にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/11/15 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/11/09-11/15

11/11(水)

Exeter (UK) Good to Soft (Good in places)

〇 Beginners Chase (C3) 2m3f48y (Replay)

1. Fiddlerontheroof J: Robbie Power T: Colin Tizzard

ハナに行ったFiddlerontheroofがSilver Hallmarkを凌いで辛勝。Fiddlerontheroofは今年のTolworth Hurdle (G1)の勝ち馬だが、その後挑んだSupreme Novices' Hurdle (G1)ではShishkinの11着と大敗しており、やや今年のNovice Hurdle 16f路線におけるイギリス勢の水準が疑われる結果となっていた。ひとまずChaseはこれが2戦目の勝ち上がりとした。初戦はHurdleではG1勝ちのあるIf The Cap Fitsの2着に敗れており、今回はとりあえず格好はつけたのだが、やや飛越面で怪しい部分が残っており、今後の課題となりそうだ。Silver HallmarkはHurdleではFiddlerontheroofにはさっぱり敵わなかった馬だが、スムーズな飛越で見せ場を作った。

 

Compiegne (FR) Tres Lourd (5.1)

Grand Steeplechase Cross Country De Compiegne (Listed) 5400m (Replay)

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus

1. Etat D'Espry J: James Reveley T: Emmanuel Clayeux

前半からSurdoue De Ballon及びDon Du Cielが前に行く展開も、途中から先頭に立ったEtat D'Espryが軽快に引っ張ると、そのまま8馬身差の快勝とした。Etat D'Espryは今年からCross Countryを使っている馬でさほど経験は多くないものの、とりあえずこれで前走のCompiegneのCross Countryから連勝とした。全体的に非常に前への推進力に富む飛越を見せており、ミスはなく飛越は非常に器用なものを見せていた。6歳とまだ若い馬だが、飛越を見る限りではフランスCross Country Horseとしては非常に優秀なものを見せており、今後が楽しみな一頭だろう。Cross Countryは3連勝で挑んできたEtonnantが2着で、この馬もまた経験は多くはないものの、才能のある上り馬として今後が楽しみな一頭である。ここのところはPrix Basile Et Bernard Lachaud Grand Cross、Grand Cross Du Pinを含む3連勝で来た実績馬Drop D'Estruvalが3着で、これは72kgのトップハンデの分だろう。

 

Wroclaw (POL) płotowy - elastyczny (3.9); przeszkodowy - mocno elastyczny (4.1); 

〇 Nagroda 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000) (Replay)

Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 4-letnich koni

1. One Way Ticket J: Složil ml. Pavel T: Michał Borkowski

途中から先頭に立ったOne Way Ticketがそのまま押し切り勝利した。One Way Ticket自身は今年のポーランドSteeeplechase4歳世代ではトップクラスの活躍を見せてきた馬で、前走のNagroda Marszałka Województwa Dolnośląskiegoでは重馬場での早仕掛けにより、最後は脚が上がってAvestanに交わされて2着に終わっているが、やはり丁寧に乗ればこれくらいは走ることが出来る。瞬間的な加速力の高さはさすがであり、そのAvestanもMilanoで好走していたことを踏まえると来年以降が楽しみな一頭だろう。実績的には力量上位のSay Szumawaが2着に入った。

 

Nagroda Zamknięcia Sezonu 20000 zł (10000-4000-3000-2000-1000) (Replay)

Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 5-letnich i starszych koni, które w 2020 r. nie wygrały w gonitwach z przeszkodami sumy 30 000 zł. 

