にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

19/04/06 National Hunt Racing - Grand National Entries -

*Aintree

Randox Health Grand National Handicap Chase (G3) 4m2f74y (National)

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例によって前々から書いておきます。少しずつ更新予定。出走馬はレーティング上位40頭となるので、適宜変更しておきます。

 

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基本的な話はこちらで。昨年の出走馬はこちら、結果はこちら。昨年のGrand National参戦記はこちら

(記事が超重いので続きを読む機能をつけてみました)

 

 

1. Anibale Fly|Tony Martin|Barry Geraghty→Mark Walsh|11st10lb

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昨年の4着馬。Cheltenham Gold Cup (G1)から続戦するローテーションは昨年と同じだが、Might BiteとNative Riverの勝負にはいまいち加われなかった昨年とは異なり、今年は最後まで勝ったAl Boum Photoを追い詰める走りを見せていた。もともと高さのあるゆったりとした飛越を特徴とする馬だが、今年はあえて16fのKerry Group Hilly Way Chase (G2)から始動し、20fのRed Mills Chase (G2)、そして26fのCheltenham Gold Cup (G1)と距離を延長させたことが、この馬の追走能力を向上させたことが想定される。National Fenceの経験があることは明確なプラス材料であり、昨年も11st8lbを背負っていたことを考えれば、Bristol De Maiの回避によりトップハンデとなってしまったことは大きく割り引く材料ではないだろう。馬体性能を踏まえるとどうしても車間距離が必要な馬であるためレース運びには注文はつくものの、持っている実力を踏まえれば本命クラスの一頭である。なお、主戦のBarry Geraghty騎手が落馬負傷のため、Mark Walsh騎手に乗り替わることになった。この人も上手い人であり、以前にもコンビを組んでいたことがあるだけにさほど心配はいらないだろう。

 

2. Valtor|Nicky Henderson|Daryl Jacob|11st6lb

近年はイギリス・アイルランド障害競馬においてフランス生産馬の躍進が目立つが、そのほとんどはフランスでのキャリアを殆ど積むことはなく、早期にイギリス・アイルランドに移籍した馬である。Valtorはフランス障害馬としてはベテランの域である9歳となった昨年の5月までフランスで戦った馬であり、フランス馬のイギリス・アイルランド移籍としてはかなり珍しいケースである。Auteuil競馬場を中心にSteeplechase重賞戦線で長く活躍してきた馬であり、遡るとPrix Montgomery (G3)勝ちがあり、今年のGrand Steeplechase de Paris (G1)でもOn The Goの6着に入っている。このようにフランスSteeplechaseの経験が長い馬は往々にしてイギリス障害への対応に苦労することが多いのだが、イギリス初戦となったGarrad Silver Cup (Listed)では低評価を覆す8馬身差の快勝を見せていた。小柄ながらバランス感覚に優れた馬体をフルに生かした飛越技術は素晴らしく、終始馬が自信を持って障害に向かっていき、加速をかける場面でははっきりとストライドを伸ばしている姿は非常に印象的なものであった。しかし続戦として期待されたCotswold Chase (G2)では初戦のパフォーマンスとは打って変わって飛越に苦労した結果、途中棄権に終わっている。なんでも左回りがダメだったとのことらしい。Auteuil競馬場は基本的に左回りのためフランス時代は不幸だったのかもしれないのだが、Aintree競馬場も左回りであることは大きな不安材料である。興味深い挑戦であることは間違いないのだが、どうにも前走内容から考えると不安が残る。

 

3. Tiger Roll|Gordon Elliott|Davy Russell|11st5lb

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昨年の勝ち馬。遡ると2014年のJCB Triumph Hurdle (G1)の勝ち馬で、その後はHurdleのG1路線に挑戦するもさっぱり歯が立たず、2016-17シーズンはオフシーズンである夏場からChaseに参戦。巡り巡って2017年のCheltenham Festivalでは32fのアマチュア騎手限定戦であるNational Hunt Challenge Cup (G2)を勝利するという異色の経歴を持っている。さらにその後はCross Country路線に挑戦、2018年のCheltenham FestivalではGlenfarclas Cross Countryを勝利し、その後のGrand National (G3)へと挑むというローテーションであった。イギリス・アイルランド障害において考えられるほぼ全てのカテゴリーを使いつつ、少しずつ長距離・高難度の障害へとステップアップしてきた馬である。その飛越技術は正確無比であり、Hurdleでも戦うことが出来るスピードと、重馬場すら苦にしないパワー、そして超長距離を耐え抜く強靭な持久力を兼ね備えているという、障害馬としては理想的な性能を持ち合わせている。今シーズンは初戦のCross Countryこそ11st12lbの斤量が堪えたのか4着に敗れたものの、続くIreland Boyne Hurdle (G2)を勝利すると、11st4lbの定量戦となったGlenfarclas Cross Countryでは並居るイギリス・アイルランド・フランスのCross Country Specialistを相手にしながら、2着に22馬身差をつける大楽勝を決めている。Grand National (G3)はその激しいレースのために、勝ち馬はその後故障やダメージ、加算される斤量等で苦労することが多いのだが、驚異的なことにこの馬は明らかに前年よりもパフォーマンスを上げている。小柄なこの馬にとって、昨年の10st13lbから斤量が増加することはマイナス材料ではあるのだが、11st5lb自体は実績のある斤量であり、さほど大きく悲観するものでもないか。複数のブックメーカーが示す通り、文句なしに本命クラスの評価が可能な一頭である。一頭になるとしばしば集中力を欠くところがあるのが課題だろう。

 

