にげうまメモ

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20/07/26 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/07/20-07/26

7/22(水)

Saratoga (USA) Firm (Result)

Jonathan Kiser Novice Stakes (Replay)

$55,000 Novice Hurdle Stakes Two Miles and One Sixteenth over National Fences

1. Snap Decision J: Sean McDermott T: Jack Fisher

障害競走においてはダートコースの内側に設けられた芝コースを使用するSaratoga競馬場。その設計上小回りとなっており、最終障害地点からゴールまでかなりの距離を走ることが特色である。レースとしては残り2障害辺りからじわじわとペースを上げて、平地でのスプリント能力で勝負を決する展開になりやすい。レースは淡々と逃げたBodes Wellがそのまま逃げ込みを図る展開も、中段から脚を伸ばしてきたSnap Decisionがゴール前でこれを捉えて勝利した。Snap Decisionはアメリカ平地競争でもPalm Beach Stakes (G3)の3着など頑張ってきた馬だが、昨年の4月にHurdleに転向すると、昨年のNovice Championに輝いた上に、これでここまでHurdleでは6連勝と力を見せている。勝ち方は派手ではなかったが、162lb(11st8lb、73.5kg)のトップハンデを背負っていたことも考えれば十分なパフォーマンスだろう。先日のMiddleburgでAllowanceを勝ってきたGalway Kidが2着。アイルランドPTPからの移籍馬であり、アメリカでのキャリアは長くはないが、この相手にこれだけ走れれば十分だろう。

 

7/23(木)

Saratoga (USA) Firm (Result)

A. P. Smithwick Memorial Steeplechase Stakes (G1)

$100,000 Hurdle Stakes Two And One-Sixteenth Miles over National Fences

www.youtube.com1. Moscato J: Michael Mitchell T: Jack Fisher

2. Optimus Prime J: Darren Nagle T: Richard Hendriks

Surprising Soulが例によって飛ばす展開も、残り2障害辺りからRediceanが先頭に。そのままRediceanが逃げ込みを図るも、ゴール直前に強襲してきたMoscatoがOptimus Primeを捉えて勝利した。Moscato自身はもともとイギリスで走っていた馬で、イギリスの障害でのキャリアとしてはNoviceクラスを4戦ほど戦ったのみでアメリカに移籍している。アメリカでは2017年にMichael G. Walsh Novice Stakes、William Entenmann Memorial Hurdle Stakesを勝利するなど実績を残しているが、その後2年近い休養を挟み、2019年に復帰していた。今年はこれでMiddleburgのTemple Gwathmey Hurdle (G3)から連勝とした。勝負所でやや内にいたせいか反応が悪いところがあり、最後は平地の瞬発力で勝ち切ったという内容で、やはり今後のことを考えればSaratogaの小回りのコースの馬群を抜けてくる器用さが欲しいところ。2018年のNew York Turf Writers Cup (G1)の勝ち馬Optimus Primeは勝ちに等しい2着。元々はフランス、イギリスと渡り歩いてきた馬で、フランス時代はPauのPrix Camille Duboscq (Listed)勝ちがある他、2018年のPunchestownのRyanair Novice Chase (G1)ではFootpadの2着の実績もある。今回は最終障害からゴールまでかなり距離があるSaratoga競馬場の形態が勝ち馬に味方した感が大きいだろう。内から差し込んできたGibralfaroが3着。この馬もまたイギリスからの移籍馬で、Juvenile Hurdle路線を戦ったのちはC2辺りのHurdleを主戦場としていたようだ。アメリカでは昨年のNew York Turf Writers Cup (G1)においてWinston Cの2着の実績がある。Rediceanは積極的な競馬で見せ場を作った。Surprising Soulは前半から逃げるも、早々に捕まるとあっさり脱落して途中棄権に終わった。

 

7/24(金)

Pardubice (CZE) stav dráhy: 3.3 (dobrá / Good) (Result)

〇 Cena města Pardubic

Proutky II.kat. - 3400 m, cena, 4letí a starší 120.000 Kč (Replay)

