にげうまメモ

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20/11/08 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/11/01-11/08

11/3(火)

Exeter (UK) Good (Good to Soft in places)

Haldon Gold Cup Limited Handicap Chase (G2) 2m1f109y (Replay)

1. Greaneteen J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

この時期のExeter競馬場では恒例のレース。実力馬がここから始動してくる場合もあるのだが、全体的には上り馬の出走が中心で、ここでもトップハンデとなっていたのは昨シーズンのDesert Orchid Chase (G2)勝ちのあるBun Doranであった。レースはMoonlighterが軽快に逃げるも、好位から進めたGreaneteenがゴール直前にこれを捉えて勝利した。Greaneteen自身はNovice上りの馬で、昨シーズンはC3で3連勝があるも、Grand Annual Challenge Cup (G3)では4着に終わっていた。昨シーズンの段階でNovice馬ながら経験馬に混ざって戦えたことは評価すべき内容だが、ここでも一線級は出走していなかっただけに今後の路線に関しては気をつけるべきだろう。同じくNovice上りのMoonlighterは積極的な競馬で見せ場を作った。10st8lbの軽量も味方につけた結果だが、本来重賞戦線では厳しい感もある。実績馬Bun Doranはいいところなく大敗に終わった。

 

Fairyhouse (IRE) Soft (Soft to Heavy in places)

〇 Handicap Chase (0-102) 2m5f (Replay)

1. Vodka Society J: Sean Francis O'Keefe T: David Dunne

このレース自体はさほど出走馬のレーティングも高くないハンデ戦で、勝ったのもVodka Societyという12歳馬、しかもこれが初勝利と、ここからどうこうということはないレースである。しかしどうやらこの馬自身、閉所恐怖症の上に他の馬を怖がるところがあるようで、今回は3.5マイル離れた厩舎から競馬場まで徒歩でやってきた上に、レースでは終始他の馬から距離を置いて走ることに専念している。この辺りの詳細はここに記載されている。どうやら調教では能力は示していた馬のようで、少しでも長く頑張って欲しいところ。ポーランド生産馬で、Japeの肌に父Rutanという実にポーランドらしい血統のKosという馬もいたのだが、あまり良いところはなく9着に敗れた。

 

11/5(木)

Newbury (UK) Good (Good to Soft in places)

〇 Novices' Hurdle (C4) 2m69y (Replay)

1. Dusart J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

好位から抜け出したDusartがそのまま快勝。DusartはSimonsigの半弟で、これが障害デビュー戦となる。SimonsigはArkle Challenge Trophy (G1)を始め、破天荒なレース振りでG1は2勝をあげた名馬だが、その後故障で970日のブランクがあり、2016年のPunchestownのChampion Chase (G1)におけるGod's Ownの3着が最高で、2016年のSholoer Chase (G2)の落馬で亡くなっていた。故障で本来の能力をさっぱり見せることが出来なかった馬だが、故障前の破天荒なレースで他馬を圧倒するパフォーマンスは数多くの人を惹きつけていたようだ。Dusart自身はこれが障害デビュー戦であり、Simonsigとは異なり父Flemensfithに代わっているが、兄に近づけるような活躍を期待したい。

 

11/6(金)

Warwick (UK) Good (Good to Soft in places)

〇 Novices' Chase (C3) 2m54y (Replay)

1. Allmankind J: Harry Skelton T: Dan Skelton

終始先頭を走ったAllmankindがそのまま勝利した。Allmankindは昨シーズンのCoral Final Juvenile Hurdle (G1)で非常に強い勝ち方を見せた馬だが、JCB Triumph Hurdle (G1)では途中でGoshenに潰され3着、今期の初戦も3着に終わっていた。これがChase初戦となる。あまり良馬場は合わないような感もあり、前走の敗戦は仕方がない感もあったのだが、ひとまずここでの飛越は安定しており、Chaseにおいても楽しみな一頭だろう。

 

11/7(土)

Aintree (UK) Good to Soft

〇 Handicap Hurdle (C2) 3m149y (Replay)

