にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/01/02 Weekly National Hunt / Jump racing

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*週刊障害競馬回顧 2021/12/27-2022/01/02

今年もよろしくお願いいたします。

 

12/27(月)

Kempton (UK) Soft

Wayward Lad Novices' Chase (G2) 2m (Replay)

1. Edwardstone J: Tom Cannon T: Alan King

後方から少しずつ進出し、残り2障害辺りから抜け出したEdwardstoneがそのままDo Your Jobに10馬身差をつけて快勝した。EdwardstoneはこれでChaseは3連勝、特に前走はSandownのHenry VIII Novices' Chase (G1)を16馬身差をつけて快勝しており、ここまでいずれも強い勝ち方を見せている。ひとまず現時点ではイギリス16f Novice Chase路線では頭一つ抜けた存在のようで、先日アイルランドで強い勝ち方を見せているFerny Hollowを始めとするアイルランド勢との戦いになるだろう。Ferny Hollowのような圧倒的な運動神経を持つ馬というよりは、Kayf Tara産駒らしいどこか硬さにもつながるようなパワーが特徴的な、スピードとパワーを兼ね備えた完成度の高い馬という印象がある。Henry VIII Novices' Chase (G1)で落馬に終わったDo Your Jobが2着。AintreeのTop Novices' Hurdle (G1)ではBelfast Banterの2着に入った実力馬だが、どうにも2度もWind Surgeryを経ているのが気になるところ。

 

Desert Orchid Chase (G2) 2m (Replay)

1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

Before Midnightがやや注文を付けて逃げるも、残り2障害辺りから抜け出したShishkinがそのままGreaneteenに10馬身差をつけて快勝した。ShishkinはこれでChaseは6戦無敗とした。どうにも一頓挫あった影響で今シーズンの始動が遅れたのだが、経験馬相手にいきなりこれだけのレースが出来るあたり、やはり持っている能力としては超一流なのだろう。Queen Mother Champion Chase (G1)ではおそらくイギリス調教馬の筆頭となることが想定され、とにかく層の厚いアイルランド調教馬相手におけるイギリス調教馬希望の星となりそうだ。前走はTingle Creek Chase (G1)を勝ってきたGreaneteenが2着。Shishkinとは3lbの差があったが、さすがにこの負け方はそれ以前の問題だろう。

 

Chepstow (UK) Soft (Heavy in places)

Coral Finale Juvenile Hurdle (G1) 2m11y (Replay)

1. Porticello J: Jamie Moore T: Gary Moore

Forever Williamを制してやや引っかかり気味にSkycutterが逃げるも、最終コーナーから進出してきたPoricelloが追いかけてきたSaint Segal以下を振り切ると、そのまま8馬身差の快勝。2着にはSaint Segal、3着にForever Williamが入った。

PorticelloはHurdleは3勝目、Wensleydale Juvenile Hurdle (Listed)に続く重賞2勝目とした。Summit Juvenile Hurdle (G2)ではKnight Saluteの僅差の2着に敗れているが、ここでは実績上位で2番人気に推されていたようだ。全体的に飛越には問題がなく、この時期の3歳馬ということで引っかかる場面は目立ったが現時点では許容範囲だろう。Gary Moore厩舎の馬はどうにも前向きに走りすぎるきらいがあるのだが、なんとか解消されて欲しいところ。Maidenを勝って挑んできたSaint Segalが2着で、レース運びから考えるとこちらの方が伸び代はありそうだ。SandownのC2を勝ってきたForever Blessedが人気になっていたが、道中狭いところに入り落馬寸前の不利を受けている。コーナーで馬が殺到したところで馬が走るのを止めているようなところがあり、今回は全くレースになっていないことを考えると度外視した方がよさそうな敗戦だろう。

 

Welsh Grand National Handicap Chase (G3) 3m6f130y (Replay)

1. Iwilldoit J: Stan Sheppard T: Sam Thomas

残念ながらイギリスでは12月24日に新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は12万人を超えており*1、その影響を受けてWelsh Grand Nationalは無観客開催で行われることになった*2。ひとまず競馬がなんとか開催されている状況なのは喜ばしいことなのだが、いずれにせよ予断を許さない状況であることは間違いないだろう。Chepstow競馬場の様子を見ると、さりげなくコース脇で観戦している人たちを多数確認することが出来る。

