にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/03/01 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/02/24-03/01

コロナウイルス感染症の影響で日本競馬はグレード制導入後初の無観客開催となりました。個人的にアクセスのいい中山開催で春麗ジャンプステークスも組まれていたので行きたかったですし、なによりやはり歓声のない開催というのは寂しいですね。コロナウイルス感染症の広まっているフランスでも無観客開催に変更されたそうで、世界的にも感染症の拡大による競馬開催への影響が懸念されるところです。イギリスやアイルランドでは今のところは無観客開催等の対応は取っていないのですが、Cheltenham Festivalを含めこれから障害競馬ファンにとって生きる希望のような主要開催が続きますので、なんとか無事に開催されて欲しいものです。

 

2/24(月)

Auteuil (FR) Terrain Lourd (4.6)

Prix Robert De Clermont-Tonnerre (G3) Steeplechase 5 ans et au-dessus 4400m (Replay)

1. Poly Grandchamp J: Tristan Lemagnen T: Francois Nicolle

2. Enju D'arthel J: Felix De Giles T: Emmanuel Clayeux

3. Sainte Stone J: Bertrand Lestrade T: Guillaume Macaire

4. Kapdam J: Pierre Dubourg T: Arnaud Chaille-Chaille

TB Farnice J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

この日から始まったフランスAuteuil開催。今年最初の重賞は残り3障害から先頭に立ったPoly Grandchampの圧勝で終わった。同馬はここまで重賞勝ちはListedのみに留まるものの、コンスタントに重賞戦線で上位争いを演じてきた馬だが、今回はなにか吹っ切れたような勝利であった。前走Prix Fondeur (Listed)を勝ってきたEnjeu D'Arthelは2着で、昨年から引き続き調子の良さを見せた。昨年牝馬限定のPrix Sytaj (G3)を圧勝したSainte Saoneは中段から少しずつ脚を伸ばすも、最後はやや前とは離された3着。4歳限定戦のPrix Maurice Gillois (G1)にて、30馬身差の圧勝劇を演じたFigueroの2着に入ったKapdamは前とはやや離された4着で、このクラスで戦うにはもう少しステップアップが欲しい印象を受けた。昨年まで4歳限定戦を戦い、Prix Orcada (G3)勝ちのあるFarniceはぽつねんと最後方を走っていたが、序盤のOxerで早々に落馬に終わった。

 

2/25 (火)

Catterick (UK) Heavy

◯ Novices' Chase (C4) 2m3f51y (Replay)

1. Saint Sonnet J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

フランスにてHaiesのListed勝ちのあるSaint Sonnetのイギリスデビュー戦であったが、ここでは力の違いを見せて快勝。同世代トップの快速馬L'autonomieにはさっぱり歯が立たなかった馬だが、そうはいっても世代上位のフランス調教馬のイギリス移籍となるとやはり期待は大きい。

 

2/26(水)

Terang (AUS) Good4

〇 BM58 Handicap 2150m (Flat) (Replay)

6. Referee J: Richard Cully T: J. W. Bridgman

2005年にアイルランドを離れ、オーストラリアでのキャリアをスタートし、VIC州Grand National Steeplechaseを2014、2016、2017と制覇したWellsの主戦騎手をはじめ、オーストラリア・ニュージーランド障害競馬で活躍したRichard Cully騎手の最後の騎乗であった。今後は調教師業に専念するとのこと。Ballaratに行ったとき見たので旅行記こちら

 

2/27(木)

Musselburgh (UK) Soft (Heavy in places)

〇 Handicap Hurdle (C5) 1m7f124y (Replay)

1. Made For You J: Richard Johnson T: Olly Murphy

5年連続のChampion Jockeyの座を目指すRichard Johnsonだが、今年1月21日のExeterで落馬し腕の骨折で休養していた。しかし、たった約1か月で復帰するという超人的な回復能力を見せた上に、この復帰戦でいきなり勝ち星を上げるという驚異的な復活劇を見せた。その後も騎乗機会3連勝を飾るなど絶好調のようだ。イギリス障害リーディングにおいて、今のところBrian Hughesが131勝、Richard Johnsonが114勝とやや水をあけられている格好となっているが、まだ逆転の可能性は残っているだろう。

 

2/29(土)

Kelso (UK) Heavy

Juvenile Hurdle (C4) 2m51y (Replay)

