にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/10/18 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/10/12-10/18

10/13(火)

Punchestown (IRE) Yielding (Yielding to Soft in places)

〇 Beginners Chase 2m1f (Replay)

1. Darver Star J: Keith Donoghue T: Gavin Cromwell

前半から頑張って逃げたStar Maxを残り2障害辺りで捉えたDarver Starが12馬身差の快勝とした。Darver StarはHurdleでの勝ち鞍としてはNoviceのListed競走がある程度だが、昨シーズンはG1クラスでも頑張っており、特にChampion Hurdle (G1)にてEpatanteの3着のある能力馬である。Chaseはこれが初参戦であったが結果を残した。全体的には飛越は慎重でやや無駄が多いのだが、ここからスピードに乗せた飛越ができるようになってくればよいだろう。この中では比較的Chaseの実績の多いStar Maxは前半から飛ばすも、最後は脚が上がって4着に終わった。もう少し制御を掛けて走れればチャンスはありそうなのだが、気性的に難しいのかもしれない。

 

10/14(水)

Punchestown (IRE) Yielding (Yielding to Soft in places)

Idealgraphix.ie Branding Irish Racecourse Novice Chase (G3) 2m2f140y (Replay)

1. Zarkareva J: Dylan Robinson T: Henry de Bromhead

最終障害を越えて内を縫って出てきたZarkarevaが勝利した。Zarkarevaは名前からなんとなく想像がつく通り、母のZarkiynaは名牝Zarkavaの母であるZarkashaの妹に当たる。ZarkarevaはChaseは3戦2勝とした。Hurdleでは目立った成績は上げられていないが、Chaseでは前走の16馬身差の楽勝に次ぐ勝利と結果を残している。まだ4歳と若い馬であり、10st1lbの軽量が味方した可能性も高いのだが、これからが楽しみな馬だろう。Polished Steelは積極的な競馬で2着。HurdleではG1勝ちもあるA Wave of the Seaは好位から進めるも、前を捉えきれずに3着に終わった。

 

Irish Daily Star Salutes Our Frontline Heroes Chase (G3) 3m120y (Replay)

1. The Storyteller J: Keith Donoghue T: Gordon Elliott

Alpha Des Obeauxを制して昨年の勝ち馬Jettが飛ばす展開も、残り2障害辺りからTout Est Permisが先頭に。しかしこれを追いかけたThe Storytellerが抜け出すと7馬身差の快勝とした。The StorytellerはPunchestownのChampion Novice Chase (G1)以来の重賞勝ちとした。その後は長く重賞戦線を使っていたのだが、どうにも重賞クラスではワンパンチ足りないという状態が続いており、その中ではアメリカFar HillsのGrand National Hurdle (G1)への挑戦など、なかなかに苦労していたようだ。その中でHurdleを試すことで馬に刺激を与えたことが良かったようで、前走のPWC Champion Chase (G2)でこそ決め手のあるEasy Gameには迫れなかったが、ここでは結果を残した。極端な決め手のあるタイプではなく、G1クラスではやや厳しいものの持久力と馬群の後ろで力を抜いた飛越を続ける技術に長けたタイプであるため、おそらく今後はGrand Nationalを目指すものと思われる。Tout Est Permisはまたもや惜敗に終わった。Shattered Loveは24fは長いような負け方。比較的実績上位のBalko Des Flosもいたのだが、2018年当時の勢いにはないようで、今シーズンのローテーションは不明だが少なくともG1クラスでは厳しい戦いを強いられそうだ。

 

10/17(土)

Auteuil (FR) Collant (4.3)

Prix Haras D'Etreham - Prix Magne (G3)

Haies Pour pouliches de 3 ans 3600m (Replay)