レースは前半からRamses De Teilleeが飛ばす展開も、残り5障害辺りから後続が殺到。この中で最も手応えよく抜け出してきたIwilldoitが食らいついてきたHighland Hunterを振り切ると、そのまま2着に9馬身差をつけて快勝した。2着にはそのHighland Hunter。僅差の3、4着にTruckers Lodge、Achilleが入り、そこから大きく遅れてSecret Reprieveが入線したようだ。20頭の出走馬のうち、完走は上記のたったの5頭となった。

2016年のこのレースの勝ち馬で、その後Cheltenham Gold Cup (G1)を勝ったNative Riverが参戦したことで、Native Riverが抜けたトップハンデとなり、それに続くのはElegant Escapeの11st2lb、それ以外はMighty ThunderやKimberlite Candy等の10st10lbで、殆どの馬がLong Handicapとなっている。このIwilldoitも例外ではなく10st0lbと裸同然の斤量となっているのだが、前走のWelsh Grand National Trial (C2)での圧勝を含めて馬の調子もかなり良かったようだ。ここまであまり目立った成績はないのだが、どちらかというと長い距離の重馬場を得意とするタイプだったようで、適性面や条件面での後押しも大きかった感がある。ひとまず地元のSam Thomas厩舎の管理馬の勝利ということで、この勝利を競馬ファンの目前でという気持ちはあるのだが、それでも地元にとっては嬉しい勝利となった。

Highland Hunterもやはり近走調子のよかったタイプで、前走はSandownのLondon National (C2)で11st12lbを背負って勝ち切っていた。10st9lbと出走馬の中ではかなり斤量負担が大きく、勝ち馬とは斤量次第であっさり逆転までありそうだ。Truckers Lodgeは10st10lbを背負っての3着で、この馬もやはり2020年のMidlands National (Listed)のように不良馬場の超長距離戦を得意とするタイプである。一瞬のスピードで前2頭には遅れたが、この馬もまたどこかでチャンスはあるだろう。9st10blの11歳馬Achilleも頑張って4着で、前走のBecher Chase (G3)の5着に引き続き、古豪健在ぶりをアピールする結果となった。

昨年の勝ち馬Secret Reprieveは昨年以来のレースであったが、最後は完全に脚が上がってなんとか完走するも、勝ち馬からは大きく離れた5着に終わった。2018年の勝ち馬Elegant Escapeは最終コーナーまでは馬群に食らいつくも、そこから遅れて途中棄権。どうにも2018年にこのレースを勝ってからは適性外と思われるG1を走ったりと迷走しているような感もあり、今シーズンは長い休養明けだったのだが見せ場を作ることが出来ていない。2021年のScottish Grand National (G3)の勝ち馬Mighty Thunderは前半から飛越がいまいちで早々に途中棄権。重馬場は苦にしないタイプだが、それ以上に馬の状態に不安がありそうだ。前走Becher Chase (G3)で見せ場を作ったHill Sixteenは良いところなし。2020年のClassic Chase (G3)で強い勝ち方をしたKimberlite Candyもいたのだが、早々から走る気を見せず途中棄権。最近はCross Countryで結果を残していた2019年の勝ち馬Potters Cornerは好位から頑張って進めたが、勝負所から脱落して途中棄権。馬の状態は良さそうなのだが、どうにも大敗と好走を繰り返しているあたり、高齢馬にありがちな悪癖を見せ始めているのかもしない。2018年のCheltenham Gold Cup (G1)の勝ち馬Native Riverはさっぱりレースに参加できずの大敗で、元々シーズン一杯で引退する予定だったのだが、それを早めてこれで引退だそうだ*3

 

Leopardstown (IRE) Good to Yielding

Paddy's Rewards Club Chase (G1) 2m1f (Replay)

