にげうまメモ

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21/08/29 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/08/23-2021/08/29

8/28(土)

Kokura / 小倉 (JPN) Good to Firm

Kokura Summer Jump / 小倉サマージャンプ (G3) 3390m

1. アサクサゲンキ J: 熊沢重文 T: 音無秀孝

夏の小倉の風物詩。レースは前半からセプタリアンがやや引っかかり気味に引っ張るも、向こう正面の途中からアサクサゲンキが先頭に。そのままアサクサゲンキはペースを上げて引っ張ると、ついてきたマサハヤドリームを1馬身半抑えて勝利した。

熊沢重文騎手は星野忍元騎手の障害歴代最多勝記録に並ぶ254勝目となった。今年で53歳となる同騎手は今年も障害で通算6勝を上げており、おそらく世界的にも有数のベテラン障害騎手の1人といってよいだろう。アサクサゲンキは平地では小倉2歳ステークスを勝利した馬だが、その後はやや頭打ち気味となり、2019年の4月から障害に転向していた。2歳時以来の重賞勝利と言うことで、縁のある小倉において嬉しい勝利となったのではないだろうか。やはりこれまでのレース振りが示す通り全体的に低く抑えた飛越が目立っており、本質的には小倉の比較的小型な障害でスピードを生かすタイプといったところ。このようなタイプはある程度ワンペース的に走った方が力を発揮するもので、先頭をもたもたと走るセプタリアンを早々に捉えに行ったのはこの馬にとって正解であった。最後はやや苦しくなっているように距離的には限界がありそうだが、おそらく同様の条件ではこの馬の力を見せてくれるだろう。マサハヤドリームはアサクサゲンキにしっかりとついて行くレース運びで2着に入った。コウキチョウサンは石神騎手がステイヤーの御し方としては理想的な中盤からじわじわと押し上げていくレース運びを見せたのだが、レース終盤では先頭集団にはついてけず、やや前とは離れた5着に終わった。純粋なスピード性能という点では上位の平地実績馬に分があったということだろう。

 

8/29(日)

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno Morbido

〇 Associazione Arma Di Cavalleria Euro 14.000

per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross-Country -  CONDIZIONATA  - G.R.-AMAZZONI-FANTINI) 5000m (Replay)

1. Broughton J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

先に抜け出したSilver TangoとBroughtonのマッチレースはBroughtonがSilver Tangoを抑えて勝利した。Broughtonは今年で11歳となる大ベテランで、6月のGrande Steeplechase Di Roma (G3)こそ落馬に終わっているが、それを除けばMeranoのCross Countryではここまで7連勝と圧倒的な強さを誇っている。おそらくPremio Delle Nazioni (G2)でも最有力となることが想定されるが、Gran Premio Merano (G1)にも登録自体はあるようで、その動向には注意したい。Silver Tangoもこの路線では安定勢力で、ややBroughton相手には分が悪いようだが今回は良く頑張った。Le MoulleauはMeranoのCross自体は初めてで、全体的に飛越が怪しいところがあったのだが、なんとか堪えて3着に残った。ここまでG1路線でも活躍したIl SuperstiteはこれがCross Country初参戦であったが、内容としてはなんでもないコーナーで転倒ということで、課題の3連続障害はきっちりこなすなど、結果こそ残念であったが今後が楽しみとなるレースであった。

 

Piero E Franco Richard Euro 30.000

per cavalli di 4 e 5 anni (Steeple-Chase -  GRUPPO III  - FANTINI) 3800m (Replay)

1. Gangster De Coddes J: Josef Bartos J: Josef Vana Jr

前半から後続に大きなリードをつけて逃げたGangster De Coddesがそのまま勝利した。Gangster De CoddesはこれでPremio Ezio Vanoni (G2)を含む3連勝。今年の5歳世代では最も勢いのある馬で、今回もトップハンデの72kgを背負っての圧勝劇は素晴らしいものがあった。ややスピードに任せて引っ張るようなところがあるのが気がかりで、来年以降上のクラスで戦うのであればもう少し落ち着いて走ってほしいところ。同厩舎のPeace Gardenが2着。ここまでSiepiのAscendenteを1勝しているのみのGold Editionが3着で、残り2障害にて大きなミスがあったにも関わらずよくPeace Gardenに食らいついた。メンバーさえ弱化すればSteeplechaseでもどこかは勝てそうだ。

