にげうまメモ

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20/03/08 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/03/01-03/08

日本競馬は先週に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で無観客開催となりました。普段競馬場に行くと人の多さやマナーの悪い人に辟易することもあるのですが、やはり人がいない競馬場というものは寂しいですね。一方でイギリス・アイルランドは来週にCheltenham Festivalを控えており、目立ったレースは少ない静かな一週間となりました。イギリスでも新型コロナウイルス感染症が流行しつつあるようですが、今のところCheltenham Festivalは通常通り開催するようです。

 

3/2 (月)

Leopardstown (IRE) Yielding

◯ Beginners Chase 3m (Replay)

5. Dortmund Park J: Davy Russell T: Gordon Elliott

HurdleではPunchestown FestivalのChampion Novice Hurdle (G1)を勝っているDortmund ParkのChase2戦目であったが、どうにも飛越が怪しく大敗に終わった。そのChampion Novice Hurdle (G1)ではその後Arkle Challenge Trophy (G1)を圧勝するDuc Des Genievresが出ていたが、どうにもArkle Challenge Trophy (G1)以外ではいまいちなレースばかりであったり、2着が完全なる棚ぼたでFuture Champions Novice Hurdle (G1)を勝ったWhiskey Sourだったりと、どうにもレースレベルには疑問が残る。

 

◯ Beginners Chase 2m5f60y (Replay)

1. My Manekineko J: Gearoid Patrick Brouder T: James Nash

11歳馬My Manekinekoが21戦目にしてChase初勝利を飾った。今年11歳となるベテランで、なにか大きな勲章があるわけではないのだが、これで障害50戦目と長らく無事に戦ってきた古豪である。

 

3/3 (火)

Exeter (UK) Soft

〇 Handicap Chase (C5) 3m54y (Replay)

1. Sunny Legend J: Richard Patrick T: Andrew Martin

今年で15歳となるSunny Legendが単勝67倍の低評価を覆す勝利を挙げた。これが2017年の2月以来の勝利で、通算7勝目となる。遡ると悲運の名馬Simonsigの勝利した2012年のNeptune Investment Management Novices' Hurdle (G1)や、2014年のAscot Chase (G1)にも出ていたりする馬なのだが、さすがに重賞クラスでは荷が重かったようで、それ以降はほぼ下級条件戦で走っている。探せばPoint to Pointにいるかもしれないが、2010年デビューの馬が未だに現役を続けているというのはもはや世界的に見ても非常に珍しいことだろう。

 

Navan (IRE) Heavy

Flyingbolt Novice Chase (G3) 2m (Replay)

1. Sizing Pottsie J: Robbie Power T: Mrs Jessica Harrington

2. Cut The Mustard J: Paul Townend T: Willie Mullins

Sizing Pottsieが人気のCut The Mustardを12馬身突き放す快勝。Hurdleでは未勝利に終わった馬だが、Chaseではこれで3戦2勝と順調に進めている。やや大柄な馬体を持つパワー型といったところで、着差は最終障害をCut The Mustardは丁寧に飛んだことによるものだろう。前走牝馬限定Listed Chaseを勝ってきたCut The Mustardは最終障害にてブレーキをかけ、そこから再加速できずに2着に終わった。どちらかというと馬場は良くなったほうがこの馬にはよさそうだ。

 

3/7(土)

Auteuil (FR) Terrain Lourd (4.9)

〇 Prix Tofano

Steeplchase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 4400m (Replay)

TB On The Go J: James Revely T: Guillaume Macaire

2018年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の勝ち馬On The Goの久々のSteeplechase復帰戦であったが、スタンド前の水壕障害で躓いて落馬に終わった。着地時に躓いたもので大きなミスではなく、それ以外の飛越は安定しており、次走に期待したい。なお、勝ったのはDeportetoi。Steeplechaseの経験は少ない馬だが、前走のAuteuilのPrix Beugnot (Listed)から連勝とした。

 

Prix Duc D'Anjou (G3)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans 3500m (Replay)

1. King Edward J: Rierre Dubourg T: Arnaud Chaille-Chaille

2. Al Cuarto J: Bertrand Lestrade T: Guillaume Macaire

3. Dream Wish J: Morgan Regairaz T: Dominique Bressou

ここまで未勝利の牡馬King Edwardが最後の直線でするすると抜けてくると、Al Cuartoとのたたき合いを制して勝利した。Steeplechaseはこれが3走目で、昨年のPrix Congress (G3)では5着に入っていたが、そこの上位1~3着のDream Wish、Al Cuarto、Road Senamが出ており、それらとは肉薄できない結果であっただけに驚きの勝利となった。一旦は先頭集団から脱落したAl Cuartoは盛り返してきての2着。Haiesでは高い追走能力を見せていた馬だが、単純なストライドの飛距離という意味ではどうにもSteeplechaseでは難しいような印象もある。昨年のPrix Congress (G3)を含む連勝を上げてきたDream Wishは逃げるも、最後捕まって3着に終わった。どちらかというと人気どころが早々に動いた結果、重馬場でスタミナを浪費し、総じて最後脚が上がった結果として格下の馬が浮上してきた印象のあるレースで、あまり結果はアテにならないだろう。

