にげうまメモ

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19/12/26 National Hunt Racing

*Kempton Soft

Kauto Star Novices' Chase (G1) 3m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/kempton/555411/ladbrokes-kauto-star-novices-chase-grade-1

さかのぼればLong Run、Coneygreeなど活躍馬が出ているのだが、近年の勝ち馬はTea For Two、Royal Vacation(Might Biteの棚ぼた感もあるのだが)、Black Cortonなどと、どうにもその後は案外な結果を残している。Novice Chaseの24f戦はここまであまり数もなく、この時期というのはやや難しいのかもしれない。レースはMaster Tommytuckerが逃げる展開だが、残り4障害で落馬。代わって先頭に立ったSlate HouseがBlack Opを凌いで勝利した。Danny Whizzbang、Jarveys Plateは遅れた。

Slate Houseは前走のC3から連勝とした。Chase自体は2019年の1月から使っているのだが、全く結果が出ず、今シーズンもNoviceクラスに留まっている。HurdleではSupreme Trial Novices' Hurdle (G2)にてSummerville Boyを下した実績もあるのだが、その後の凡走ではどうもノドの影響がかなり大きかったようで、結果として2回のWind Surgeryを実施している。今シーズンはどうやらこれが効いたようだが、2回のWind Surgeryということでノドの病状が慢性化している可能性もあり、今後の動向には注意した方がよさそうだ。Mersey Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Black Opは惜しい2着。前走もChampの一気のスピードにやられた辺り、瞬間的な機動力は高くなさそう。未知の魅力を買われて人気を背負っていたMaster Tommytuckerは落馬に終わったが、そこまでの飛越ではスムーズなものをみせていたものの、落馬の場面ではやや飛越に未熟な面が見られた。

 

Christmas Hurdle (G1) 2m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/kempton/555412/ladbrokes-christmas-hurdle-grade-1

Ballyandyがじわじわとペースを上げて引っ張る展開だが、馬群は密集して進行。中団から少しずつ抜けてきたEpatanteが追いかけてきたSilver Streakを振り切ると、そのまま5馬身差の快勝。昨年の勝ち馬Verdana Blueは4着に遅れた。Big Blueは残り3障害辺りからついて行けなくなり途中棄権。

Buveur D'Airの離脱もあってやや主役不在と化していたこの路線なのだが、なかなか楽しみな馬が出てきた結果となった。Epatanteは昨シーズンまでは牝馬限定戦のみを走ってきた馬で、Cheltenham Festivalではまさかの大敗を喫していたのだが、今シーズンはIntermediate Hurdle (Listed)から連勝とした。内容としては機動力でFrench Crusader以下を圧倒してきたものだが、Ballyandyがロングスパートに近いような厳しい流れを作り出す中、最後までスプリントを掛けたパフォーマンスは非常に高く評価できるものである。Silver Streakはどうにもつかみどころのない馬だが、こういう持久戦になって力を発揮するタイプのようだ。案外距離は持たないので、この路線でロングスパートを狙うのが基本となるだろう。Ballyandyは前走に引き続き好走した。Sam Twiston-Davies騎手はようやくここにきてこの馬の良さを発揮するようなレースをしているような感がある。Verdana Blueは案外伸びきれず。乱ペースとなったChampion Hurdle (G1)も大敗しており、今回はやや厳しかった。3戦無敗で挑んできたFusil Rafflesは一気の相手強化で全く対応できず。

オーストラリア調教馬のBig Blueはこれがイギリス初戦であったのだが、やや行きたがって走る結果馬群の中に入れていたのだが、馬群の中での飛越技術という面で他馬とは見劣る面があった。結果的に飛越のたびに加速を掛けて馬群について行かざるを得なくなっており、今回のようなロングスパートの我慢比べとなるといくら何でもこのような飛越ではどうしようもない。残り4障害にてミスがあったという話もあるのだが、おそらくミスだけの影響ではないだろう。この馬が勝利したGalleywood Hurdle自体、飛越技術というよりは平地のスピードを生かしたGoodwood Zodiacがレースを作っており、完成度の高い飛越を要求されたレースとは言い難い。おそらくイギリストップクラスの飛越技術をもつ馬を相手に馬群の中で追走したことは、この馬にとって初の経験だったと考えられる。まだHurdleの経験は少ない馬であり、この馬の今後の進歩や、オーストラリア障害競馬へのフィードバックに期待したいところである。日本障害馬がイギリスに行くとなるとHurdleが適しているという意見は多く、実際にChaseで使用される障害をこなせるとは思えないのだが、おそらくHurdleを走るとなると飛越技術や本来のステイヤーとしてのレース経験に劣る日本障害馬にとっては、Big Blueと同様のビハインドを抱えることになるだろう。

 

King George VI Chase (G1) 3m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/kempton/551428/ladbrokes-king-george-vi-chase-grade-1

Thistlecrackは坐石のため出走取り消しとなり、レースは5頭立てとなった。前半からAsoがハナに行く構えを見せるも、途中からCyrnameが先頭に立ちレースを引っ張る。少しずつ脱落したAso、飛越をミスして追走が苦しくなったLostintranslationを残して、Cyrname、Clan Des Obeaux、さらにはFootpadの3頭のレースとなるが、ここから抜け出してきたClan Des Obeauxが脚の上がった2頭を圧倒し、終わってみれば21馬身差の圧勝となった。Cyrname、Footpadと続いた。