 

Ballarat (AUS) Soft7

このBallaratの開催でオーストラリアVIC州の障害競走は一区切りとなる。昨年来、海外競馬ニュースチャンネルなるラジオアカウントに参加させて頂いているのだが、そのメンバーがオーストラリアRising Sun Syndicateにて共同馬主となったり、その縁で川上元騎手をゲストに招待したりと、オーストラリア競馬の機運が高まっているという背景もあったことから、同チャンネルにてオーストラリア障害競走の概要と、Grand National Steeplechaseについて話をしてみるなどした。そもそも海外障害競走というマイナーコンテンツにおいて、その中でもオーストラリア障害競走というとさらに馴染みのない人が多いと思うが、案外意外なところに捕捉頂き光栄である。後半のGrand National Steeplechaseの有力馬はともかく、前半は後々からも聴きなおすことが出来る内容にしたつもりなので、興味のある方は聴いてみて頂けると嬉しい。

 

Gotta Take Care Hurdle

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices can claim 3600m (Replay)

1. Light Pillar J: William John McCarthy T: Ciaron Maher

レースは前半から人気の一角Roland Garrosが飛ばす展開だが、後方からじわじわと押し上げてきたLight Pillarが最終コーナーでこれを捉えると、そのままRoland Garrosを突き放して勝利した。Light PillarはこれでHurdleは2勝目となる。Maidenでは後続に12馬身差をつける圧勝を見せた馬で、その後のBM120 HDLではさっぱりだったのだが、今回は力を見せた。もともとフランスの平地競争でも重賞クラスで戦っていた馬で、前走の謎の凡走はともかく、今後が楽しみになる勝利であった。逃げたRoland Garrosも平地では実績のある馬で、展開的にはRoland Garrosの楽逃げであったことを考えると、この7馬身差というのはなかなかに価値のあるものと考えてよいだろう。

 

JJ Houlahan Hurdle

Set Weights plus Penalties. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 3250m (Replay)

1. Saunter Boy J: William John McCarthy T: Ciaron Maher

レースはSivar、さらに人気の一角Home By Midnightが引っ張るも、最終コーナー辺りから捲ってきたSaunter Boyがそのまま前に出ると、激しいたたき合いを続ける後続を尻目に3馬身差の快勝。Saunter Boyは今年のAustralian Hurdleの勝ち馬。Australian Hurdleでは後続を10馬身突き放す圧勝を見せていたのだが、前走のGrand National Hurdleはなぜかさっぱり走らず途中棄権に終わっていた。いまいち当時の凡走の理由がよくわからないのだが、70kgを背負いながらも前を競り潰しての快勝ということで、内容的にはこの馬が一枚抜けていたと考えていいだろう。前走ColeraineのBM120 Hurdleを勝ってきたKarakoramが2着。僅差の3着には2019年のこのレースの3着馬Robbie's Starが入った。今年のAustralian Hurdleの3着馬Home By Midnightは65kgという軽量もあって前評判は良かったのだが、Saunter Boyに捲られるとそのまま後退し、やや離れた6着に終わった。

 

〇 Henry Dwyer Racing BM120 Steeplechase

Handicap. Three-Years-Old and Upwards, No sex restriction. BenchMark 120. Apprentices can claim. (Replay)

1. Mawaany Machine J: Steven Pateman T: Ciaron Maher

例によってThe Dominatorが逃げる展開だが、少しずつこれにMawaany Machine、さらにEyes Are Blueが接近。Eyes Are Blueを振り切ったMawaany Machineがそのまま後続に2馬身ほどの差をつけて勝利した。Mawaany MachineはこれでSteeplechaseは初参戦初勝利となる。HurdleではBM120 Hurdleで勝ってきたくらいの馬だが、どちらかというと有力馬を多数抱える同厩舎の使い分けのようなところもあり、実力的には実績以上のものがあったようだ。初めてのSteeplechaseにも関わらず飛越は安定しており、そこまで極端にメンバーが揃っていなかったとはいえ、71kgを背負っての完勝ということで、内容的には来年が楽しみになるものであった。Ciaron Maher厩舎はこれでこの開催5戦5勝と素晴らしい成績を上げ、ここのところの好調ぶりを見せる結果となった。Eyes Are BlueはここまでSteeplechaseは2戦して落馬か最下位とさっぱりで、ここも圧倒的最低人気であったのだが、今回はAaron Kuru騎手が積極的に馬を動かして勝負を掛けることで見せ場を作った。ニュージーランドチャンピオンジョッキーであるAaron Kuru騎手は今年はオーストラリアで騎乗しているのだが、シーズン序盤に勝利をあげたきり、有力馬に騎乗するも悉く人気を裏切る結果に終わっており、本人の中でも忸怩たるものがあったのだろう。なんとかシーズン最後の開催の騎乗で一泡吹かせようという気概を感じさせるものであった。74.5kgのトップハンデを背負ったThe Dominatorはいつも通り積極的に運んだが、Eyes Are Blue、それからMawwany Machineに捲られると、飛越でリードを取り戻そうと障害から離れた地点からの強引な飛越を試み、結果として躓いて落馬に終わった。

