*Cheltenham Soft (Good to Soft in places)
Cheltenham Festival二日目のLadies Day。写真は例によって一昨年のもの。強風のため開催が危ぶまれたが、無事に開催できることになったそうだ。もし現地に行って開催延期になったら泣くしかない。
第一レースまでは我慢しよう、そう思っていた時期がわたしにもありました pic.twitter.com/qL21yGJXVO
— にげうま/Nigeuma (@_virgos2g) 2019年3月13日
Ballymore Novices' Hurdle (G1) 2m5f
Novice Hurdleに関しては16f、20f、24fとG1が3レースもある一方で、Senior Hurdleに関してはG1が16fと24fの2レースのみであり、20fのこのレースの立ち位置がよくわからない。人気はアイルランドで連勝してきたBattleoverdoyen、Challow Novices' Hurdle (G1)勝ちのあるイギリスのChampなど。
レースはNoel FehilyのSeddonがやや行きたがって逃げるも、第2障害を越えスタンド前に来る頃にはペースは落ち着く。好位からChamp、Valdieuなど。Battleoverdoyenは後方から。途中からSeddonにValdieuが並びかけ、さらに残り3障害辺りからはChamp、Sams Profile、City Islandと接近。ここから抜け出してきたCity IslandとChampの叩き合いはCity Islandに軍配が上がった。
Seddonはやや行きたがるところのある逃げ馬なのだが、Noel Fehilyはこのような馬をコントロールする技術を持ち合わせている上に、Queen Mother Champion ChaseをSpecial Tiaraで逃げ切ったようにCheltenham競馬場にてロングスパートをかけるような逃げ方を熟知している達人である。そのため、Noviceクラスとはいえじわじわと向こう正面からペースが上がるようなタフな競馬となっている。
City IslandはこれでHurdleは未勝利戦から4連勝とした。なぜかアイルランドで未勝利戦を2回も勝っている馬なのだが、さほど強力な相手と戦ってきていないために人気の盲点となっていたようだ。Cheltenhamは残り3障害辺りの下り坂を加速をつけて下りる必要があるのだが、この勝負所においてふらふらと走っていたValdieuと内に寄ってきていたSams Profileの間に勇気をもって突っ込んでいったことが勝因だろう。
Champは惜しい2着。外々から加速をつけて行くBarry Geraghty騎手の騎乗は本命馬のそれであり、レースを経て内が荒れてくることを考えれば決して騎乗ミスの類ではない。City Islandとは立ち回り一つで変わるはずである。Bright Forcastは人気がなかったが3着まで追い込んだ。ただしこの馬に関しては外を回したNico De Boinville騎手の好騎乗もあった。Battleoverdoyenは全く反応しなかったのだがどうしたのだろうか。Easy GameはBattleoverdoyenをマークするようなレースの運び方をしたのだが、Battleoverdoyenが勝負所から失速されてはどうしようもない。結果的には追いかける相手の判断ミスという形になってしまった。
RSA Novices' Chase (G1) 3m80y
アイルランドのDelta Workが人気になっていた。対抗角としてはSantini、Topofthegamesなど。
レースはTop Ville Ben、The Worlds Endなどが前に行く構えを見せるも、スタートは出遅れたDrinks Intervalが注文を付けて逃げていく。第6障害にてTop Ville Benは落馬。例によって下り坂辺りから馬群が密集すると、そこからSantini、Delta Workが抜け出しを図る。しかし内から忍び寄ってきたTopofthegamesがSantiniとの叩き合いを制して勝利した。3着にDelta Work。4着以下は大きく遅れた。
Topofthegamesは実はChase初勝利。Kauto Star Novices' Chase (G1)ではLa Bague Au Roiの2着と言う実績はあるのだが、どうにもゴール前で気を抜くところがあるのか、Chase2戦はいずれも2着に終わっていた。スムーズに加速したDelta Workの後ろで下り坂を利した加速をつけ、そこから抜け出しを図ったHarry Cobdon騎手の騎乗は、どこか気を抜きやすいこの馬の弱点をカバーしつつ、Cheltenham競馬場の性質を最大限に利用した最高の騎乗であった。残り2障害辺りからは比較的大柄な馬体を生かしたダイナミックな飛越を要求しており、これが最後の一押しに繋がった。このようなタイプはかえってペースが上がるSeniorクラスの方が真面目に走るために力を発揮する可能性があり、これからが非常に楽しみな一頭である。
