にげうまメモ

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21/06/20 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/06/14-2021/06/20

6/16(水)

Wroclaw (POL) płotowy - lekko elastyczny (2.7); przeszkodowy - lekki (2.3); 

〇 Nagroda 20000 zł

Cykl gonitw z płotami dla 3-letnich koni. Międzynarodowa gonitwa z płotami dla 3-letnich koni. 2800 m (Replay)

1. Greek Dessert J: Marek Stromský T: Pavel Tuma

直線抜け出しを測ったKontrargumentをGreek Dessertが差し切り勝利した。Greek Dessertはこれがデビュー戦となるチェコ調教馬である。母Greek Weddingはチェコ・スロバキア平地競争で活躍した馬で、スロバキアSt. Legerで2着の実績もある。すでにGreek Dessertは去勢されているようで、おそらく今後は障害馬としてのキャリアを積むことになるだろう。地元のKontrargumentが2着に入った。こちらもこれが障害デビュー戦の馬だが、全体的なレース振りとしてはこちらの方が安定していた。

 

〇 Nagroda 20000 zł 

Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 5-letnich i starszych koni. 3400 m (Replay)

1. Spasski J: Pavel Složil ml. T: Michal Borkowski

先に抜け出したKing Heartをゴール直前でSpasskiが捉えて勝利した。レースとしてはどうにも池を渡るところで転倒した馬が多く見た目は悪いのだが、上位2頭はSteeplechase参戦組としては非常に楽しみな馬である。SpasskiはSteeplechaseはこれが初参戦で、昨年のWielka Partynickaの勝ち馬。当時のメンバー的にやや微妙なところはあるのだが、今年初戦も快勝しているようにポーランドHurdleを代表する馬で、この馬がSteeplechaseを使ってくるのであれば今年のポーランドSteeplechaseにおけるポーランド調教馬の層はかなり厚くなりそうだ。King Heartはチェコ調教馬で、これがポーランドSteeplechaseは初参戦であったが、遡ると2018年当時のイタリアSiepiにおいてはトップクラスであった能力の高い馬である。その後はやや精彩を欠いているものの、さすがの能力の高さを見せるレースであった。

 

Nagroda Wrocławska Trial 24000 zł 

Międzynarodowa gonitwa z przeszkodami dla 5-letnich i starszych koni. 4300 m (Replay)

1. Her Him J: Pavel Složil ml. T: Ivana Porkátová

Netto、Turionといった常連が引っ張る展開も、Popinjayが先に抜け出してくる。しかし直線を向いてこれに迫ったHer HimがLarizanoを抑えて勝利した。Her Himはこれで今年に入ってSteeplechaseは2連勝とした。昨年ポーランドSteeplechaseのNagroda Tiumenaを勝利した馬で、ここまでさほど強力なメンバーとは当たっていないものの、混戦を抜けてくる勝負強さはこの馬の武器なのだろう。後方から追いこんだLarizanoが2着。この路線では常連の馬で、昨年のCrystal Cupでも2着に入るなど、勝ち切れないもののしぶとく頑張っている13歳馬である。Her Himに対して1kgの斤量負担があったことを考えると、内容的には惜しい2着であった。全体的にスローからの上り勝負といった内容で、上位勢はあまり差がないだろう。

 

6/19(土)

Strömsholm (SWE) Steeplechase lätt, Häckbana lätt (Result)

Svenskt Champion Hurdle 160.000 kr 

häck För 4-åriga och äldre hästar. 3700 m (Replay)

1. Tinolo J: Christopher Roberts T: Cathrine Erichsen 

Svenskt Grand National Day。昨年は残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったこの開催だが、ひとまず今年は無観客開催として行われることになった。第1レースのSvenskt Champion Hurdleは、レースとしてはスウェーデンHurdle(Häck)において最大のもの。最近の上り馬Wontgetfooledagenが人気を集めており、前半から軽快に逃げたものの、途中からこれに絡んで行ったTinoloがWontgetfooledagenを競り落として勝利した。