1. Stratagem J: Mr David Maxwell T: Paul Nicholls

終始先頭を走ったStratagemがそのまま後続を突き放し勝利。Stratagemはフランスからの移籍後初勝利とした。フランスではHaiesを1勝したのみの馬だが、先日のSandownで非常によい勝ち方をしたSoloを下した実績のある馬で、今後の活躍が期待される。日本生産馬でキズナの全兄のSunday Break産駒といえば日本のファンにも馴染みがあるかもしれない。

 

William Hill Premier Novices' Hurdle (G2) 2m2f25y (Replay)

1. Clondaw Caitlin J: Brian Hughes T: Ruth Jefferson

2. Elf De Re J: Ryan Mania T: A M Thomson

3. Cheddleton J: Sean Quinlan T: Jennie Candlish

紅一点のClondaw Caitlinが抜け出し快勝。これでHurdleは3戦3勝とした。元々はPTPでデビューした馬で、距離を伸ばしても対応できるだろう。地元のElf De Reが2着に入った。人気のCheddletonは直線で外に出して前を追いかけたが、勝ち馬には肉薄できず3着に終わった。

 

William Hill Leading Racecourse Bookmaker Premier Chase (Listed) 2m7f96y (Replay)

1. Definitely Red J: Danny Cook T: Brian Ellison

2. Kauto Riko J: Brian Hughes T: Tom Gretton

3. Saint Xavier J: Mr David Maxwell T: Paul Nicholls

4. Seeyouatmidnight J: Sean Quinlan T: A M Thomson

人気を背負ったDefinitely Redが残り2障害辺りから抜け出すと、追いかけてきたKauto Rikoを振り切って勝利した。元々はMany Clouds Chase (G2)、Cotswold Chae (G2)など、好位から運んでそこから抜け出してくるスタイルを得意としていた馬で、24f Chase路線のG2クラスであれば大威張りが出来た馬だが、11歳と年齢を重ねたここのところは持ち前の持久力を生かす方向にシフトしている。やや勝負所で反応が悪いのもいつも通りといったところ。G1路線で厳しいことは既に分かっており、今年はGrand Nationalを大目標にするとのこと。Grand Nationalには2017年に一度挑んでいるが、Bechersで騎手が鐙を落とし、そのままリカバリーできずに途中棄権している。今シーズンはBecher Chase (G3)で11st10lbを背負って4着に入るなど調子も良く、年齢的にもラストチャンスに近いと思われるが、2017年の巻き返しが期待できるだろう。Kauto Rikoは一気の距離延長であったが、途中まではむしろDefinitely Redよりも手ごたえよく運んでおり、この距離でも走れそうだ。Saint XavierはこれがイギリスChaseは初参戦であったが、さほど見せ場は作れず最後は勝ち馬からは大きく遅れた。2018年のGrand Nationalを最後に故障で引退し、今回が現役復帰戦であった12歳馬Seeyouatmidnightは早々に遅れ、最後は完全に脚の上がったDimpleを交わして4着に入った。もともとは重賞戦線で戦ってきた馬だが、さすがに全盛期の勢いを期待するのは酷だろう。Cheltenham FestivalではFoxhunter Chaseを大目標とするとのことで、勝ち星を上げるのであればもはや伝説の域なのだが、もともと腱の故障で引退していた馬であり、その後状態がいいのか復帰したとのことではあるものの、どこまでまともに走れる状態に戻っているのかは疑問である。

 

Doncaster (UK) Heavy

〇 Handicap Chase (C2) 2m78y (Replay)

1. Gino Trail J: Paddy Brennan T: Fergal O'Brien

4. Dolos J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

前半から元気よく逃げた13歳馬Gino Trailがそのまま勝利。さかのぼればCheltenhamのGrand Annual Challenge Cup (G3)の2着などがある馬で、これがFergal O'Brien厩舎への転厩初戦となる。13歳と年齢は重ねているが馬は若いようで、まだチャンスはあるだろう。ちなみにtwitterではFergal O'Brien先生が大歓喜していた。今シーズンのHaldon Gold Cup (G2)の2着などがあるDolosは本来ここでは格上の馬なのだが、勝負所の飛越をミスしたことでそのまま後退し4着に終わった。

 

