にげうまメモ

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19/12/28 National Hunt Racing

*Newbury Soft

Challow Novices' Hurdle (G1) 2m4f118y

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-28/newbury/557998/betway-challow-novices-hurdle-grade-1

The Cashel Manが軽快に逃げる展開。人気のThyme Hillは後方から進めるも、残り2障害辺りから少しずつ進出し、The Cashel Manとのたたき合いを制して勝利した。後続は大きく遅れた。

Thyme Hillは前走のBallymore Novices' Hurdle (G2)から連勝とし、これでHurdleは3戦全勝とした。Envoi Allenの勝利したChampion Bumper (G1)の3着馬で、同レースの水準が非常に高かったことを示す今シーズンのNovice Hurdle戦線が展開されている。どうにも飛越技術には怪しいところもあったのだが、やや行きたがる素振りを見せつつも強靭なパワーとスピードの持続力を有する辺りはKayf Taraの成功例と言える。Novice馬ながらC2のハンデ戦を勝ってきたThe Cashel Manは自ら展開を作って好勝負に持ち込んだ。どうにもキレ負けすることが多いタイプなだけに、おそらくこのような戦術がこの馬には合っているのだろう。

 

*Leopardstown Soft

Frank Ward Memorial Hurdle (G1) 3m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-28/leopardstown/557479/frank-ward-memorial-hurdle-grade-1

Killutagh Vicを制してハナに行ったApple's Jadeがそのまま軽快に逃げると、後続に17馬身差をつける圧勝を見せた。Unowahtimeanharry、Pennhillと続いた。Bacardysは大敗に終わった。

Apple's Jadeはこのレースは3連覇とした。昨シーズンの2月までは破竹の勢いでの連勝を見せた馬だが、Champion Hurdle (G1)では注文を付けて潰しに来たMelonが作り出した乱ペースに巻き込まれて失速し、その影響があったのか春は精彩を欠いていた。さらにシーズン初戦はBacardysに番狂わせを演じられると、続くHatton's Grace Hurdle (G1)では新星Honeysuckleの機動力に屈していた。オーナーは引退も考えていたそうだが、ここのところの凡走は馬も加齢により適正距離が以前よりも長くなっていた影響もあるのだろう。ようやくこの馬らしいレース運びでこの馬らしいパフォーマンスを見せてくれた。やはり長距離戦の重馬場で先手を握らせたらこのメンバーには手が付けられないというのは変わらないようだ。11歳の古豪Unowahtimeanharryは安定したレースを見せたが、やはり最後は完全に脚が上がっていたように、この馬は本来もう少しゆったりしたペースの中で機動力を生かすタイプ。Pennhillは前走よりもレース運びに進捗が見られたが、やはりCheltenhamで見たい。Bacardysは24fでも実績はあるが、本来このくらいのペースを追走するのであれば20f程度の方が良く、さっぱり動けなかったところを見ると距離的にも厳しかったようだ。転厩したArkwrishtは全く飛越が出来ていないところを見ると、どうも馬が精神的に参ってしまっているように見える。今回は相手も強かったが、根本的な立て直しが必要だろう。

 

Savills Chase (G1) 3m

https://www.sportinglife.com/racing/results/2019-12-28/leopardstown/557481/savills-chase-grade-1

オーナーのごたごたの影響でレースに使えなかったKemboyの復帰戦ということで注目が集まっていた。レースはKemboyがハナを伺うもRachael Blackmore騎手のMonaleeが引っ張る展開に。好位からJett、Kemboyなど。スタンド前では馬群は密集するが、そこから再度Monaleeがペースを上げてやや後続を引き離す形に。残り3障害辺りから後続が追走を開始し、Jett、Kemboy、さらにはRoad To Respectが襲い掛かる。しかしMonaleeがここからさらに抵抗、そのまま逃げ切りを図るも、ゴール直前で外から強襲してきたDelta Workがこれを僅差で捉えて勝利した。

上位はJack Kennedy、Rachael Blackmoreと新進気鋭の騎手が並んでいるのだが、この二人に共通するのがペース配分と馬の脚の使いどころの上手さである。アイルランド障害競馬には強靭なフィジカルとパワーを持ち合わせた屈強な騎手が数多く存在するのだが、特にこのレースで目立ったのは上位2名のマラソンレースを走る上でのエンジンの吹かし方の巧みさであった。日本のマラソンレースでも武豊横山典弘といった技術のある騎手が上位に顔を出す傾向にあるのだが、遥かアイルランドの地で行われた世界トップクラスの水準を誇るこの障害競走でも同様である。近年日本競馬ではステイヤー血統の軽視に伴う長距離競走の水準低下が著しく、馬が集まる短距離走ばかり無駄に増えているのだが、このような技術を持ち合わせた騎手によるCompetitionという意義でも、長距離競争の存在意義というものはスポーツとしての競馬を語る上で巨大なものである。

レースはMonaleeがハナに行っているのだが、この馬自身は平均的なペースを刻みつつ終いまでじわじわと脚を伸ばしていくことに長けたタイプであり、そのようなレース運びでFlogas Novice Chase (G1)にてAl Boum Photoを完封している。2周目から少しずつペースを上げるとともに、最終コーナーの前で一旦息を入れ、そこからさらに加速を掛けるRachael Blackmore騎手の手綱捌きは素晴らしいものがあった。この馬自身Leopardstown競馬場は得意としているのだが、あちこちに起伏の連続するこの競馬場の特性を知り尽くした素晴らしいものである。一方のDelta WorkのJack Kennedy騎手もまた素晴らしい騎乗をした。Novice時代のレース運びから考えるとさほどトップスピードは速くないようだが、飛越にスムーズさを欠いた前走とは変わって、今回は安定した飛越を見せた。レースが動いたところでKemboyをはっきりと潰しに行ったRoad To Respectを見ながら少しずつ加速し、この馬の最大の持ち味であるパワーを持った持続的なスピードを生かし切るJack Kennedy騎手の手腕は素晴らしいものである。おそらく良馬場だと機動力の面で見劣る可能性もあり、馬場状態には注意しておきたい。

連覇を狙ったKemboyは4着。道中どうにも行きたがって走るのはいつも通りなのだが、今回は飛越の点でもいまいちであった。勝負所で外からRoad To Respectにぶつけられ、かなり苦しい展開となったのも堪えたか。そのRoad To Respectは3着に入り、2年前の勝ち馬としての貫禄を見せた。今シーズンはChampion Chase (G1)にてClan Des Obeauxを完封しているように調子は良さそうで、やはり一瞬のスピードという面では高い水準のものを持っている。後方から進めたPresenting Percyは前をさばけず5着まで。この日のDavy Russell騎手は強引に内を突く場面が目立っており、このレースではあまりうまくいかなかったようだ。