4. Outlander|Richard Spencer|James Bowen|11st4lb

アイルランドG1路線の常連で、2017 JNwine.com Champion Chase (G1)2016 Lexus Chase (G1)勝ちなど、G1を3勝しているベテラン。特にLeopadstown競馬場ではやたらと走ることで知られているのだが、G1クラスで活躍したのはやや昔の話。今シーズンはIrish Daily Star Chase (G3)の2着が最高で、その後の4戦とも勝ち馬とは大きく離された敗戦に終わっている。これまでにイギリス遠征はCheltenham競馬場の大レースかBristol De Maiの固有結界であるHaydock競馬場にしか来たことしかないため、イギリス遠征で実績を残せていないのはともかくとしても、11歳とやや年齢を重ねてきたことや近走成績から考えるといまいち推しづらいところがある。春先にかけての良績にも乏しい。どちらかというと淡々とレースが進行し、残り数障害からペースアップするような前哨戦向きのタイプであり、一気の距離延長で良くなるというイメージにも沸きにくい。

なお、Don PoliとOutlanderはAintreeで競りにかけられることが発表された。Gigginstown House Studは以前もG1路線で活躍したRoad To Richesを売却したことで話題になったのだが、当時のRoad To Richesと同様に、そろそろ重賞戦線では厳しいと判断された可能性がある。

 

5. Don Poli|Philip Kirby|Mr Patrick Willie Mullins|11st3lb

2015年のRSA Chase (G1)、Lexus Chase (G1)をはじめ、アイルランドではG1を3勝している名馬。当時のアイルランドG1路線では主役級の一頭であり、将来を渇望される馬であったのだが、2017年のCheltenham Festivalを故障で回避すると、その後2年近い休養を経て2018年の12月に復帰。しかしその3戦とも全盛期の精彩を欠いた内容である。初戦のBecher Chase (G3)は初のNational Fenceということ、続くJohn Mulhern Galmoy Hurdle (G2)は馬場の悪い内側を回っていたことでいちおう言い訳は立つのだが、続くbaroneracingcom Chaseまで大敗しているのはいまいちいただけない。元々謎の凡走をやらかす馬であっただけにそういう側面という可能性もあるのだが、さすがに近走成績からいきなりパフォーマンスを上げてくるというのは少々厳しい印象がある。持っているものは超一流であるはずなのだが。ちなみにMr Patrick Willie Mullinsはアマチュア騎手だが持っている技術は非常に高く、特に懸念はないだろう。(アマチュア騎手を表記する場合はMr.またはMrs.が付けられる)

 

6. Go Conquer|Nigel Twiston-Davies|Sam Twiston-Davies|11st3lb

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イギリスのパドックで一番よく見えるのはおっさんのハゲ頭である。Go ConquerはもともとJonjo O'Neill厩舎にいた馬だが、昨年の夏にNigel Twiston-Davies厩舎に移籍。Sodexo Gold Cup Handicap Chase (G3)勝ちをはじめ、良馬場の24f戦にて先行し、スピードの持続力を生かして戦ってきた経歴がある。転厩後も前走のSky Bet Handicap Chase (Listed)はトップハンデに近い11st10lbの斤量を背負いながら6馬身差の快勝を見せており、かなり調子はいいようだ。ちなみに同レースはコースの内側をイヌが疾走していたことで話題になっており、そのイヌよりもうだうだ走って途中棄権に終わっているOn Tourはクロコルージュ産駒であるという微妙な日本競馬とのつながりもある。以前にはNational Courseを用いるTopham Chase (G3)を使い、一応は完走していることもプラス材料。無理に先行してリズムを作っていくタイプではないため乱ペースに巻き込まれるリスクは低いが、ある程度行きたがっては走るところがある以上、やはり課題は距離になるだろう。また、馬場が重くなると明らかにパフォーマンスを落とすあたり、当日の馬場には注意した方がよさそうだ。

 

7. Mala Beach|Gordon Elliott|Mr J J Codd|11st2lb

アイルランドの長距離Chaseの常連だが、さほど目立った勝ち星はなく、Troytown Handicap Chase (Grade B)がある程度である。以前はG1路線を使っていたこともあるためある程度のレーティングは持っているようで、今シーズンはまだHurdleを含め2戦しかしておらず馬はフレッシュであると予想されること、前走のbaroneracingcom ChaseはJury Dutyの2着と調子は良さそうであることはプラス材料としても、この斤量を考えると実績的にはいまいち強調しにくいところがある。Gordon Elliott厩舎は大軍で押し寄せるためお友達がいるのはいいのだが、イギリス遠征はほとんど経験していないところもマイナス材料か。また、良績は重馬場に偏っており、良馬場となった際にどこまで対応できるかは未知数である。

 

8. Minella Rocco|Jonjo O'Neill|Richie McLernon|11st1lb

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2017年のCheltenham Gold Cup (G1)の2着馬。勝ったSizing Johnと異なり、勝負所で不利がありながらも最後まで勝ち馬を追い詰める強い競馬をしていたのだが、それ以降はいまいち精彩を欠いた走りを繰り返している。ノドに持病があったようで、2018年にはWind Surgeryを行っているのだが、2019年に復帰してからも大敗続き。前走のUltima Handicap Chase (G3)でも後方でちんたら追走し、早々に途中棄権に終わっている。もしかすると気性的な問題も抱えているかもしれない。2016年のNational Hunt Challenge Cup (G2)の勝ち馬であり、持久力の点では相当高いものを持っているはずの馬なのだが、いまいち近走成績から考えると強調しづらい。

 

9. Lake View Lad|Nick Alexander|Henry Brooke|11st1lb

今シーズンの上り馬。昨年12月のRehearsal Handicap Chase (Listed)、さらにRowland Meyrick Handicap Chase (G3)を連勝。CheltenhamのUltima Handicap Chase (G3)でも11st12lbを背負いながら3着まで踏ん張り、力をつけているところを見せた。特に最後まで勝ったBeware The Bearを追い詰める走りを見せていたことはこの馬の持久力を計る上では強調材料だろう。また、ここまでChaseで大きく崩れたことは殆どないことも、この馬のステイヤーとしての素質を物語る材料である。若馬らしく障害に対して前向きに向かっていくタイプだが、少なくともこの3戦でミスらしいミスがないことはプラス材料。好位からレースを進めるタイプだが、Cheltenhamでは若干勝負所で位置を下げる場面があり、一瞬の機動力の面では若干の不安があるかもしれない。

