハプニング。Stukeがゆったりと逃げる展開だが、途中からSolar Walkerが先頭に。しかし残り4障害辺りから失速し途中棄権。代わって先頭に立ったStukeだが、これを持ったままでLive Your Lifeが交わして先頭に立つ。そのままLive Your Lifeが逃げ込みを図るも、ゴール直前で盛り返してきたStukeがこれを交わして勝利した。Haad Rinが3着。

度し難いレースである。StukeはCriterium Di Primavera (G2)に続き重賞は2勝目。この世代トップクラスの馬であることは間違いないのだが、昨年のGran Criterium D'Autunno (G1)ではLive Your Lifeに完敗しており、さすがに差があるのではというのが下馬評であった。今回も最後まで真面目に走っているStukeとは対照的に、Live Your Lifeは先頭に立ってから難しさを見せており、この着順はその辺りを反映したものだろう。一方のLive Your Lifeは道中一頭だけ馬群から離れてレースを進めているように、どうにも気性的に問題があるのかもしれない。一気に先頭に立つまでの機動力はさすがであったが、どうにも先頭に立ってからふらふらと走っているように見えた。このようなタイプはかえって上の世代と当たった方が力を発揮する可能性がある。ポーランドのHaad Rinは大健闘の3着。Wielka Partynickaの勝ち馬であり、ポーランドの馬でもこれだけやれることは、ポーランド障害競馬のレベルアップを示すものである。

 

Gran Criterium D'Autunno Euro 77.000 TRIO 3300m

per cavalli di 3 anni (Siepi - GRUPPO I - FANTINI)

https://www.youtube.com/watch?v=djPNEtVZjT8&feature=youtu.be

King Heartがやや引っかかり気味に逃げる展開。そのまま隊列は長くなるが、残り3障害辺りから地元のLeonardo Da Vinciがスパート。そのまま逃げ込みを図るも、ゴール直前でAthena Du Berlaisがこれを交わして勝利した。2着には盛り返したKing Heart。

Athena Du Berlaisはフランスから参戦してきた牝馬。キャリアこそ2戦と浅いのだが、そのいずれも圧勝の内容であり、その実力はここでも高く評価されていた。ただし、前脚を高く投げ出すタイプの飛越はフランスHaiesを走ってきた馬のそれなのだが、何度か踏切位置をミスする場面があり、修正動作に頼った飛越が多かった辺りはやはりまだ若さなのだろう。最後はフラットのスピードでKing Heart、Leonardo Da Vinciを交わすことはできたが、やはりフランス調教馬がイタリアで好走するパターンである飛越のテンポの早さを見たかったというのが正直なところ。King Heartは全く人気がなかったが好走した。ここのところは完敗の内容であったLeonardo Da Vinciを相手に、速いペースを刻んで最後は差し返すレースは、この馬の障害飛越における進歩を感じさせるもの。3連勝で挑んできたイタリアのLeonardo Da Vinciは最後失速して3着。走法を見ると使える脚はあまり長いものではないかもしれない。

 

LXXIX Gran Premio Merano Alto Adi Euro 250.000 TRIO 5000m

per cavalli di 4 anni ed oltre (Steeple-Chase - GRUPPO I - FANTINI)

https://www.youtube.com/watch?v=d_LsjjoHypo&feature=youtu.be

イタリアSteeplechaseとしては最高峰となるレース。賞金も他と比べると格段に高い。フランスから参戦してきたLe Costaudが人気の中心となっていた。さらに連覇を狙うチェコのAl Bustan、5歳の新星Santo Cerroなど。

スタート直後からSanto Cerroが速いペースで引っ張る展開。早々にVocancitoが落馬。そのままSnato Cerroが引っ張り、好位からOle Caballero、Company of Ring、Le Costaudなど。スタンド前の水壕障害を越え、Muro(土塁障害)の辺りでLe CostaudがSanto Cerroに並びかける。Oxer GrandeではNotti Magicheが落馬。そのままLe CostaudはSanto Cerroを振り切ると、追いかけてきたAl Bustanを寄せ付けず勝利した。3着にはSanto Cerro。はるか後方ではあったものの、Nando、Ole Caballero、Alcydon Fanも完走を果たしたようだ。

Le Costaudは2016年のGrand Steeplechase D’Europa (G1)にて当時のドイツ最強馬Kazzioを14馬身千切る圧勝劇を見せていた馬で、その後は2年ほどの休養を経て今年の4月に復帰、復帰戦こそ落馬したものの続く国内のレースを4連勝、前走はAuteuilのHaiesという明らかな叩き台のレースにて、AuteuilのListed勝ちもあるCaiman Landの2着に入ってここに挑んできた。卓越したスピードと飛越技術の高さを武器に他馬を圧倒するタイプの馬で、ここでもまともにLe Costaudのペースについて行ったのは、もともとスピードがありフランスでも好走経験のあるSanto Cerroと、イタリア国内のSteeplechaseではほぼ無敵状態であったAl Bustanの2頭だけであった。巨大な生垣障害が待ち受けるMeranoの障害をものともせず、ミスらしいミスはMuroでの一度きりだけだったことも、この馬の飛越技術の高さを物語るものだろう。単純に速く走ればレースには勝てるという、現代競馬では滅多に見ることが出来ない原始的な競争を実現する、ここでは明らかに格上の馬である。このようなバケモノ級の馬を、Merano競馬場というヨーロッパ有数の素晴らしいサーキットで見ることが出来るのは障害競馬ファンにとって幸せというもの。何とか来年も来てほしいところだが。

連覇を狙ったAl Bustanは8馬身差の2着。もともとは馬群をすり抜けてくる機動力を武器に戦ってきた馬であり、密集した馬群を抜け出してきた昨年のレースがその見本である。Le Costaudのペースについて行った場合にどこまで耐えることができたのかは不明だが、障害飛越における安定感はさすがのものがあり、Le Costaudを追い詰めることすらできなかった後続の中からは一頭卓越したパフォーマンスであった。2着と敗れはしたものの、それでもイタリア障害競馬においては頭一つ抜けた存在だろう。

若馬Santo CerroはLe Costaudのペースに食らいついて行き3着。もともとSiepiにて速いペースを刻むことで勝利をあげてきた馬で、Steeplechaseへの転向がこの馬の飛越技術の高さも相まっていい方向に出ている。さほど瞬発力に優れた馬ではなく、距離も初経験といういうことで最後はさすがに失速はしたが、おそらくこれがいい経験になるだろう。イタリアSteeplechaseにおいてG1を取れるだけの器である。

その他。前走Al Bustanを下してきた地元のCompany of RingはMuroで落馬したが、その前から完全にペースについて行けないタイプの飛越を見せていた。昨年のような馬群が密集する展開であればもう少しチャンスはあったのかもしれない。同じくフランスのDefit D'Estruvalは途中棄権。この馬は飛越の早さを武器とするというよりは、むしろ飛越の正確性を武器とするタイプであり、イタリア障害のペースに合わせて進行するところがある。イタリア障害では稀なハイペースを刻むLe Costaudにはついていけなかったということだろう。もしかするとCross Countryの方に適性がある可能性もある。