1. Hotesse Du Chenet J: Ludovic Philipperon T: Marcel Rolland

レースは好位から進めたHotesse Du ChenetがAstadameを凌いで勝利した。今回のAuteuil開催ではTracking Systemが導入されているようで、各馬の速度やラップが計測されている。着差とラップを見ればわかるように、レースとしては比較的慎重に運ぶ3歳馬のレースらしく後半に掛けてじわじわと加速が掛かるレースとなっており、4着のHa La Landまでがこの後傾ラップに対応していることになる。Hotesse Du ChenetはHaiesはこれで2連勝とした。デビュー直後の2戦はFortunes Melodyに敗れていたが、今回のレース運びを見れば明らかに現時点の力量は上である。勝ち馬と遜色ない競馬をしたのがAstadameで、3kgの恩恵はあったとはいえ楽しみな新戦力となった。

 

〇 Prix Mid Dancer

Haies Pour tous poulains et pouliches de 3 ans, n'ayant pas, en courses de haies (A Réclamer excepté) reçu 17.000 (victoires et places). 3500m (Replay)

4. Apple's Pierro J: Baptiste Le Clerc T: Guillaume Macaire

Apple's Jadeの半弟Apple's Pierroが出走していたが、好位から進めるも伸びきれず4着に終わった。Track Segmentsを見ればわかる通りレースとしてはどちらかというと先のG3競走とは異なり、3000~2000mにおいて一旦ペースが上がり、そこから中だるみしたのちに再加速を試みる(ものの馬場が悪かったせいかさほど加速はできていない)というレースとなっている。ステイヤー資質に対する要求という意味では先のG3競走の方が上であり、メンバーの水準の違いも踏まえると内容としてもやはりレベルは低いのだろう。勝ったHortelao Hasについても先ほどのレースの上位勢と比べても大した加速はかかっていない。Apple's Pierroはデビュー初戦はまだ身体ができていないような負け方であったが、今回は好位から進めて4着まで頑張った。どちらかというと航行能力は高い反面、スプリント性能に乏しいタイプのようで、今回のような中だるみからの再加速を要求されるレースは合わなかったと思われる。

 

Grande Course de Haies D'Auteuil (G1)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 5100m (Replay)

1. Paul's Saga J: Kevin Nabet T: David Cottin

2. L'Autonomie J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

例によってL'Autonomieが元気よく逃げる展開も、どうにも右への斜飛が目立ち、外へ外へと膨らんでいく。スタンド前では外ラチまで飛んでいってしまう。そのままL'Autonomieは逃げ込みを図るも、ゴール直前で忍び寄ってきたPaul's Sagaがこれを捉えて勝利した。

L'AutonomieのHaiesにおける連勝は8で途絶えることになった。とはいえ、元々スピードで押し切るレースが持ち味のタイプの馬で、今回は初の5000メートル超の距離に加え、右へと斜飛する癖で大きく距離ロスが生じている中で、ここまで抵抗したことはやはり高い能力の証だろう。最後までそのスピードは衰えておらず、残り2障害地点から強力な加速を掛けたPaul's Sagaにこそ捕まったのだが、負けてなお強しといったレースであった。一方のPaul's Sagaはここでまさかの大番狂わせをやってのけた。昨年のGrand Prix D'Automne (G1)でGalop Marinの2着のある牝馬で、そのもPrix Leon Olry-Roederer (G2)勝ちもあるのだが、今シーズンは残念ながら勝ち星はなく、6月のPrix Hypothese (G3)もL'Autonomieからかなり離れた5着に終わっていた。しかし、レース内容はL'Autonomieのペースにあえてついて行ってのパフォーマンスであり、決してフロック視できるものではないだろう。特に残り2障害からの加速力は特筆すべきものがあり、さすがに外に膨れることはなかったものの道中ある程度L'Autonomieに付き合ってのものであることを踏まえると、この加速は驚異的なものである。今回はKevin Nabet騎手が積極的な競馬を試みており、このような戦術が合う馬であったことも十分に考えられる。

