にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/08/16 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/08/10-08/16

8/12(水)

Wroclaw (POL) płotowy - lekko elastyczny (3.1); przeszkodowy - lekko elastyczny (2.7) (Result)

〇 Nagroda 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000)

Cykl gonitw z płotami dla 3-letnich koni. Międzynarodowa gonitwa z płotami dla 3-letnich koni. 2800m (Replay)

1. Ever Soleado J: Niklas Loven T: Robert Świątek

3歳馬のHurdle競走ということもあり、全体的に飛越が怪しい馬が多い。レースは出走馬中唯一のフランス産馬Ever Soleadoが逃げたSpider Szumawaを捉えて勝利した。Hurdle競走はこれが初参戦だが、ここまで平地のkat. IIで2勝を上げた素質馬のようで、ひとまずポーランド調教馬として活躍を期待したい。これがHurdle2戦目となるポーランド産馬Spider Szumawaは積極的に運んでの2着だが、飛越技術自体は勝ち馬とそう大差なかった。唯一のチェコ調教馬Nitroはいいところなく5着に終わった。

 

〇 Nagroda 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000)

Cykl gonitw z płotami dla 3-letnich koni. Międzynarodowa gonitwa z płotami dla 3-letnich koni. 2800m (Replay)

1. Mister Wojny J: Pavel Složil ml. T: Michał Borkowski

前のレースと同じく3歳馬のHurdle競走だが、こちらは比較的慎重なスタート。途中からSophistとHimronが一気に仕掛けていきペースは上がるが、ゴール直前で伸びてきたMinister WojnyがSophistを捉えて勝利した。ポーランド障害競馬はポーランド調教馬とチェコ調教馬がしのぎを削っており、若干チェコ調教馬の方が優勢なのだが、ポーランド調教馬はこの日の障害競走は連勝とした。Minister Wojny自身はこれがHurdle初参戦で、若干飛越に怪しいところはあったが許容範囲だろう。チェコ調教馬のSophistは積極的な競馬を見せての2着。Hurdleはこれが2戦目で、さすがに飛越の慣れもあるようで、完成度としてはこちらが上かもしれない。名前からしてなんとなく日本人としては気になるMidoriという馬も出ていたが、勝負所から馬群から脱落し大敗に終わった。

 

〇 Nagroda 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000)

Międzynarodowa gonitwa z płotami dla 4-letnich i starszych koni. (Replay)

1. Spasski J: Pavel Složil ml. T: Michał Borkowski

こちらは4歳以上の馬のHurdle競走。レースは先に抜け出したKanclerzをSpasskiが最終コーナーで競り落とすと、そのまま8馬身差の快勝とした。Spasski自身はHurdleは2戦目とややキャリアは浅い馬で、前走はポーランドHurdle路線においてはトップクラスの馬であるTrimから大きく離された3着に終わっていたが、一気に相手が弱化した2戦目のここでは勝利を上げた。Hurdleのキャリアは浅く、より飛越に慣れて力をつけてくることに期待したい。前走は同レースで2着に入ったKanclerzがここでもまたもや2着に入った。

 

Wrocławska Trial 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000)

Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 5-letnich i starszych koni. 4300m

1. Cosmic Magic J: Lukáš Matuský T: Radim Bodlák

2. Reki J: Pavel Složil ml. T: Hana Kabelková

名前の通りポーランド最大のSteeplechase競走であるWielka Wrocławskaの前哨戦。比較的小型の競馬場にも関わらず14頭もの出走馬を集めた。レースはNetto、Reki、Le Grand、Cosmic Magicなどが前に行く展開も、最後Hurdleコースに入る辺りからNettoが抜け出して逃げ込みを図る。しかしこれを追いかけたRekiとCosmic Magicとの叩き合いは、最後Cosmic Magicが前に出て勝利した。Reki、Nettoと続いた。

Cosmic Magicは昨年のポーランド4歳Steeplechase路線にて活躍した馬で、Cena Kudy z nudy – Cena ČASCH (Stcc NL)の2着もある5歳の牝馬。同レースで圧倒的最低人気で逃げ切ったShentはその後いまいちなのだが、上位に来たForever Dryはその後Lysá nad Labemで勝利を上げるなど、さすがにNational Listed競走として一定の水準は保っていたようだ。Cosmic Magic自身、今年は7月のNagroda Otwarcia Sezonu Przeszkodowegoから連勝とした。Rekiを始めこの路線の実績馬相手に勝ち切った内容はやはり高く評価するべきであり、本番に向けて非常に楽しみな存在となるだろう。PardubiceのCross Countryに対応する能力も持っており、秋にはPardubiceのCross Countryという選択肢もあるかもしれない。2019年のWielka Wrocławskaの勝ち馬Rekiが2着に入った。ここのところはMeranoのSteeplechase及びCross Countryを使い実績は残せなかったが、やはり得意のWroclawのSteeplechaseに戻ればこれくらいは走ることが出来る。ポーランド調教馬として再先着を果たしたのがNettoで、やはり平地のスピードという面では若干怪しいのだが、ベテランらしい安定したレース運びで見せ場を作った。

