にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

21/12/25 第10回(2008)中山グランドジャンプ 海外からの参戦馬

f:id:virgos2g:20211224223348p:plain

*第10回(2008)中山グランドジャンプ (Result)

〇 優勝馬:Maruka Rascal / マルカラスカル (JPN) (Pedigree)

4連覇を狙って来日していたKarasiが残念ながら直前で故障を発症し回避。外国からの参戦馬は2頭となりました。

 

〇 6着 Alarm Call / アラームコール (FR) (Pedigree) (France Galop) (Hippoweb)

騎手:Christophe Pieux 調教師:Jacques Ortet

フランス調教馬。2003年にEscort Boy、2004年にOwayを送り込んできたJacques Ortet調教師の管理馬です。2003年から障害デビュー。早々にSteeplechaseに参戦すると、4歳の春にはイタリアMilanoのStaffe D'Oro (G3)にも遠征し、後に2007年Gran Premio Melano (G1)を制すポーランド生産馬Koloradoの2着に頑張りました。あまり同世代の重賞戦線には参戦していなかったようですが、2005年頃から力をつけると、2005年の8月にはClairefontaine競馬場のGrand Steeplechase De Deauville (Listed)にて初の重賞勝利。さらに同年10月にはAuteuil競馬場のPirx Montgomery (G3)を勝利します。2007年もその勢いのまま、HaiesにてPrix Hubert D'Aillieres (Listed)、さらに72kgのトップハンデを背負いながらGrand Course De Haies De Printemps (G3)を勝利し、2007年の6月にはフランスHaiesの最高峰であるGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)にも挑みました(8着)。さすがにG1クラスでは荷が重かったようですが、同年秋にはEnghien-Soisy競馬場のPrix De La Gascogne (Listed)、翌年はPauのGrande Course De Haies De Pau (Listed)、さらにAuteuilのPrix Robert De Clarmont-Tonnerre (G3)を10馬身差で圧勝し、ここに挑んできました。残念ながら良馬場のスピード決着には対応しきれなかったようですが、中山グランドジャンプの1カ月後に挑んだGrand Steeplechase De Paris (G1)でも6着に頑張っており、この馬自身調子が悪かったというわけではなさそうです。その後も2009年及び2010年のGrand Steeplechase D'Enghien (G2)、2010年のAuteuil競馬場におけるPrix Des Drags (G2)の勝利など、11歳となった2011年までフランスHaies及びSteeplechaseの重賞戦線で活躍を続けました。実績的にはAuteuilのG3~G2クラスでは上位クラスの実力を持っており、中山グランドジャンプに参戦した歴代のフランス調教馬の中でも比較的上位クラスの実績を有していたと考えてよいでしょう。Christophe Pieux騎手は現役生活の中で3度のGrand Steeplechase de Paris (G1)の勝利を含む2000勝以上の勝利をあげ、計15回ものフランス障害騎手リーディングに輝いたフランスのトップジョッキー*1*2。2012年に45歳で引退し*3、その後2019年に自身のトロフィーが盗まれたという記事が出ていたのですが、無事に見つかったのでしょうか*4。Alarm Callの父Solar OneはRibot - Tom Rolfe - Hoist the Flag - Allegedの系統。このAlarm Callが代表産駒のようで、それ以外には特に目立った産駒はいないようです。このHoist the FlagからAllegedを経るラインは近年の障害競馬でも大きな存在感がある系統で、Flemensfirth、Shantou、Astarabadといった種牡馬が多数の活躍馬を送り出しています。

 

〇 9着 Gliding / グライディング (NZ) (Pedigree) (Loveracing.nz) (equibase)

騎手:Paddy Young 調教師:Paul Douglas Fout

久しぶりのアメリカ調教馬。元々はニュージーランドで走っていた馬で、平地では計7勝、その中にはRotorua Cup (G3)勝ちの実績があります。2006年からHurdleに参戦、未勝利の身ながら軽量を利してRacecourse Hotel Motor Lodge Sydenham Hurdles Handicap (OPN)を勝利、その後のGrand National Hurdles (PJR)でも3着と好走しました。その後はアメリカに移籍すると、2007年の4月にはTemple Gwathmey Hurdle Stakes (G2)を勝利、New York Turf Writers Cup Steeplechase (G1)でも4着に入り、G1クラスでも十分に戦えることを示すと、2007年の10月にはFoxbrook Supreme Hurdle (G1)を制し、G1勝ち馬の仲間入りを果たしました。2008年はAikenのSouthern Bank and Trust Bank Imperial Cup Hurdle Stakesで3着に入りここに挑んできましたが、残念ながら勝ち馬から約30秒近く離れた最下位と、結果を残すことはできませんでした。中山遠征後は僅かに2戦したのみで引退したようです。Paddy Young騎手はアイルランド出身の障害騎手。いちおうtwitterもあるようです。2003年からアメリカでの騎乗を開始し、そこから5回ものチャンピオンジョッキーの座に輝いたアメリカの名手です。その中には、GustavianとのコンビでのLonesome Glory Handicap (G1)、Slip AwayとのコンビでのColonial Cup Hurdle (G1)、Mr Hot StuffとのコンビでのA.P. Smithwick Memorial (G1)の勝利など、多数の大レースの勝利が含まれています*5。残念ながら2017年のRadnor Hunt Cupの落馬による脳挫傷で一時期は集中治療室での治療を要するほどの危機的状況に陥り、そこから騎手としての活動はしていませんが、Paddy Youngの治療のための寄付が10万ドル以上集まるなど、当時のアメリカ障害競馬において大きな存在感を示していたようです*6*7。Paul Douglas Fout調教師はEquibaseを見ると1985年から活動しているベテランの調教師で、2005年のNew York Turf Writers Cup (G1)を始め、G1を5勝した名馬Hirapourを管理した調教師として有名ですね*8。Glidingの父Lord Ballinaはオーストラリア産馬で、父系を辿るとStardust - Star Kingdom - Biscay - Bletchinglyと、実にオセアニアっぽさが強い血統です。Lord Ballinaの産駒としては、Glidingの他には、近年だと2010年のニュージーランドGreat Western Steeplechaseの勝ち馬Lindisfarne、2010年オーストラリアJJ Houlahan Hurdleの勝ち馬Titchが目立つ産駒でしょう。