 

10. Pleasant Company|Willie Mullins|Paul Townend|11st1lb

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昨年の2着馬。Valentinesで大きなミスをして立て直せずに終わった一昨年とは違い、昨年は大きなミスなく立ち回り、最後一頭になってからふらふら走ったTiger Rollをゴール直前まで追い詰める走りを見せていた(なお、中の人は現地にいたのだが、モニターがロクに見えず馬を正面から見る形であったので、この馬が物凄い勢いでTiger Rollを追い詰めていたことに気が付かなかった)。それにしても、昨年の前哨戦2レースは全くいいところなく大敗していたにも関わらずあの走りであり、高齢の障害馬というのは何を考えているのかわからない。今シーズンも例によって2戦を消化しており、例によって大凡走に終わっている。昨年のことを考えれば無視できない一頭だろう。National Fenceへの経験値、距離適性はいずれもメンバー随一のものを持っている。今シーズンの凡走のせいで、昨年の10st11lbからさほど斤量も増えていない。ただしどちらかというとスピード能力よりも丁寧な飛越を武器とするタイプであり、レース展開には注文が付きそうだ。鞍上は去年とは異なりPaul Townend騎手となるそうだが、このコンビでPalmerstown House Pat Taafe Handicap Chase (Grade B)を勝利しており、特に問題はないだろう。先月はWillie Mullins厩舎の初のCheltenham Gold Cup (G1)勝ちをもたらしたデキる男、Paul Townendの手綱さばきに期待したい。

 

11. Ballyoptic|Nigel Twiston-Davies|Thomas Bellamy|11st1lb

遡るとDoom Bar Sefton Novices' Hurdle (G1)勝ちのある馬なのだが、24f Hurdleに挑戦した2016-17シーズンは飛越が安定しなかったりと、いまいち期待外れの結果に終わった。翌シーズンからはChaseに転向し、Novice馬ながらScottish Grand National (G3)にてJoe Farrellの2着に健闘している。今シーズンは3戦しいずれも着外。どうにも飛越が安定しない面があるようで、3戦のうち1戦は飛越のミスが原因の落馬に終わっている。Vieux Lion RougeやBishops Roadが謎の暴走を見せたWelsh Grand National (G3)Grand National Trial (G3)は仕方がないにせよ、どうにも飛越の面では不安が残るのが現状だろう。持っている持久力は高いようだが、ペースが厳しくなるとこれもまた宜しくないようで、案外トップスピードでは微妙なワンペース型のステイヤーかもしれない。

 

12. Dounikos|Gordon Elliott|Jack Kennedy|11st0lb

2017-18シーズンにおいてNovice Chaseを走った馬で、McMahons Builders Providers - New Online Store Just Launched Novice Chase (G2)なる長い名前のレースを勝利している。ただし同レース自体、人気を背負ったAl Boum Photoがまさかの最終障害で落馬した棚ぼたといった印象が強く、その後に参戦したG1路線では全て途中棄権に終わっている。今シーズンもさっぱり良いところがなかったのだが、なぜかPunchestownのGrand National Trial Handicap Chase (Grade B)では突然の激走を見せ勝利。ここまでの走りではどうにもいまいち傾向がつかみにくいというのが正直なところ。前走において距離延長がプラスに出たのであれば注意しておきたい一頭なのだが。ただし鞍上にはアイルランドの天才Jack Kennedyを確保したというのは、わりと不気味な材料。

 

13. Rathvinden|Willie Mullins|Ruby Walsh|11st0lb

Hurdle時代はNeptune Investment Management Novices' Hurdle (G1)にてFaugheenの3着がある素質馬であったが、そこから1004日の休養を経て2016年に復帰。しかしそれからは精力的にChaseを走り、アクシデントが多発してやや物議を醸してしまった2018年のNational Hunt Challenge Cup (G2)を勝利。今シーズンは1戦しかしていないが、そのBobbyjo Chase (G3)を勝利し調子もいいようだ。昨シーズンの成績から考えればG1路線ではややスピード不足であるようだが、National Hunt Challenge Cup (G2)を選んだあたり、やはりその高い飛越技術と持久力という面ではG1よりもNational向きの馬だろうと評価されているものと考えられる。持っている能力は高いものがあり、今年で11歳になる高齢馬だが、前述の休養が長かったためさほどレース数はこなしていない。アイルランドのチャンピオントレーナーWillie Mullins師が送り込む素質馬、一気の戴冠があっても不思議ではない。

 

14. One For Arthur|Miss Lucinda V Russell|Derek Fox|11st0lb

2017年の勝ち馬で、1979年のRubsticに続いて2頭目スコットランド調教馬としてのGrand National勝利を成し遂げた歴史的な馬。その前のClassic Chase (G3)において、Rigadin De Beaucheneがややハイテンポで引っ張る展開を捲り上げて勝利しており、このGrand National (G3)も同様にアイルランド長距離戦線において締まったペースを作りだすRogue Angel、Thunder And Rosesなどが逃げるような同様の展開において、Classic Chase (G2)と同様の乗り方で勝利してきた。しかしその後はTendon Injuryで長期の休養に入り、2018年の12月に復帰するも、2戦とも落馬競争中止と冴えない結果に終わっている。Many Clouds Chase (G2)は単なる凡ミスであったにせよ、後方で特にやる気なく追走し、気が付いたら落馬していたPeter Marsh Handicap Chase (G2)の内容はいまいちいただけない。大舞台になって馬にスイッチが入ればよいのだが、さすがに故障と長期のブランクの影響は無視できないだろう。

 