 

〇 Nagroda 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000)

Cykl gonitw z przeszkodami dla 4-letnich koni. 3600m (Replay)

1. Diana Jape J: Jan Odložil T: Pavel Poles

歩くようなスタートからハナに行ったのはOne Way Ticket。これをSay Szumawaが追いかけ、Hurdleコースに入る辺りで先頭に。そのままDiana Japeの追い上げを凌いで勝利、と思いきや、どうやらHurdleコースに入る辺りでOne Way Ticketの進路を妨害したとかの理由で失格になったらしい。勝ったのはDiana Jape。

4歳馬のSteeplechaseということでやはり色々なアクシデントがある。Say Szumawaは今年の7月のSteeplechaseで勝利を上げてきた馬で、実質的にはこちらを上に取るべきだろう。4歳Steeplechaseでは現時点で力上位の馬であることは間違いない。Diana Japeはチェコ調教馬で、Steeplechaseはこれが2戦目となる。7月のSteeplechaseでSay Szumawaの2着に入ったようになにかと仲のいい2頭で、次はSay Szumawaと真っ向勝負で戦えることを期待したいところ。もったいなかったのが非常に珍しいセルビア産馬のOne Way Ticketで、Steeplechaseはこれが初参戦であった。4歳Steeplechaseということで未熟な馬が目につくのだが、その中でも第1障害の手前で止まりかけていたUna Emocionはいちおうは頑張って完走したようだ。

 

8/15(土)

Pompadour (FR) Bon (3.1)

〇 Prix Louis Reillier

Cross Country Pour chevaux entiers, hongres et juments de 5 ans et au-dessus, inscrits au Stud-Book anglo-arabe, nés et élevés en France, comptant au moins 12,5 % de sang arabe, n'ayant pas, depuis le 1er janvier de l'année dernière inclus, reçu 25.000 en steeple-chases (victoires et places). 4500m (Replay)

1. Syr Alberto J: Eric Esan T: F. Tourade

例によって映像がしょぼい。まるでイタリアクオリティ。facebookライブの映像はもっとまともなのだが。ただ、Pompadour競馬場自体には起伏の多いコースにかなり大型の生垣障害やBrookを含む2連続障害が設置されていたりと、さすがは障害競馬大国のフランスだけあってなかなか本格的な障害コースとなっている。内馬場に観客が入って観戦できるようになっており、なかなか居心地のよさそうな競馬場のようだ。レースは逃げたSyr Albertoがそのまま勝利した。Syr Albertoの成績表を見るとそれは壮観で、2016年からひたすらPompadour競馬場の競走だけを使い続けている。同競馬場のCross Countryではこれで3勝目とした。

 

〇 Prix Basile Et Bernard Lachaud Grand Cross

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 5000m (Replay)

1. Drop D'Estruval J: Kilian Dubourg T: Guillaume Macaire

2. Virtus D'Estruval J: James Reveley T: Guillaume Macaire

Trophée National du Crossの一環となるレース。途中からDrop D'Estruvalが先頭に立つも、残り2障害辺りの飛越でVirtus D'Estruvalが先頭に。しかし最後の直線で再度Drop D'Estruvalが前に出ると、Virtus D'Estruvalを7馬身ほど突き放して勝利した。Drop D'Estruvalは比較的Cross Country自体の経験は多くはないのだが、Pompadourではここまで4勝と良績を残している。Crystal Cupのレースへの出走歴はなさそうで、まだ7歳と若い馬だけに更なる活躍を期待したい。11歳のベテランVirtus D'EstruvalはCrystal Cupの一環であるGrand Steeplechase Cross Country De FontainebleauにてOcean Australの2着などの実績がある馬で、元来ここでは力上位の馬である。PompadourのCross Countryは2015年から走っている12歳のUtoは積極的な競馬で3着に入った。

 

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno Morbido (Result)

〇 Ristorante Roessl Rabla'

Euro 12.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross-Country - CONDIZIONATA - G.R.-AMAZZONI-FANTINI) 4100m (Replay)