1. Envoi Allen J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

元々Chacun Pour Soiが出走を予定していたが回避。Envoi AllenとBattleoverdoyenのマッチレースはEnvoi AllenがBattleoverdoyenを振り切り勝利した。Envoi Allenは前走John Durkan Memorial Punchestown Chase (G1)では終盤脱落して6着に終わっていたが、今回は結果を残した。とはいえやはり今回はChacun Pour Soiの不在によりかなり緩いレースとなったこと、さらに相手も大幅に弱化していることを考えると、道中Battleoverdoyenに絡まれたことで最後は一杯一杯になっているパフォーマンスはあまり褒められたものではないだろう。BattleoverdoyenはHurdleではLawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)、ChaseでもNeville Hotels Novice Chase (G1)勝ちのある馬だが、どうにもNovice卒業後はぱっとしない成績に終わっており、とりあえず7月にはArthur Guinness Chaseを格下相手に勝ち切ってはいるのだが、いまいち能力的にも馬の状態面でも信用しきれないというのが現状である。おそらくある程度ゆったりとしたペースで進めた方がいい馬であるようで、17f戦という選択肢が正解だったのかもよくわからないところである。

 

Future Champion Novice Hurdle (G1) 2m (Replay)

1. Mighty Potter J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

人気のLargy Debutがゆったりと逃げるも、残り3障害辺りからArctic Warriorが先頭に。最終障害を越えて抜け出したMighty PotterがThree Stripe Lifeに1馬身差をつけて勝利した。Mighty PotterはこれでHurdleは2勝目とした。前走のRoyal Bond Novice Hurdle (G1)ではStatuaireの3着に終わっており、このメンバーの中での実績面では一枚上手であった。Martaline産駒らしい力強いストライドを有する馬で、おそらくJack Kennedy騎手のような強気に立ち回る騎手の方が手が合っているような印象がある。未勝利を勝ったばかりのThree Stripe Lifeが2着。Royal Bond Novice Hurdle (G1)ではMighty Potterから僅差の4着に終わったFaroutが3着、NHFではG3勝ちのある牝馬Grangeeが4着で、あまりこの辺りは差がなさそうだ。

 

Limerick (IRE) Heavy

Lyons of Limerick Jaguar Land Rover Novice Hurdle (G2) 2m7f (Replay)

1. Eric Bloodaxe J: Brian Cooper T: Joseph O'Brien

途中からRobyndegloryが淡々と逃げるも馬群は密集して進行。残り2障害辺りから馬群を縫って出てきたEric BloodaxeがFreedom to Dreamに7馬身差をつけて勝利した。この時期の24f戦、さらにHeavyという馬場もあって完全な持久戦となっている。もはやスピード云々というよりは最後までまともに走れるかといった勝負で、こうなると障害馬としての完成度も求められるのだが、そういう点でEric Bloodaxeは上手くいったのだろう。途中で細かいミスもあったが、レース運びとしてもスムーズであった。NHFのG1クラスで上位に入った能力馬であり、この時期からこのようなレースが出来るのは楽しみである。Maidenを勝ったばかりのFreedom To Dreamが2着に入った。

 

12/28(火)

Leopardstown (IRE) Soft (Yielding in places)

Christmas Hurdle (G1) 3m (Replay)

1. Klassical Dream J: Paul Townend T: Willie Mullins

同名のレースがKemptonにも存在するが、こちらは24fのレース。前半からKlassical Dream、Flooring Porterが飛ばす展開で、隊列はかなり長くなる。残り3障害辺りから後続が少しずつ差を詰めてくるも、ここから再度Klassical Dreamが加速。頑張ってついてきたFlooring Porterを振り切ってKlassical Dreamが勝利した。3着以下は大きく遅れた。

Flooring Porterは本来逃げたい馬で、おそらくKlassical Dreamと先頭争いをすることが想定されたのだが、Klassical Dreamが一頭抜け出した体勢からスタートが切られており、これが結果的にKlassical Dreamの単騎逃げを許している。ことの経緯とFlooring Porter陣営のコメントはRacing Postの記事が詳しいが、こればかりは人間の判断によるバリアスタートなので仕方がないだろう。Klassical Dreamは4月のChampion Stayers Hurdle (G1)に続き、24f戦は2連勝とした。元々16fでスピードを生かしたレースをしていたのだが、どうやら距離的にも24fは問題はないようで、この路線では道中からかなり厳しいペースを刻んでいくことで後続を封印するレースを得意としているようだ。一方のFlooring Porterは昨年のこのレース及びStayers' Hurdle (G1)の勝ち馬で、やはりKlassical Dreamと同じようなレースを得意とする馬。今シーズン初戦となるLismullen Hurdle (G2)は落馬に終わっていたが、やはりこの馬もこの路線では上位の能力を持っていることは間違いないだろう。ただし、Klassical DreamもFlooring Porterも同じようなタイプで、最後までFlooring PorterはKlassical Dreamを追い詰めている辺り、次の対決に際してはこの2頭の兼ね合いが課題になるだろう。