15. Rock The Kasbah|Philip Hobbs|Richard Johnson|10st13lb

昨年のBetVictorcom Handicap Chase (G3)の勝ち馬。CheltenhamやChepstowなど、厳しい坂のある競馬場で良績があり、どちらかというと良馬場を得意としているようだ。Sandownのbet365 Gold Cup Chase (G3)での好走歴もあり、距離延長は歓迎材料だろう。前々でレースを進める馬で、トップスピードよりもスピードの持続能力に長けたタイプ。ただし、飛越でミスをするとリズムを崩すところがあるようで、今シーズン初戦のC2や、前走のCF Roberts 25 Years of Sponsorship Handicap Chase (G3)は途中のミスが原因で着順を下げていることは懸念材料。やはりNational Fenceは難易度が高く、多少のミスはリカバリーしてこそ勝負圏内に加わることができる。今シーズンは秋ごろに3戦して、そこから3カ月ほどの休養に入っているようだ。暖かい時期がマイナスということはなさそうで、フレッシュな状態で出走できることは歓迎材料だろう。Richard Johnsonはイギリスのトップジョッキーで、特に前々で馬の飛越のリズムを作り出すことに長けている。この馬との相性は抜群だろう。

 

16. Warriors Tale|Paul Nicholls|Harry Cobdon|10st13lb

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Listedクラスまでは良績のある馬だが、重賞クラスにはほとんど出走歴がない。昨年のGrand National (G3)は後方から追走し、2回ほどの不利があったとはいえ特に勝負に加わることもなく、残り2障害地点で途中棄権に終わっている。少なくとも落馬に終わっていないことはプラス材料だが、後方から進めるタイプなだけに、なにかと途中で不利を受けるリスクは覚悟しておいた方がいいだろう。今シーズンは4戦してC2クラスで1勝。ここ4戦において11st11lb以上と背負った斤量は厳しく、一気に斤量面で楽になるのは良いのだが、やはり重賞クラスのペースに対する追走能力という観点を踏まえると、昨年のレース振りも考えれば重賞クラスで良績がないことは懸念材料である。Sky Bet Handicap Chase (Listed)でWakandaと激しい叩き合いを演じて挑んだ昨年以上の状態にあるかといわれると、どうにも微妙なところがある。

 

17. Regal Encore|Anthony Honeyball|Jonathan Burke|10st13lb

実績としてはListedクラスを2勝した程度。勝つときと負けるときの落差がはっきりしている馬で、いったいいつ走るのか全く分からないのだが、Ladbrokes Trophy (G3)でTotal Recallの3着があるあたり、持っている能力としては重賞クラスのものはあるのだろう。Grand National (G3)には2017年に挑戦し、One For Arthurからはだいぶ離れた8着に入っている。とりあえずコース経験があるのはよいのだが、もちろん今回もまともに走るのかわからない。Mark Walsh騎手騎乗かと思いきや、Barry Geraghty騎手が落馬負傷のため、Anibale FlyにMark Walsh騎手に騎乗することになったのはどうにも不安材料である。

 

18. Magic of Light|Mrs Jessica Harrington|Paddy Kennedy|10st11lb

アイルランド牝馬。どちらかというと牝馬限定戦で実績を残してきた馬で、NewburyのThoroughbred Breeders Association Mares' Chase (Listed)、OLBG.com Mares' Hurdle (G2)などの勝ち鞍がある。今シーズンはTroytown Handicap Chase (Grade B)にてTout Est Permisの3着はあるのだが、やはりやや牡馬・セン馬相手の重賞クラスとなるともう一押しが足りないというのが現状だろう。比較的Chase競走は整備されていない牝馬クラスにおいて、飛越技術を含め能力は牝馬クラスでは抜けたものを持っている馬だが、さすがにここに入ると強調できるものではない。

 

19. A Toi Phil|Gordon Elliott|Denis O'Regan|10st10lb

アイルランドのChase重賞でひたすら精力的に走っている馬。2016-17シーズンは計9戦、2017-18シーズンは計11戦をこなしており、今シーズンも例によって10月から始動し既に7戦を消化している。アイルランドにはしばしばこのように物凄いペースでレースを使い続ける上にどこでもそこそこに走ってしまう、日本の常識では考えられないほどタフな馬がいるのだが、この馬はその類である。16fから24fまでどこでも良績があるが、16fをこなすほどのスピードはなく、24fを踏ん張るほどの持久力には欠けるためか、良績は20fに集中しているようだ。ただしBolyesports Champion Chase (G1)にてUn De Sceauxの3着があるように、G1クラスでも入着のある昨シーズンと異なり、今シーズンはどうにもパッとしない成績である。ここのところはHurdleを2走しており、何かしら意図はありそうなのだが、アイルランドの天才Jack Kennedyを確保していた昨シーズンとは違い、今シーズンは騎手が一定しないのもいまいち。

 

20. Jury Duty|Gordon Elliott|Robbie Power|10st11lb

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アイルランド長距離Chaseの常連で、昨シーズンはLiam & Valerie Brennan Memorial Florida Perl Novice Chase (G2)の勝ち鞍がある。G1クラスでもNeville Hotels Novice Chase (G1)でShattered Loveの2着、Growise Champion Novice Chase (G1)でThe Storytellerの3着などがあるが、いずれも色々とアクシデントのあったレースであり、純粋に着順を評価していいものではないだろう。むしろアマチュア騎手限定の32f戦であるCheltenham FestivalでNational Hunt Challenge Cup (G2)に回っていたことを考えると、G1路線では若干決め手不足であると判断されていたものと考えられる。今シーズンは夏のGalway FestivalのメインレースであるGalway Plate(Grade A)から始動し、Kerry National (G3)ではやや大敗したものの、それ以外は安定したレースを見せている。特に前走の26f戦であるbaroneracing.com ChaseではMala Beachを6馬身突き放す快勝を見せており、調子はよさそうだ。PWC Champion Chase (G2)ではこの馬にとってさほどプラスではない良馬場であったとはいえ、軽快に飛ばしたスピード馬Woodland Operaから10馬身ほど離されたことを考えると、やはり24f路線の馬であると考えられるのだが、32f戦のNational Hunt Challenge Cup (G2)では最後脚が上がっての落馬に終わっている点は、さらなる距離延長に対する懸念材料でもある。

 

