にげうまメモ

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19/11/16 National Hunt Racing

*Cheltenham Soft (Heavy in places)

Ballymore Novices' Hurdle (G2) 2m5f

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/cheltenham/552689/ballymore-novices-hurdle-grade-2-registered-as-the-hyde-novices-hurdle

November Meetingなのだが、残念ながら雨のために馬場の一部が水没し、金曜日の開催は中止となった。幸い回復したため、金曜日のレースの一部を残りの日程に移す形で土曜日以降のレースは開催されることになった。

レースはSome Day Soonがゆったりと引っ張る展開。Happygolucky、Born By The Seaなどが好位から進める。人気のThyme Hillは後方から進めるも、徐々に位置を上げ、追いかけてきたChampagne Wellを振り切って勝利した。Happygoluckyが3着に入った。

Thyme HillはこれでChepstowのPersian War Novices' Hurdle (G2)から連勝とした。昨シーズンはChampion Bumper (G1)にてEnvoi Allenの3着に入った馬で、Envoi Allenが先日Maiden Hurdleを快勝しているように、昨シーズンのChampion Bumper (G1)は順調なHurdle参戦を果たしていると言える。今回は昨シーズンからNovice Hurdleを使ってきた馬が存在しメンバーが揃っていたが、内容としては完勝だろう。昨シーズンのDoom Bar Sefton Novices' Hurdle (G1)にてChampの6着に入ったChampagne Wellはさすがに力を見せた。

 

JCB Triumph Trial Juvenile Hurdle (G2) 2m87y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/cheltenham/550406/jcb-triumph-trial-juvenile-hurdle-registered-as-the-prestbury-juvenile-hurdle-grade-2

するすると逃げて行ったAllmankindがそのまま勝利。追いかけてきたBotox Hasが2着に入った。人気を背負っていたMick Pastorは大敗。

AllmankindはこれでHurdleは2戦2勝とした。もともとはイギリスの平地を使っていた馬で、Homeserve Dee Stakes (listed)にも参戦した経歴がある。比較的強力なフランスからの移籍馬が存在したのだが、内容的には今後が楽しみになるパフォーマンスであった。フランス時代にはAuteuilのListedにてKick Upの2着もあるBotox Hasが2着。期待されていたMick Pastorは大敗したが、フランス馬らしく飛越を丁寧に行うタイプであり、イギリス障害においてまだペースアップに付き合っていくことが出来ていないように見えた。

 

Novices' Chase (C2) 3m80y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/cheltenham/550407/mallardjewellerscom-novices-chase

後方から進めたWholestoneがRockpoint、Redzorを抑えて勝利。Minella Warriorは途中棄権に終わった。

WholestoneはHurdleでは20-24fの重賞路線で活躍した馬で、複数の受賞価値があるほか、Ryanair Stayers' Hurdle (G1)ではIdentity Thiefの2着もある。Chaseはこれで3戦2勝とした。先頭を走っていたPoker Playがやや障害手前で蛇行するため後続の馬としては飛越しにくい部分もあったようだが、終始飛越自体は安定していた。ただし前走と同様にCheltenhamの坂を上る部分で後続が一旦殺到していたところを見ると、もしかすると上り坂を登るパワーという点では不安が残るかもしれない。

 

BetVictor Smartcards Handicap Chase (G3) 3m3f71y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/cheltenham/550408/betvictor-smartcards-handicap-chase-grade-3

Achilleが軽快に逃げる展開。これにPotters Legendが迫るも、後方から少しずつ位置を上げてきたWest Approachが最終障害を越えてこれを捉えて勝利した。Ramses De Teilleeは4着まで。

West Approachはようやく重賞初勝利とした。昨シーズンもLong Walk Hurdle (G1)にてPaisley Parkの2着があったりと能力は高いのだが、とにかく気性的に難しいためにアテにならない部分があった。Robbie Powerの騎乗はこの馬のやる気を削がず、最終障害を越えたところから強引にでも動かしていくことで勝利をもぎ取るやり方で、今回はこれが功を奏したものといえる。とにかく走ったり走らなかったりと信用できないため、今回の勝利でなにかが変わってくるというわけでもないのだが、ようやくいいことがあったと喜ぶべき勝利なのだろう。C3で活躍してきたAchilleは一気の相手強化であったが好走した。Potters Legendもやはりこのくらい距離はあった方がよさそうだ。

 

BetVictor Gold Cup Handicap Chase (G3) 2m4f44y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/cheltenham/550409/betvictor-gold-cup-handicap-chase-grade-3

後方から進めたHappy DivaがBrelan D'asを抑えて勝利した。やや遅れて途中から先頭に立ったWarthogが入った。Slate Houseは残り2障害にて落馬。Un And Themはいいところなし。