2020年のJCB Triumph Hurdle (G1)を棚ぼたで勝ったBurning Victoryはその後平地での勝ち星があるくらいで低迷していたのだが、今回は久しぶりに結果を残した。隊列が長くなった影響もあるのだが、Rachael Blackmore騎手がやや他の馬から距離を取って運んでいたようで、これがうまくいった感もある。昨シーズンのAintree Hurdle (G1)を始め、G1を3勝しているAbacadabrasもいたのだが、中段から進めるもさっぱり伸びずに5着。どうにもこの馬は力量的には空き巣G1クラスといった印象で、かつゆったりとしたペースの方が向くような印象がある。879日ぶりの実戦となった2018年のSpring Juvenile Hurdle (G1)の勝ち馬Mr Adjudicatorは回ってきただけでも十分だろう。後続の中では勝負所まで馬群について行っており、十分な収穫はあったように思われる。Long Walk Hurdle (G1)から転戦してきたRonald Pumpは今回は後方から進めたが、さっぱり良いところなく大敗。さすがに日程的に無理があっただろう。前走Bective Stud Handicap Hurdle (Grade B)を勝ってきたCommander of Fleetは久々のG1クラスへの出走で、全体的にペースに戸惑っている印象があり、頑張ってレースに参加はしていたものの、さすがに最後は脚が上がって途中棄権に終わったようだ。

 

Savills Chase (G1) 3m (Replay)


 1. Galvin J: Davy Russell T: Gordon Elliott

HaydockのBetfair Chase (G1)でイギリス調教馬を圧倒したA Plus Tardが人気になっていた。レースは例によってKemboyがゆるゆると逃げるも、残り3障害辺りからA Plus Tardが外から接近。そのままA Plus Tardは内のKemboyを交わして前に出るも、ここからKemboyが抵抗。さらに外に切り替えてきたGalvinが伸びてくると、ゴール前でA Plus Tardを抑えて勝利した。Kemboyが僅差の3着に入った。

Galvinは今シーズンがNovice上りとなる馬で、Novice時代はG1戦線ではなくNational Hunt Challenge Cup (G2)に参戦してNext Destinationを抑えて勝利していたのだが、今シーズンはそのまま超長距離戦を使うのではなくG1戦線に参戦している。Down RoyalのChampion Chase (G1)では坂を利用して上手く加速をかけたFrodonを捉えきれずに2着に終わっていたのだが、今回は強敵相手に結果を残した。終始Kemboyの内を進み、そこから内を掬えずに外に切り替える不利はあったのだが、それでもこのKemboyの作る平坦なペースから残り2障害地点にかけて一気に加速が掛かる展開において、ゴール前に間に合わせるのだから大したものである。ロングスパート能力の点では未知数だが、おそらく実績的にCheltenhamは合いそうな感もあり、Cheltenham Gold Cup (G1)ではアイルランド勢の代表的な一頭になるだろう。Davy Russell騎手は1年近く怪我で休んでいたのだが、復帰後初のビッグタイトルということで嬉しい勝利になったそうだ*4