21. Noble Endeavor|Gordon Elliott|Mark Enright|10st10lb

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アイルランド長距離Chaseで活躍した馬で、2016年のPaddy Power Chase (Grade B)勝ちの他、2017年Cheltenham FestivalのUltima Handicap Chase (G3)ではUn Temps Pour Toutの3着がある。重賞戦線ではある程度コンスタントに走るタイプであったのだが、2017年のIrish Grand National (Grade A)にて6着のあとに600日ほどの休養に入り、昨年の12月にようやく復帰。近年Gordon Elliott師は精力的にイギリスに馬を送り込んでおり、ついでに日本にも来てくれればいいのだが、この馬の復帰後2戦はいずれもイギリスでのレースとなっている。ただしBecher Chase (G3)は9着、Ultima Handicap Chase (G3)は10着と、いずれも全体的にやる気に溢れる馬が揃うハンディキャップ重賞であったとはいえ、大きく着順を落としているのは懸念材料だろう。距離延長が悪い方向に出るタイプではなく、National Fenceもこなせるように思えるのだが、やはり休養明けの2戦の内容を見る限りでは、馬の状態がやや心配である。

 

22. Monbeg Notorious|Gordon Elliott|Sean Bowen|10st10lb

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昨シーズンからChaseに転向した馬だが、Noviceの身ながら挑んだGoffs Thyestes Handicap Chase (Grade A)ではまさかの11馬身差の圧勝。返す刀でTen Up Novice Chase (G2)も勝利すると、超絶不良馬場になったIrish Grand National (Grade A)こそ大敗したものの、ここまで散々話題になっているPaul TownendちゃんがやらかしてしまったGrowise Champion Novice Chase (G1)ではすったもんだの末にThe Storytellerの2着に入っている。しかし、素晴らしいシーズンとなった2017-18とは異なり、今シーズンは3戦して全て大敗。手ごたえが怪しくなってからも強烈なパワーでねじ伏せてくるような走りが印象的な馬で、おそらく今シーズン3戦はいずれも良馬場であったという実績から考えれば、明らかに重馬場の方ならではというタイプ。馬場次第では巻き返して来る可能性はあるものの、良馬場ではほぼ出番はないものと考えた方がいいかもしれない。

 

23. Ramses De Teillee|David Pipe|David Noonan|10st9lb

昨シーズンまではNovice Chaseの下級条件戦を勝った位程度の馬であったのだが、Wind Surgeryを経て復帰した今シーズンは飛躍の年となっている。初戦のListed Chaseこそ5着と敗れたものの、Welsh Grand National Trialは11st10lbのハンデを背負って勝利。さらにColin Tizzard先生が優勝トロフィーを表彰式で落っことしたWelsh Grand National (G3)はElegant Escapeの2着に入っている。序盤からブリンカーが効きすぎたVieux Lion Rougeが暴走に近いペースを作りだす展開を好位から追走し、強力なワンペース型のステイヤーであるElegant Escapeに最後まで食らいついたパフォーマンスは高く評価していいもの。続くGrand National Trial (G3)でも同様にBishops Roadがぶっ飛ばした展開を2着に踏ん張っており、Welsh Grand Nationalの走りがフロックでないことを示している。ハンデも10st9lbと楽であり、ここまでのパフォーマンスを考えると無視できない一頭。現時点で落馬のない飛越技術もプラス材料だろう。7歳での出走はかなり若齢の部類であり(Grand Nationalは7歳以上限定戦である)、もし勝利するとなると1940年以来となる歴史的な快挙になる。

 

24. Tea For Two|Mrs Jane Williams|Lizzie Kelly|10st9lb

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Kauto Star Novices' Chase (G1)Bowl Chase (G1)を女性騎手Lizzie Kellyとのコンビで制した馬。もともとやや行きたがる気性がありながらこれをうまくLizzie Kellyが制御しつつ、瞬間的な機動力を生かして抜け出すというのが勝ちパターンであった。しかし2017-18シーズンはKing George VI Chase (G1)の3着が最高とややパフォーマンスを落とし、2018年の夏にWind Surgeryを受けている。さらに今シーズンは比較的得意のKempton競馬場のKing George VI Chase (G1)や、TauntonのWetherbys Portman Cup (C2)までも含めた大敗続きと、往年の勢いと比べるとかなり精彩を欠いており、前走のGlenfarclas Cross Countryにおいて初のCross Countryに挑戦するも、後方から見せ場なく追走し、途中で落馬に終わっている。元々気性的にかなり前向きなタイプであっただけに、もしかすると少しずつ気性面での問題が出ているのかもしれない。全盛期はG1クラスの破壊力を持っていた馬だが、ステイヤーとして距離を延長させて良いイメージはなく、飛越も特別上手いという印象もない。斤量は一気に楽になるとはいえ、さすがに厳しいだろう。

 

25. Mall Dini|Patrick G Kelly|Sean Flanagan|10st8lb

25. Just A Par|James Moffatt|Aidan Coleman|10st2lb

Mall Diniの回避により補欠一番手であった12歳のJust A Parが滑り込んできた。2015年のbet365 Gold Cup Chase (G3)にて後方から物凄い脚を繰り出して勝利した馬。春先のSandown競馬場は合うようで、翌年の同レースもThe Young Masterの2着まで突っ込んできている。Grand National (G3)はこれで2016年、2017年に続き3回目の挑戦。ただし2017年の4月を最後に、転厩と同時に2年近い休養に入っており、 復帰戦となったBecher Chase (G3)も7着とやや着順を落としている。そこからぶっつけでここに挑んでくるのはどうにも引っかかるローテーションでもある。以前Grand National (G3)に挑んだ際はいずれも完走こそ果たすものの前とは大きく離された位置であり、そこから特別パフォーマンスを上げてくるとも考えにくい。少なくとも、コース経験が豊富なこと、斤量がかなり楽であることは追い風なのだが。

 