1. Haad Rin J: Niklas Loven T: Robert Świątek

好位から進めたHaad RinがNetto、Nickの2頭の追い上げを凌いで勝利した。Haad Rin自身は昨年のポーランドSteeeplechaseではトップクラスの活躍を見せた馬だが、今年はトラブルでもあったのか復帰が遅れており、これが初勝利となる。今年のWielka Wrocławskaでは地元馬の意地を見せるような積極的な騎乗で4着に入っており、今年の復帰戦ではぱっとしないレースに終わったものの、馬の状態としては戻っていると考えていいのだろう。やはりここでは能力は高い馬で、来年は地元代表としての活躍を期待したい。地元のNetto、Nickが2、3着に入り、チェコから強力なメンバーの参戦がなかったとはいえ、シーズン最後のSteeeplechase競走において地元勢の意地を感じさせるレースを見せてくれた。

 

11/12(木)

Clonmel (IRE) Heavy

Clonmel Oil Chase (G2) 2m4f51y (Replay)

1. Bachasson J: David Mullins T: Willie Mullins

するすると逃げたBachassonがそのまま逃げ切り勝利した。BachassonはChaseではListed勝ちがあるのだがG2競走という点では初勝利で、以前は飛越がやや怪しい点があったもののだいぶ安定してきている。おそらく距離的にも20fくらいの距離が良いのだろう。人気を背負っていたCilaos Emeryは久々のChaseであったが、残り4障害地点でやや大きなミスがあった。昨シーズンは結局Hurdleに戻した経緯があるだけに、飛越の安定性とそのレース選択には注意した方がよさそうだ。前半やや引っかかって走る場面もあり、16fの方がレースはしやすいかもしれない。

 

11/13(金)

Cheltenham (UK) Good (Good to Soft in places)

Glenfarclas Cross Country Handicap Chase (C2) 3m6f37y (Replay)

1. Kingswell Theatre J: Tom Scudamore T: Michael Scudamore

4. Easysland J: Jonathan Plouganou T: David Cottin

PU Tiger Roll J: Robbie Power T: Gordon Elliott

Grand Nationalの3勝がかかるTiger Roll、さらに今年の3月のGlenfarclas Cross CountryにてそのTiger Rollを圧倒してきたフランスのEasyslandが出走していたのだが、レースは前半から軽快に逃げたKingswell Theatreがそのまま勝利した。Kingswell Theatreは2017年のこのレースの勝ち馬で、それ以前から超長距離戦に活路を見出してきたステイヤーである。その後は2度のWind Surgeryを経ながらもこの路線にてコンスタントに出走を続けており、特に逃げの一手においては特徴的な戦術を持っている。やはり逃げないとこの馬の良さが出ないのだが、今回は途中で絡んでくる馬もおらず、終始この馬のペースで走ることが出来たことがなによりの勝因だろう。10st0lbという軽ハンデも味方した。スタート直後からこの長距離戦では珍しいくらいTom Scudamore騎手がはっきりと意思を持ってハナを主張しており、さすがはこの馬のことを知り尽くした名手の騎乗である。11歳と年齢は重ねているが、このレースにおいて展開のカギを握る馬として注意した方が良いだろう。

注目されたTiger Rollはさっぱり走らず途中棄権に終わった。今回はRobbie Power騎手とは初コンビであったが、どうにも前半から飛越のリズムが悪く、さっぱりレースに参加せずの敗戦ということで、特に故障等もなかったことを考えると、おそらく馬のやる気の問題だろう。10歳と年齢は重ねているだけにそろそろ年齢的なものが出てきた可能性もある。当たりの強いRobbie Power騎手との手が合っているようには思えず、良馬場もこの馬向きとは思えない。小さい馬だけに11st12lbの斤量は厳しかったことも考えると、今回の敗戦は度外視したいところだが、どうやら陣営からは引退を示唆する報道も出ているようだ。フランスのEasyslandもらしくない敗戦に終わった。11st8lbと、今回は初めての斤量を背負ったところもあり、フランスは全体的にイギリスよりも軽ハンデとなることを考えると、この斤量に馬が戸惑った可能性もある。また、最近は第4障害のAintree Canal Turnはオミットしていたのだが、今回は久しぶりにその障害を使用しており、1周目、2周目ともにそのAintree Canal Turnにてミスをしていた。ここで飛越のリズムが狂ったような印象もある。