 

Grand National Steeplechase

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 4500m (Replay)

1. Inayforhay J: Lee Horner T: Paul Preusker

Grand National Hurdleの勝ち馬Wil Johnがここを目標としていたそうだが結果的に取りやめ、昨年のGrand Annual Steeplechase等の勝ち馬Ablazeは故障で離脱、さらにニュージーランドのGrand National Steeplechaseを圧勝したTallyho Twinkletoeも取りやめということで、やや事前から想定されるメンバーと比べると寂しい顔ぶれにはなったが、それでも今シーズン後半の上り馬Social Elementを始め、シーズン最後を締めくくる大一番に相応しいメンバーが揃った一戦となった。レースが始まる直前にやや波乱があり、西日の影響で直線の2つの障害がオミットされることになった。

レースは前半からSocial Elementが前に出るも、途中からSan Remoが先頭に。さらに好位にいたFlying Agentがやや引っかかり気味に前に出てくると、やや後続を引き離して逃げる格好となる。しかし好位からじわじわと上がってきたInayforhayがこれを捉えると、そのまま後続に8馬身差をつけて勝利した。2着にはSocial Elementが上がったようだ。

InayforhayはこれでSteeplechaseは初参戦初勝利とした。HurdleではGrand National HurdleでWil Johnの2着に入っていたのだが、内容的には勝負所で馬群を捌くのにやや苦労したのち、最後敢然と抜け出したWil Johnを追い詰めるというもので、明らかに距離延長への適性を感じさせるものであった。Steeplechaseは初めてであったが、飛越においては全く問題はなく、前走のパフォーマンスから考えるとここでの完勝劇は決して驚くべきものではないだろう。直線の二つの障害がオミットされたことによるフロックではなく、来年以降もこの路線において楽しみな馬である。

一方のSocial Elementは自身のリズムでレースを進めたのだが、やや全体的に勝負所での対応の遅さが目立つレースとなった。前で引っ張ったFlying Agent自身はフラットのスピードにも優れたタイプで、ここを動いて前を捕まえに行った勝ち馬と比較すると、5kgの不利はあったにせよ動きの遅さが目立つ内容となった。もっとも、ここまでのローテーションとしてはそろそろ疲労が出てもおかしくはない時期であり、ひとまず来年以降に期待したい。今年のAustralian Steeplechaseの勝ち馬Riding Highが3着に入ったが、3着以降はほぼ着差なしということを考えると、やはりSocial Elementに対しても力差があるというのが現状なのだろう。Brierly Steeplechaseの勝ち馬Flying Agentは前半から行きたがるところが目立っており、途中からハナに立って進めるも、最後は失速して6着に終わった。シーズン途中で平地を使ってからどうにもリズムの悪さが目立っており、シーズン前半で見せていたこの馬のパフォーマンスから考えると物足りないように思う。ひとまずこれでオーストラリア障害競馬シーズンは終わりなので、余計なレースを使うことなく立て直しを図って欲しいところである。

 

その他

COVID cancels Grand Nationals (Racing.com)

SA州のGrand Nationalが9月にOakbank競馬場で予定されていたのだが、残念ながらCOVID-19の流行によりキャンセルとなった。SA州のGrand Nationalは以前はMorphettvilleで開催されていたのだが、今年は独特のSteeplechase Courseを有するOakbank競馬場での開催が予定されていた。SA州のGrand Nationalは昨年に引き続き開催されないこととなり、大変残念である。また、これで2021年のオーストラリア障害競走は前述のBallaratの開催で終了となった。