26. Step Back|Mark Bradstock|Nico de Boinville|10st7lb

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昨年のbet365 Gold Cup (G3)の勝ち馬。10st0lbの軽量に恵まれた部分は大きいのだが、Jamie Mooreが終始馬を気分よく先頭で走らせることにより飛越のリズムを作り出し、終わってみればChase4戦目の若馬にも関わらず、経験馬相手に13馬身差の圧勝劇を演じている。今シーズンも期待されたが、初戦のC2は大敗、続くClassic Chase (G3)も大敗とやや案外な結果に終わっている。Classic Chase (G3)は前半からCogryやMilansbarに絡まれ、結果としてハナを譲っている。Milansbarが失速したところで替わって先頭に立つも、早々に後続に来られると手ごたえが悪くなりあっさり後退という内容。どうにも自分のリズムで走れないと脆い部分がありそうだ。ゆったりとしたテンポのストライドを持つタイプの馬であり、このようなタイプは前々でストライドを持続させつつ、後続の体力をひたすら削り続けるようなレースの方が良さを発揮するのだろう。展開の鍵を握る一頭だが、Classic Chase (G3)はやや主張して逃げたCogryやMilansbarに前を譲ったことによる敗戦であるため、この馬が思い切って逃げるとなるとかなり厳しいレース展開になるだろう。

 

27. Ultragold|Colin Tizzard|Tom O'Brien|10st7lb

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11歳のNational Specialist。National Courseを使うレースで実績を残してきた馬である。Topham Chase (G3)は2017年2018年と連覇しており、2017年のGrand Sefton ChaseはGas Line Boyの2着、2018年のBecher Chase (G3)はWalk In The Millの3着と、National Courseでは全く崩れていない。さすがにCross Country初参戦となった前走のGlenfarclas Cross Countryは相手が強かった上に障害にも少々手間取ったようだが、この馬にとっては走り慣れたNational Courseに戻ることは明らかにプラス材料だろう。29fのClassic Chase (G3)も5着に入っており、距離的な不安もさほどないものと思われる。今年11歳となったベテランのNational Specialistが挑む初のGrand National (G3)、非常に楽しみな一頭である。

 

28. Blow By Blow|Gordon Elliott|Andrew Ring|10st6lb

2016年辺りにGigginstown House Studの馬が委託料金の問題で一斉にWillie Mullin厩舎を引き上げる事件があり、数々の有力馬がWillie Mullin厩舎を去ったのだが、そのごたごたに巻き込まれた一頭。National Hunt FlatではChampion Flat Race (G1)でChampion Bumper (G1)の勝ち馬Moon Racerを下していた素質馬だが、Hurdle路線ではThurles Racecourse Michael Purcell Memorial Novice Hurdle (G3)勝ちに留まっている。Chaseに転向した今シーズンは初戦のBeginners Chaseこそ快勝したものの、続くFlorida Pearl Novice Chase (G2)は2着。Neville Hotels Novice Chase (G1)でこそ3着に踏ん張ったものの、そこから3戦はいずれも大敗している。比較的慎重な飛越でも誤魔化しの効く初期のNovice Chaseであればまだ形は作れるのだが、特に2月のTen Up Novice Chase (G2)では飛越技術がついて行っていないのはさすがにいただけない。National Hunt Flatでこそ素質の片鱗は見せていたようだが、そこから障害馬としてのステップアップがあまりうまくいっていない印象。Leinster National (Grade A)も途中棄権に終わっており、さすがに経験馬相手は厳しいだろう。

 

29. Up For Review|Willie Mullins|Danny Mullins|10st6lb

昨シーズンからChaseを使っている馬で、今シーズンのThyestes Handicap Chase (Grade A)ではInvitation Onlyの3着に入っている。Invitation OnlyはCheltenham Gold Cup (G1)では気の毒なことになってしまったが、本来であれば今シーズンのアイルランド長距離ChaseのG1路線を賑わしたはずの実力馬で、当時の馬場はSoftであるため12馬身ほどの差はついたとはいえ、この3着は背負った斤量を考えれば評価できる内容である。Cheltenham FestivalのUltima Handicap Chase (G3)は残り3障害地点の大きなミスが原因で大きく位置を下げた結果、8着に敗れているが、いかんせんCheltenhamはあの地点でのミスは大きく勝敗を左右するだけに、さほど大きく悲観する内容ではないだろう。ただし馬場は若干渋った方がよさそうな印象がある。

 

30. Singlefarmpayment|Tom George|Paddy Brennan|10st6lb

勝ち鞍としてはNovice時代にC2勝ちがある程度だが、24fの重賞でも精力的に活躍してきている馬で、2017 Ultima Handicap Chase (G3)CF Roberts 25 Years of Sponsorship Handicap Chase (G3)の2着がある。Ladbrokes Trophy (G3)でもいいところで落馬に終わっているものの勝負圏内には加わっている。元々Novice馬らしからぬ飛越技術を武器に馬群をすり抜けて捲り上げてきた馬で、長距離の多頭数のハンデ戦での経験値が高いのはプラス材料。どうにも平地のスピードの部分でいまいちなため、どうにも勝負弱いところがありそうだが。もっとも、得意としているはずのCheltenhamで、前走のUltima Handicap Chase (G3)にて謎の大凡走をやらかしているのは懸念材料。ペースの推移を踏まえると捲り上げるタイミングがなかったという可能性はあるのだが。

 

31. Vieux Lion Rouge|David Pipe|Tom Scudamore|10st6lb

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Grand National (G3)には、これで2016年(7着)、2017年(6着)、2018年(9着)と、4年連続の出走となる。主な勝ち鞍としてはBecher Chase (G3)Grand National Trial (G3)などがある。もはや現役を代表するNational Specialistの一頭。Wind Surgeryを経た今シーズンは例によってBecher Chase (G3)から始動、Walk In The Millの2着に入るが、謎の大暴走をやらかしたWelsh Grand National (G3)ではさすがに失速し途中棄権、やはりBishops Roadが大暴走したGrand National Trial (G3)でも早々に途中棄権している。ここ2戦はオーバーペースということでいちおう言い訳は立つのだが、やはりノドの手術を行ったことを考えると、ノドの状態がさほど良くない可能性は否定できない。また、ここ3年ともNational Fenceにおいて安定した競馬を続けてはいるものの、勝負圏内には入れていない辺り、やはり微妙に距離は長いのかもしれない。Wind Surgeryを経てパフォーマンスの向上が望めるのであれば面白い一頭なのだが。