1. Power Zar J: Jan Faltejsek T: Josef Vana

ゆるゆると逃げたPower Zarがそのまま押し切り勝利した。Power Zarはもはやこの路線で常連の明らかに力量上位の馬で、前走のGrande Steeplechase Di Roma (G3)ではBroughtonの2着に敗れているが、おそらく今後の目標になるであろうPremio Delle Nazioniにて雪辱を狙うことになるだろう。本来PardubiceのCross Countryでも対応できる馬なのだが、Velka Pardubickaとなると若干距離は長いようで、ここのところはMeranoのCross Countryを専ら走っている。Silver Tango、Amaranthusといつものメンバーが上位を占めた。昨年この路線で頭角を現してきたBrunch Royalも久しぶりに出ていたが、特に見せ場なく敗れた。

 

Creme Anglaise - Memorial Gilberto Giottoli

Euro 25.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Steeple-Chase - LISTED RACE - FANTINI) 3800m (Replay)

1. Northerly Wind J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

こちらもまたもやJan Faltejsek騎手を背にゆるゆると逃げたNortherly Windが逃げ切り勝ちを収めた。Northerly WindはSteeplechaseではMemoial Massimo Caimi (G3)などの勝ち鞍のある馬だが、昨年まではPardubiceのSteeplechaseを使っていたためMeranoのSteeplechaseでの実績はさほど多くはない。昨年のGrand Steeplechase D'Europa (G1)にて3着のあるZaniniが2着に入り、比較的若い馬が上位を占めた。ここからG1クラスで主役級の活躍が出来る馬が現れてくることを期待したい。ポーランド産馬Temperamentがやや離れた3着に入った。LXIV Premio Ezio Vanoni (G2)の勝ち鞍のあるPrince D'Orageはこれが久々のレースであったが、いまいちいいところなく大敗した。能力の高い馬だけにここを叩いて良くなってきて欲しい。

 

Kokura / 小倉 (JPN) Firm

〇 Maiden / 障害3歳以上未勝利 2860m (Result)

1. ニシノベイオウルフ J: 大江原圭 T: 小桧山悟

前半から元気よく3歳馬ヴァルナが飛ばすも、どうにも飛越がいまいちであっさり後続が差を詰めてくる。最終コーナー手前から先頭に立ったケンホファヴァルトに並びかけたニシノベイオウルフが最終障害で前に出ると、そのまま追いかけてきたミッキーブラックを退けて勝利した。ニシノベイオウルフはこれで障害は16戦目での初勝利とした。リーチザクラウン産駒らしい比較的胴長の馬体の持ち主で、この中ではキャリアの違いによるのか飛越技術は上であった。道中ゆったりと構えるところがあり、オープンクラスのスピードに対応できるかは未知数といったところ。これが初障害となるミッキーブラックはいきなり結果を残した。2歳時には芙蓉S勝ちもあり、その後はクラシック戦線に挑戦した馬で、次走が楽しみになる内容であった。ケンホファヴァルトは相変わらず飛越がいまいちで、馬の能力で上位には来たものの、やはり技術面での向上が欲しいところ。

 

〇 Open / 障害3歳以上オープン 2860m (Result)

1. サトノエメラルド J: 高田潤 T: 安田隆行

前半から元気いっぱい逃げたサトノエメラルドがそのまま逃げ切り勝ち。タイムは3.06.6で、2018年にファントムライトが記録した3.07.6を1秒縮めるレコード決着となった。サトノエメラルドはこれが障害は5戦目と比較的キャリアの浅い馬で、昨年の阪神ジャンプ(JG3)以来の障害戦となる。キングカメハメハ産駒らしいパワーのある馬体の持ち主のようで、飛越にやや修正動作が多かったとはいえ、全体的に低く安定した飛越を見せていた。この日の小倉はやたらと時計の出る馬場状態であったことは差し引いて考えた方が良いのだが、小倉などの小型の障害を使うコースであれば重賞まで手が届く能力の持ち主だろう。未勝利を勝ったばかりのマサハヤドリームは唯一勝ち馬に肉薄する2着で、飛越技術という面だけで言えば勝ち馬を上回っていた。

 

8/16(日)

Merano (ITA) Tempo Bello - Terreno Buono (Result)

〇 Raiffeisenkasse Tirol

Euro 20.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi - CONDIZIONATA - FANTINI) 3300m (Replay)