Galop Marinはやや離れた3着に入った。やはり単純なスピード能力という意味ではL'Autonomieには適わないのだが、この馬自身も高いスピードの持続性能を持った馬であり、ラップ推移としてもそのような形になっている。この馬のやるべきことはやり切った内容だろう。4着以下は後半のラップの落ち込みが激しく、上位3頭と比べると大きな力量差があるように感じた。イギリスからはRamses De Teillee、The Worlds Endの2頭が出走していたのだが、いずれも見せ場はなく終わった。

 

Ellerslie (NZ) Dead4

ARC Great Northern Hurdle (PJR) OPN HDL 4190m (Replay)

1. The Cossack J: Aaron Kuru T: Paul Nelson & Carrina McDougal

3. Aigne J: Hamish McNeill T: Shaun & Emma Clotworthy

Hurdle競走としてはニュージーランド最大のものだが、コロナウイルス感染症の影響でシーズンの開始が遅れた影響でこの時期にずれ込んだ。レースはEmily FarrのMacklemoreがゆったりと逃げる展開。残り1000メートル辺りからペースは上がり後続が差を詰めてくる。そのまま馬群は密集したまま直線に向き、外からAigneが伸びてきて抜け出しを図るも、最終障害でまさかのミス。内から抜け出してきたThe CossackがLake Superiorを凌いで勝利した。Aigneは3着。

Dead4と異例の良馬場になった上に、Emily Farrの絶妙な逃げによりこのレースにしては珍しく馬群全体が余力を残したまま直線に向くレースとなっている。The CossackはPJRは初勝利。前走は同様の馬場でAigneの3着に敗れていたが、今回はAaron Kuruの騎乗がうまくいった内容だろう。Heavyの馬場にも対応はできる馬だが、ややうまくいった内容での勝利という印象もあり、来年以降のパフォーマンスには注意したい。驚きであったのがLake Superiorで、MDN勝ちがあるのみの馬なのだが、好位からスムーズにレースを運んで2着まで来た。Aigneは最終障害のミスが全て。69kgの斤量を背負って外から捲りをかけるというロスの大きい競馬で、それでも3着まで突っ込んできているのだから大したものである。逃げたMacklemore、好位にいたDelegateもなだれ込んで4、5着に入った。Gallanteは久しぶりに馬がやる気になっていたようだが、この展開で後方から馬群に突っ込んでいってはどうしようない。Ave Mariaは終始馬が行きたがって走っており、最後は伸びずに大敗。やはりこの距離は向かないようだ。

 

ARC Great Northern Steeplechase (PJR) OPN STP 6400m (Replay)

1. Magic Wonder J: Shaun Fannin T: Jo Rathbone

ニュージーランドSteeplechaseとしては最大の競走となる。レースはWise Men Sayなどが先頭を伺うも、前半からMagic Wonderが積極的に引っ張る展開。途中の障害でGrinner、Southern Cool、Wise Men Sayの3頭が落馬するアクシデント。さらにStand Doubleを飛越する直前において、内馬場でゴルフをやっていた人間が馬場内に進入し、コース内を歩いているというアクシデント。逃げたMagic Wonderは軽快に飛ばすと、Ellerslie Hillを降りたところでは後続を振り切り、そのまま9馬身差の快勝とした。Napoleon、Shamalと続いた。