その他。Beau Du Brizaisは初のCross Countryであったが見せ場を作った。C3クラスではあるが最近まで好走を続けており、8歳と若い馬だけに今後の活躍を楽しみにしたい。Welsh Grand National (G3)の勝ち馬で、Virtual Grand Nationalも勝ったことになっているPotters Cornerも3着に頑張った。この馬もCross Countryは初めてで、おそらくGrand Nationalを目指すと思われる今年の初戦としていいスタートを切った。フランスからもVino Royaleも出走していたのだが、こちらはペースについて行けず途中棄権。前走はMeranoのPremio Delle Nazioni (G2)で高い飛越技術を見せて2着に入っていたのだが、さすがにMeranoのトリッキーなコースとは要求されるスピード能力が大きく異なる。

 

Ballymore Novices' Hurdle (G2) 2m5f (Replay)

1. Does He Know J: David Bass T: Kim Bailey

前半から大きくリードを取ってThe Grand Visirが逃げるも、最終障害手前で先頭に立ったDoes He KnowがWild Romanceを抑えて勝利した。Does He KnowはこれでHurdleは3連勝とした。昨年の段階でHurdleは使っていたのだが勝ち星を上げるには至らず、今シーズンは2回目のNoviceクラスとなる。スムーズな飛越とレース運びの巧さは経験馬のそれであり、この距離も合っているのだろう。C4のNoviceを勝ったばかりのWild Romanceは強敵相手に見せ場を作った。経験馬Polishは勝ち馬と同じあたりからレースを進めるも、直線で伸びを欠き3着まで。Frankel産駒で平地ではDoncaster Cup (G2)の3着などの実績のあるThe Grand Visirは積極的に運ぶも、最後失速して4着に終わった。ここまでHurdleは4戦して良いところがなく、本質的なステイヤーが揃う障害競走においてステイヤー資質に欠けるFrankel産駒をこの20f戦に使ってくる意図がよくわからないのだが、とりあえず前半からやや引っかかり気味に走る様子を見ると、障害を使うのであればひとまず障害競走に専念した方がいいかもしれない。

 

11/14(土)

Cheltenham (UK) Good to Soft (Soft in places)

JCB Triumph Trial (G2) 2m87y (Replay)

1. Duffle Coat J: Robbie Power T: Gordon Elliott

前半からCabot Cliffsが飛ばす展開も、残り2障害辺りからAdagioが先頭に。しかし後方からじわじわと位置を上げていたDuffle Coatがこれを捉えて勝利した。Juvenile Hurdleでは時々ペース配分を間違えて前半からかなりペースが流れることがあるのだが、今回はその役目をCabot Cliffsが担っている。Duffle CoatはこれでHurdleは4戦無敗としたが、その実前半はかなり前から置かれて走っており、道中もだいぶ騎手が促して走らせている。どうしてもJuvenile Hurdleというとスローからの瞬発力勝負になりがちなのだが、Juvenile Hurdleとしてはやや特異な性質を持った馬であり、どちらかというと距離が伸びてより厳しい展開となった時に力を発揮する馬だろう。今後のJuvenile Hurdleに限って言えば実績通りに受け取らない方がいいかもしれない。ドイツ産馬のAdagioが2着に入った。人気のHell Redはさっぱり走らなかったが、どうやらレース後に呼吸異音が見つかったようだ。

 

From The Horse's Mouth Podcast Novices' Chase (G2) 1m7f199y (Replay)

1. Eldorado Allen J: Robbie Powert T: Colin Tizzard

F Gumball J: Richard Johnson T: Phillip Hobbs

軽快に飛ばしたGumballが後続を突き放して逃げ込みを図るも、残り2障害でまさかの落馬。かわって先頭に立ったEldorado Allenがそのまま勝利した。GumballはHurdleではListed勝ちのある実績馬で、Chaseはこれが3戦目であった。初戦こそ飛越がさっぱりで大敗しているが、そこからきっちり修正してきており、今回も終始軽快な飛越を見せていた。残り2障害地点の落馬は騎手との意図が合わなかったものであり、内容的にはほぼ勝ちに等しいものだろう。Eldorado Allenはたなぼたでの勝利となった。Chaseではこれで2戦2勝だが、残り2障害地点ではそろそろ脚が上がっていた。Quel Destin、Le Patriote、Fusil Rafflesといった実績馬もさっぱり走らず。特にFusil Rafflesはペースについていけていないようなところがあった。

