にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/03/22 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/03/16-03/22

新型コロナウイルス感染症の影響で、世界各国で大混乱が生じている中、競馬開催にも大きな影響が発生しています。特に感染症の急速な拡大が生じている欧州では、感染症拡大防止のため、今週からイギリス・フランス競馬が全て中止になりました。4月の頭に予定されていたGrand National Meetingも中止になり、欧州障害競馬としては非常に寂しい2020年の春になってしまいました。アイルランドは無観客開催とはいえ競馬開催を続行していますが、どうなるでしょうか。一方で比較的感染症対策が功を奏している日本では、無観客開催とはいえ頑張って競馬開催を続けており、先週の阪神スプリングジャンプで圧巻のパフォーマンスを見せた大王者も健在と、春の大一番が楽しみになってきました。

 

競馬開催関連情報

British horseracing suspended until the end of April (BHA)

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、Grand Nationalの中止が報じられたイギリス競馬だが、政府の勧告に従い4月末まで競馬開催を中止することになった。

Suspension des courses hippiques du mardi 17 mars au mercredi 15 avril (France Galop)

フランス競馬も4月15日まで全ての競馬開催を中止することになった。フランス障害競馬は5月にGrand Steeplechase de Paris (G1)をはじめとする重要競走を予定しており、その時期まで影響が及ばないことを祈るばかりである。

Racing in Ireland to continue behind closed doors (irishracing.com)

一方で、アイルランド競馬は無観客開催とするようだ。また、単純に無観客開催とするのみならず、様々なコロナウイルス感染症の拡大を防ぐための措置が講じられている。

State of Emergency in the Czech RepublicState of Emergency in the Czech Republic (dostihový Svět)

チェコの非常事態宣言に関してはチェコポータルの記事が詳しい。まだ2020年のチェコ競馬シーズンは開始されていないが、2020年4月におけるVelka Chuchle及びMost競馬場の開催は中止になっている。

Uppdaterad 18/3: Information från Svensk Galopp med anledning av coronaviruset (covid-19) (Svenskt Galopp)

スウェーデン競馬もしばらくは無観客開催となるらしい。今年のSvenskt Grand Nationalは6月13日を予定しているのだが、どうだろうか。

Szünetelnek a versenyek a Kincsem Parkban (Kincsem Park)

ハンガリーKincsem Park競馬場は4月5日から競馬開催(平地・障害)を行う予定であったが、どうやら延期されるようだ。同競馬場では通常は月に1レースのみ、それもHurdle競走だが、障害競馬が行われている。

Komunikat w sprawie rozpoczęcia sezonu 2020 (Wrocławski Tor Wyścigów Konnych - Partynice)

4月中旬から競馬開催が予定されていたポーランドWrocław競馬場の開催は6月からに延期になった。

Notice regarding the 2020 TAB Warrnambool May Carnival (Racing.com)

5月上旬に予定されていたオーストラリアWarrnamboolのMay Carnivalは残念ながら無観客開催となった。同開催ではBriely Steeplechase、Grand Annual Steeplechase等の主要競走が行われ、大変な賑わいを見せるのだが残念である。

Important Industry Update - COVID-19 (LOVERACING.NZ)

ニュージーランド競馬開催も無観客開催となった。ニュージーランド障害競馬は4月中旬からのスタートを予定している。

 

3/17(火)

Down Royal (NI) Heavy (Soft in places)

〇 Racing TV Chase 3m2f50y (Replay)

1. Monbeg Notorious J: Dennis O'Regan T: Gordon Elliott

2. Jury Duty J: Sean Flanagan T: Gordon Elliott

3. Ned Stark J: E Walsh T: Mrs Sarah Dawson

終始先頭を走ったMonbeg Notoriousが追いかけてきたJury Duty以下を抑えて勝利した。Monbeg NotoriousはさかのぼればGoffs Thyestes Handicap Chase (Grade A)の勝ち鞍がある馬だが、Noviceクラスを卒業したそれ以降は低迷しており、これが久々の好走となる。2018年のFar HillsでGrand National Hurdle Stakes (G1)を勝ったJury Dutyは2着までで、今年もおそらく同じローテーションを狙いたいのだと思われるが、コロナウイルス感染症の影響で遠征が叶うのか不安なところ。12歳馬Ned Starkは転厩初戦だったが頑張って3着まで来た。遡れば2015年のTowton Novices' Chase (G2)勝ちもあるのだが、そこからはC3辺りで走っていた。アイルランドに移籍してどこまでやれるだろうか。

