にげうまメモ

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21/03/07 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/03/01-2021/03/07

Gordon Elliottの騒動の件があるので週末のレース結果の記載を待たずに公開します。週末のレース結果は後日追記予定。

(2021/3/13 追記しました)

 

3/1(月)

Punchestown (IRE) Soft

Quevega Mares Hurdle (G3) 2m4f (Replay)

1. Black Tears J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

残り2障害辺りから持ったままで抜け出したBlack Tearsがそのまま5馬身差の勝利を挙げた。Black Tears自身はHurdleはここまで精力的に牝馬限定の重賞戦線に挑戦し続けてきており、Irish Stallion Farms Ebf Paddy Mullins Mares Handicap Hurdle (Grade B)の勝利もある。前走はAdvent Insurance Irish EBF Mares Hurdle (G3)にて素質馬として大いに期待されているConcertistaから12馬身離れた3着に終わっていたが、Cheltenham Festival直前ということで大きく相手関係が弱化したここではさすがに能力は上であったようだ。対抗角として期待されたNovice馬Darrens Hopeはやや離れた3着に終わった。

 

Auteuil (FR) Collant (4.4)

Prix Robert De Clermont-Tonnerre (G3) (Replay)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4400m

1. Feu Follet J: Mlle Nathalie Desoutter T: Lageneste & Macaire

Auteuilのシーズン最初の開催となる。Amour Du Mathanがゆったりと逃げるも、Gros Open DitchにてミスしたタイミングでPoly Grandchampが先頭に。そのまま押し切りを図るも、最後外から伸びてきたFeu Folletが内から進出してきたGalleo Contiを抑えて勝利した。Feu Folletは昨年のGrand Steeplechase De Paris (G1)では3着、Prix La Haye Jousselin (G1)では2着と、文句なしに現時点のフランスSteeplechaseのトップクラスの馬である。Prix Alain Du Breil (G1)を勝ってからSteeplechaseではやや苦戦していたのだが、既にSteeplechase転向直後の問題は解消されており、よい今年初戦を飾ったと言ってよいだろう。5歳のGalleo Contiはやや飛越にミスもあったのだが、このメンバー相手にこれだけ走れれば今後が楽しみである。9歳のPoly Grandchampも見せ場を作った。最後は68kgの斤量もあったかもしれない。2019年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の勝ち馬Carriacouは外から伸びるも4着で、この馬もこの馬なりに調子は良さそうだ。

 

3/2(火)

Gowran Park (IRE) Soft to Heavy

Red Mills Chase (G2) 2m4f (Replay)

1. Bachasson J: Paul Townend T: Willie Mullins

途中から先頭に立ったBachassonがそのまま16馬身差の圧勝。Bachasson自身はこれで10歳となるベテランで、今シーズンはこれで4戦4勝とした。どちらかというと空き巣のような重賞レースばかり狙って使っているところが気になるのだが、能力としては高いものを持っており、2015年にはBar One Racing Royal Bond Novice Hurdle (G1)にてLong Dogの2着もあるように、本来もう少し上のクラスで戦っていても対処できるような印象もある。同じく10歳のCastlegrace Paddyが離れた2着に入った。この馬自身、G1クラスでは厳しいことははっきりしているが、G2~G3クラスであれば対応できる能力の持ち主であり、この馬との力量差を考えるとやはりBachassonにはもうすこし強いメンバーとの対戦を期待したいところである。

 

3/7(土)

Kelso (UK) Good to Soft

Premier Novices' Hurdle (G2) 2m2f25y (Replay)

1. My Drago J: Harry Skelton T: Dan Skelton

後方から押し上げたMy Dragoが残り2障害辺りからDo Your Jobを振り切り9馬身差の勝利。My Drago自身はこれでAscotのSupreme Trial (G2)を含め、Hurdleは3戦3勝とした。対抗角と思われていたAny Newsが早々に落馬したアクシデントもあったのだが、ここでは実力通りの危なげのないレースであった。Tolworth Hurdle (G1)にてMetierの4着のあるDo Your Jobが2着で、Wind Surgery明けであったのだが進境を伺わせるレースを見せた。全体的にメンバーとしてはさほど強力な馬はいなかったものの、ひとまず次走に期待したい。

 

〇 Premier Chase (Listed) 2m7f96y (Replay)

1. Cloth Cap J: Tom Scudamore T: Jonjo O'Neill

ハナに行ったCloth Capがそのまま押し切り勝利した。Cloth Capは昨年11月のLadbrokes Trophy (G3)の勝ち馬で、Grand Nationalに向けて大いに期待されている一頭である。Ladbrokes Trophy (G3)では10st0lbの軽ハンデであったが、今回は11st2lbと斤量が増えたものの危なげない勝利で、Grand Nationalに向けて非常に楽しみな存在となるだろう。2着以下はAso、Two For Goldと続いた。12歳の実績馬Definitly Redもいたのだが、こちらは4着に終わった。とはいえ全体的に試走といった意味合いの強いレースで、細かい着順は気にしなくてもいいだろう。