 

Paddy Power Gold Cup Handicap Chase (G3) 2m4f44y (Replay)

1. Coole Cody J: Tom O'Brien T: Evan Williams

前半から元気よく引っ張ったCoole Codyがそのまま逃げ切り勝ち。Coole CodyはChaseはこれが6戦目、さらに今シーズンはNoviceクラスとさほど経験がある馬ではなく、前半でも大きなミスがあるのだが、それでも後続に脚を使わせるような厳しいペースを刻んで凌ぎ切るのだから大したものである。10st5lbの軽量が味方した可能性もあるのだが、精神力の強さは注目に値する内容である。ハンデ重賞の常連であるSpiritofthegamesが惜しい2着。Al Dancerは11st8lbを背負いながらも3着に来た。もともとHurdleでもハンデ重賞で実績を残してきたタイプであり、昨シーズンはNovice重賞で活躍したが、どちらかというとこの路線を歩むものと思われる。Kauto Rikoは道中後方をのんびり追走していたが、最後脚を伸ばして4着にきた。なにかと人気薄で突っ込んでくる馬で、前評判以上に注意しておきたいタイプである。

 

Punchestown (IRE) Soft to Heavy (Heavy in places)

〇 Beginners Chase 2m3f150y (Replay)

1. Asterion Forlonge J: Paul Townend T: Willie Mullins

終始先頭を走ったAsterion Forlongeがそのまま勝利。Asterion Forlongeは昨シーズンのChanelle Pharma Novice Hurdle (G1)の勝ち馬で、続けて挑んだSupreme Novices' Hurdle (G1)では終始斜飛して後続に迷惑をかけるも4着に頑張っていた。Chaseはこれが初戦であり、どうにも飛越が怪しい場面はあったがとりあえず格好はつけた。走法を見ているとやはりこのような重い馬場の方が合っているようで、Chase初戦としては合格点だろう。昨シーズンはNovice Hurdleの重賞競走でも好走したConflatedが2着に入った。

 

Mongey Communications Novice Chase (G2) 2m40y (Replay)

1. Felix Desjy J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

序盤からFelix Desjyが先頭に行く構えも、途中からEmily Moon、さらにSizing Pottsieが先頭に。途中で脱落したEmily Moonを退けてSizing Pottsieが一時は後続に大きなリードを取るも、ゴール前で復活してきたFelix Desjyがこれを捉えて勝利した。Emily Moonは第2障害のところで大きなミスをしているのだが、そこから立て直すことで馬にスイッチが入ってしまったようだ。そのままSizing Pottsieを引き連れる形で行ってしまったものと思われる。Felix DesjyはこれでChaseは2戦無敗とした。Hurdleでは2019年のTop Novices' Hurdle (G1)勝ちのある馬だが、どうにも実績的にはアテにしにくい部分も残っている。この中では比較的実績のあるSizing Pottsieが2着に入った。今年の3月にはFlyingbolt Novice Chase (G3)勝ちもあり、16fに戻ればといったところだろう。人気を集めたDarver Starはどうにも伸びきれず3着に終わった。

 

Milano (ITA) Tempo Vario - Terreno L.Pesante (Result)

Corsa Siepi Dei 4 Anni (G2)

per cavalli di 4 anni (Siepi - GRUPPO II - FANTINI) 3600m

1. Gangster De Coddes J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

なぜか通常レース映像を上げているサイトがさっぱり仕事しないため、この日のMilanoのレース映像はご容赦されたい。レースはGangster De CoddesがNo Pasaranとの一騎打ちを制して勝利した。Gangster De CoddesはこれでAscendente、Discendenteから3連勝とした。Meranoの重賞戦線を戦ってきたNo Pasaranとは異なる新勢力であり、この路線はイタリアのSky Constellationが強いのだが、勢いのある馬として今後が楽しみになるだろう。No Pasaranはさすがに見せ場を作った。イタリア勢としてはNormandy Dela Vega以下3頭が出走していたが、いずれも2頭からはかなり遅れた入線となった。