〇 888Sport Take 'em On Mares' Novices' Hurdle (Listed) 3m84y (Replay)

1. Cill Anna J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

好位から進めた人気のCill AnnaがZiggy Roseを抑えて勝利した。Cill AnnaはこれでC4のNovice戦から3連勝としたが、いずれも牝馬限定戦という部分があり、メンバー的にもそこまで揃っているわけではない辺り、どうにも評価としては微妙な部分がある。

 

〇 Grimthorpe Handicap Chase (C2) 3m2f1y (Replay)

1. Captain Chaos J: Harry Skelton T: Dan Skelton

2. Worthy Farm J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

前半から前に行ったCaptain Chaosが完全に脚の上がったWorthy Farm以下の後続に54馬身差をつける快勝。Captain Chaosは前走のClassic Chase (G3)もこのような積極策で見せ場を作っており、重馬場の超長距離戦ではこのような展開を作りだす馬として注意しなければいけない一頭である。C3を連勝してきたWorthy Farmは残り4障害くらいまではCaptain Chaosについて行ったが、最後は完全に脚が上がっての入線となった。

 

中山(日本)良

春麗ジャンプステークス 3200m

1. ハルキストン J: 中村将之 T: 浅見秀一

2. スプリングボックス J: 森一馬 T: 寺島良

4. コウキチョウサン J: 石神深一 T: 和田正一郎

コロナウイルス感染症の影響で無観客開催となった日本競馬。好位からするすると動いたハルキストンが人気のスプリングボックスを抑えて勝利した。12番人気のカポラヴォーロが3着まで頑張っているだけにレースレベルとしては微妙な感もあるのだが、今回に関しては好位に早々に取りつく中村騎手の判断が正解であったように思う。前走の中山新春ジャンプステークスを圧勝したスプリングボックスは案外伸びきれず2着で、前走とはレースの質が異なるような印象。オジュウチョウサンの全弟コウキチョウサンは初のオープン戦であったが、頑張って最後追いこんでの4着。レース展開一つでチャンスはあるだろう。

 

3/1 (日)

Leopardstown (IRE) Yielding to Soft

◯ New Leopardstown Racing Hall Hurdle 2m2f30y (Replay)

1. Charli Parcs J: Barry Geraghty T: Aidan Anthony Howard

2. Jetz J: Rachael Blackmore T: Mrs Jessica Harrington

3. Mengli Khan J: Luke Dempsey T: Gordon Elliot

これが469日ぶりの復帰戦であり、かつNicky Henderson厩舎からAidan Anthony Howard厩舎への転厩初戦となるCharli Parcsが快勝。イギリスではC2勝ちがあるのみで、その後のJuvenile HurdleのG1路線、SeniorのHurdleの重賞路線でも良いところがなかったのだが、それでも本来はJuvenile Hurdleでは期待された素質馬、アイルランドでの再起が期待される。久々のHurdle戦であったJetzが2着に入った。Royal Bond Novice Hurdle (G1)の勝ち馬Mengli Khanは前半は元気よく運んだが、後続につかまるとそのまま抵抗できず、2着とは大きく離れた3着に終わった。前走も似たようなレース運びであっただけに、どうにも気性的な問題がありそうだ。

 

TRI Equestrian Handicap Chase (Grade B) 2m5f60y (Replay)

1. Gun Digger J: Gearoid Brouder T: Gordon Elliott

Anibale Flyなど実績馬の出走が予定されていたが、直前で取り消し。勝ったのは9st3lbの超軽ハンデのGun Digger。2018年のBeginners Chase勝ち以来、ここ5戦は4戦で途中棄権とさっぱり良いところがなかった馬であり、驚きの勝利となった。9st3lbはキログラム換算すると58.5kgであり、障害競走でここまで軽い斤量を使用することは珍しい。

 

Auteuil (FR) Terrain Lourd (4.8)

Prix Juigne (G3) Haies Pour tous chevaux de 4 ans et au-dessus 3600m (Replay)