 

Navan (IRE) Soft

Flyingbolt Novice Chase (G3) 2m (Replay)

1. Scarlet And Dove J: Donagh Meyler T: Joseph O'Brien

Scarlet And DoveとEpson Du Houxが並んで後続を大きく引き離して逃げる展開も、残り2障害地点でEpson Du Houxが落馬。そのまま残ったScarlet And DoveがSempoに7馬身差をつけて快勝した。Scarlet And DoveはこれでChaseは2勝目とした。前走のCoolmore N.H. Sires Kew Gardens Irish EBF Mares Novice Chase (G2)では残り2障害で落馬に終わっていたが、ここではさすがに実力上位であるところを見せた。HandicapからNoviceに戻してきたEpson Du Houxは勿体ない落馬だが、前走のMatheson Handicap Chase (Grade B)では大敗していたことを考えると、レースの水準としてはやや微妙かもしれない。Joseph O'Brien厩舎のSempoが最後脚を伸ばして2着に入った。

 

〇 Veterans Handicap Chase 3m (Replay)

1. Kruzhlinin J: Mr Jordan Gainford T: Gordon Elliott

前目で進めたKruzhlininがそのまま勝利した。Kruzhlininは今年14歳となる大ベテランで、かつてはPineau De Re、Rule The Worldの勝利したGrand Nationalに参戦した経歴もある。元々はイギリス調教馬だったのだが、2018年からはGordon Elliott厩舎に移籍し、その後はほぼPoint-to-Pointを使っていたのだが、これが"under rules"としては久々の出走となる。2018年以降のPTPでは合計13勝と大活躍を上げており、今回は10st3lbとかなり斤量的には恵まれたものの、馬としてはだいぶ元気のようだ。下記Gordon Elliott厩舎は現在大騒動に見舞われており、アイルランドのPoint-to-Pointも開催中止とこの馬にとっては難しい状況であるが、Denise FosterがGordon Elliott厩舎の管理馬を引き継ぐことになっており、更なる活躍を期待したいところである。

 

3/8(日)

Auteuil (FR) Collant (4.2)

〇 Prix Agitato 3500m

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans, n'ayant pas, en steeple-chase, été classés dans les trois premiers d'une course de dotation totale de 65.000. (Replay)

1. Trheliga J: Raymond-Lee O'Brien T: Francois Nicolle

前半から後続を大きく突き放して逃げたTrheligaがそのまま30馬身差の圧勝。Trheliga自身はこれでSteeplechaseはToulouseから2連勝とした。HaiesではHaras D'Etreham (G3)にてHotesse Du Chenetの6着がある程度の実績だが、Steeplechaseでは今のところいいレースを見せており、4歳世代では期待したい一頭。血統的には全兄にPrix Ferdinand Dufaure (G1)勝ちのあるSrelighonmnがいる良血馬である。

 

Prix Juigne (G3) 3600m

Pour tous chevaux 5 ans et au-dessus (Replay)

1. Polirico J: Gaetan Masure T: Francois Nicolle

例によってTenerife Seaが後続を大きく引き離して逃げるも、最終コーナーで早々に失速。抜け出してきたPoliricoがPaul’s Sagaを抑えて勝利した。Polirico自身は2019年のPrix Alain Du Breil (G1)にてFeu Folletの2着など世代トップクラスの活躍を見せた馬だが、Steeplechaseに転向した昨年はCompiegneにて1勝を挙げるにとどまっていた。これが久々のHaiesとなるが結果を残した。Steeplechase自体は2018~2019年の段階でも何度かレースに使っており、その中には重賞勝ちもあるのだが、どうにもレース振りという意味ではHaiesの方が安定している。Cheltenham FestivalのStayers' Hurdleをやめてフランス国内路線に切り替えてきたPaul's Sagaは2着で、さすがに勝ち馬と4kgの斤量差によるものだろう。距離もやはりもう少しあった方がよい。中山グランドジャンプに予備登録のあったTenerife Seaはやはりこのメンバーに入ると苦しいところがあるのだが、それよりも前走で折角控える競馬で勝ってきたにも関わらず、今回はかなり強引に逃げたことが気になった。

 

その他

Denise Foster to take over Elliott yard while trainer serves six-month ban (Racing Post)

Disgraced trainer Gordon Elliott banned for a year with six months suspended (Racing TV)

Gordon Elliott調教師が心臓発作で死亡した馬(Morgan)の上に座りピースサインをしている動画がSNS上で広まった問題について、IHRB(Irish Horseracing Regulatory Board)の判決が下り、3月9日から6カ月間の免許停止措置、15,000ユーロの罰金、さらに1年間の出走禁止措置が取られた。Gordon Elliott調教師のヒアリングIHRBの声明の詳細についてはリンク先に公開されている。当該判決に際してGordon Elliott調教師はtwitterにて声明を発表し、引き続きの上訴はせず、IHBRの制裁を受け入れる方針だそうだ。上記問題の件は公開から24時間後にはGordon Elliott調教師が本物であると認めているほか、Gordon Elliott厩舎に所属するアマチュア騎手Rob Jamesが死亡した馬に座っている人物が自分である旨を認めている。