 

Staffe D'Oro (G3)

per cavalli di 4 anni (Steeplechase - GRUPPO III - FANTINI) 3600m

1. Pour Vous Et Nous J: Jan Kratochvil T: Josef Vana Jr

途中から先頭に立ったPour Vous Et Nousがそのまま勝利した。Pour Vous Et NousはSiepiでもCriterium Di Primavera (G2)勝ちのある世代トップクラスの馬で、Steeeplechaseはこれが2戦目となる。Gran Criterium D'Autunno (G1)にてNight Moonの3着のあるLord Dragonはこれが1年間の休養からの復帰2戦目だが、強敵相手に抵抗して2着まで頑張った。もともとはこの世代トップクラスの馬であり、Steeeplechaseの障害に慣れてくれば再度の活躍が期待できるだろう。ポーランドSteeplechaseで活躍したAvestanはMilanoのSteeplechaseは初参戦であったが、Lord Dragonに迫る3着に入った。MilanoとWroclawでは障害やコース形態が大きく異なるのだが、大健闘の内容といっていいだろう。前走も不良馬場で早仕掛けしたOne Way Ticketがバテたところを交わすような勝ち方で、どちらかというとやや棚ぼた的な部分があったことを考えると、案外この路線のポーランドSteeeplechaseの水準は決して低くはないと期待される。

 

Giulio Berlingieri (G2)

per cavalli di 3 anni (Siepi - GRUPPO II - FANTINI) 3600m

1. Roncal J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

人気を背負ったRoncalが快勝。RoncalはEttore Tagliabue (G3)にてNo Profitの2着のある馬で、ここでは明らかに実績上位である。大健闘の内容であったのがポーランド調教馬のEver Soleadoで、勝ち馬から6馬身差の2着に入った。イタリア調教馬として再先着であったのがUrusの4着だが、ここまで平地の未勝利を勝ったのみの馬というのはやや寂しいものがある。

 

Gran Corsa Siepi Di Milano (G1)

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi - GRUPPO I - FANTINI) 4000m

1. Skins Rock J: Pavel Slozil T: Semenka Zdenek

前半からJan FaltejsekのLaldannが飛ばす展開も、中盤から馬群は密集。勝負所からLaldannは後退すると、代わって抜け出したSkins Rockが勝利した。Skins RockはここまでイタリアSiepiでは目立った成績はなく、チェコ国内でいくつか勝ち星がある程度の馬で、結果としてはやや波乱の内容になった。これに迫ったのがイタリアのNamoumで、ここのところ下級条件クラスを3連勝で来ていたとはいえ重賞競走では大した実績はなく、こちらもやはり驚きの好走となった。前半からLaldannがかなり引き離して逃げたことでややペースが乱れた結果と考えた方が良いだろう。Beau Saonois、Piton Des Neigesの実績馬2頭はいずれも勝負に加われずに終わったが、おそらく乱ペースに対応できなかったものと思われる。

 

Grande Steeplechase Di Milano (G1)

per cavalli di 5 anni ed oltre (Steeplechase - GRUPPO I - FANTINI) (Replay)

1. Northerly Wind J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

Notti Magicheがするすると逃げるも、これを捉えたNortherly Windがそのまま5馬身差の勝利とした。Northerly Windは今年のGran Premio Merano (G1)にてL'Estranの2着に入った馬で、言うまでもなくイタリアSteeplechaseにおいてはトップクラスの一頭である。今回はNotti Magicheの展開ではあったが、それをきっちりと仕留める辺り能力的には上と考えていいだろう。8歳とまだ若い馬で、来年の活躍が楽しみな馬である。10歳のベテランNotti Magicheはさすがに自身のペースで運ぶことが出来れば見せ場を作ることが出来る。どうしてもGran Premio Merano (G1)では速い馬がいるため展開が向かないのだが、展開次第ではまだ大仕事をやってのける余地は残っているようだ。僅差の3着に入ったCapivariもイタリアのSteeplechaseでの経験はさほど多くはないのだが、やはり持っている能力自体は高いものがある。Siepiでの活躍が目立つが、MilanoのSteeplechaseに参戦していることを踏まえると来年はMeranoも含めてSteeplechaseに転向することが期待される。ポーランドSteeplechaseで活躍したCosmic Magicは惜しい4着で、MilanoとWroclawのSteeplechaseの形態が大きく違うことを考えると十分健闘した結果だろう。来年はPardubiceのCross Countryで見てみたい。

