にげうまメモ

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21/04/04 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/03/29-2021/04/04

3/31(水)

Oakbank (AUS) Soft5

Von Doussa Steeplechase 3250m (Replay)

Set Weights plus Penalties. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim.

1. Yensir J: Steven Pateman T: Ciaron Maher

Getting Leggieが逃げる展開も、好位から人気のZed Emが追走。しかし満を持して抜け出しを図るZed EmにYensirが並びかけると、抵抗するZed EmをYensirが僅差抑えて勝利した。3着以下は大きく遅れた。

Yensirはイギリス生産馬で、もともとはOlly Murphy厩舎に所属していたようだ。イギリスでは主に平地の下級条件戦を使ったのち、2018年からHurdleに転向、平地ではさほど結果は残せなかったようだが、Hurdleでは主に夏場のNoviceの下級条件戦にて5戦4勝という成績を残している。これがオーストラリア障害競馬のデビュー戦であったがいきなり結果を残した。怪我の影響でここまでデビューがずれ込んだようだが、いきなりOakbankの一線級相手に結果を残すのだから大したものである。今年で10歳となる古豪Zed Emは貫禄のレースを見せた。昨年はOakbankのEaster Festivalが中止になり、結果的に得意としているOakbankの障害競走を使えなかったのだが、今年はこの馬らしいレースを見ることが出来た。これがOakbankにて初の敗戦ということだが、負けてなお強しといった内容で、Great Eastern Steeplechaseでもその走りを楽しみにしたい。

 

4/1(木)

Compiegne (FR) Tres Souple (4.1)

〇 Prix Du Mont Cenis

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 3800m (Replay)

1. Le Berry J: Kevin Nabet T: David Cottin

終始先頭を走ったLe Berryがそのまま勝利した。Le Berryは昨シーズンSteeplechaseでは6戦6勝、その中にはPrix Maurice Gillois (G1)における8馬身差の圧勝を含む素晴らしい成績を残した馬で、今年5歳となる新星である。今年はこれが復帰戦であったが、昨シーズンの活躍に違わぬ素晴らしい走りを見せた。イギリスからの参戦馬Hooliganが2着で、イギリスではHurdleのクラス2での勝利もある馬である。フランスHaiesはこれが初参戦であり、勝ち馬の67kgに対して71kgと斤量も背負っていたが、いきなりのフランスHaiesでこれだけ走れるのだから大したものである。

 

4/3(土)

Fontainebleau (FR) Tres Souple (3.8)

Grand Steeplechase Cross Country de Fontainebleau (Listed)

Cross Country Pour tous chevaux de 6 ans et au-dessus 6000m (Replay)

1. Otchoa Rouge J: Adrien Fouchet T: Patrice Quinton

Daffodil Rose、Champi De Bersyなどが逃げる展開だが、3回目のPassage de Routeのところから一気にOtchoa Rougeが進出し先頭に。そのまま追いすがるTequila Sunを凌いでOtchoa Rougeが勝利した。Otchoa Rougeは比較的Cross Countryの経験は浅い馬で、今年の1月からPauのCross Countryを使っている。Haies、SteeplechaseではListedクラスで入着がある程度の馬だが、Cross Country初戦であったPrix Jean Et Rene Couetilはメンバーはあまり揃っていなかったとはいえいきなり勝利を挙げており、能力は確かな物を持っていたようだ。前半はややゆったりと構えており、障害ものんびりと飛越していたのだが、仕掛けてからのスピードは目立つものがあり、最後方から一気に前に取りつくスピードは素晴らしい物があった。比較的Cross Countryの経験豊富なTequila Sunが2着。昨年のGrand Cross de Compiegneの勝ち馬Etat D'Espryも出走しており、途中までは比較的スムーズに運んでいたのだが、勝負所から脱落し大敗に終わった。

 

Oakbank (AUS) Soft 5

Harry D Young Hurdle 3600m (Replay)

Quality. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim.

1. Britannicus J: Ronan Short T: Symon Wilde

中断からじわじわと進出したBritannicusが逃げたMr Coyneを捉えて勝利した。この日のOakbank競馬場は観客を入れて開催しており、Ronan Short騎手の派手なガッツポーズとともに久しぶりの歓声が響いている。BritannicusはHurdleは昨年に勝利した切りで、昨年はその後Casterton HurdleにてColeridgeの2着がある程度なのだが、久しぶりのHurdleとなったここで結果を残した。昨年には4600メートルの平地競争であるJericho Cupにも挑戦した経歴のある馬で、障害競走では比較的経験の少ないのだが、先週末にBM120 Hurdleを勝利したMr Coyneを下してくるのだから大したものである。6歳と障害馬としては比較的若齢で、これからの活躍を楽しみにしたい。人気を背負ったDouble Bluffは好位からスムーズに進めるも、勝負所から遅れ5着に終わった。

 

Great Eastern Steeplechase 4950m (Replay)