 

〇 Prix Hubert D'Aillieres

Haies Pour tous chevaux 5 ans et au-dessus 4300m (Replay)

1. El Gringo J: Nicolas Gauffenic T: Jerome Larrigade

2. Agrapart J: Felix De Giles T: Nick Williams

3. Bipolaire J: Gaetan Masure T: Francois Nicolle

4. Bosseur J: Benjamin Gelhay T: Mille Anne-Sophie Pacault

5. Carriacou J: Davy Russell T: Mme Isabelle Pacault

AR Srelighonn J: Theo Chevillard T: Francois Nicolle

NR Crystal Beach J: Ludovic Philipperon T: Marcel Rolland

実績のある馬が何頭か出ていたのだが、勝ったのは人気薄のEl Gringo。ここまでPrix Renaud Du Vivier (G1)にてMaster Dinoの4着があるとはいえ、前とははるか後方に離された入線であり、本来G1クラスのメンバー相手には厳しい馬。人気どころがシーズン初戦だった一方で、この馬は133eme Grand Prix De Pau (G3)の2着を含め、ここまで順調に使っていた分と思われる。イギリスのAgrapartは前に行って見せ場を作った。昨年のPrix La Haye Jousselin (G1)を勝利したBipolaireはこれが今シーズン初戦であったが、前を捉えきれず3着に終わった。やや細かいミスがあったのが気がかりなところだが、いかんせん馬場が重くかなり掘れているので仕方がないだろう。Prix Juigne (G3)勝ちのあるこの路線の安定勢力であるBosseurが4着に入った。昨年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の勝ち馬Carriacouは、当時の騎手であるイギリスのDavy Russellを確保してきたが、後方から進めるも伸びきれず5着まで。2017年のPrix Ferdinand Dufaure (G1)の勝ち馬Srelighonnは途中から馬群から遅れ最終コーナーで棄権に終わった。Crystal Beachは発馬拒否してスクラッチ

 

Mont-De-Marsan (FR) Terrain lourd (4.9)

〇 Prix Soalracing - Prix Raymond de Bouglon

Cross Country Pour tous chevaux de 6 ans et au-dessus 4600m (Replay)

1. Tequila Sun J: Davy Lesot T: Monica Nicolau

3. Dennzo J: Jean-Stephane Lebrun T: Chemin & Herpin

TB Blason D'or J: Angelo Gasnier T: Gabriel Leenders

TB Alpha Risk J: Jonathan Plouganou T: Hector de Lageneste

TB Bipbip des Brieres J: Vincent Chatellier T: Thierry Poche

巨大な生垣障害やBull Finch、Passage de Routeタイプの障害など、比較的バリエーション豊かな障害が存在するMont-De-Marsan競馬場のCross Country。勝ったのは途中から先頭に立った牝馬Tequila Sunで、これでCross Country自体は3勝目とした。季節柄重馬場になりやすい上に、Banquetteが多く技術を要するPauのCross Countryでも良績はある馬で、今回のMont-De-Marsanとの類似性も高いのだろう。14歳馬Star De Planchesは早々に先頭とは遅れるも、最後まで頑張って走っての3着。Grand Cross de Pau ReverdyにてEasyslandの2着に入ったBlason D'orは途中で躓いて落馬。内容としては単なる凡ミスで、次に期待したい。Alpha Riskは落馬した場面が分かりにくいのだが、おそらくコーナーで滑ったことによるものだろう。Bipbip des BrieresはそのAlpha Riskに引っかかったものと思われる。

 

Treviso (ITA) Tempo Bello - Terreno Pesante

〇 Steeplechase di Treviso

per cavalli di 5 anni ed oltre (Steeplechase - Listed Race - Fantini) (Replay)

1. Moved J; Dominik Pastuszka T: Paolo Favero

2. Mezajy J: Rostislav Bens T: Paolo Favero

3. Mensch J: Gabriele Agus T: Raffaele Romano

Treviso競馬場の障害競走としては主要な競走なのだが、寂しい3頭立てとなってしまった。勝ったのはMoved。これでTrevisoのSiepiから連勝としたが、他競馬場ではさほど良績はないだけに、これからどこまでやれるだろうか。5歳とまだ若齢であり、TrevisoのSteeplechaseはさほど難易度が高くはないだけに、今後の技術の向上があればMeranoなどでも期待できるだろう。ベテランのMezajyが2着。Menschは途中で落馬に終わったが、どうやら再騎乗して完走したようだ。