 

Hanshin / 阪神 (JPN) Firm

Kyoto Jump Stakes / 京都ジャンプステークス (JG3) 3140m

1. タガノエスプレッソ J: 平沢健治 T: 五十嵐忠男

3. オジュウチョウサン J: 石神深一 T: 和田正一郎

京都競馬場が改修のため阪神競馬場に変更された。レースは前半からゆったりと逃げたタガノエスプレッソがそのまま勝利した。タガノエスプレッソは2014年の11月15日にデイリー杯2歳ステークス (G2)を勝利した馬で、実にこれが6年ぶりとなる重賞勝利である。障害重賞はこれが2勝目で、重馬場でやや飛越技術を要した京都ハイジャンプ (G2)では3着に敗れていたが、中京替わりとなった阪神ジャンプステークス (G3)では強い競馬を見せていた。キングカメハメハから受け継いだややパワーのある走りとブラックタイド産駒らしいストライド持続性能に優れた馬で、障害競走への適性は言うまでもないのだが、それ以上に今回は平沢騎手が終始ゆったりと運びつつ、オジュウチョウサンからプレッシャーを受けた際も強引な抵抗を試みてペースを上げ切らず、最後の直線まで全体に余力を残したレースに持ち込んだことがフラットでのスプリント能力に優れるこの馬にとって一番の勝因であった。

圧倒的支持を受けたオジュウチョウサンは、約4年ほど続いた障害競走における連勝記録は13で途切れることになった。このブログでは散々書いてきているように、オジュウチョウサン自身は日本競馬においては特異なステイヤー資質を有する馬であり、これが障害競走においてはひたすら長く走り続けることが出来るタフネスへと繋がっており、レース展開が厳しくなればなるほどこの馬の強さが際立つことはこれまでのレースが雄弁に物語っている。一方で、上記のような高いステイヤー資質を有する一方で、瞬間的なスピード能力については必ずしも圧倒的なものを有しているわけではなく、それはこれまでの平地再挑戦などという馬鹿げた試みの失敗が示す通りである。従って、この馬を日本障害競走において負かすとしたら、全馬が余力を持って最終障害を飛越し、瞬間的なスプリント能力により勝敗が決するという形が究極であり、障害競走としては「三流の」展開しか考えられないのだが、残念ながら今回は上述の通り、そのような展開に類似する形となってしまった。年齢的な衰えを懸念する声もあるようで、騎手によれば最終障害で脚をぶつけたという話もあるようだが、上述の通り今回は展開による敗戦と考えるのが尤もらしい仮説だろう。条件が向く上に、なにかと色気を持って仕掛けてくる馬が現れることが期待される中山大障害では改めて期待したい馬である。

その他。ブライトクォーツは展開利で2着まで突っ込んできた。オジュウチョウサンに対して真っ向勝負を挑んでは分が悪いので、ある意味死んだふりのような騎乗は正解である。ここまでJG1でも好走を続けているように対オジュウチョウサン陣営としては筆頭格の一頭だが、中山大障害では色気を持って正々堂々と真っ向勝負を挑むのではなく、あくまで不意打ちを食らわせるような騎乗を期待したい。ビッグスモーキーは大健闘の4着だが、距離が伸びていいタイプではないだろう。スズカプレストはさっぱりいいところなく5着に終わったが、さすがに良馬場の後傾ラップで、前半から前に置いて行かれては厳しかった。重馬場になって改めて期待したい。

 

11/15(日)

Cheltenham (UK) Soft

〇 Novices' Chase (C2) 3m80y (Replay)