Ellerslie競馬場は内馬場にゴルフ場が存在しており、レースを開催している横でゴルフに興じている人たちがいる。幸い人間の侵入がレースに影響することはなかったのだが、競馬開催日にゴルフ場を解放している以上、競馬場運営には徹底した再発防止に努めてもらいたい。このアクシデントは日本でもネットニュースに取り上げられているが、肝心のレース内容には一切触れていない浅薄な内容の記事で残念であった。レースとしては全体的に馬場が良すぎるためにスピードが出るのだが、そのせいで飛越においてらしくないミスを連発している馬が多い。どうしても不良馬場での障害競走というとタフなレースという印象から難色を示すファンも多いのだが、むしろスピードが出る硬い馬場の方が障害競走としての事故リスクは高いことは、少しは障害競走に理解があるファンであれば周知の事実である。Magic WonderはPakuranga Hunt Cup (PJR)から連勝とした。明らかにこのような良馬場においてスピードを活かして引っ張ることがこの馬にとっての勝ちパターンとなっており、Pakuranga Hunt Cupの際のパフォーマンスをそのまま再現したようなレースであった。まだ8歳と障害馬としては比較的若齢であり、来年以降も現役を続行することが想定されるが、不良馬場においても同様のパフォーマンスを発揮できるかが焦点となるだろう。レース振りからすると中山グランドジャンプなど選択肢としては面白いのだが、あいにく今のところそのような話は出ていないようだ。調教師のJo Rathboneは騎手としてもGreat Northern Steeplechaseを制しており、騎手・調教師ともにこのレースを制したことになった。

Napoleonは安定したレース運びで2着に入った。この馬自身、極端な不良馬場の消耗戦は苦手とするタイプで、今回は比較的条件が向いたもののいかんせん相手が強かった。Shamalは負担重量70kgに加え、今シーズンはオーストラリア帰りとかなり条件的には厳しかったのだが、頑張って3着に来たようだ。やや全体的にペースが流れるオーストラリアでのパフォーマンスを見る限りでは、どちらかというとニュージーランド障害競走の方が競馬はしやすいようなイメージがある。本来もう少し馬場は渋った方が良いだろう。Des De Jeuは最後は遅れて4着。途中Magic Wonderに絡んでいくなどそれなりに見せ場は作っているのだが、相変わらず気性的に難しそうなイメージがある。Grinner、Southern Cool、Wise Men Sayの3頭は比較的難易度の低いはずの障害で落馬に終わった。特にこのレース3勝目を狙っていたWise Men Say自身、今シーズンはHurdleを使った効果もあったようで調子は良さそうであったのだが、残念ながらここまで良馬場が続くと何もできない。Perry MasonはStand Doubleで故障を発症して競争中止。残念ながら助からなかったようだ。Magic Wonderのパフォーマンス自体は素晴らしかったのだが、色々と残念なアクシデントの多いレースとなってしまった。

 

10/18(日)

Ffos Las (UK) Good to Soft

〇 Novices' Chase (C3) 2m4f199y (Replay)

1. If The Cap Fits J: Darry Jacob T: Harry Fry

2. Fiddlerontheroof J: Robbie Power T: Colin Tizzard

残り2障害辺りで先頭に立ったIf the Cap Fitsがそのまま勝利した。If The Cap FitsはHurdleではAintreeのStayers' Hurdle (G1)勝ちがある馬で、これがChase初戦となる。全体的に飛越は危なかっかしい場面はあったが、加速を掛けてからはそれなりに安定しており許容範囲だろう。24f戦で比較的実績のある馬だが、体型を見ていると20f程度の距離で瞬発力を生かす方が向いているようにも感じる。HurdleではTolworth Hurdle (G1)勝ちのあるFiddlerontheroofが2着。Chaseの飛越としてはこちらの方が上手であったが、If The Cap Fitsと比較するとかなり硬い走りをするタイプであり、純粋なスピード能力という点ではやや分が悪かったように感じる。勝負所において馬体をよく使った飛越はできていたが、レース適性には注意したい。UttoxeterのChaseデビュー戦で2着に入ったEmitonは人気になっていたが、勝負所から遅れ3着に終わった。Hurdleでは24fで実績のあった馬だが、スムーズに運んだにしては止まりすぎな感がある。

 

Welsh Champion Hurdle (C2) 1m7f182y (Replay)