連覇を狙った人気のA Plus Tardも力を見せた。2018年にアイルランドに移籍してからは3着圏内は一度も外さず、かつその着差も全てが3馬身以内と堅実極まりないレースを続けており、その実力はもはや疑いようがないものである。今回はややKemboyのレースに付き合って残り3障害辺りからじわじわと加速を掛けたのだが、本来この馬はCheltenhamで見せたようなロングスパート能力が最大の武器の馬で、もう少し強気に立ち回ってもよかったかもしれない。Cheltenhamに適性を持つことはもはや疑いようがなく、Cheltenham Gold Cupでも中心視されることになるだろう。このレースの2018年の勝ち馬Kemboyも惜しい3着で、前走のJohn Durkan Memorial (G1)ではAllahoのペースに飲まれて大敗していたのだが、この馬本来のペースで走ることが出来ればこれくらいはやれるようだ。Cheltenhamはコースに形態に合わせてペースを上下動させる必要があるためこの馬にはあまり向かないのだが、Dublin FestivalやPunchestown Festival等、アイルランドのこの路線では相変わらず楽しみな存在になりそうだ。

今年で9歳となったMelonもあまり差のない4着。John Durkan Memorial (G1)ではAllahoから5馬身差の3着に入っており、この馬自身の調子はいいようだ。例によってどちらかというと馬場は渋った方がよく、勝負所の加速力でやや前から遅れたのだが、まだこの路線でチャンスはあるだろう。John Durkan Memorial (G1)では人気薄ながら2着に入ったJanidilも前に食らいついての5着で、この馬にとって初の24fであり、前走とは全く違う展開であったにも関わらずこれだけ抵抗したことは収穫だろう。

2019年の勝ち馬Delta Workは良いところなく大敗。どうにも2020年のIrish Gold Cup (G1)辺りまでがキャリアピークだったような感があり、そこからは全体的に足りない競馬を繰り返している。Bryony Frost騎乗のFranco De Portは勝負所でミスをして大敗。そこまでじわじわと押し上げていく騎乗は良かったのだが、勝負所であれだけミスをしてはどうしようもない。Samcroもいたのだが後方を付いて回っていただけで、どうにもここ数年はレース選択も迷走しているような感がある。

 

Limerick (IRE) Heavy

Dawn Run Mares Novice Chase (G2) 2m6f120y (Replay)

1. Concertista J: Sean O'Keeffe T: Willie Mullins

後方から進めたConcertistaがじわじわと位置を上げると、残り2障害辺りで先頭に立ち、そのままDarrens Hopeを4馬身ほど突き放して勝利した。ConcertistaはこれでChaseは2戦2勝とした。前走は16f戦を使っていた馬が一気に距離を延長してきた経緯は不明だが、いずれにせよ前走は微妙だった飛越も今回は改善がみられており、重馬場のパワーのいる条件での強さというのは際立ったものがある馬である。おそらくHurdle時代の実績からも16fよりは20f以上でゆったり運んだ方がいいタイプと考えられ、ここまで牝馬限定戦ばかりを使っているようだが、ひとまずこの路線では上位の馬と考えてよいだろう。

 

12/29(水)

Newbury (UK) Soft (Heavy in places)

Challow Novices' Hurdle (G1) 2m4f118y (Replay)

1. Stage Star J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

High Stakesが逃げる展開も、好位の内からするすると抜け出してきたStage Starが残り2障害から先頭に立ち、そのまま後続を突き放して快勝した。2着にはWest Balboaが入った。

Stage StarはこれでHurdleは3戦3勝とした。National Hunt FlatではAintreeのG2で3着のある素質馬であり、Hurdleでは期待通りの走りをしている。道中はかなり飛びが大きく走るどころが目立っていたのだが、加速を掛けてからはかなりパワーが乗ったような力強い走りに変わっており、障害馬としての能力を感じさせる走りであった。飛越も全体的に安定しており、全体的に引っかかる馬が目立ったこの中での完成度は高いだろう。瞬間的に加速がかかるタイプではなさそうで、道中の走りを見る限りではおそらく16fの馬ではなくそれ以上の距離がよさそうな印象もあるのだが、ひとまず今後楽しみにしておきたい馬である。SandownでWinter Novices' Hurdle (G2)を圧勝したLossiemouthもいたのだが、こちらはさっぱり動けずに大敗。Sandownでは積極的にハナに行っての勝ち方だったことを考えると、少し乗り方を考えた方がよさそうだ。

 

Leopardstown (IRE) Yielding to Soft

Advent Surety Irish EBF Mares Hurdle (G3) 2m4f (Replay)