1. The Big Breakaway J: Robbie Power T: Colin Tizzard

途中から先頭に立ったThe Big Breakawayがそのまま快勝。The Big BreakawayはこれがChase初戦で初勝利とした。Hurdleでは今年のBallymore Novices' Hurdle (G1)にて4着のある素質馬で、いきなり24fを使ってきた経緯は不明だが、いい勝ち方を見せた。かなりゆったりと進んだということもあって細かいミスもあるのだが、最後まできっちりと脚を伸ばし切る辺りここでは力量上位だろう。ここまでChaseでは4勝をあげているSoldier Of Loveもいたのだが、勝負所から脱落して途中棄権に終わった。

 

Planteur At Chapel Stud Handicap Chase (G3) 3m3f71y (Replay)

1. Ramses De Teillee J: Tom Scudamore T: David Pipe

この手のハンデ戦にしては珍しく6頭と小頭数立てで行われたレースで、レースは好位から進めたRamses De Teilleeが勝利した。Ramses De Teilleeは実績的に目立つのはやはり2018年のWelsh Grand National (G3)の2着で、なぜか昨シーズンはHurdleを使ったりもしているのだが、いずれにせよ24f以上のハンデ重賞では常連となる馬である。先月はなぜかフランスGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)に参戦していたりもするのだが、やはり飛越を見ているとChaseで使用する障害においてもっともスムーズな飛越を見せているように感じる。National Fenceへの適性という意味ではやや微妙で、2019年のGrand Nationalはいいところなく途中棄権に終わっているのだが、いずれにせよGrand National路線が濃厚な一頭だろう。Yala Enkiは今年で10歳になる馬だが、例によって逃げて2着まで頑張った。11st12lbを背負っての2着は立派であり、おそらくこの馬もGrand Nationalに向かうことになるだろう。昨年の勝ち馬West ApproachはHarry Cobdon騎手が丁寧に進めていたのだが、勝負所から脱落して4着に終わった。

 

Shloer Chase (G2) 1m7f199y (Replay)

1. Put The Kettle On J: Aidan Coleman T: Henry De Bromhead

途中からやや暴走気味に逃げたDuc Des Genievresが元気いっぱい飛ばすも、これを直線で捉えたPut The Kettle Onが勝利した。Put The Kettle Onは昨シーズンのArkle Challenge Trophy (G1)のを勝った牝馬である。もともと夏場から精力的にChaseを使っていたタイプということもあり、当時はかなり低評価での勝利ではあったのだが、ここではその実力を改めて証明してみせた。完全にノーマークであったのがDuc Des Genievresで、この馬自身は2019年のArkle Challenge Trophy (G1)で非常に強い勝ち方を見せた馬なのだが、その後はいかんせんぱっとしないレースを続けており、今回はWillie Mullins厩舎からの転出初戦ということで人気を落としていたようだ。レース運びを見ているとCheltenhamに来てやたらと張り切るタイプのようで、今回はWind Surgeryの効果もあっただろう。もう少しリラックスして走ることが出来れば更なる戴冠もあり得る馬である。案外であったのがDefi Du Seuilで、第1障害で案外なミスがあったとはいえ、あまりにも走らなすぎた。今年のQueen Mother Champion Chase (G1)でも似たような凡走をやらかしており、Cheltenhamの16f戦では昨年初頭の実にのんびりとしたレースになったShloer Chase (G2)を除きさっぱりいいところがない。もしかするとCheltenhamの16f戦の性質のどこかに原因があるのかもしれない。

 

Punchestown (IRE) Heavy

Liam & Valerie Brennan Florida Pearl Novice Chase (G2) 2m6f140y (Replay)

1. Pencilfulloflead J: Rachael Brackmore T: Gordon Elliott

Blace Yourselfがハナにいくも、好位から進めたPencilfullofleadが抜け出して勝利した。Pencilfulloflead自身はChaseは2戦2勝で、HurdleではMaiden勝ち程度の実績しかない。あまり飛越もまだ完成しきってはいないようで、今回は不良馬場への適性が高かった分も大きいだろう。人気のLatest Exhibitionもまた飛越はいまいちだったが、能力の高さで2着まで来た。不良馬場への適性という意味では勝ち馬と比較して得意とするようには思えず、条件次第で逆転の可能性もあるだろう。