Happy Divaは重賞は初勝利とした。昨シーズンはHuntingtonの牝馬限定Listed ChaseにてMagic of Lightを下す走りを見せており、とにかく堅実に走ってくるのが持ち味の馬。ここまで堅実に走ってくる牝馬はなかなかいないのだが、いい勲章になったのではないだろうか。Brelan D'asは前走の落馬もあり人気を落としていたが、昨シーズンのNovice時代から比べると進捗を見せる2着に入った。昨シーズンのNovice ChaseにてG1連続2着のあったUn And Themはどうにも走らなかった。昨シーズンの終わりに落馬があってからはどうにも調子を落としており、やや心配なレースとなってしまった。なお早々に遅れ途中棄権に終わった11歳のベテランSplash of Gingeはこれで引退とのこと。

 

*Punchestown Soft (Soft to Heavy in places)

Beginners Chase 2m3f200y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/punchestown/552238/naas-oil-beginners-chase

11歳となったFaugheenがまさかのChase参戦ということで注目されていた。そのFaugheenが逃げる展開も、第8障害で大きなミス。代わってLord Schnitzel、さらには外から捲ってきたWalk Awayが先頭に立つも、最終障害で前に出たFaugheenがそのままWalk Awayを退けて勝利した。

Faugheenはかつては"The Machine"と呼ばれるほどの正確無比な飛越と圧倒的なスピード能力を誇った馬で、2015年のMorgiana Hurdle (G1)で同厩舎Nichols Canyonにまさかの敗北を喫するまでは圧勝に次ぐ圧勝を見せていた。しかしその後は故障などのアクシデントに悩まされ、特に昨シーズンは4戦するも未勝利、Stayers' Hurdle (G1)ではPaisley Parkに対して完敗の3着に終わっていた。馬自身としては精神的に元気なようだが、やはり故障の影響か以前のような身体の使い方はできないようで、それが飛越のリズムの悪さやミスに繋がっていたような印象がある。とはいえやはりこの馬の武器は飛距離のある飛越とスピードの持続力であり、今回のレースでも途中のミスの影響で番手に収まってからはやや飛越のリズムを悪くしていた。また、飛距離のある飛越を繰り出せるがために、踏み切り位置の調整では若干甘いところもあるようだ。Chaseの障害はPoint to Point以来であったのだが、ひとまずこなすことが出来たのは収穫だろう。高齢馬のためにChaseでどこまで戦うかは不明であり、やはり故障の影響で以前の身体能力をフルに発揮できているわけではないのだが、この年になってもこれだけの伸びやかな飛越を見せることが出来る身体能力には恐れ入る。元々の身体能力やスピードの持続力を考えれば、加齢とともにChaseという可能性を模索するのは実に当然の話なのだろう。特に日本のような環境では元々いた路線でパフォーマンスを落とし始めた高齢馬は脊髄反射的に引退という声が強くなるのだが、精神的に元気な馬にとって単純に競走馬という可能性を潰すことは必ずしもその馬のためになるとは限らない。11歳という高齢になった馬でもChaseという新しい可能性を模索し、競走馬としての活躍の場を提供することが出来るアイルランド障害競馬の懐の深さを感じるレースであった。

 

Elliott Group Craddockstown Novice Chase (G2) 2m40y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/punchestown/552239/elliott-group-craddockstown-novice-chase-grade-2

先行集団にいたNotebookがそのままMoon Over Germanyを5馬身ほど突き放して勝利した。Eclair de Beaufeuは4着。

NotebookはChaseは2戦2勝とした。HurdleではNoviceのG3勝ちがある程度の馬だが、昨シーズンのClose Brothers Red Rum Handicap Chase (G3)勝ちのあるMoon Over Germanyをこれだけ圧倒する走りは今後が楽しみになるものである。そのMoon Over Germanyはさすがに安定したレースを見せた。なぜこの馬がNoviceを走っているのかよくわからない。

 

Morgiana Hurdle (G1) 2m110y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-11-16/punchestown/552240/unibet-morgiana-hurdle-grade-1

本日のメインレース。例によってPetit Mouchoirが飛ばす展開。Klassical Dreamは番手から進める。遅れてSharjahとSaldier。Klassical Dreamは少しずつ位置を上げ、残り2障害から逃げるPetit Mouchoirを捉えに掛かるが、外から伸びたSaldierがこれを一閃。Petit Mouchoirに1馬身ほどの差をつけて勝利した。Klassical Dreamは3着。Sharjahは遅れた。

Saldierは371日ぶりのレースであったが素晴らしい走りを見せた。Novice時代にはAES Champion Four Year Old Hurdle (G1)勝ちのある馬で、昨シーズン初頭のFishery Lane Hurdle (G3)で落馬、鼻骨を骨折して長い休養に入っていた。例のG1はどうにもMullins厩舎の圧倒的な包囲網でGordon Elliot厩舎の馬をいじめ抜いたレースという側面が強かったのだが、その中で高い機動力で勝ち切ってきた能力は本物だった。Petit Mouchoirは自身のレースはした。Klassical Dreamは案外だが、本来もう少しスムーズに、かつ強気に動いて行った方がこの馬の良さを出せるだろう。シーズン初戦ということで大事に乗った感もあるのだが、Petit Mouchoirを交わせないようでは少々先行きは怪しくなってくる。