Tinoloはノルウェー調教馬で、前走のGöteborgのNovice HurdleにおいてはLiars Cornerの2着に入っていた。Liars Cornerは人気のWontgetfooledagenのde Burca Kahlil厩舎と同厩舎であるためこの後のNovice競走に回っていたのだが、ここではまさかの大物食いをやってのけるレースを見せた。昨年のØvrevollのNovice競走からHurdleに参戦している馬で、これがHurdle4戦目と、底を見せていない魅力がある。人気を集めたWontgetfooledagenは昨年のHM Drottingens Prisを含めスウェーデンのHurdleは4戦無敗で挑んできた馬で、今回はリズムよく運んだものの2着。内容的には勝ち馬を褒めるべきだろう。ドイツのFeuerblumeはここまで障害競走は2戦走っていずれも途中棄権か落馬といった内容であり、今回も他と比べると全体的に怪しい飛越で後方から進めていたのだが、最後盛り返して3着に来たようだ。やはり能力はあるのだろう。Pavel Vovcenko調教師はドイツの障害競走における名伯楽だが、今後はどうするのだろうか。

 

〇 NOVISHÄCKLÖPNING 50.000 kr

häck För 4-åriga och äldre hästar som ej segrat mer än 2 gånger. 3700 m (Replay)

1. Liars Corner J: Henrik Engblom T: De Burca Kahlil

ゆるゆると逃げたLiars Cornerがそのままついて行ったIncognitoを抑えて勝利した。Liars CornerはこれでHurdleは3連勝とした。前走下してきたTinoloが本日の準メインであるSvenskt Champion Hurdleを勝っている手前、この馬が負けるわけにもいかず、72.5 kgのトップハンデを背負っていたとはいえ貫禄の勝利であった。Suteki Shinsukekun産駒のポーランド産馬Incognitoは頑張ってついて行くも、勝ち馬には迫れず2着に終わった。

 

Svenskt Grand National 230.000 kr

Steeplechase För 5-åriga och äldre hästar som har fullföljt minst en steeplechaselöpning vid viktdatum. 4500m (Replay)

1. Reinvent J: Henrik Engblom T: De Burca Kahlil

Galopptipsのレース映像がバグっているので、ATGのvideoarkivから見るか、Youtubeに非公式ながら動画が上がっているのでご覧ください。ドイツのPavel Vovcenko調教師が送り込んできたTegerekが人気を集めていたが、スタートの段階でまさかの発馬拒否。Crin Au Ventがそのまま軽快に逃げ、Mutadaffeq、Accelerateなどがこれを追いかけるが、Crin Au Ventがこれらを振り切り逃げ込みを図る。しかし後方からじわじわと盛り返してきたReinventがゴール直前でこれを捉えて勝利した。

ReinventはもともとはアイルランドのPoint-to-Pointを走っていた馬で、前走のBro Parkでは早々に仕掛けていったものの最後捕まっての2着に終わっていた。比較的平易な障害が設置されスピードが生きるBro Parkと比べると、障害の難易度が上がり、かつ距離が延長されるこの舞台はこの馬向きであったようだ。逃げたCrin Au Ventは比較的スウェーデンのSteeplechaseでは経験のある馬で、さらにスウェーデン移籍前はフランス、さらにイギリスのPaul Nicholls厩舎と渡り歩いている。父もフランス障害競馬で活躍、障害種牡馬として実績のあるLaveronということで、ここをこなす下地はあったのだろう。一度長い休養を経ている馬だが、レース内容を見るとまだまだ楽しみにしてよさそうだ。前走のJockeyklubbens Stora Prisを勝ってきたMutadaffeqは積極的にCrin Au Ventを追いかけるも最後失速しての4着で、ややBro Parkでの勝利は展開に恵まれてのものだった感があり、今回は難易度の高いSteeplechaseにおける真っ向勝負ということで苦しくなったように見える。ドイツのTegerekはもともとイギリスのGreatwood Handicap Hurdle (G3)にて3着があり、さらにMeranoのMaiden Steeplechaseで2着に入った実績もある馬で、イギリス・アイルランドにおける実績や、さらに難易度の高いMeranoのSteeplechaseをこなしているという点では魅力的であったのだが、馬が走りたくないのであればどうしようもない。