Set Weights plus Penalties. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 

1. Spying On You J: Tom Ryan T: Grant Young

前半から先頭に立ったZed Emを目掛けて途中からPentelligentsiaが先頭に立つ展開も、これを目掛けてZed Emがスパート。残り2障害でミスをしたPentelligentsiaを捉えてZed Emが先頭に立つが、後方からじわじわと復活してきたSpying On YouがZed Emを捉えて勝利した。

Spying On Youは今年11歳になる古豪である。このレースは2017年にUndergroundfighterを下して勝利しているが、2019年にはZed Emの2着、2018年はやはりZed Emの4着、Thubiaanが勝利した2016年は無念の落馬に終わっている。ここまで南オーストラリア州ビクトリア州障害競走で長く活躍してきたベテランであるが、今年のOankbankのEaster FestivalはあえてVon Doussaをスキップして代わりに平地競争を使ってここに挑んできた。前走の平地競争ではまさかの勝利を挙げており、昨年の成績こそさっぱりではあったものの、ここにきて馬が何かを思い出したのかもしれない。反応が遅くじわじわと加速してくる走りはまさにタフな高齢の障害馬のそれであり、かなり年齢は重ねているとはいえ、まだまだその走りが見てみたい馬である。71kgを背負ったZed Emは立派な2着で、Spying On Youが65kgであったことを考えると素晴らしい走りであった。前走のVon Doussa Steeplechgaseでも2着に敗れているが、10歳となった今年もまだまだ元気そうだ。つい先日のBM120 Steeplechaseを勝って意気揚々と挑んできたPentelligentsiaは積極的な競馬で3着に入った。

 

Hanshin / 阪神 (JPN)

三木ホースランドパークジャンプステークス OPN 3140m

1. グローブシアター J: 高田潤 T: 辻野康之

前半から積極的に逃げたグローブシアターがそのままついて行ったケイティクレバーを抑えて勝利した。グローブシアターは先日亡くなった名牝シーザリオの産駒で、兄弟にはエピファネイアリオンディーズ、サートゥルナーリアといった活躍馬がずらりと揃う超良血馬である。当然平地競争でも大いに期待はされていたのだが、クラシック戦線では結果を残せず、その後も準オープン勝ちまでが精一杯で、2020年の段階では既にオープンクラスで頭打ち状態となり、2020年の冬には障害競走に転向していた。兄弟と比べるとやや小柄な馬体の持ち主であること、さらに父がキングカメハメハに変わったことでこの血統の良さである筋肉の柔らかさにマイナスが付いたことで、結果的にトップスピードの面で兄弟と比べると見劣りしており、兄弟のように平地競争において大成することは難しかった印象がある。一方でコンパクトにバランスよくまとまった馬体と、やはり平均以上の良質でパワーのある筋肉は健在であり、障害飛越においてもこの柔らかくてパワーのある筋肉を生かした飛越を見せていた。平地競争では長距離戦への出走歴もあるのだが、長距離戦を使っていたのは上述のようなスピード能力の欠如とコンパクトでバランスの取れた馬体により比較的距離が持つことが理由であり、馬自体の性質としては本質的なステイヤーとは異なるため、これ以上障害競走において距離が伸びることは本質的にはマイナス材料だろう。無理に中山の大一番を目指すよりも、血統面を考えればある程度のところで種牡馬入りすることを期待したい。オープンクラスで好走を続けてきたケイティクレバーは勝ち馬を追いかけて行くも、最後は脚色が同じようなものになっての2着で、2kgの斤量差を理由に上げればその通りかもしれない。

 

4/4(日)

Cork (IRE) Good to Yielding

BARONERACING.com Chase (G3) 3m (Replay)

1. Waitnsee J: Kevin Brouder T: John Patrick Ryan

後方から足を伸ばしたWaitnseeがSpyglass Hill以下を抑え勝利した。WaitnseeはChaseはこれでBeginners Chaseから2勝目となる。夏場から比較的精力的にChaseを使っていた馬だが、11月以降はめっきりパフォーマンスを落としており、24fに延長してパフォーマンスを上げてきた。比較的暖かい時期の方が良いのか、距離延長がうまくいったのかはわからないが、レースの性質を見る限りではどちらかというと長い距離をゆったりと走り続けるタイプのように見える。ただしメンバー的にも比較的経験のあるGo Another Oneが人気を背負って3着に入っているように、重賞では本来であれば少々厳しそうなメンバー構成であり、ここからG1戦線でどうこうというわけではないような印象がある。

 

〇 Handicap Hurdle 80-116 3m80y (Replay)