1. Beau Saonois J: Alessio Pollioni T: Josef Vana Jr

2. Live Your Life J: Raffaele Romano T: Raffaele Romano

例によってKing Heartが逃げる展開も、残り4障害辺りからMenschが前に出るとあっさり後退。代わって物凄い勢いで捲ってきたLive Your Lifeが先頭に立ちそのまま押し切りを図るも、最終障害を越えて伸びてきたBeau Saonoisがこれを捉えて勝利した。Beau Saonoisは今年のGran Corsa Siepi Nazionale (G1)の勝ち馬で、MeranoのGran Corsa Sipei D'Italia (G1)では落馬に終わっていたが、ここではさすがに格好はつけた。現時点ではこの路線でもっとも勢いのある一頭だろう。昨年のGran Corsa Siepi Di Milano (G1)の勝ち馬Live Your Lifeは約1年ぶりのレースであったが、さすがに見せ場を作る2着に入った。これを叩いて良くなってくればイタリア調教馬代表として楽しみな存在になるだろう。5歳馬Menschは強敵相手に見せ場を作る3着。King Heartはこれが久しぶりのMeranoのSiepiであったが、どうもひどく汗をかいていたり、後続に一気に捲られたりとやや展開が厳しかったようだ。

 

Coleraine (AUS) Good4

〇 Vicky Bros Maiden Hurdle 3300m (Replay)

1. Rexmont J: Thomas Sadler T: Kathryn Durden

前半からYoulong Emperorがかなり主張して逃げるも、さすがにペースが厳しかったのか早々に後退。代わって先頭に立ったRexmontがそのまま押し切り勝利した。RexmontはHurdleは昨年の7月に一度走っているが途中棄権に終わっており、これが久々のHurdle参戦となる。やや暴走気味に逃げたYoulong Emperorを放置して番手に収まる展開が向いた感もあるのだが、それなりに未勝利戦としてはメンバーが揃っていたことを考えると、やはり上のクラスでも注意した方が良い馬だろう。5歳の若馬American In Parisがまたもや2着。この路線の常連Little Phoenixは3着に終わったが、残り2障害で分かりやすく大きなミスがあった。

 

〇 Coleraine and District Bendigo Bank BM120 Hurdle 3300m

1. Northern Voyage J: Shane Jackson T: Gai Waterhouse

前半から元気いっぱい馬群を引っ張ったNorthern Voyageがそのまま後続に大差をつけて圧勝。Northern Voyage自身は昨年のこのレースの勝ち馬で、その後はいまいちなレースを続けていたのだが、久々にこの馬らしいパフォーマンスを見せてくれた。おそらく良馬場の3000メートル程度の短距離で、気分よく逃げるというのがこの馬の勝ちパターンのようで、ハマったときの破壊力は素晴らしい物があるのだが、いかんせんハマらないとあっさり沈むところがある。5歳と障害馬としてはかなり若いだけになんとか戦術の幅を広げて欲しいところ。Northern Voyageを追いかけたBritannicus、The Statesmanなどは大きく失速し、かわって中段において無欲のレース運びをしていたChenersが2着に入った。

 

〇 Ecycle Solutions Great Western Steeplechase 3600m

1. Accounted Four J: Chris McCarthy T: Charlotte Graesser

例によってLucquesが引っ張る展開も、残り2障害辺りで先頭に立ったAccounted Fourがそのまま押し切り勝利した。Accounted Four自身はSteeplechaseは2勝目となる。メンバーが揃ったThackeray Steeplechaseでは大敗に終わり、Casterton Steeplehcaseではようやく格好をつける3着に入っていたのだが、今回は当時とさほどメンバーが変わらなかった上に、63kgの軽量も味方した。Jamiessonが2着に入り、比較的実績のない組が上位に来る結果となった。

 

Niigata / 新潟 (JPN) Good

〇 Maiden / 障害3歳以上未勝利 2850m

1. コウユーホクト J: 大江原圭 T: 竹内正洋

最終コーナー手前から先頭に立ったコウユーホクトがそのまま押し切り勝利した。コウユーホクト自身は比較的障害戦のキャリアは長い馬で、昨年の3月から障害に転向し、10戦目での勝ち上がりとなった。比較的低く抑えられた飛越は新潟・中京・福島などで良績を上げていた馬のそれであり、より大型の障害への対応が課題となるだろう。大江原騎手は土曜のレースも勝利して今週2勝を上げた。かつて華々しい活躍を見せる同期の三浦騎手の裏でなかなか勝利を挙げることが出来ず苦労した騎手だが、当時2chのスレを定期観測していた人間としてはなかなか感慨深いものがある。ポルトフィーノの産駒のポルトラーレが2着に入った。気性面にかなり問題のある馬のようだが、今回は草野騎手がじっと中段で我慢をさせる収穫の多いレースで、前走の障害デビュー戦は落馬に終わっていたことを考えれば大きな進歩だろう。