1. Night Moon J: ž. Jan Faltejsek T: Tůma Pavel

残り2障害辺りから前に出たNight MoonがKing Heartを9馬身突き放す快勝。Night Moonは昨年のMeranoのGran Criterium D'Autunno (G1)にてイタリアのSky Constellationを下して勝利してきた世代トップの馬で、今年は2戦していずれもあっさり負けていたのだが、ここではようやくその実力を見せた。本来であればG1クラスの活躍を見せるべき馬で、ここからの巻き返しに期待したい。2018年のGran Criterium D'Autunno (G1)の2着馬King Heartが2着に入った。さすがに今回は勝ち馬が強かった感があるが、この馬もまた重賞クラスでの実力は上位である。

 

7/25(土)

Pardubice (CZE) stav dráhy: 3.3 (dobrá / Good) (Result)

〇 Cena ORLING

Steeplechase crosscountry III.kat. - 3300 m, cena, 5letí a starší - klisny 90.000 Kč (Replay)

1. Dajuka J: ž. Lukáš Matuský T: Holčák Radek

前半からRideri Cross、Rozinaなどが積極的に引っ張るも、好位から抜け出したDajukaが人気にこたえて10馬身差の圧勝。Dajuka自身はさかのぼればSlovenské Oaksの5着がある馬で、昨年はCena firmy Chládek a Tintěra, Pardubice a.s. Cena Laty Brandisové (Stcc NL)にてSilkの2着に入っていた。Cross Countryの経験自体はこれが4戦目とさほど多くはないのだが、スピードに乗せた確実な飛越技術が求められる3000メートル級のCross Countryにおいて、これだけのキャリアにも関わらずここまで堂々としたレース運びができることを考えれば非常に将来有望な一頭だろう。Rideri Crossが2着に入ったが、この馬自身は4000メートルクラスよりもこのくらいの距離の方がレースはしやすいかもしれない。

 

〇 Pohár BICZ holding 2020

Steeplechase crosscountry III.kat. - 3300 m, cena, 4letí 90.000 Kč (Replay)

1. La Coral J: ž. Marcel Novák T: Kvapilová Lenka

途中から積極的に仕掛けていったLa CoralがYoukoなどの追い上げを凌いで勝利した。La Coral自身はこれがCross Countryは初参戦で、障害は昨年の10月にProutkyにて下級条件勝ちがあるものの、Cross Countryでいきなり結果を残したこととなる。やや前半は制御を欠く場面はあったのだが、中盤から馬を促して仕掛けていき、最後まで脚を使い切るMarcel Novák騎手の騎乗は見事なものである。人気薄のYoukoが2着で、ここまで平地は3戦、Cross Countryは1戦していずれもさっぱり良いところがなかった馬なのだが、この馬をリズムよくレースを運んだJan Faltejsek騎手はさすがとしか言いようがない。フランスからの移籍馬Popinjayが3着。イタリアのSteeplechaseの経験のあるSaint Shineが人気になっていたが、どうにもちぐはぐなレース振りで4着に終わった。

 

〇 ČERVNOVÁ CROSS COUNTRY Válečníka

Steeplechase crosscountry I.kat. - 3300 m, cena, 5letí a starší 150.000 Kč (Replay)

1. Medic J: Pavel Složil ml. T: Junková Jana

3. Tiara Man J: ž. Jan Faltejsek T: Bodlák Radim

例によってTiara Manが前に行くも、これまた例によってDropでミスをして後退。代わって先頭に立ったMedicが軽快に引っ張ると、Chrystal Crossの追い上げを凌いで勝利した。Medic自身はこの3000メートルクラスのCross Countryでは力上位の馬だが、途中から一気に動いてレースを動かす戦法を得意としている。今年7月のレースでは途中で馬がコースを間違えたのか騎手が落馬して試合終了していたが、今回はそのせつじょくを晴らした。やや集中力を欠き騎手が馬を動かしていくところがあったため、ブリンカーなどの馬具の使用もあり得るだろう。また、道中ゆったり運ぶことが出来れば距離延長でもチャンスがあるかもしれない。Chrystal Crossもこの路線の安定勢力で、例によって安定したレースを見せた。Tiara ManはDropのミスが全てだが、2回連続でこのようなミスをやっているのはやはり気になる。12歳馬Usockemは安定したレース運びを見せたが、前には肉薄できず4着に終わった。

 

〇 Cena vítězů Velké pardubické

Steeplechase crosscountry II.kat. - 5200 m, cena, 5letí a starší 120.000 Kč (Replay)