1. Josies Orders J: Miss Phidelma Elvin T: Enda Bolger

後方から進めたJosies Ordersが最終コーナーからじわじわと捲ってくると、粘るMinella On Line、Ellipsism以下を抑えて勝利した。Josies Ordersは今年で13歳になるベテランで、CheltenhamやPunchestownのCross Countryで長くアイルランドのトップホースとして活躍してきた馬である。ただし勝ち星としては2019年のP.P. Hogan Memorial Cross Country以来なく、特に最近はPoint-to-Pointに移行したり、Cross Countryでもさっぱりやる気なく追走し大敗を繰り返すなど、めっきりパフォーマンスを落としていた。もともとはJP McManusの持ち馬であったが、どうやらJP McManusが管理していたEnda Bolgerに馬を差し上げたとのことで、今回から勝負服が変わっている。状況的には明らかに長く頑張ってきたベテランが余生を過ごすような状況で、今回はCross Countryでもなく単なるHandicap Hurdleということで本気で勝ちに来るはずもなく、近走はめっきりやる気なく追走し大敗を繰り返しているという成績で、勝つ要素は微塵もない状況なのだが、ここでまさかの勝利を上げるのだから馬というのはわからないものである。

 

Fairyhouse (IRE) Yielding (Good to Yielding)

Paddy Kehoe Suspended Ceilings Novice Hurdle (G2) 2m (Replay)

1. Echoes In Rain J: Paul Townend T: Willie Mullins

後方から進めたEchoes In Rainが持ったままで進出すると、M C Muldoon以下を15馬身突き放して勝利した。Echoes In RainはNaasのPaddy Power Betting Shop Novice Hurdle (G2)から連勝とした。Authorizedの産駒らしいやや前向きなスピードを持った馬で、鞍上が前に4頭馬が並んで進路を無くした際にも余裕綽々で前が空くのを待つ余裕がある程の能力差を見せており、着差通りの圧勝である。Cheltenham Festivalはスキップしたようで、メンバー的にはさほど強力ではなかったとはいえ、このパフォーマンスはなかなか今後が楽しみになるものだろう。

 

Irish Stallion Farms EBF Mares Novice Hurdle Championship Final (G1) 2m4f (Replay)

1. Skyace J: Jody McGarvey T: John Hanlon

逃げるAtlantic Fairyのすぐ後ろで進めたSkyaceが直線抜け出すと、追い上げてきたGauloiseとの叩き合いを制して勝利した。Skyaceは前走はCheltenhamのParnell Properties Mares' Novices' Hurdle (G2)にてTelmesomethinggirlの4着に入った宇馬で、そこまでアイルランドでは重賞2勝を挙げている。比較的Hurdleの経験は長い馬で、早々にAtlantic Fairyが苦しくなったとはいえ狭いところを割って出てくる勝負強さは目立った。たった600£で取引された馬が1着賞金6万ユーロのレースを勝利するのだから夢がある。2着のGauloiseは上記Parnell Properties Mares' Novices' Hurdle (G2)では大敗に終わっていた馬で、Skyaceはもう少しレース運びがスムーズであればより着差は付いたかもしれない。前走Listedを勝ってきたAtlantic FairyはSkyaceと並んで人気になっていたが、早々に苦しくなっての大敗に終わった。

 

Underwriting Exchange Gold Cup Novice Chase (G1) 2m4f (Replay)

1. Janidil J: Jody McGarvey T: Willie Mullins

Asterion Forlonge、Conflated、Andy Dufresneなどが引っ張る展開だが、残り3障害辺りから接近したJanidilが残り2障害を越えて抜け出すと、後続に4馬身差をつけて勝利した。Jody McGarvey自身は1990年生まれの騎手で、ここのところは年間10~20勝程度を上げる人なのだが、この日はG1をまさかの2勝と素晴らしい1日になった。Janidil自身はBeginners Chaseを勝った程度の馬で、Flogas Novice Chase (G1)では落馬に終わったりとあまり重賞戦線で良いところはないのだが、ここにきて一気に馬場が良化したことが良かったのかもしれない。フランスではAuteuilのListedでEpi Sacreの2着もある素質馬である。Racing Post Novice Chase (G1)の勝ち馬Franco De Portは距離延長が良かったのか2着に浮上した。Arkle Challenge Trophy (G1)ではさっぱりペースに付いていけてなかっただけに、おそらくこの距離のペースの方が良いのだろう。人気のAsterion Forlongeは課題の飛越はだいぶ良くはなってきたのだが、やはり重馬場巧者の走法で、最後は苦しくなって3着に終わった。Andy Dufresneは人気になっていたが、早々に苦しくなり途中棄権に終わった。

 

その他

Tears as four-time champion jockey Richard Johnson announces shock retirement (Racing Post)

Richard Johnson: after 30 years the time has come for me to retire (Racing Post)

計4回のリーディングジョッキーに輝いたRichard Johnsonが突然の引退を発表した。20年連続でイギリス障害リーディングジョッキーのタイトルを獲得したAP McCoyに次ぐ2位に16年連続で甘んじていたが、Sir Anthony McCoyの引退後は見事リーディング騎手の座に輝いていた。