Santiniは惜しい2着。前肢を前に投げ出すような走りは重馬場で力を発揮するタイプの馬の走法であり、できれば昨日のような重馬場でやりたかった。アイルランドでG1を連勝してきたDelta Workはややトップスピードの面で前2頭とは見劣った。Hurdleで勝ち切れなかった馬がChaseに転向して頭角を現してきたタイプであり、どうにもスピード能力という面では微妙なところがあるのだろう。
Richard Johnosn騎手が思い切った騎乗を見せた紅一点Drinks Intervalは自身のできることはやり切った。さすがに最後は脚が上がったが、どうにも飛越にはポカのあるタイプらしく、このようにリズムに乗せてしまえば想定以上のパフォーマンスを発揮する可能性がある。Now McGintyも前走はRichard Johnson騎手でこのようなレースをやっていたのだが、今回は乗り替わっていたため役者が違ったか。The Worlds EndはどうにもDrinks Intervalが来てから飛越のリズムが崩れていた。Hurdlerである可能性もあるのだが、それ以上に飛越技術がスピード能力についてきていない印象である。
Coral Cup Handicap Hurdle (G3) 2m5f
物凄い手ごたえで進出してきたWicklow Braveだが、ゴール前で強襲してきたWilliam Henryが勝利。2着にWicklow Braveが入った。William HenryはListedのLanzarote Hurdle勝ちがある馬なのだが、ここはWind Surgery明けであり、手術が功を奏した可能性がある。Chaseではいまいちだったようで、Hurdleにて強力なスピード能力を生かす方がいいのだろう。Wicklow Braveは平地のスピード能力は高い馬で、Cheltenhamの下り坂における加速力はここでは群を抜いていた。Ballyandyも遡ればChampion Bumper勝ちのある馬で、一度はChaseにも挑戦したのだが持ち前のスピード能力を生かすという意味ではHurdleの方がよさそうだ。Apple's Shakiraは収穫のある6着だが、Apple's Jadeの競馬を見ていると無理やり抑え込むよりは前に行った方がいいように思う。Bryony FrostとのコンビになったLil Rockerfellerはもう少し無理やりにでも馬を動かせる人の方がいいだろう。
Queen Mother Champion Chase (G1) 1m7f199y
本日のメインレース。Un De SceauxやFootpadの回避はあったものの、障害17戦無敗、Queen Mother Champion Chaseの連覇と障害18連勝を狙うAltiorが人気の中心となっていた。対するはG1は3勝しているアイルランドの強豪Min、G1は2勝の実績を持つ葦毛のPolitologue、古豪God's Own、若馬Sceau Royalなど。
注文を付けてSaint Calvadosが逃げる展開。これを追いかけてAltior。少し離れてMin、Politologue、Sceau Royalなど。Water JumpにてAltiorがミス。残り3障害辺りからAltiorが逃げるSaint Calvadosに接近するも、さらに後続もこれに接近してくる。最終コーナーを回ってAltiorにPolitologueとSceau Royalが襲い掛かり、最終障害を越えるとSceau Royalが先頭に。しかしここからAltiorが反撃し、最後はPolitologueを1馬身ほど抑えきって勝利した。Sceau Royalが3着。Minは5着まで。
ここ数年はSpecial TiaraやUn De Sceauxのような、猛然と厳しいラップを刻んでいくタイプの逃げ馬がいたのだが、Special Tiaraの不在やUn De Sceauxの回避もあり、今年逃げたのはSaint Calvadosである。Saint Calvados自身は行きたがって走る部分があるのだが、もともとフランスのSteeplechaseを走ってきた馬で踏み切り位置を丁寧に調整するところがあり、結果的にさほど厳しいペースを刻むわけではない。これが顕著であるのが下り坂地点の障害飛越であり、ここで一気にギアを入れたのであれば展開は違ってくるのだが、Saint Calvados自身が障害飛越においてギアを上げ切ることが出来ておらず、結果的にAltiorが持ったままの手ごたえで先頭に立つに至っている。一方のAltiorもまた瞬時に加速するタイプではなく、むしろここ数年はこの下り坂において加速する馬群について行くのに苦労する場面が見られている。そのため、この勝負所において後続に接近を許しており、想定外の今回の苦戦に繋がっている。