 

〇 Familjen Perssons Minneslöpning 65.000 kr

Steeplechase För 4-åriga och äldre hästar. 3500m (Replay)

1. Three is Company J: Elliot Öhgren T: Lars-Åke Enström 

前走のBro ParkのNovice Steeplechaseを勝ってきたLondoniaなどが人気を集めていたが、勝ったのはThree is Company。この馬自身、スウェーデン移籍後のBro ParkでのSteeplechase競走ではあまり良いところはなかったのだが、元々はアイルランドでChase7戦を含む障害競走を戦ってきた馬で、さすがにここで戦うだけの下地があったのだろう。Bro ParkでReinventを下してきたLondoniaはいまいち飛越が安定せずの敗戦で、Bro Parkとの性質の違いが浮き彫りになる結果となった。

 

Manawatu RC @ Awapuni (NZ) Heavy11

〇 Manawatu ITM Awapuni Hurdles OPN HDL 2900m (Replay)

1. Chief Sequoyah J: Sam O'Malley T: John Wheeler

最終コーナー辺りで捲って先頭に立ったChief Sequoyahがそのまま押し切り勝利した。Chief SequoyahはHDLはこれでMDNから2連勝とした。HDL自体は今年からでこれが4戦目とさほどキャリアとしては多くはないのだが、Heavy11で捲ってくるスピードは見事なものであった。2900メートルに65.5kgと条件としてはあまり厳しくはなかったのだが、大型馬だけに斤量を克服してくれることを期待したいところ。今後はWellington HurdleやGreat Northern Hurdleなどが候補に上がっているが、オーストラリア遠征のオプションもあるようだ。この中では比較的実績のあるSenassyが2着だが、これが久々のHDLということでやや引っかかる場面があった。

 

〇 LJ Hooker Manawatu Steeplechase OPN STP 4200m (Replay)

1. Coconut J: Barry Donoghue T: Stephen Nickalls

1周目に人気を背負っていたAigneがまさかの落馬。そのままゆるゆると逃げたCountry Bumpkinが逃げ込みを図るが、ゴール直前でCoconutがこれを捉えて勝利した。CoconutはSTPはこれで2勝目とした。どうにもRST OPNクラスでもやや分が悪いくらいの立ち位置だったのだが、今回は小頭数でゆったりと運ぶことができたのが幸いしたのだろうか。Country Bumpkinが2着だが、どうにもこの馬は飛越動作に怪しい場面があり、これが最後の最後でCoconutに先着を許した要因のように見える。STPは未勝利のTittletattleまであまり差はなく、全体的にゆったりとレースを運んだことが伺える内容となった。

 

6/20(日)

Bratislava (SLO) 3.6 (dobrá / Good)

〇 Cena Luminatora

Proutky - - 3600 m, cena, 4letí a starší 2.300 EUR (Replay)

1. Almany J: ž. Petr Tůma T: Lenka Šomanová

直線に入って外から伸びたAlmanyがWaaya、Meny Bayを抑えて勝利した。AlmanyはこれでスロバキアHurdleでは2勝目となった。比較的Hurdle及び平地においてコンスタントに走っている馬だが、その内容としてはほぼスロバキアに限られており、今回のレース内容としてもスローの内容を外から被せていったというレース展開によるものだろう。11歳の牝馬で、ここまでイタリアGran Corsa Siepi D'Italia (G1)などの勝ち鞍のあるスロバキアの名馬Meny Bayは2着に入った。直線に入って前が壁になる不利があり、ややもったいないレースであった。昨年はPardubiceの1戦のみとあまり順調に使えず、年齢的にもかなり高齢の域には差し掛かっているのだが、現役を続けるのであれば楽しみにしたい。3着のWaayaはここまでスロバキアHurdleで4勝を上げている馬だが、2019年から勝ち星からは遠ざかっている。この馬が僅差の3着に入る辺り、レース内容としてはやや微妙といったところだろう。

 