1. Unowhatimeanharry J: Kevin Brogan T: Harry Fry

後方からじわじわと進出してきたUnowhatimeanharryが抜け出して勝利した。UnowhatimeanharryはここまでG1を4勝している名馬で、今年で12歳になる。昨年の5月にはPunchestownのChampion Stayers Hurdle (G1)を快勝し古豪健在ぶりをアピールしていたが、昨いシーズンはFrank Ward Memorial Hurdle (G1)にてApple's Jadeからかなり離れた2着が最高と、さすがに年齢的な面を感じさせていた。今年はこれが初戦となるが、トップハンデの11st5lbを背負っての勝利はさすがの一言である。元々レースセンスの良さを武器にしていたところもあり、多頭数のハンデ戦には適性があるのだが、それでも12歳となってもトップハンデを背負って勝ち切るのだから素晴らしい。さすがに全盛期から比べるとそれなりに力落ちは感じるのだが、それでも今シーズンのこの古豪の挑戦を楽しみにしたい。遡ればAscotのBetfair Exchange Trophy (G3)の勝ち鞍のあるMohaayedは久しぶりの好走になった。

 

〇 Williamhill.com Best Odds Guaranteed Hurdle (C2) 2m4f (Replay)

1. Summerville Boy J: Jonathan Burke T: Tom George

Dinonsが逃げるも早々に後退。代わって5頭の追い比べとなったが、この中から抜け出したSummerville Boyが勝利した。Summerville Boyは元々はSupreme Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬だが、その後はどうにもぱっとせず、昨シーズンはChaseに転向していたが飛越が安定せず、その後再度Hurdleに戻していた。16fのきつい流れには対応できず、24fを走る程のスタミナも不足しているため20fで比較的ゆったりしたペースを追走するレースが合っているようで、イギリス移籍初戦で明らかに馬が出来ていなかったDinonsが慎重にレースを運んだ展開はこの馬向きであった。County Hurdle (G3)勝ちのあるCh'tibelloがこれがWind Surgery明けであったが2着に好走した。

 

Wincanton (UK) Good

'Rising Stars' Novices' Chase (G2) 2m4f35y (Replay)

1. Ga Law J: Darryl Jacob T: Jamie Snowden

終始先頭を走ったGa Lawがそのまま快勝。Ga LawはChaseは3戦3勝とした。4歳馬でフランスで一度Hurdleを走った経緯はあるものの、イギリスにおいてHurdleでのキャリアを殆ど積むことなくChaseに転向させた経緯は不明だが、Chase初戦としてBeginners Chaseを快勝したのち、いきなりExeterのC3のハンデ戦に挑戦し、勝利を収めている。4歳のこの時期としては考えられないほどしっかりとした技術を持った馬で、Novice重賞にありがちな3頭立ての単騎逃げとレースはしやすかったのだが、終始綺麗な飛越を見せていた。HurdleではNoviceのハンデ重賞で3着のあるHarrycane Harveyが2着に入ったが、勝ち馬とはかなりの技術面での差があった。HurdleではKingwell Hurdle (G2)勝ちもあり、これがChaseは2シーズン目となるGrand Sancyは飛越のリズムを崩して大敗に終わった。昨シーズンの段階ではNovice Chaseの重賞クラスでも好走していた馬だけにここまで大敗するとは驚きなのだが、それだけGa Lawの走りが良かったということなのだろう。

 

Elite Hurdle (G2) 1m7f65y (Replay)

1. Sceau Royal J: Darryl Jacob T: Alan King

Brandon Castleが逃げる展開も残り2障害手前で後退。代わってするすると前に出てきたSceau RoyalがTeqanyに7馬身差をつけて快勝した。Sceau Royalは遡るとこのレースの2016年の勝ち馬である。その後はChaseに転向し、Henry VII Novices' Chase (G1)勝ちなど活躍したが、ノドの影響もあったのかその後はどうにもぱっとせず、今年に入ってWind Surgeryを経てHurdleに戻していた。Hurdleではこれで2連勝となる。16fらしくある程度しっかりとしたペースで流れる中を強烈な決め手を生かして勝ち切る姿は4年前と同様であり、8歳となった今年もこの馬らしさは健在といっていいだろう。HurdleかChaseかレース選択としては不明だが、ノドの影響がないのであればChaseという選択肢も面白いように思える。夏から好調のTeqanyは強敵相手に頑張っての2着。Maghull Novices' Chase (G1)勝ちのあるDiego Du Charmilが3着。ここのところはHurdleに戻しているようで、勝ち切れないまでもとりあえず着は拾っている。今年のAdonis Juvenile Hurdle (G2)にて鮮やかな勝利を挙げたSoloも出ていたが、いいところなく4着に終わった。この馬はとりあえずこのクラスのペースに慣れるところからだろう。

 