Altiorはこれで障害は18連勝とした。18戦18勝といえばWinxのような出走登録があるだけで他馬が回避し、レースは圧勝に次ぐ圧勝を想定するのだが、Altiorの勝利はどれも非常にタフなメンバーを相手にした難しいレースである。英国・アイルランド障害競馬の層の厚さは並大抵のものではない。今回のWater Jumpのミスコミュニケーションはともかくとしても、最後の直線の飛越においても持ち味であるダイナミックな大きな飛越に成功しておらず、自身のレースをやり切ったPolitologueやSceau Royalを相手に、フラットの部分で搭載されたエンジンの最大出力の違いで勝ち切ったという内容である。陣営としては良馬場を希望していたようだが、エンジンの最大出力の違いが生きるのはある程度渋った馬場の方が良く、結果的には馬場はプラスであったと考えられる。このようなトップスピードは加齢とともに衰えていくのが通常であり、やはり将来的には距離延長という選択肢が視野に入ってくるものと思われる。
Politologueは自身の良さを最大限に生かした競馬をした。もともと緩いストライドから持続的なスピードを使う馬で、馬群の外々をゆったりと回りつつ、下り坂で一気に加速をつけて行くHarry Cobdon騎手の騎乗は素晴らしいものがあった。極端に馬場は悪化しない方がいいようで、ある程度力のいる今回の馬場もこの馬向きであった。Altiorとはタイプが類似しており、他の競馬場ではなかなか逆転するのは難しいのだが、Cheltenhamの特性を存分に生かし切ってAltiorに迫ったことは誇るべき内容だろう。タイプ的には距離を伸ばした方がよさそうなのだが、案外スタミナ面では不安があるらしく、どうやらこなせるのは20fくらいまでのようだ。
Sceau Royalは人気がなかったが好走した。昨シーズンのHenry VIII Novices' Chase (G1)の勝ち馬で、良馬場を中心とした瞬間的な脚の早さは素晴らしいものがある。Tingle Creek Chase (G1)ではロングスパートを仕掛けたUn De SceauxとAltiorには全くついて行けず大敗しているのだが、Cheltenhamの下り坂を利して加速し、最短コースを立ち回って最終障害を手前で前に出るDaryl Jacob騎手の騎乗はこの馬の特性を最大限に生かしたものである。さすがに最後はやや脚が上がって持続的な脚を使える馬に前に出られはしたものの、最終障害手前では一旦あわやのシーンまで作ったことは特筆すべき内容である。
その他。対抗角と思われたMinはどうにも道中から力んで飛越している場面が目立っており、勝負所で相次いで前をカットされ、最後はほぼガス欠の状態での入線となった。Paul Townend騎手からRuby Walshに代わったことで勝負所での溜めが効き、この馬の瞬発力を生かすことができるかと期待したのだが、今回のレースは全くと言っていいほどこの馬の力を発揮できていない内容である。この馬の長所は高いハイペース耐性と強力で瞬間的な爆発力を生み出す身体能力の高さであり、かえってペースが落ち着いてしまったことが裏目に出た可能性もある。20fは若干長い印象もあり、Melling Chase (G1)に向かうのかどうかはわからないのだが、今回のレースは度外視としたいところ。Saint Calvadosは前述の通り、ここに入るとやはり飛越を含めたスピード能力の面で荷が重い。God's Ownは途中棄権に終わったが、どうやら大事には至らなかったそうだ。
Glenfarclas Cross Country (C2) 3m6f37y
Grand National勝ち馬で連覇を狙うTiger Rollが人気の中心になっていた。対抗角としてはCross Country SpecialistのJosies Orders、Auvergnat。フランスからはUrgent De Gregaine、Amazing Comedyといったいつものメンバーが参戦していた。
レースは例によってKingswell Theatreが逃げる展開。Amazing Comedy、Urgent De Gregaineは後方から進め徐々に進出。しかしスムーズに好位からレースを進めたTiger Rollが残り4障害辺りから抜け出すと、そのまま後続に22馬身差をつけて圧勝した。Josies Orders、Urgent De Gregaineと続いた。