Gordon Elliott admits 'shocking' photo is real and apologises (Racing Post)

Jockey Rob James apologises for 'inappropriate and disrespectful' video (Racing Post)

このIHRBの決定に先だち、3月1日からBritish Horseracing Authority(BHA)は既にGordon Elliott調教師の管理馬について、IHRBの判決が下るまでイギリスでの出走を禁止する措置を発表していたが、IHRBの判決が下ったことで当該措置は3月9日まで有効とされ、それ以降のイギリス国内における対応はIHRBの決定に従うことになる。なお、BHAは上記IHRBの判決を歓迎する声明を発表している。

BHA welcomes resolution to Elliott investigation (irishracing.com)

British horseracing acts over Gordon Elliott image (BHA)

従って、2021年のCheltenham FestivalではGordon Elliottの名前を見ることはないが、管理馬が異なる厩舎に委託された場合は出走可能となる。一部の馬主はGordon Elliott厩舎に委託していた馬を異なる厩舎に移籍させることを発表しているが、Denise 'Sneezy' Fosterが同厩舎の管理馬を引き継ぐことが期待されている。

Denise Foster tipped to replace Gordon Elliott (The Irish Field)

当該問題について、イギリス・アイルランド競馬関係者からは相次いで強い非難が上がっており、Gordon ElliottのSNSは連日競馬ファンからの強い非難の投稿が相次ぎ、恒例の出走馬の一覧のような、普段なら何でもないような投稿ですら大炎上している。Gordon Elliott厩舎と関係のある陣営も早速の動きがあり、Envoi Allenなどを所有するCheveley Park Studは既に有力馬をGordon Elliott厩舎からHenry de Bromhead厩舎へと移している。さらにブックメーカーであるBetfairは上記判決に先立ち、Gordon Elliott厩舎との提携関係を解消しているほか、eCOMM Merchant SolutionもまたGordon Elliott厩舎のスポンサーから撤退することを発表した。一方で、Gordon Elliott厩舎にGrand National連覇を達成したTiger Rollを始め、多数の管理馬を委託しているGigginstown House Studや、Presenting Perceyの所有者であるPhilip Reynolds等は引き続き厩舎へのサポートを継続するそうだ。

'Shocking' image forced Cheveley Park to remove their horses from Gordon Elliott (Racing Post)

Leading owners Gigginstown stand by Gordon Elliott after 'unacceptable' photo (Racing Post)

Betfair discontinue association with Gordon Elliott after shocking photo (Racing TV)

この問題に際して、BHA Chief ExecutiveであるJulie HarringtonはRacing Postの取材に対して、一般社会に対する競馬のイメージの悪化に直結する問題として、当該問題の重大性を強調している。日本国内のメディアに対するコメントを読む限りでは単なる非常識な行いと認識されているようだが、イギリス国内にはAintree競馬場のGrand National当日には正門前に多数の動物愛護団体が集まるように、動物愛護の観点は競馬の社会における地位の維持において非常に重要である。馬へのリスペクト及び愛情は、競馬のみならず馬と人との共生を実現する上で最も根幹となる概念であり、イギリス・アイルランド社会における競馬産業を根幹から揺るがす問題である。従って、これは競馬関係者、ましてやアイルランド障害競馬のトップトレーナーの行いとして決して許されるものではない。

Julie Harrington warns of existential crisis for racing following week of horror (Racing Post)

Tiger Roll withdrawn from Grand National (irishracing.com)

なお、上記判決に先立ち、Grand National3勝目を目指すTiger RollはすでにGrand Nationalからスクラッチすることを発表している。先日Grand Nationalの斤量が発表されたばかりだが、Grand National勝利後のパフォーマンスを鑑みると、同斤量は過大評価されたと陣営により判断されている。

From photo's emergence to IHRB verdict: how the Gordon Elliott drama unfolded (Racing Post)

ここまでの経緯を時系列順に整理したのが上記Racing Postの記事。よく整理されており、ここまでの経緯の理解の助けとなるので一読されたい。

 

Post-race 'verbal altercation' between warring jockeys caught on TV (Racing Post)

こちらはもっと平和な話題。金曜日のNewburyでPage Fuller騎手とLorcan Williams騎手が馬上で派手に口論しているのがテレビに映ってしまい、それぞれ4日間の騎乗停止処分を受けた。

Patrick Mullins to miss Festival after opting against professional move (Racing TV)

Cheltenham Festivalにおいてアマチュア騎手の騎乗が不可となったことを受け、プロ騎手転向を検討していたPatrick Mullinsだが、残念ながらプロ転向は行わずCheltenham Festivalの参加は見送るそうだ。