 

中京(日本)良

〇 障害4歳以上オープン 3300m

1. ルグランフリソン J: 高田潤 T: 中竹和也

2. オールマンリバー J: 平沢健治 T: 五十嵐忠雄

3. スワーヴポルト J: 森一馬 T: 庄野靖志

4.トラキアンコード J: 石神深一 T: 武市康男

5. プラチナアッシュ J: 白浜雄造 T: 寺島良

前半からスワーヴポルトスが飛ばす展開であったが、離れた番手から進めたルグランフリソンが最後オールマンリバーを抑えて勝利した。これで障害は未勝利から連勝となる。平地ではダートの短距離でオープンクラスまで進めた馬で、スタート直後はだいぶ行きたがるところがあったのだが、この辺りが解消されることを望みたい。京都ジャンプステークス (G3)にて3着のあるトラキアンコードは中段からじわじわ進めて4着。今年初戦としてはこれで十分だろう。人気のプラチナアッシュはどうにも終始飛越がいまいちであった。

 

3/8(日)

Naas (IRE) Yielding to Soft

Naas Directors Plate Novice Chase (G3) 2m4f (Replay)

1. Royal Rendezvous J: Danny Mullins T: Willie Mullins

2. Ministeforsport J: Phillip Enright T: Noel O'Neill

3. Gallant John Joe J: Barry Browne T: Oliver McKiernan

4. Dallas Des Pictons J: Davy Russell T: Gordon Elliott

最終障害を越えて激しい4頭の叩き合いとなったが、そこから伸びたRoyal Rendezvousが勝利した。これでChaseは4戦2勝としたが、17f戦とは言えArkle Novice Chase (G1)ではNotebookからかなり離された5着に終わっており、G1クラスではどこまでやれるだろうか。MinisterforsportはChase未勝利馬ながら見せ場を作った。人気のGallant John Joeは3着まで。

 

Leinster National Handicap Chase (Grade A) 3m (Replay)

1. Cap York J: E Walsh T: Noel Meade

4. General Principle J: Gavin Brouder T: Gordon Elliott

Irish Grand National (Grade A)勝ちのあるGeneral Principleなどが出ていたが、勝ったのは軽量馬Cap York。これがChase初勝利、ここまでChaseではBeginners Chaseの2着があるのみで、それ以外はさっぱりという馬で、前評判も単勝12倍とさほど高くはなかった。General Principleは走るのか走らないのか両極端な馬だが、今回は頑張って4着まで食い込んだようだ。


中京(日本)不良

〇 障害4歳以上未勝利 3000m

1. シゲルコング J: 草野太郎 T: 田中清隆

4. マサハヤドリーム J: 森一馬 T: 今野貞一

最終障害を飛越して追いかけてきたシゲルコングがケイブルグラムを僅差捉えて勝利した。シゲルコング自身は2歳時に全日本二歳優駿にてリエノテソーロの2着があるのだが、その後は頭打ちになり、2017年に一度入障、その際は結果が出なかったのだが、2度目の障害転向で結果を出したことになる。平地ではオープン勝ちがあり、前走の障害初戦で2着といきなり結果を出したマサハヤドリームは、早めに先頭に立つも最後脚が上がって4着に終わった。

 

その他

New Group to Manage Foxfield Races (NSA)

アメリカVirginia州CharlottesvilleのFoxfield Racesの体制が強化され、新たにFoxfield Racing LLCとなるらしい。Foxfieldでは今年は年に2回、4月25日のFoxfield Spring Racesと9月27日のFoxfield Fall Racesの開催を予定している。

Jockey Braidon Small fighting back from brain injury (The Standard)

オーストラリアWarrnamboolの障害騎手Braidon Smallは昨年の4月にPakenham競馬場にて落馬し、その際に脳出血等の重傷を負ったのだが、着々と復帰に向けて準備を進めているとのこと。Braidon Smallの主な勝ち鞍として、2017年のHoulihan Hurdleが挙げられている。

Improving Racecourse fence visibility for horses (Equine Science Update)

馬の視野がヒトと比較して遥かに広いことは良く知られているが、馬の視覚における色彩の認識もまたヒトとは異なっている。イギリス・アイルランドにおいてオレンジのマーカーを障害の目印に使うことがあるのだが、馬にとってはさほど見えやすい色ではなく、むしろ明るい黄色や青の方が見えやすいのではないかという研究結果。元論文は記事中にリンクがある。