Tiger Rollの能力の高さは理解していたつもりだが、まさかここまでとは。Kingswell TheatreはCheltenhamのCross Countryを熟知した馬で、2017年にはフランスのVicomte Du Seuil、Urgent De Gregaine、さらに当時のCross Country SpecialistであるCantlowなどを相手に逃げ切り勝ちを収めている。この馬は高い技術と経験に裏打ちされた飛越を武器に淡々と緩みないペースを刻むことが特徴であり、Wind Surgery明けとはいえ例によって厳しいペースを刻んでいる。しかしTiger Rollにおいて、かつてはTriumph Hurdle (G1)を制したスピード能力は前走のLadbrokes Ireland Boyne Hurdle (G2)で見せたように健在であり、Grand National (G3)でも見せた素晴らしいスピードの持続力と、そしてCross Country Courseへの経験に基づく高い飛越技術も相まって、Kingswell Theatreが作り出した厳しいペースを難なく追走し、最後まで余裕を持って脚を伸ばすという盤石の競馬を見せるに至った。深いブリンカーが集中力に課題のあるこの馬を最後まで集中して走らせる一助となっており、一頭になってから若干フラフラする場面はあったものの、最後まで問題なく走れていたことは収穫のある内容。Grand Nationalにおいて騎手が誰になるのかはよくわからないが、間違いなく本命クラスの一頭だろう。
今シーズンはCheltenhamとPunchestownでCross Countryを勝利しているJosies Ordersはさすがに安定した競馬を見せた。昨年11月の競馬ではTiger Rollを下しているが、当時はTiger Rollが11st12lbと斤量を背負っており、Josies Ordersは10st11lbとかなり恵まれたところがあった。Tiger Rollは小さな馬で斤量負けするところがあり、同斤量になるとここまで差がつくのだろう。フランスのUrgent De Gregaineも一頭図抜けて高い飛越技術を見せていたが、最後は脚が上がり3着まで。この辺りの馬は飛越技術に関しては超一流のものを持っているのだが、飛越技術ではどうしようもない相手がTiger Rollである。
BallycaseyはPunchestownでは全く走らなかったが、生垣障害の多いCheltenhamはやはり合っているようだ。Kingswell Theatreは自分の競馬をしたが、さすがに休み明けの影響があったかもしれない。昨年のGrand Cross Country De CompiegneにおいてVirtus D'estruvalを18馬身ぶっちぎってきたAmazing Comedyはどうにも最後脚が上がって失速。Auvergnatは全く走らず。Bless the Wingsも走らないときはこんなものだろう。National SpecialistのUltragoldは初のCross Countryであったが、さすがに相手が強すぎた。
ところで、Velká PardubickáはかつてUncle Juniorが挑戦し5着くらいには入っているのだが、そのVelká Pardubickáにおいて好走歴のあるUrgent De GregaineはCheltenhamのCross Countryにおいても高いパフォーマンスを発揮している。生垣障害が連続するコースはCross Countryとしてはやや似ているのだが、誰か行ってみたら面白いのではないか。Tiger RollとかPardubiceで見てみたいが、さすがに欲張りすぎだろうか。
Boodles Juvenile Handicap Hurdle (G3) 2m87y
勝ったのは馬群を縫って出てきたBand Of Outlaws。Joseph O'Brienは調教師としては初のCheltenham Festival勝ちとなった。Band Of OutlawsはこれでHurdleは3連勝。もともとは長く平地を使ってきた馬で、体型としても比較的平地馬らしい筋肉のある身体つきをしていた。直線で前が壁になる場面はあったが、再度立て直して前のCoko Beach、Ciel De Neigeを差し切ったパフォーマンスは素晴らしいものがある。Juvenile Hurdleということでいまいちレースレベルとしては高くないのが通常だが、どこまでやれるだろうか。