にげうまメモ

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20/09/20 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/09/14-09/20

9/16(水)

Auteuil (FR) Tres Souple (3.9)

〇 Prix Finot (Poulains) (Listed)

Pour poulains entiers et hongres de 3 ans, n'ayant pas couru. 3600m (Replay)

1. Here I Am J: Clement Lefebvre T: Gabriel Leenders

最終コーナーから前を行くTransatlanticを交わして前に出たHere I Amがそのまま勝利した。Here I Am自身はこれが障害デビュー戦となる。兄弟には障害競走の活躍馬はおらず、2014年から産駒が走っている父Born To Seaもフランス障害競走での活躍馬はいないのだが、アイルランドに目を向けるとTattersalls Ireland Spring Juvenile Hurdle (G1)勝ちのあるA Wave Of The Sea、Knight Frank Juvenile Hurdle (G2)を勝ったAspire Towerなどを送り出している。若齢の時期から活躍する産駒が目立つが、それ以降の動向に関しては現時点では未知数と言ったところか。Here I Am自身は比較的大跳びで飛距離のある飛越が持ち味の馬で、残り2障害地点でブレーキをかけたTransatlanticと比べると伸びのある飛越が目立っていた。実績的にはアイルランドでもやれそうだが、飛越のタイプを踏まえるとフランスで見てみたい。人気のTransatlanticはスムーズにレースを進めるも2着までで、勝負所でのミスが今回の着順に繋がった内容と言えよう。

 

Prix The Fellow (G3)

Pour tous poulains et pouliches de 4 ans 4400m (Replay)

1. Le Berry J: Johnny Charron T: David Cottin

スムーズに逃げたLe Berryがそのまま10馬身差の圧勝とした。Le BerryはこれでSteeplechaseは4戦4勝とした。葦毛の馬体から繰り出されるゆったりとした持続性能の高いストライドが武器の馬で、現時点では着差通りの力量差といったところだろう。そのLe Berryが以前勝利したPrix La Perichole (G3)で4着に入ったGratos De L'isleが今回は2着に入った。

 

9/19(土)

Hawke's Bay RI @ Hastings (NZ) Dead4

Te Whangai Romneys Hawke's Bay Hurdle (PJR) OPN HDL 3100m (Replay)

1. The Midnight Shift J: Barry Donoghue T: Paul Mirabelli

2. Revolution J: Mathew Cropp T: Paul Nelson & Corrina McDougal

前半からLaekeeper、Lake Superiorの2頭が落馬、さらにスタンド前の障害でBad Boy Brownが落馬するアクシデント。レースは葦毛のRevolutionが軽快に逃げるが、最終コーナーを回って接近したThe Midnight Shiftがこれを突き放し勝利した。The Midnight ShiftはここまでHurdleはMDN勝ちのみと言う馬で、当然ここでも人気にはなっていなかったのだが、いきなりここで大仕事をやってのけた。MDNを勝った際の馬場状態もSlow9とニュージーランド障害競馬としてはかなりよかっただけに、Dead4というニュージーランド障害競馬としては珍しい程の良馬場が味方した可能性が考えられるが、とりあえず現時点で勢いのある若い馬ということで次走は注意しておかなければいけない。Revolutionも本来はこのクラスでは力量的には少々厳しい馬だが、先手を取って見せ場を作った。前走のRST OPN HDLでは落馬に終わっていたGrinnerは今回は無事に回ってきての3着。人気のTommyraはどうにも反応が悪く4着に終わった。今回は馬場が特殊であった可能性が高く、重馬場で再度期待したい。なお落馬したBad Boy Brownは予後不良とのことで、昨年のGreat Northern Hurdlesの勝ち馬としては明らかに不利な条件下でのレースであり、上記のGreat Northern Hurdles連覇を楽しみにしたいところであったのだが、残念ながら最悪の結末となってしまった。

 

AHD Hawke's Bay Steeplechase (PJR) OPN STP 4800m (Replay)

1. Perry Mason J: Aaron Kuru T: Paul Nelson & Corrina McDougal

2. Napoleon J: Dean Parker T: Kevin Myers

3. Delacroix J: Buddy Lammas T: John & Karen Parsons

前半から積極的に馬群を引っ張ったPerry MasonがNapoleonの追い上げを凌いで勝利した。Perry Mason自身はこのレースはこれで連覇とした。昨年はこの時期までは比較的調子が良かったのだが、Pakuranga Hunt Cup (PJR)では大敗するとGreat Northern Steeplechase (PJR)でも途中棄権とやや調子を崩し、今年のSteeplechase2戦はいずれも大敗に終わっていたのだが、ここでいきなりの復活を遂げた。どうも馬場は極端に悪化しない方がいいようで、Hastingsの比較的難易度の低い障害も合っているようだ。終始馬が自信を持って障害にアタックしているシーンが散見され、やや慎重に飛越していた他馬とは好対照であった。ひとまず実績馬の復活ということで喜ばしい結果なのだが、条件替わりには注意した方がよさそうだ。Napoleonは惜しい2着で、この馬自身は力を出し切っているだろう。馬場も極端に悪くならない方がよさそうだ。後方から追い上げたDelacroixは上位には肉薄できず3着まで。この馬自身、今年はWaikato Steeplechase (PJR)でIt's A Wonderの2着に入るなど調子はいいようで、11歳となった今年も力の衰えはないだろう。Des De Jeuは途中までスムーズにレースを進めたが、まさかのカーブで滑って転倒し、競争中止に終わった。なにかと運のない馬だが、とりあえず今回のレース運びを見る限りでは勝ちまである内容だったと思われる。

 