 

3/20(金)

中山(日本)良

〇 ペガサスジャンプステークス(OP)3350m

1. メイショウダッサイ J: 森一馬 T: 飯田祐史

2. メドウラーク J: 北沢伸也 T: 橋田満

3. ルペールノエル J: 高田潤 T: 藤原英昭

4. コウキチョウサン J: 石神深一 T: 和田正一郎

6. ディライトフル J: 白浜雄造 T: 大久保龍志

例によってディライトフルが元気いっぱい逃げる展開であったが、途中からやや引っかかり気味に絡んでいったメドウラークが先頭に。そのまま押し切りを図るも、これを追いかけたメイショウダッサイが最終障害で前に出ると、そのまま7馬身差をつけて勝利した。メイショウダッサイは昨年の中山大障害(G1)の3着馬で、やや反応は鈍いところはあったものの内容としては完勝だろう。中山GJとなるとやはり一頭強い馬がいるのだが、この馬もまた昨年と比べるとかなりレベルアップしている。メドウラークは序盤から引っかかるところがあったが見せ場を作った。以前と比べて身体つきも障害馬らしいものに変わってきており、能力的には障害馬として完成されつつある。気性さえどうにかなればもう一段階上を目指せるだろう。古豪ルペールノエルは安定したレース運びで3着。コウキチョウサンはやや前半からペースについて行けず、飛越技術に向上が欲しい。ディライトフルは元気よく引っ張ったが、残り2障害地点で躓くような仕草を見せており、距離的にもぎりぎりかもしれない。

 

3/21(土)

Thurles (IRE) Soft

〇 BetVictor Hurdle 2m6f89y (Replay)

1. Jetz J: Robbie Power T: Mrs Jessica Harrington

好位から進めたJetzが後続に6馬身をつける勝利。同馬はNavanにてFlyingbolt Novice Chase (G3)勝ちもあり、重賞クラスでもそれなりに戦えるのだが、今シーズンはどうにもぱっとせず、前走からHurdleに戻していた。どうにも気性面の問題なのかレース運びには難しい面がありそうで、8歳とそれないりに年齢は重ねているのだがHurdleの方がレース自体はしやすいのかもしれない。

 

Pierce Molony Memorial Novice Chase (G3) 2m2f (Replay)

1. Zero Ten J: Danny Mullins T: Emmet Mullins

3. Emily Moon J: Paddy Kennedy T: Mrs Jessica Harrington

F Sizing Pottsie J: Robbie Power T: Mrs Jessica Harrington

F Cut The Mustard J: Paul Townend T: Willie Mullins

するすると逃げた人気のSizing Pottsieだが、第7障害でミスをすると飛越のリズムを崩し、Robbie Powerが押して立て直しを図るも残り2障害で落馬。代わって先頭に立ったZero TenをCut The Mustardが追いかけるも、Cut The Mustardは最終障害で落馬。そのまま残ったZero Tenが後続を突き放し勝利した。Zero TenはChaseはBeginners Chaseに続き2勝目。前走は落馬に終わっており、前半の飛越もいまいちであった。後半はスムーズに走れていたが、色々とアクシデントの多いレースで、額面通りには評価できないだろう。牝馬Emily Moonは後方から押し上げていくも最後遅れ3着。前走Flyingbolt Novice Chase (G3)勝ちのあるSizing Pottsieは人気になっていたが、飛越をミスして明らかにリズムを崩した。そのSizing Pottsieの2着に入っていたCut The Mustardは最終障害以外は問題はなかったのだが、残念ながら最終障害で落馬となった。