Fukushima / 福島 (JPN) Firm

〇 Open / 障害3歳以上オープン 3350m

1. コウキチョウサン J: 石神深一 T: 和田正一郎

じわじわと位置を上げたコウキチョウサンがヒロノタイリクを抑えて勝利した。コウキチョウサンはこれでオープンクラスでは2勝目となる。怪我から復帰した石神騎手の騎乗は、途中で前をカットされることを避けつつも無駄のない進路を探しながら、じわじわと無理なくペースアップを図るものだが、まるでヨーロッパの障害騎手のような操縦の仕方で、この馬のステイヤーとしての資質を余すところなく発揮するものであった。さすがは日本障害競馬の第一人者といったところだろう。もう少しポジションを取れるようになればより上も目指すことが出来るのだが。未勝利を勝ったばかりのミッキーブラックは人気になっていたが、どうにも飛越が怪しかったり、道中行きたがって走ったりと若さを見せていた。

 

〇 Maiden / 障害3歳以上未勝利 2750m

1. グローブシアター J: 高田潤 T: 角居勝彦

3角から急加速したグローブシアターがディレットーレ以下を抑えて勝利した。グローブシアターは名牝シーザリオの子で、兄弟にはサートゥルナーリアやエピファネイアなどの名馬がずらりと揃う超良血馬である。実績自体は準オープンクラス勝ち程度とさほど振るわないのだが、父も日本を代表する大種牡馬キングカメハメハということを考えれば、血統面だけで種牡馬入りの可能性もあるような馬で、このような馬が障害競走に参戦するというのは日本競馬界の豊かさを物語る事象だろう。大成した兄弟と比べるとやや小柄で、父キングカメハメハの影響かこの血統特有のしなやかさには少々欠ける印象で、これが瞬間的なスピードの遅さに繋がっていた。今回は飛越は全体的にいまいちであったが、とりあえずは能力だけで格好をつけたといった印象である。平地では長距離戦で実績もあるのだが、前述の通り長距離を使っていたのはステイヤー資質というよりは馬の性能の問題であるように考えられるため、あまり距離が伸びて良くなるという印象はない。とりあえずもう少し飛越技術がついてくればより一段階上には行けるだろう。

 

11/8(日)

Sandown (UK) Soft (Good to Soft in places)

〇 Maiden Hurdle (C4) 1m7f216y (Replay)

1. Adrimel J: Richard Johnson T: Tom Lacey

勝ったのは好位から抜け出したAdrimelで、Hurdleは初戦であったがいきなり勝利を収めた。National Hunt FlatではCheltenhamのChampion Bumper (G1)にRichard Johnson騎手を確保して挑んだ能力のある馬で、このまま騎手を確保できるのであれば面白いかもしれない。2005年のYorkshire Oaksの勝ち馬であるPunctiliousの産駒であるClongowesはこれがHurdle初参戦であったが、途中からついて行けなくなり大敗に終わった。長らく平地を走っており、重賞競走への参戦歴もあるのだが目立った成績は残せていない。これが862日ぶりの実戦でありさすがにレース勘も戻っていなかったものと思われるが、どこまでやれるか楽しみにしたい。平地競争の活躍馬と言えば、平地ではListed勝ちもあるDolphin Vistaという馬もいたのだが、これも同様に大敗に終わった。

 

Navan (IRE) Soft to Heavy

For Auction Novice Hurdle (G3) 2m (Replay)

1. N'Golo J: Paul Townend T: Willie Mullins

ゴール直前で突っ込んできたN'Goloが先に抜け出していたAnnexationを捉えて勝利した。N'GoloはこれでHurdleは4戦3勝で、おそらく何かしらトラブルがあったと思われる8月の競争を除けばここまで無敗の成績を収めている。やや馬格のあるタイプでパワーのある走りは重馬場巧者のそれであり、やや人気こそ落としていたが、11st7lbを背負って勝ち切ったことは評価していいだろう。Rachael BlackmoreのAnnextionは惜しい2着。Champion Bumper (G1)にて5着のあるEskylaneもいたのだが、勝負所から脱落し5着に終わった。

 

Lismullen Hurdle (G2) 2m4f (Replay)

1. Sire Du Berlais J: Mark Walsh T: Gordon Elliott

するすると逃げたFrench Dynamiteをゴール前でSire Du Berlaisが捉えて勝利した。Sire Du Berlaisは今年のPertemps Network Hurdle Finale (G3)を11st12lbを背負って連覇した馬で、どうにもアテにしにくい面はあるのだが、今回はどうやら真面目に走ったようだ。さすがにそろそろハンデ戦となると斤量を背負うことになりそうだが、レース選択には注意したい。人気背負っていたのは今年のStayers' Hurdle (G1)の2着馬Ronald Pumpだが、道中狭いところに入り、直線馬群の中に入り最終障害で落馬に終わった。これは騎乗ミスの類だろう。実績馬ではSupasandaeもいたのだが、勝負所から伸びず大敗に終わった。