中京 / Chukyo (JPN) Firm

Hanshin Jump Stakes (G3) 3300m

1. タガノエスプレッソ J: 平沢健治 T: 五十嵐忠雄

阪神競馬場の改修工事の関係で、今年は中京で行われた阪神ジャンプステークス。レースは前半からプラチナアッシュが飛ばす展開も、最終コーナーから前に並んで行ったタガノエスプレッソが先頭に代わると、そのまま後続を8馬身ほど突き放して勝利した。タガノエスプレッソはこれで史上10頭目となる平地・障害重賞勝利を挙げた。また、2014年11月のデイリー杯2歳ステークス (G2)からの重賞勝利間隔としては歴代1位と、記録に残る勝利となった。この馬自身はどちらかというと飛越を低く抑えつつスピードに乗せた飛越を得意とする馬だが、重馬場の京都ハイジャンプ(G2)でも3着に残っているように案外距離延長と障害の大型化にも耐えられるだけのスタミナは持ち合わせているようだ。やはりレコード決着ということもあり、この流れを好位から押し切ったレースは高く評価する必要があり、どちらかというとこのくらいの距離の低めの障害を使用するコースの方がよさそうな印象はあるものの、もう少し大型の障害と距離延長にも対応できれば活躍の場が広がるだろう。日本障害競馬はオジュウチョウサンの長期政権が続いているところではあるが、なんとかオジュウチョウサン相手に一矢報いるだけの能力を持った馬が出てきて欲しいところである。未勝利で強い勝ち方を見せたケイブルグラムが追い込んで2着。中京替わりがプラスに出た結果とは思うが、このクラスのペースについてければオープンクラスでもあっさり勝てるだろう。人気を背負っていたフォイヤーヴェルクはどうにも全体的にオーバーペース気味で、徐々に位置を下げ大敗に終わった。飛越を丁寧に行う馬だけにペースについて行けないのは仕方ないのだが、それよりも飛越のミスが気になった。柔らかいストライドで走る馬だけに馬群の中では加速が掛かりにくく、全体的にこの馬には難しいレースとなってしまったのが残念であった。単なる平地の能力だけの馬ことを見せて欲しい。逃げたプラチナアッシュは全体的にオーバーペース気味であったのだが、相変わらず交わされるとあっさり諦めるところが気になった。

 

9/20(日)

Bro Park (SWE) Steeplechase god, Häckbana god (Result)

H M Drottningens Pris

130.000 kr För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechase eller häcklöpning. 3800m (Replay)

1. Wontgetfooledagen J: Parkin Kevin T: De Burca Kahlil

前半から人気を背負ったEarly Voiceが後続を大きく突き放して逃げるも、途中でまさかの落馬。代わって先頭に立ったWontgetfooledagenがそのまま勝利した。Wontgetfooledagen自身は例によってもともとはイギリスで走っていた馬で、障害実績もわずかにJuvenile Hurdleの2戦がある程度で、いずれも大敗に終わっている。スウェーデンHurdleはこれが初参戦で結果を残した。全体としては前半から飛ばしたEarly Voiceのペースにほとんどの馬がついて行けなかったといった内容だが、やはり4歳の若馬ということもあり今後が楽しみになる結果であった。前走のGöteborgのHurdle未勝利戦にてFrench Warrior以下に大差をつけて勝ってきたEarly Voiceはもったいない落馬に終わった。デンマーク産馬で、比較的この中ではスウェーデンノルウェーHurdleにて実績のあるJumeirahも出走していたが、前には迫ることが出来ず2着に終わった。

 

H M Konungen Pris

130.000 kr För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechaselöpning. 4000m (Replay)

1. Wutzelmann J: Lovén Niklas T: Schleusner-Fruhriep Anna

前半からハナに行ったドイツ調教馬のWutzelmannが地元のCrindle Carr以下を抑えて快勝とした。Wutzelmann自身は比較的長くドイツ障害競馬で頑張ってきたベテランなのだが、ドイツ障害競走においては現時点でトップクラスの馬で、昨年はKrefeldのHerbert Cohn Gedächtnis-JagdrennenやHonzrathのGroßer Hindernispreis des Saarlandesなどキャリアハイの活躍を見せているように、これまでドイツ国内の障害競走において多数の勝ち鞍を挙げている。しかし、近年ドイツ障害競馬のレース数は大きく減少傾向にあり、今年に至ってはHonzrath競馬場の伝統的なダートコースを使用する障害競走1レースしか予定されておらず、文字通り障害競走のベテランであるこの馬は「行き場をなくして」、今年は「仕方なく」平地競争を2戦していずれも大敗に終わっていた。このような高い技術を持った馬をその技術を生かすことすら叶わない平地競争で走らせるなど競馬文化としては大きな損失である。これが今年初の障害競走となったこの馬にとっては嬉しい勝利だろう。ここでは地元の馬と比較すると抜けて安定した飛越技術を見せており、ドイツの難易度が高く本格的な生垣障害をこなしてきたこの馬にとって、Bro Parkの安全性に配慮された障害はあまりにも平易であった。国内G1を悉く国外調教馬に勝利されているドイツ平地競馬の喜ばしくない状況はそろそろ日本人も認識してきたところであるが、それ以上にドイツ障害競馬の状況はもはや危機的に過ぎることは大いに認識されるべきである。Bro ParkのSteeplechaseは2戦目となる地元のCrindle Carrが2着に入ったが、勝ち馬とは飛越の安定性の面で差があった。その他、Accelerate、Hightower、JunglelandといったスウェーデンSteeplechaseの常連メンバーが出走していたが、いずれも勝ち馬とは離された敗戦に終わった。