 

32. Valseur Lido|Henry de Bromhead|Rachael Blackmore|10st6lb

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Grand Nationalのパドックのいいところは、見ての通り馬との距離が異様なまでに近いことである。もはや芋洗い場の如く馬がたくさん回ってくるのだが、馬はよく調教された障害馬たちであり、非常に大人しく静かに周回している。彼らはよく人に慣れており、こちらを興味深そうにガン見してくる馬もいる。騎手をはじめ関係者はファンに快く応えており、野次を飛ばそうが何をしようが基本ガン無視され、ピリピリとした空気の漂う日本の競馬とは違い、世界的な大レースの前にも関わらず非常に温かな雰囲気である。

Valseur LidoはBlow By Blowと同様にGigginstown House Studのごたごたに巻き込まれた馬。Drinmore Novice Chase (G1)Growise Champion Novice Chase (G1)JNwine.com Champion Chase (G1)勝ちのあるアイルランドの名馬。昨年のGrand National (G3)では11st7lbの斤量を背負いながら、前々で積極的に運び、最後は脚を使い切って8着に入っている。しかしGalway Plate(Grade A)から復帰した今シーズンは、シーズン序盤でゆったりと進行したListed ChaseでAlpha Des Obeauxの僅差の2着に入った以外、全く結果を残せていない。昨年の時点ですでにG1クラスで戦うにはスピード不足が目立ってきており、そこから伸びしろがあるとなるとどうにも厳しいものがある。前走はCheltenham FestivalのBrown Advisory & Merriebelle Stable Plate Handicap Chase (G3)を使っており、久々の20f戦を叩いて馬に刺激があればよいのだが。昨年よりも一気に斤量が落ちるのは大きなプラス材料だが、さすがに今シーズンの成績を考えるとだいぶ厳しそうな印象である。鞍上にはアイルランドの女性騎手Rachael Blackmoreを確保したようだ。

 

35. Vintage Clouds|Mrs Sue Smith|Danny Cook|10st4lb

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勝ち鞍としてはHaydockのC2程度にとどまる馬だが、重賞クラスでも常に上位人気に押されるように評価の高い馬であり、そしてその評判が正しいことを示すべく、なにかと上位に食い込んできている。Chaseデビューとなった2016-17シーズンでは勝ち星を挙げることは叶わなかったものの、昨シーズンの活躍は目覚ましく、Welsh Grand National (G3)ではRaz De Mareeの4着、Towton Novices' Chase (G2)でもBallyopticの2着、Ultima Handicap Chase (G3)ではCoo Star Sivolaの3着、さらにScottish Grand National (G3)もJoe Farrellの3着に入っている。昨年のWelsh Grand National (G3)は途中棄権に終わったものの、今年の初めのWind Surgeryを経て、Ultima Handicap Chase (G3)ではBeware The Bearの2着と好走。Wind Surgeryの効果があることを感じさせる走りであった。非常に緩慢ながらも持続力のあるストライドを武器にする馬で、そのスタミナだけであれば現役屈指のものを持っている。一方でどうにも素早い動きができないために、飛越のミスでスピードを殺された際にリカバリーするのが困難であり、勝負所でスピード負けすることためにどうしても惜敗が多くなるという特徴がある。この馬の高いスタミナ能力を生かすのであれば当然馬場は悪くなったほうが良いのだが、ここまで緩慢なストライドを持つ以上、良馬場の方が動きやすいという側面もあるのだろう。飛越さえまともであれば勝負圏内に入ることができる一頭。ただし、気性的にはかなりズブいところがある上に、馬群に入ってしまうと早々にリズムを崩すリスクも抱えている。National Fence特有の細かいリカバリーに対する課題もある。性能的には物凄く興味深い一頭なのだが、一方でもろ刃の剣のようなリスクも抱えており、主戦Danny Cook騎手の手綱さばきも含め、そのレース振りが注目される一頭だろう。

 

34. General Principle|Gordon Elliott|J J Slevin|10st4lb

大雨で開催するのが謎であるほどの超絶不良馬場となったIrish Grand National (Grade A)を勝った馬。とはいえ上位馬としては最終障害の辺りで先頭にいたBellshillが思いっきり外にヨレたりと、色々とアクシデントがある中を最後顔を出してきたといった印象があり、上位馬の中で大きく抜けていたという印象はない。当時もやや加速がつくまでに苦労していた面を考えると、馬場はかなり悪くなったほうがよさそうで、前走のUltima Handicap Chase (G3)でも全く勝負に加わることなく途中棄権に終わっている。Irish Grand National (Grade A)のような不良馬場の展開でないと、スピード能力の面で追走に苦労するかもしれない。

 

35. Livelovelaugh|Willie Mullins|David Mullins|10st4lb

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良績としては21fのAbbey International Leopardstown Handicap Chase (Grade A)にてWisperinthebreezeの2着がある程度。馬場はさほど注文が付かないタイプのようだが、24fの延長してパフォーマンスを向上させたという実績はなく、前走のアマチュア騎手限定戦であるFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupでも11st12lbを背負っていたとはいえ大敗している。さすがに厳しいだろう。

 

36. Walk In The Mill|Robert Walford|James Best|10st4lb

もともとC3のハンデ戦勝ちがある程度の馬であったのだが、今シーズンのBecher Chase (G3)を勝利して一躍その存在感を上げることになった。10st3lbの軽量を生かした部分も大きいのだが、初のNational Fenceにも関わらず大きく飛越に問題が生じることがなかったことは高評価だろう。その後はHurdleを2回叩いてここに備えてきた。36番目とぎりぎりで滑りこんできたのは、Topham Chase (G3)との両睨みであった可能性もあるのだが、Robert Walford調教師の策が当たった結果ともいえる。アマチュア騎手限定戦にも参戦歴があり、飛越技術としてはかなり高いものを持っているようだ。