1. Imphal J: ž. Jaroslav Myška T: Popelka Stanislav

ここまでのレースとは明らかに展開が異なっているが、やはり長距離ということで全体的に慎重なレース運びになっている。レースは好位から抜け出したImphalがDecorusを振り切り勝利した。Imphal自身はここまでNational Listedでの実績はないのだが、元々III. kat.辺りでは勝ち星を重ねていた馬で、5000メートルクラスのCross Countryは初参戦だがいきなり結果を残したことになる。まだ7歳と若い馬で、距離延長がプラスに働いたのであればより上のクラスで楽しみが広がるだろう。レース運びも7歳と若い馬だが安定しており、距離への適性を感じさせた。Decorusは11歳馬だがここまで障害では未勝利であり、特にCross Countryではさっぱり良いところがなかった馬だけにやや驚きの好走となった。前走のI. kvalifikace na 130. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnouにおいてVelka Pardubickaへの権利は取っているのだが、前とは11秒ほど離された12着と全く勝負になっておらず、おそらく本番に行っても厳しいことは想定されるのだが、11歳にして新たな可能性が開けたことを喜びたい。Kaiserwalzerとスイスで実績のあるSweet Red WineはいずれもVelký anglický skokに終わったが、いずれも同障害においては典型的な落馬である。

 

〇 Zlatý pohár - cena předsedy Poslanecké sněmovny Parlamentu ČR

Steeplechase NL - 4400 m, cena, 5letí a starší 200.000 Kč (Replay)

1. Anaking J: ž. Jan Faltejsek T: Tůma Pavel

例によってDangerous Gleamが飛ばす展開も途中で落馬。代わって先頭に立ったAnakingがそのままあっさり後続を突き放して勝利した。Anakingは2016年のPremio Gran Corsa Siepi Di Milano (G1)の勝ち馬で、その後はドイツやフランスなどでも勝ち星を挙げている。今年はPisaのGran Corsa Siepi Nazionale (G1)にてBeau Saonoisの2着からのここへの参戦となった。昨年は実に2戦しか使わなかった馬で健康状態の面でやや不安もあるのだが、やはり出走さえ叶えばこの路線での実力はトップクラスである。2着のGreen Rocksはどちらかというとポーランドで頑張ってきたイメージが強いのだが、昨年末にはフランスFontainebleauでも良績を残している。2018年のGran Corsa Siepi Di Merano (G1)の勝ち馬Aztekもいたのだが、後方からじわじわ追い上げるも最後は失速して4着に終わった。

 

Cena města Pardubic - II. kvalifikace na Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou - Memoriál Mjr. M. Svobody

Steeplechase crosscountry NL - 5800 m, cena, 5letí a starší 200.000 Kč

www.youtube.com1. Ange Guardian J: ž. Jiří Kousek T: Váňa st. Josef

2. Sottovent J: ž. Jan Kratochvíl T: Váňa st. Josef

Velka PardubickaのQualification Raceの第二弾。レースは例によってBridgeurが逃げる展開も、いつの間にかするすると後方からAnge Guardianが進出。そのままSteeplechase Courseに入る辺りからAnge Guardianが先頭に立つと、追いかけてきたSottoventを凌いで勝利した。Irish Bankで落馬したBorderlandを除き8頭が完走を果たした。

Ange Guardianは今年で12歳になるベテランで、Qualification Race自体はもはやこれで5勝目となる。後方からじわじわと脚を使って好位に取りついてくるレース運びが特色であり、もはやこのレース運び自体はベテランの域に達している。Velka Pardubickaはこれまで4回挑戦し、2016年の2着が最高でありその後は着順を落としているのだが、今回のレース振りを見る限りではおそらく今年もチャンスはあるだろう。ただし、例によって後方から捲り上げるスタイルのため、なにかと展開の影響を受けやすい点は注意しておきたい。Sottoventはここまであまり実績のない馬だが結果を残した。昨年のCena společnosti VCES a.s. – Cena Labe (Stcc L)は5頭立てとさほどメンバーは揃っていなかったのだが、その3着のSottoventが2着、2着のLombarginiが3着と頑張っている辺り、それなりにレベルは高かったのかもしれない。ただし、ここではさほどAnge Guardian以外は強力なメンバーではなかったことは注意しておきたい。

昨年のVelka Pardubickaの2着馬Strettonはさほど見せ場は作れず4着。ただし昨年、一昨年とも本番になっていきなりパフォーマンスを上げてきた経緯があるだけに、これだけで見限るのは早計だろう。2018年までフランスを走ってきたTiep De L'estは勝負に加われず5着。Bridgeurは今回初めてJakub Kocmanに乗り替わっていたのだが、どうにもちぐはぐなペース配分で失速した。ある程度メリハリをつけて引っ張るか、ロングスパートに持ち込まないとこの馬の良さは生きない。明らかに格下のMoula、Vernoisも完走を果たして権利は取ったが、さすがに本番は苦しいだろう。

 

〇 Cena za podpory ADW FEED, a.s.