1. Sceau Royal J: Darry Jacob T: Alan King

残り2障害辺りから抜け出したSceau RoyalがBallyandyを抑えて勝利した。Sceau Royalは2017年にはHenry VIII Novices' Chase (G1)を勝った実績馬だが、その後はノドの問題もあったのか目立った活躍はできていなかった。今年の夏にWind Surgeryを行い、久々のHurdle戦となったここで久しぶりの勝ち星を挙げた。まともに走ればこのくらいはやれていい能力を持った馬で、今年はHurdleかChaseかは不明だが、次のレース選択に期待したい。古豪Ballyandyは勝ち馬のスピードに屈する形での2着だが、この馬もレース運び次第では重賞タイトルを取るだけの力は持っている。

 

Auteuil (FR) Collant (4.3)

Prix Georges De Talhouet-Roy (G2)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 3 ans 3600m (Replay)

1. Theleme J: Thomas Coutant T: Arnaud Chaille-Chaille

Raffles Faceが淡々と逃げるも、向こう正面から一気にHeros D'Ainayが進出。しかし最終コーナーを回ってHeros D'Ainayは失速すると、内から伸びてきたThelemeがRaffles Faceを捉えて勝利した。レースの全体としてはRaffles Faceが少しずつペースアップをかけていくという流れなのだが、前半からやや力んで走っていたHeros D'Ainayは向こう正面で内に入るとそのままギアが掛かってペースアップしてしまったようだ。結果的にこれでガス欠となり、残り2障害地点では既に余力を失っている。ThelemeはHurdleは初勝利とした。前走のListed競走ではBaladin De Mescの2着に入っていた馬で、レース内容としてはより距離が伸びての楽しみもありそうな印象である。飛越技術については特段問題は見受けられなかった。Prix Robert Lejeune (G3)の3着馬Raffles Faceは自分のレースをしての2着。同レースの勝ち馬Hermes Baieもいたのだが、残念ながらやや伸びを欠き3着に終わった。

 

Grand Steeplechase De Paris (G1)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 6000m (Replay)

1. Docteur De Ballon J: Bertrand Lestrade T: Louisa Carberry

2. Figuero J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

本来5月に予定されていたG1競走なのだが、今年はこの時期となった。レースはPoly GrandchampやFeu Folletが前に行く展開。早々にGros Open Ditchにて葦毛のBipolaireが落馬。2周目あたりからOn The Goが先頭に代わり淡々とレースを引っ張る。残り2障害辺りからFigueroが抜け出しを図るも、内から抜け出してきたDocteur De Ballonがこれを差し切り勝利した。

AuteuilのTracking Recordを見ると、2周目に設置されているButte en terre、すなわち小さな丘のようなコースの前後に生垣障害が設置されたものを越える地点で一旦ペースが緩み、そこからじわじわとゴールに掛けて加速し続けるラップ推移となっている。同地点はゴールまで2000メートルほどの距離にあるのだが、そこまでこれだけ難易度が高い障害が設置されたコースを4000メートルも走り続け、そこから2000メートルも加速し続けるレースが行われるのだから大したものである。

Docteur De Ballonは昨年のPrix Ingre (G3)にてDalia GrandchampやCrystal Beachといった一流馬を凌いで勝利してきた馬だが、その後のGrand Steeplechase de Paris (G1)は落馬、今年の9月にCompiegneのHaiesで復帰するも落馬と、故障もあってかどうにもいまいちな成績に終わっており、ここでは人気を落としていた。ここでもやはり前半は比較的もたもたと飛越している場面もあったのだが、一方で無事に走ってくればその能力は特筆すべきものがあり、残り2000メートルでのロングスパート能力はここでは際立っていた。前評判を考えるとやや疑いたくなるレースであるが、内容的には紛れもなくフランス障害競走のチャンピオンと言えよう。