 

Tortria Chase (G2) 2m (Replay)

1. Castlegrace Paddy J: Brian Cooper T: Pat Fahy

例によってOrnuaが元気よく逃げるも、残り3障害辺りから後続が殺到。A Plas Tardを凌いでCastlegrace Paddyが勝利した。Castlegrace Paddyは今年のWebster Cup (G2)の勝ち馬で、G1クラスで一線級相手だとやや厳しい感もあるのだが、この辺りのメンバー相手には力を見せている。実績的にはA Plas Tardが抜けていたのだが、シーズン初戦ということもあってか慎重なレースに終始したことが幸いしたかもしれない。比較的経験は浅い物の重賞クラスでの活躍が期待されるEclair De Beaufeuもいたのだが、前2頭には肉薄できず、最終障害で落馬に終わった。

 

Auteuil (FR) Collant (4.3)

Prix Carmarthen (G3) 3900m (Replay)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus.

1. Paul's Saga J: Kevin Nabet T: David Cottin

例によって淡々とGalop Marinが逃げるも、これを好位で追いかけたPaul's Sagaが快勝した。Paul's Sagaは前走のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)にてL'Autonomieを下してきた馬で、そこから連勝とした。前走の時点では完全に人気薄のノーマークの一頭であったが、当時のRapport de Trackingを分析すればわかる通りその走りはフロックでもなんでもなく、ここでもその能力をしっかりと見せたことになる。前走Listed競走を勝ってきたBeau Gosseが2着。以前はイギリスのHurdle競走にも参戦した経歴のある馬だが、2018年から2年近い休養に入っており、とりあえず馬は元気なようだ。走りを見ていると一瞬の瞬発力というよりは航行能力に優れたタイプのようで、Steeplechaseでの活躍が期待される馬である。

 

Haras D'Etreham - Prix Bournosienne (G2) 3600m (Replay)

Haies Pour pouliches de 3 ans.

1. Hotesse Du Chenet J: Ludovic Philipperon T: Marcel Rolland

人気を背負ったHotesse Du Chenetが抵抗するFortunes Melodyを抑えて快勝。Hotesse Du Chenetは前走のPrix Magne (G3)を含む3連勝とした。現時点の3歳牝馬Hurdle路線ではトップクラスの馬で、前走とFortunes Melody、Ha La Landとさほどメンバーが変わらなかったとはいえ、その地位は現時点では確定したといっていい内容だろう。

 

Prix Cambaceres - Grande Course De Haies Des 3 Ans (G1) 3600m (Replay)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 3 ans

1. Theleme J: Thomas Coutant T: Arnaud Chaillé-Chaillé

3歳世代におけるHaiesのG1競走。Raffles Faceが快調に飛ばす展開も、最終コーナーからThelemeが接近。そこから抜け出してきたThelemeが最終障害手前で先頭に立つと、そのまま後続を突き放して快勝とした。ThelemeはこれでHurdleは2連勝。前走のPrix Georges De Talhouet-Roy (G2)ではRaffles Faceを相手に4馬身差の快勝を決めており、前評判通りの走りとなった。そのRaffles Faceが2着。同3着のHermes Baieは第1障害で落馬に終わった。

 

Prix Maurice Gillois - Grand Steeplechase Des 4 Ans (G1) 4400m (Replay)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans.

www.youtube.com1. Le Berry J: Kevin Nabet T: David Cottin

前半から軽快に逃げたLe Berryがそのまま8馬身差の圧勝。Le BerryはこれでSteeeplechaseは6連勝とした。そのうち5戦がListed以上の競争であり、明らかにこの世代のSteeeplechaseでは敵なしといった状況である。Haiesは一度だけ走って5着に敗れているが、このパフォーマンスは早々にSteeeplechaseに切り替えた経験値だけで語ることが出来る内容ではないだろう。最後までしっかりと脚を伸ばしていたように余力十分であり、来年以降の活躍が多いに楽しみな一頭である。Gallo Contiは前走のPrix Orcada (G2)に引き続きのLe Berryの2着に終わった。残念ながら現時点での実力差ははっきりしているが、この馬もまた世代トップクラスの実力を持った馬として来年以降が楽しみな馬である。