Steeplechase crosscountry IV.kat. - 4500 m, cena, 5letí a starší 60.000 Kč (Replay)

1. New Finch J: Pavel Složil ml. T: Junková Jana

途中から先頭に立ったNew Finchがそのまま抜け出し快勝。New Finchポップロックの産駒で、これでCross Countryは3勝目となる。どうにもお行儀が悪くここまで落馬が多いことを考えても馬が気性的に若いように思えるのだが、今回のレースを見る限りでは能力自体は高いものを持っているようだ。いい加減7歳ということを考えるとそろそろ気性的に成長が欲しいところ。レース運びに改善が見られれば上のクラスでもやれるだろう。

 

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno Morbido (Result)

〇 Fatal Mac

Euro 6000 TRIO per cavalli di 4 anni ed oltre (Cross-Country - CONDIZIONATA - G.R.-AMAZZONI-PAT. FISE/FITETREC/ANTE) 3500m (Replay)

1. Tequila Tango J: Riccardo Belluco T: Raffaele Romano

前半から積極的に飛ばしたTequila Tangoがそのまま逃げ切り勝ち。Tequila Tango自身はこのコースではこれで5勝目とした。去年の7月からひたすらMeranoのCross Countryの3500mのレースばかりを使っているCourse Specialistといったところで、このコースにおいて要求される小回りの利いた器用な飛越を確実にこなしていた。昨年この3000メートルクラスのCross Countryで2勝を挙げているManoloが2着。Zubienaは積極的に勝ち馬を追いかけたが、最後脚が上がって3着に終わった。

 

〇 Giuseppe Chiodini

Euro 20.000 TRIO per cavalli di 4 anni ed oltre (Siepi - CONDIZIONATA - FANTINI) 3300m (Replay)

1. Mensch J: Gabriele Agus T: Raffaele Romano

途中からNormandy Dela Vegaが先頭に立つ展開も、残り3障害辺りから前に出たMenschがそのまま後続を振り切り勝利した。Menschはさかのぼれば2018年のGiulio Berlingieri (G2)の勝ち鞍はあるのだが、ここのところはどうにも勝ち切れないレースが続いており、その鬱憤を晴らすようなレースであった。前走Discendenteを勝ってきたNoble Houseが2着だが、当時の2着がMenschであり、今回は勝ち馬がなにかしらうまくいったものと考えた方が良いだろう。2019年のCriterium D'Inverno (G2)など、イタリア調教馬として世代上位の活躍を見せていたLeonardo Da Vinciは残念ながら2戦連続の発馬拒否に終わった。

 

7/26(日

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno Morbido (Result)

〇 Raffaele Ammirato

Euro 12.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross-Country - DISCENDENTE - G.R.-AMAZZONI-FANTINI) 3900m (Replay)

1. Amaranthus J: Raffaele Romano T: Raffaele Romano

途中からするすると先頭に立ったAmaranthusがそのまま後続を引き離して逃げると、そのまま後続を突き放し5馬身差の圧勝。AmaranthusはMeranoの中距離Cross Countryでは比較的長い馬だが、遡ればSiepiにてEttore Tagliabue (G3)勝ちがあるように、Siepiにおいては世代上位の実績がある。どうにも一旦スピードに乗せてしまうとそのまま行き切ってしまう乗り難しいところがあるのだが、小型の障害をこなすスピード能力はこの路線でも屈指のものがあり、今回はその長所を生かし切った結果と言えるだろう。この路線の常連であるFly Filo Flyが2着。2018年のPremio Delle Nazioni (G2)の勝ち馬である11歳のAll About Cossioは3着に終わったが、どうにも前半から行きたがるところがあった。レース運びが改善されれば今年も本番ではチャンスがあるだろう。チェコのSternkranzは前評判は高かったようだが、障害手前で逸走して競争中止に終わった。