1. Royal Kahala J: Kevin Sexton T: Peter Fahey

早々に人気のShewearsitwellが落馬。好位から抜け出したRoyal Kahalaが逃げたHeaven Help Usとの叩き合いを制して勝利した。Royal KahalaはHurdleは3勝目。ほぼ20fの牝馬限定戦を集中的に使っている馬で、重賞は初勝利とした。人気のShewearsitwellが落馬する中、全体的にスムーズに立ち回れた利はあっただろう。今年のCheltenhamのCoral Cup (G3)を逃げ切ったHeaven Help Usは自身の競馬をしての2着で、どうやら牡馬相手には重賞クラスでは厳しいのだが、牝馬相手ならこれくらいやれるといったところだろう。Rachael Blackmore騎乗のTelmesomethinggirlが追いこんで3着だが、勝負所でかなり無理のある進路取りをしており、さすがに行き場を無くして脚を余したような敗戦だっただけに、展開次第では逆転までありそうだ。

 

Neville Hotels Novice Chase (G1) 3m (Replay)

1. Fury Road J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

全体的にRun Wild Fredが淡々と逃げる展開も、これを好位から元気よく追走したFury Roadが抜け出すと、そのままRun Wild Fredに8馬身差をつけて快勝した。Fury RoadはChaseは3戦目で初勝利とした。HurdleではAlbert Bartlett Noviecs' Hurdle (G1)でMonkfishの3着のある素質馬で、Novice上がりとなった昨シーズンは期待されたのだが、残念ながらG1戦線ではさっぱりな成績に終わっていた。とはいえChase2戦目で挑んだDrinmore Novices Chase (G1)ではEacon Edgeから僅差の3着と能力を見せており、今回は全体的に飛越の安定感とスピード能力の高さで圧倒するレースを見せてくれた。初のチークピーシーズ着用ということで、最後まで馬が集中して走ることが出来たこともよかったようだ。Troytown Handicap Chase (Grade B)をNovice馬ながら勝ってきたRun Wild Fredはまたもや2着。昨シーズンからChaseを使っている経験豊富な馬で、やはりFury Roadとの着差を考えるとこのようなG1戦線よりはハンデ戦の方がよさそうな印象がある。Florida Pearl Novice Chase (G2)を圧勝したVanillierが3着だが、この馬は馬場はもっと渋った方がいいだろう。飛越は悪くはなかったが、どうにも着地の動作の際に甘さがあるようで、この辺りが解消されればもう少しよくなりそうだ。

 

Matheson Hurdle (G1) 2m (Replay)

1. Sharjah J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

スタート直後からFelix Desjyが元気に出てくるも、早々に飛越をミスして後退。代わってPetit Mouchoir、さらにSaint Roiが先頭に立ち引っ張るも、最終障害の辺りからZanahiyrが接近。そのままZanahiyrが抜け出すも、外から追いこんできたSharjahがこれをゴール前で捉えて勝利した。

SharjahがこれでMatheson Hurdle (G1)は4連覇とした。このレース4勝というのはHurricane Fly、Istabraqと並ぶ記録で、この2頭も4連覇自体は成し遂げていないことから*5、Sharjahの記録はこのレースの歴史に残る大記録である。Sharjahは今シーズンはMorgiana Hurdle (G1)から連勝としたが、内容としては同じZanahiyrが相手で、いかんせんこの路線はHoneysuckleが強すぎるのでどうしようもないというところがある。イギリスからはEpatanteが復調をアピールしているが、おそらく今後もHoneysuckleをどう負かすかといったところで、今回のレース振りを見る限りでは、ここにきて馬が一変したということはなさそうだ。レース運びとしてはどうにも全力で加速を掛けてみたり、そこから手元を抑えてみたりとちぐはぐで、おそらくPatrick Mullins本人としては交わせると思って乗っているものと思われるのだが、結果的にZanahiyrにゴール直前まで抵抗されることになっている。それにしてもこの馬はこれでG1は6勝目。Honeysuckleがいなければ一体何勝していたのだろうか。