1. L'Autonomie J: Gaetan Masure T: Francois Nicolle

2. Cotee Sud J: Olivier D'Andigne T: Arnaud Chaille-Chaille

3. Galop Marin J: Morgan Regairaz T: Dominique Bressou

スタンド前から先頭に立ったL'AutonomieがそのままついてきたCotee Sudを振り切って勝利した。L'Autonomieは昨年にPrix Questarabad (G3)を皮切りに、4歳のHaies路線においてPrix Renaud Du Vivier (G1)を含む破竹の4連勝をあげた馬で、これが初の上の世代との対決であったが、ふたを開けてみればスピードの違いを見せつける圧勝劇であった。実質的に現5歳世代のトップホースであり、今シーズンの活躍が楽しみになるパフォーマンスである。上述のPrix Renaud Du Vivier (G1)の2着馬Cotee Sudは当時よりも差を詰めたが、今回は4kgの斤量の恩恵があった。Grand Prix D'Automne (G1)を含むG1を2勝しているGalop Marinは離れた3着に終わったが、これを叩いて変わってくることを期待したい。

 

〇 Prix Jean Doumen Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 3600m (Replay)

1. Figuero J: Gaetan Masure T: Francois Nicolle

昨年のPrix Maurice Gillois (G1)を30馬身差でぶっちぎったFigueroが勝利。この世代のトップにいたGoliath Du Berlaisはすでに引退しており、現5歳世代のSteeplechaseにおけるトップホースであり、今回はHaiesとはいえ良いシーズン初戦となった。

 

その他

Grand National 2020: Tiger Roll heads 89 remaining entries for Aintree showpiece (Liverpoolecho)

Grand NationalのFirst Scratchingということで、合計16頭が出走を取り消した。その中には故障で今シーズン全休となったSizing John、Native River等が含まれている。また、Tiger Rollと並んでトップハンデであったDelta Workも出走を取り消し、結果的に出走登録馬は現在89頭、出走順40番目は10st4lbのWarriors Taleとなっている。3月中にSecond Scratchingが発表される予定。フランスからは2頭が登録しているが、そのうちDalko Moriviereは59番目、もう一頭のDisco d'Authieは89番目で、やはり出走は厳しそうだ。

Ruby Walsh hails 'freakishly enthusiastic' Un De Sceaux following retirement (Racing post)

Queen Mother Champion Chaseに向けて調教中のUn De Sceauxだが、残念ながら靭帯の故障で引退が決まった。ここまでG1を10勝しているアイルランドの名馬。12歳と高齢になるまで、非常に前向きな気性、独特の飛越とピッチの速さを生かした先行策を武器に元気いっぱい現役を続け、Sire De Grugy、Sprinter Sacre、Douvan、そしてAltiorといった、近年の16f Chaseを彩る数々の名馬と戦い続けた強豪である。

Richard Cully announces retirement but not all is lost for jumps racing fraternity. (AJRA)

上記の通り、Richard Cully騎手が引退となった。今後は調教師業に専念するそうだ。

All The Way Jose Retired, Targets Makeover (NSA)

2017年のLonesome Glory Handicap (G1)勝ちのあるAll The Way Joseが引退となった。2015年から昨年まで、勝ち切れないまでもアメリカG1路線でコンスタントに活躍し続けた名馬である。

L’Anglo-Arabe Saham, roi du cross dans le Sud-Ouest, prend sa retraite à 14 ans (France sire)

今年14歳になる大ベテランで、2012年から長きに渡ってフランスCross Countryで活躍したアングロアラブのSahamが引退するそうだ。35戦して16勝、決して大舞台での勝ち星はないのだが、アングロアラブ限定Cross Country競走にて常に上位争いを演じてきた古豪である。

Neuss čelí insolvenci(Dostihový Svět)

ドイツNeuss競馬場の存続が危ういらしい。このチェコ語の記事は短文で詳細はわからないのだが、調べると市が存続を認めないという記事も出てきたりして、存続を求めて署名活動が行われるなど危機的な状況のようだ。Neuss競馬場のSteeplechaseはすでに消滅して久しく、2006年頃にHurdleが数競争行われていたのみである。現在では内馬場にかつての障害の名残が認められるそうだ。動画はNeuss競馬場にて1993年に行われた競走で、非常に立派な生垣障害も設置されているのだが、Neuss競馬場のSteeplechaseはこのすぐあとに消滅している。

CDU Neuss steht hinter Konzept des neuen Clubs (Galopponline)

どうやら体制を新たにして存続に成功したようだ。"Galopp, Event und Natur"というコンセプトが書かれており、競馬と他のアクティビティを組み合わせた市民の憩いの場として開発するように読める。