Clan Des Obeauxはこのレースは連覇とした。どちらかというとG1路線で活躍できるものの格下扱いであった昨年であったのだが、今回の内容としては見ての通り完勝である。瞬間的な加速こそ速くないもののスピードの持続力に優れたタイプのようで、特に今回はCyrnameのようなスピードのある馬が中盤から激しく引っ張ることによって、この馬にとっては最も得意な条件が作り出されたようだ。Cyrnameはこの馬のレースはしたのだが、初の24f戦ということもあり、最後は苦しくなってClan Des Obeauxからは脱落した。Cheltenham FestivalとなるとRyanair Chase (G1)の方がいいかもしれない。Footpadは2017-18シーズンの16f Novice Chaseで他を圧倒してきた馬なのだが、その後はListed1勝のみに留まっている。24f戦がいいようには思えないのだが、それでも見せ場は作る辺り能力は高いのだろう。Lostintranslationは途中から飛越のリズムを崩したのだが、Bristol De MaiとCyrnameでは刻むスピードが異なる。

 

*Wetherby Soft

Powland Meyrick Handicap Chase (G3) 3m45y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/wetherby/557659/888sport-rowland-meyrick-handicap-chase-grade-3

Lachlan Bridgeが発馬拒否。Didero Vallisなどが逃げる展開も、途中からじわじわ先頭に立って行ったTop Ville Benが後続に8馬身差をつけて勝利した。

馬群が密集して進行する長距離戦ということで、誰それが逃げてペースを作るというよりは各々が自分のペースで走っているようなレースとなっている。Top Ville Ben自身は重賞初勝利だが、Mildmay Novices' Chase (G1)にてLostintranslationの3着もある。レース運びを見ていると、G1クラスでどうこうよいうよりはこのような長距離ハンデ戦の方がいいようで、11st11lbを背負ってのこの内容は今後が楽しみになるものである。おそらくGrand Nationalという選択肢が出てくるものと思われる。連覇を狙ったLake View Ladは3着まで。このレースの常連Wakandaも4着に入り、古豪健在ぶりを見せてくれた。

 

*Leopardstown Soft (Yielding in places)

Knight Frank Juveline Hurdle (G2) 2m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/leopardstown/557316/knight-frank-juvenile-hurdle-grade-2

先頭でレースを進めたAspire Towerが後続に18馬身差をつける圧勝。2着にはWolf Princeが入った。

Soft表示にしてはかなり各馬の脚が上がっており、着差は派手だが全体的に諦めた馬が多いためあまりアテにはならないだろう。Aspire TowerはHurdle自体は2戦2勝とした。平地では比較的長く走ってきた馬のようで、フラットのスピード自体は高そうだが、重馬場を苦にしないパワフルな走りも目立った。障害手前でややフラフラする癖があるのは今後解消されることを期待したい。Wolf Princeは早々に根を上げたClemencia、A Wave of the Seaを交わして浮上してきた。

 

Racing Post Novice Chase (G1) 2m1f

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/leopardstown/557318/racing-post-novice-chase-grade-1

前半からDjingleが果敢に引っ張る展開も、残り2障害辺りで後続が殺到。ここから抜け出してきたNotebookがFakir D'Oudariesを凌いで勝利した。Laurinaは途中棄権。

NotebookとFakir D'Oudariesのサイズの違いが気になって仕方がない。NotebookはこれでChaseは3戦無敗とした。Elliott Group Craddockstown Novice Chase (G3)はどうにもメンバーが微妙ということもあったのだが、引っかかって逃げたDjingleのペースを追走したレース内容は高く評価できるものである。飛越も大柄な馬体を生かしたパワフルなものを見せており、現時点のNovice馬としては十分に合格点である。Drinmore Novice Chase (G1)勝ち馬のFakir D'Oudariesはさすがに見せ場を作った。Notebookとはレース運びの差だろう。Royal Rendezvousも立派にレースに参加したのだが、さすがに前2頭のスピード能力と比べると厳しかったようだ。距離を伸ばしてどこまで。Djingleは前半から引っかかって逃げる場面があった。Laurinaは案外だったのだが、スタート直後から促して追走させていたように、このペースに追走できるだけの飛越技術はなかったようだ。Chaseは2戦目だけにこれからに期待したいが、Hurdleに戻すという選択肢もありえなくもない。

 

*Limerick Heavy

Matchbook Betting Exchange Novice Chase (G1) 2m3f160y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-26/limerick/556464/matchbook-betting-exchange-novice-chase-grade-1

FaugheenとSamcroのマッチレースということで注目が集まっていた。そのFaugheenが逃げ、これを好位からSamcroが追いかける展開となるも、残り2障害辺りからFaugheenがSamcroを突き放すと、最後は10馬身差の圧勝。後続は大きく遅れた。

FaugheenはHurdleではG1を9勝しているアイルランドの名馬中の名馬なのだが、11歳となった今年にてまさかのChaseへの転向をひょうめいし、Chaseはこれで2戦2勝とした。やや緩慢なストライドと運動能力の高さで押し切ってきたHurdle時代の飛越思想に起因する大きなミスがあったChase初戦とは異なり、今回の飛越は終始安定していた。前述の小兵Fakir D'Oudariesが身体能力をフルに生かしてリスクの高い飛越を繰り返していたところを持ったままで追走することが可能な、現役屈指の身体能力を誇るSamcroを圧倒するFaugheenの走り、そしてこれが11歳馬のパフォーマンスということには、見るものとしてはただただ感服するのみである。一旦はSamcroが前に出ようとしているように、瞬間的なスピード能力の面ではSamcroの方が上なのだが、やはりFaugheenの武器は持続的なスピード能力であり、それは完全に根を上げたSamcroを圧倒した最後の直線において顕著に表れている。このあとはDublin Festivalとのことで、どこまで現役を続けるのかは不明なのだが、なんにせよこのような馬は一日でも長く現役の競走馬として活躍を続ける姿を見ていたいものである。