Figueroは堂々たるレースで2着に入った。前走のPrix Ingre (G3)ではDevice以下を抑える快勝を挙げており、5歳馬ながらここに入っても戦えることを示していたが、その前評判通りのパフォーマンスであった。最後は苦しくなったようで最終障害からゴールまではラップを落としているのだが、それでも世代交代を感じさせるパフォーマンスであった。意外であったのがFeu Folletで、前半からよいポジションで進んだせいか、Docteur De BallonやFigueroが加速を掛けているRail Ditch and Fenceの辺りで一旦息を入れ、そこから再加速を掛けるようなレース運びをしている。この結果として最後まで加速が掛かっており、これはBaptiste Le Clerc騎手の好騎乗と言えよう。

Carriacouはやや案外で、残り2障害手前をピークにやや苦しくなったようなラップ推移となった。それでもしぶとく極端な減速が生じることなく踏ん張っているのはさすがは昨年の勝ち馬といったところだが、近走成績が示す通り以前のデキにはないかもしれない。牝馬Roxinellaはさすがに距離が長かったようで、この馬本来の瞬発力は発揮できていない。余裕があるとしょっちゅう尻尾を振っているのだが、馬の仕草を見ているとさすがに今回は余裕はなかったようだ。On The Goも終盤のペースアップにはつき合えずに後退しており、この馬も近走成績が示す通り故障の影響がありそうだ。Bipilaireは残念ながらもったいない落馬に終わった。

 

Wroclaw (POL) płotowy - mocno elastyczny (4.3); przeszkodowy - mocno elastyczny (4.1);  (Result)

Nagroda Marszałka Województwa Dolnośląskiego 50000 zł
Finał cyklu gonitw z przeszkodami dla 4-letnich koni. Prawo startu mają konie, które ukończyły co najmniej jedną z gonitw cyklu. (Replay)

1. Avestan J: Niklas Loven T: Grzegorz Wroblewski

途中から一気にOne Way Ticketが抜け出しを図り後続を突き放すも、直線に向いて脚色が一杯に。代わって追い上げてきたAvestanがこれを捉えて勝利した。AvestanはポーランドのSteeplechaseはこれが初勝利とした。それまではドイツの平地競争やMeranoのSiepiを使って良いところがなかったのだが、ポーランドのSteeplechaseに転向してからは比較的安定した成績を残している。9月上旬のレースではOne Way Ticketに完敗していたのだが、今回は重馬場も向いたようだ。人気を背負っていたOne Way Ticketはもったいない敗戦で、どうやら重馬場で消耗した際のスピードの減衰が激しいタイプのようだ。騎手の仕掛けのタイミングとしてはこのコースにおいて一般的なものであったが、今回はこの不良馬場が堪えた内容といっていいだろう。飛越はいまいちなところも多かったのだが、やはり加速の早さはここでは抜けており、来年以降も期待したい。

 

Crystal Cup 172000 zł

Nagroda Portu Lotniczego Wrocław Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 5-letnich i starszych koni.

1. Cosmic Magic J: Lukáš Matuský T: Radim Bodlák

今年は地元ポーランドやいつものチェコ調教馬のみならず、ドイツ、イタリアの計4か国から参戦馬を集めたポーランドCrystal Cup。レースは淡々とWutzelmannが逃げる展開も、好位からReki、Haad Rinなどが接近。最終コーナーを回って直線に向いたところでHaad Rinが抜け出しを図るも、馬群を縫って出てきたCosmic Magicがこれを捉えて勝利した。外から伸びてきたLarizanoがHaad Rinを交わして2着に上がった。Rekiも併せて追いこんできたがこちらは4着まで。

やはり非常に馬場が重いようで、先ほどのOne Way Ticketもそうなのだが馬によってはスピードの減衰が激しいレースとなっている。Cosmic Magicはこれで今年のポーランドSteeplechaseではWielka Wrocławskaを含む4戦無敗とした。この重馬場で馬群の後ろから上がっていくレースは、進路をカットされたり不要なスピードの上下動が発生するリスクが高いのだが、それでもこのレースで勝ち切ったことはこの馬の高い能力を示すものである。着差は僅かであったがそれ以上の力量差を考えた方が良いだろう。昨年はPardubiceのCena Kudy z nudy – Cena ČASCH (Stcc NL)にて2着に入った実績馬であり、当時のメンバーがその後いまいちなのはともかくとしても、来年以降のレース選択には注目すべき馬である。