 

37. Folsome Blue|Gordon Elliott|Luke Dempsey|10st4lb

非常に長くアイルランド24f Chase路線で戦ってきた12歳馬。大きな勝ち鞍としては昨年のPunchestown Grand National Trial Handicap Chase (Grade B)が挙げられるだろうか。どちらかというと距離が伸び、馬場が重くなるほど力を発揮するタイプのようで、前述のIrish Grand National (Grade A)でも勝ち馬のGeneral Principleとは全く差のない5位入線(4着)まで滑り込んでいる。ただしVieux Lion Rougeが前半から積極的に飛ばしたWelsh Grand National (G3)では後方から進め、さっぱり前には届かない8着であり、ややスピード面では不安が残りそうだ。また、良馬場となるといまいち実績には乏しい点も不安材料。

 

38. Captain Redbeard|Stuart Coltherd|Sam Coltherd|10st3lb

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Coltherd親子が送り込む10歳のベテラン。National Fence自体はこれが4度目の挑戦となる。今シーズンはMalcon Jefferson Memorial Chase (C2)にてDefinitly Redを下してきているのだが、そもそもこのレースは2頭立てで、これから重賞クラスを目指す馬であるDefinitly Redにとってはさっぱりやる気がなかったというところがある。その後のKelsoのBelhaven Brewery Premier Chase (Listed)では大型馬Blue Flightの3着に入っているのだが、これもまた全体的にあまり意欲的なレースではなく、額面通りに受け取れないだろう。あまりスピード能力に長けた馬という印象はなく、ある程度馬場は渋った方が良さを発揮できそうだ。

 

39. Bless The Wings|Gordon Elliott|Robbie Dunne|10st3lb

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去年の3着馬で今年14歳になる大ベテラン。やや暖かい時期の超長距離戦で良さを発揮することが多いようだが、走らないときはさっぱりやる気なく追走した上に、気が付いたら途中棄権していたりするので全く信用できない。昨年も例のIrish Grand National (Grade A)は後方でちんたら追走し早々に途中棄権していたにも関わらず、そこからたったの12日後のGrand National (G3)では激走するのだから、要するにこういう馬なのである。今シーズンは例によってCheltenhamのGlenfarclas Cross Countryを主に使うも、3戦ともどうにもぱっとしない結果に終わっている。さすがに年齢が年齢だけにという説もあるのだが、持っている飛越技術と持久力の高さを考えると、いきなり走ってもおかしくはない。ただしさほどスピードはないため、さすがに勝ち切るまでは厳しいだろう。

 

40. Joe Farrell|Miss Rebecca Curtis|Adam Wedge|10st2lb

普通に考えれば出走は無理そうな位置にいたのだが、なんと40番目でめでたく滑り込んできた馬。これだけで色々運が向いていそうな感があるのだが、案外これが実力のありそうな新進気鋭の馬である。Novice馬ながら昨シーズンはScottish Grand National (G3)を勝利。Ballyoptic、Vintage Clouds、Vicenteなどのいつものメンバーを下しての勝利であり、その内容は評価されていいものである。今シーズンは初戦のVeterans' Chaseは大敗しているが、3月のC3では11st12lbを背負いながらChic Nameの2着とパフォーマンスを上げてきた。調子はだいぶよさそうで、今シーズンはまだ3戦目と馬がフレッシュなのも高評価。明らかに距離延長はプラスになるこの馬にとって、10st2lbで走れるというのは大きなプラス材料である。まさかの出走順40番目からの大駆けがあっても不思議ではない。

 

41. The Young Master|Neil Mulholland|(補欠1)|10st2lb

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Grand National自体はBecher's Brookで落馬した2017年以来の参戦となる。2016年のBet365 Gold Cup (G3)を勝利した馬で、2017年は10st13lbとそこそこ斤量は背負っていたのだが、今回は10st2lbとだいぶ斤量を落としての参戦である。もともとスピード能力の面では微妙なところがあり、どちらかというとだらだらとワンペースで走るタイプの馬。近年はすでに重賞クラスではやや厳しいようで、どちらかというとアマチュア騎手限定戦で見せ場を作っているようだ。今シーズンはLadbrokes Trophy (G3)では荷が重かったようだが、アマチュア騎手限定戦をすでに2勝。この馬なりに調子は良さそうだが、やはりスピード能力の面でここに入って足りるかといわれるとやや心もとない。おそらくアマチュア騎手としては屈指の実力を誇るMr Sam Waley-Cohenを確保できることが期待されるが。

 

42. Isleofhopendreams|Willie Mullins|(補欠2)|10st2lb

12歳のベテランだが、ここまでのキャリアでは間にちょくちょく大きな休みを挟んでおり、Chaseはまだ8戦とさほど数は使っていない。例の超絶不良馬場となったIrish Grand National (Grade A)でもGeneral Principleとは僅差の2着に入っている。ただし走るときと走らないときの差が非常に激しく、今シーズンは3戦して途中棄権2回、2着1回と極端な成績。とりあえず前走のLeinster National (Grade A)は2着と調子を上げてきた可能性はあり、超長距離戦は良さそうな印象だが、さすがにここまで極端な成績ばかりが続く馬だと信用しにくい部分がある。

 

43. Exitas|Phil Middleton|(補欠3)|10st2lb

目立った成績としては、9st8lbで勝利したAscotのByrne Group Handicap Chase (Listed)くらいだろうか。昨年の5月からほぼ休みなく使われており、次で19戦目となる非常にタフな馬。オフシーズンのC3からC2辺りを主に使われているタイプのようで、今シーズンも10月辺りの全体的に休み明けの馬が多いC2のVeterans' Chaseを快勝している。Veterans' Chaseクラスであればまだやれるくらいの実力はありそうだが、やはりここであると実力的に不安が残る。斤量を生かしてどこまでというところだろう。