 

中山(日本)良

〇 障害4歳以上未勝利 2880m(芝→ダート)

1. アースドラゴン J: 大江原圭 T: 根本康広

2. ラフレシアレディ J: 草野太郎 T: 畠山吉宏

途中から先頭に立ったラフレシアレディだったが、最終障害で並びかけたアースドラゴンがこれとのたたき合いを制して勝利した。アースドラゴンは障害は4戦目で初勝利。平地では1勝クラスで3着がある程度で勝ち鞍はなく、これがJRAでの初勝利となる。どうにも前半から行きたがったり、水壕障害で見られるように飛越にミスがあったりと課題は多そうだ。障害2戦目のラフレシアレディは安定したレースを見せたが、これは単なるスピードの違いか。

 

3/22(日)

Downpatrick (NI) Soft

〇 Ulster National Handicap Chase 3m4f120y (Replay)

1. Space Cadet J: Mr Ben Harvey T: Gearoid O'loughlin

最終障害を越えて先頭に立ったSpace CadetがそのままAmaulinoを退けて勝利した。Space Cadetは元々Gordon Elliott厩舎にいた馬で、重賞戦線を走るもLeinster National (Grade A)の2着が最高で特段大きな勝ち星はなく、昨年Gearoid O'Loughlin厩舎に移籍していた。PTPで勝ち星を収めたものの、その後の重賞戦線では良いところがなく人気を落としており、やや人気薄での勝利となった。アマチュア騎手のBen HarveyはPTPでは勝ち星はあるものの、これが公式レースは初勝利らしい。今後はIrish Grand Nationalを目指すとの話も出ているようだ。

 

阪神(日本)良

〇 障害4歳以上未勝利 2970m(芝→ダート)

1. タガノアンピール J: 白浜雄造 T: 中尾秀正

好位から進めたタガノアンピールが直線で後続を突き放し8馬身差の圧勝。とはいえ全体的に飛越技術に難がある馬が多く、スタート直後から明らかに制御を欠いたピースフルサンデーが飛ばしてペースを上げたことで隊列が長く伸びたレースであり、この馬自身も障害手前で減速したり踏み切りを間違えたりと基礎技術に問題がありそうで、内容としてはあまり褒めたものではないだろう。ダートの長距離を走っていた馬で緩めのストライドの持続性能は高そうだが、まだ障害馬としての体型にもなっておらず、今後の課題は多いように見える。

 

その他

Statement released after Cheltenham Festival staff and racegoers develop coronavirus symptoms (Stroud News)

Cheltenham Festivalの観客で新型コロナウイルス感染症疑いの症状を呈している人が大勢出ているらしい。そりゃあの人混みであれだけ騒いでいれば仕方ないだろう。

Tiger Roll: Trainer Gordon Elliott backs decision to cancel Grand National (BBC Sport)

残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で今年Grand National3連覇の夢は潰えたTiger Rollだが、来年もGrand Nationalを目指すらしい。今年はこの後Irish Grand NationalかPunchestown Gold Cupというプランもあるようだが、後者はどうしてもレーティングが高く付く傾向があり、ハンデ増が懸念材料な同馬にとってはあまり得策ではないような気もする。

無観客競馬、馬券売り上げ健闘 業界全体には悪影響 (日本経済新聞)

個人的に現地よりもテレビ観戦の方が多いのだが、やはり現地に行けば馬券以外にもいろいろと金を落とすわけで。非常に楽しみなメンバーが想定される中山グランドジャンプくらいまでには復活して欲しいのだが、さて。

Stable staff facing ‘catastrophic’ situation in racing shutdown (Racing TV)

一方で、開催の中止となったイギリス競馬は完全に収入が途絶えることとなり、危機感を募らせている。早期の競馬の再開ができればよいのだが、この状態が長引くと競馬業界にとっては大きな痛手となるだろう。

The greatest mares in British racing that became Mothers (Great British Racing)

ここまで新型コロナウイルス感染症による暗い話題ばかりなので、少しは明るい話題でも。