Larizanoは前評判を覆す好走を見せた。ここまでポーランドのSteeplechaseはなんどか使っていたのだがあまり良いところはなく、SlušoviceのVelká Slušovická steeplechase společnosti D Plast, a. s., věnovaná památce pana doc. Ing. Františka Čuby, CSc. (Stcc I. kat.)を勝った馬とはいえどちらかと言うと伏兵的な存在であったのだが、道中からするすると上がっていき、最後は勝ち馬を追い詰める走りを見せた。12歳とかなり高齢だが、このような重馬場が向くのだろうか。連覇を狙ったHaad Rinは惜しい3着。前走の今年初戦ではいまいち良いところがなく終わっていたが、今回は積極的な競馬を見せたように馬の状態が上がっていたように思える。最後脚が上がったのは重馬場適性だろう。チェコのRekiは比較的スムーズに運んでの4着まで。上位勢の中でレース運びはかなりうまくいった方であり、この展開であれば勝ち切りたかった。

チェコのAl Bustanも注目されていたが、最後は上位争いには加われず5着。MeranoのSteeplechaseで活躍した馬だが、今回は馬場も厳しかったかもしれない。Sztormは早々にGrandstand Jumpで飛越のリズムを崩し、バンケットで落馬に終わった。さすがにこれはこの馬のレースはできていない。ドイツのWutzelmannは積極的にペースを作ったが、最後はやや脱落しての落馬に終わった。この馬も馬場だろう。ドイツ馬としては身体能力よりは飛越技術に長けたタイプで、さすがにこのポーランドのSteeplechaseも難なくこなしてはいたのだが、やや馬場が気の毒だった。イタリアのBurrows Laneも出走していたのだが、早々に馬群から置かれて途中棄権に終わった。なんとかイタリア調教馬も頑張って欲しいのだが。

 

Tokyo / 東京 (JPN) Good

Tokyo High Jump / 東京ハイジャンプ (JG2) 3110m

1. メイショウダッサイ J: 森一馬 T: 飯田祐史

レースは好位から抜け出したメイショウダッサイがそのまま勝利した。メイショウダッサイは昨年の小倉サマージャンプ (G3)に次ぐ重賞制覇とした。今年の中山GJ (G1)ではオジュウチョウサンに迫る2着に健闘しており、中山大障害に向けてはひとまず良いスタートを切った一戦と言えよう。ただし全体的に東京の障害に対応できていない馬や、明らかに条件が不向きであった馬が多く、レースとしては全体的に低調であったことは注意した方がよさそうだ。ヒロシゲセブンは未勝利勝ちのみの馬で、本来オープン/重賞クラスでは厳しいような戦績であったが、2着まで浮上した。全体的にゆったりとしたペースで進行したこと、及びこの馬自身は府中の障害にも対応していたことがその要因として考えられるが、直線やや内にモタれるような場面があったことが残念であった。昨年は新潟ジャンプステークス (G3)を含む3連勝を上げ、これが約1年ぶりの復帰戦となるマイブルーヘブンは3着に終わったが、どうにも障害手前で立ち止まるような仕草が多く見られた。初の固定障害ということもあったのか対応に苦慮しており、これを叩いて変わってくれば面白い存在になるだろう。京都ハイジャンプ (G3)勝ち以来となるスズカプレストは安定したレースで4着に入った。やはり馬場が渋った上でさほどスピードを要求されない展開であれば今後もチャンスはあるだろう。清秋ジャンプステークス3着のネプチュナイトが対抗角に押されていたが、勝負所で大きなミスがあり大敗に終わった。