〇 Memoriál Jaroslava Bartoněka

Steeplechase - - 4100 m, cena, 5letí a starší 2.600 EUR (Replay)

1. Mr Zuru J: ž. Jan Odložil T: Jaroslav Brečka 

ややMediciに絡まれながらも逃げたMr Zuruが終盤後続を振り切ると、最後は2着に10馬身差をつけて勝利した。Mr ZuruはこれでSteeplechaseは22連勝とした。遡ればハンガリースロバキアの重賞競走にも出走していた馬で、最近のスロバキアSteeplechaseでは大変勢いのある馬と言っていいだろう。昨年はPardubiceにも遠征し、当時は途中棄権に終わっているようだが、巻き返しが期待される。斤量的にも73kgとトップハンデを背負っており、レース内容としてはここでは頭一つ抜けていると考えてよさそうだ。

 

Warszawa (POL) HARD(1,1)

Memoriał dr. Aleksandra Falewicza

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 4-letnich i starszych koni 3000 m (Replay)

1. Noble Eagle J: u. O.Ryzhak T: Janusz Kozłowski

Warszawa競馬場で障害競走が実施されるのは2015年10月のWielka Służewiecka以来となる。当時と同様に平地コースの内側に置き障害を設置してレースは行われた。出走馬7頭うち6頭がポーランド調教馬が占めたが、イタリアからTop Tangoの参戦があった。レースは前半からNewmanが前に行くも飛越は安定せず。代わって先頭に立ったNoble Eagleがそのまま後続を大きく突き放して勝利した。

Noble eagleはこれがHurdleは初勝利となる。ポーランドWestminster Derbyにも出走した経歴のある素質馬で(6着)、平地ではここまでNagroda Kozienicを含む4勝を上げている。ポーランド産馬だが現時点では未去勢の5歳ということを考えると、どこまで真面目に障害馬として戦うつもりなんのかは不明だが、ひとまずレース振りとしてはもともとの能力の違いを感じさせるものであった。ここまでWroclawのHurdleにて2着2回の実績のあるKanclerzが2着。同馬は前走8馬身離されたとはいえ、現時点でポーランドHurdle路線でトップクラスと思われるSpasskiの2着に入っていたことを考えると、このNoble Eagleのパフォーマンスは高く評価できるものである。Wroclawの障害戦線で実績のあるNewmanもいたのだが、こちらはあまり飛越が安定せず大敗に終わった。

 

〇 Nagroda Bojgarda

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 4-letnich i starszych koni, które nie biegały w gonitwach płotowych i przeszkodowych. 3000m (Replay)

1. Leading Lion J: st.u. P.Pałczyński T: Janusz Kozłowski

こちらは比較的経験の浅い馬のためのレース。前半からGolden Gliderが逃げる展開も、途中からHibernianが先頭に。しかしこれについて行ったLeading LionがHibernianとの叩き合いを制して勝利した。3着以下は大きく遅れた。

Leading LionはこれがHurdleは初参戦となる。ここまで平地では1勝のみとあまり振るわないのだが、Hurdleに変わって見せ場を作った。同様にフランス産馬のHibernianもまた平地では下級条件戦で1勝のみの馬だが、ほぼ勝ちに等しい内容での2着。ただし3着のShow Me The Moneyは昨年のWroclawの3歳限定戦でTonerreの2着がある程度の馬で、勝ち時計自体も上記のレースから2秒近く遅いことを考えると、内容的にはやや格下と取った方がよさそうだ。

 

その他

Lee's love for Undergroundfighter (racing.com)

オーストラリア障害競馬ファンにはお馴染みの馬、Undergroundfighterの話。遡ればGreat Eastern Steeplechaseにて2着等の実績のある馬だが、2016年以降は勝ち星がなく、今年に入ってはMaiden Hurdleを含め障害5レースを戦っているが、いつも後方を付いて回るようなレース運びで、そのいずれも大敗に終わっている。一方でこれまで障害競走53戦を走ってきた10歳のセン馬が、単にレースで優勝すること以上に重要な役割を担っていることがこの記事に記載されている。