 

Unibet 1000th Race Celebration Hurdle (G2) 2m5f120y (Replay)

1. Fury Road J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

終始先頭を走ったFury Roadがそのまま勝利した。Fury Roadは昨シーズンのAlbert Bertlett Novices’ Hurdle (G1)で僅差の2着に入った馬で、これがシーズン初戦である。メンバーとしては完全に格下で、終始ゆったりと走った利は否めないのだが、さすがに格好はつけたことを喜ぶべきだろう。Novice馬で、今年の9月にMaidenを含む2勝をあげているDewcupが2着に入った。National Hunt Flatでは重賞クラスでの好走歴もある馬で、自身のクラスに戻ればチャンスはあるだろう。

 

Morgiana Hurdle (G1) 2m40y (Replay)

www.youtube.com1. Abacadabras J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

2. Saint Roi J: Mark Walsh T: Willie Mullins

アイルランド障害競馬シーズン初頭のHurdleのG1競走である。レースはSupasundaeが引っ張るも馬群は密集。勝負所からJason The Lilitantが先頭を伺うも、外からAbacadabrasが抜け出しを図る。そのまま馬群を縫って追いかけてきたSaint Roiを抑えて勝利した。

レースとしては残念ながらやや微妙な内容となった。Abacadabras自身は昨シーズンのFuture Champion Novice Hurdle (G1)の勝ち馬で、Supreme Novices' Hurdle (G1)ではShishkinの僅差の2着に入っている。ただし今シーズン初戦はWKD Hurdle (G2)においてAspire Towerにまさかの逃げ切り勝ちを許しており、やや騎乗ぶりには注文がつくような印象もある。今回は外々を早めに回って進出したJack Kennedy騎手の好騎乗だろう。明らかにもったいなかったのが3連勝で挑んできた上り馬Saint Roiで、終始前が壁になるようなレースであり、ようやく追い出した頃にはほぼ大勢が決した場面であった。レース内容的にはこちらを上に取るべきであると考える。Jason The Lilitantは実績的には格下なのだが僅差の3着に頑張った。Coeur Sublimeも頑張ったのだが、やはりここに入ると少々分が悪い。Supasundaeが展開を握るも勝負所から脱落し5着。10歳となった現状、全盛期の力はないと考えた方がよさそうだ。

 

Auteuil (FR) Collant (4.3)

〇 Prix Robert De Lipowski 3500m (Replay)

Haies Pour poulais entiers et hongres de 3 ans

5. Kerlaz J: Thomas Henderson T: Guillaume Macaire

チェコ産馬Kerlazが出走していたが、好位から進めるも直線伸びず5着に終わった。母Kardinaleはポーランド産馬で、母系としてはポーランドに脈々と続く系統、父Estejoはドイツ産馬だが、現在はポーランドで繋養されているようだ。産駒はまだあまりチェコポーランドでも走っておらず、今後の産駒の活躍が期待される種牡馬である。

 

Prix Renaud Du Vivier (G1) 3900m (Replay)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans

www.youtube.com1. Moises Has J: Steven Colas T: Francois Nicolle

最終コーナーを回って抜け出したMoises Hasだが、最終障害でミス。しかしこれを追いかけてきたJames Du Berlaisを退けて勝利した。Moises Has自身は実は重賞は初勝利とした。Prix Pierre De Lassus (G3)でもJames Du Berlaisから5馬身離れた2着に終わっているのだが、今回はその逆転に成功したことになる。ややパワーのあるストライドはMartaline産駒らしいものであり、未去勢の牡馬であることを考えるとおそらくこれで種牡馬入りすることになるだろう。James Du Berlaisは惜しい2着で、展開次第で十分に逆転はあっただろう。あまりこの馬場がいいようにも思えないのだが、その辺りは能力なのかもしれない。Saint Turgeonはこの馬場を得意とするようなタイプの馬だが、直線の進路どりでややミスがあった。