Juvenile Hurdle上がりのZanahiyerは前走に引き続き好走した。どうしてもJuvenile Hurdleとはレースの質が異なることから苦労する馬が多いのだが、この馬はなかなかに頑張っているようで、全体的に16f Hurdle路線においてはHoneysuckle相手の伏兵クラスの立ち位置の馬が多かったとはいえ、Sharjahに対してほぼ勝ちに等しい2着まで頑張ったことは褒めてよいだろう。Saint Roiは相変わらず引っかかって走るようで、今回はRachael Blackmoreに乗り替わっていたのだが、おそらくCheltenhamではまた鞍上を考えさないといけないだろう。

 

Limerick (IRE) Heavy

Limerick Hurdle (G2) 2m (Replay)

1. Teahupoo J: Jordan Gainford T: Gordon Elliott

するすると逃げたTeahupooがそのままQuilixiosを凌いで勝利した。Teahupooはこれで今シーズンは2連勝。Quilixiosを完封した11月のFishery Lane Hurdle (G3)に引き続き、ここでも強さを見せた。昨シーズンのJuvenile HurdleではG1戦線に参戦することなく終わっており、ここまで4歳馬とのレースばかりというのが気になるのだが、ひとまずこの路線においては中心的な馬として期待しておきたいところ。昨シーズンのJuvenile Hurdle路線では中心的な役割を果たしたQuilixiosはどうにも今シーズンはいまいちで、ひとまず前走と比べてTeahupooを追い詰めただけよくなったと思いたいところである。

 

12/30(木)

Haydock (UK) Heavy

〇 Handicap Chase (C2) 3m4f97y (Replay)

1. Blaklion J: Harry Skelton T: Dan Skelton

途中からゆるゆるとハナに行ったBlaklionがそのまま圧勝。Blaklionは今シーズンはこれで2連勝とした。2016年のRSA Chase (G1)の勝ち馬で、その後は24fのハンデ戦に進んでおり、2017年のGrand National (G3)では11st1lbを背負ってOne For Arthurから8馬身差の4着に入るなど、National Courseで実績を残している。2019年2月からかなり長い休養もあったようだが、2021年のGrand National (G3)ではイギリス馬再先着の6着に入り、古豪健在ぶりを示していた。National Specialistとして特徴的な高く安定した飛越は健在であり、Heavyの馬場でスピード能力がほぼ不要な条件だったとはいえ、一頭涼しい顔でこの超長距離戦を駆け抜けるのだから大したものである。おそらくGrand National (G3)を目指すものと思われ、昨年はぎりぎりの線で滑り込んだのだが、なんとか出走までこぎつけて欲しいところである。もっとも、元々スピード能力も高い馬ではあったのだが、やはり年齢的にも馬場はかなり渋った方がよさそうだ。

 

1/1(土)

Cheltenham (UK) Soft

Paddy Power Novices' Chase (G2) 2m4f127y (Replay)

1. L'Homme Presse J: Charlie Deutsch T: Miss Venetia Williams

ゆるゆると逃げたL'Homme Presseがそのまま後続を突き放して勝利した。L'Homme PresseはこれでChaseは3戦3勝とした。ここまでいずれも圧勝の内容で来ており、ここでも引き続き後続を突き放しての勝利となる。全体的にこの時期のNovice馬にしてはかなり安定した飛越が多く、ゆったりとした自身のペースで運んだ利もあったのだが、最終障害を越えてフラットの部分のみで10馬身引き離していることを考えると、この段階での完成度及びスピード能力の点では一枚上手であると考えた方がよさそうだ。ここまで牝馬限定のNovice Listedを2勝してきたThe Glancing Queenが2着に入った。ただしこの馬自身、Hurdleでは牝馬限定戦であっても重賞クラスでは通用しなかっただけに、全体的なメンバーの水準としては若干微妙かもしれない。

 

Relkeel Hurdle (G2) 2m4f56y (Replay)

1. Stormy Ireland J: Danny Mullins T: Willie Mullins

例によって元気一杯逃げたStormy IrelandにBrewin'upastormが接近するも、最終障害で落馬。そのまま残ったStormy Irelandがそのまま勝利した。Stormy Irelandはこれで昨年春にWillie Mullins厩舎に戻ってから3勝目とした。その中にはMares Champion Hurdle (G1)勝ちも含まれており、アイルランドの20f Hurdle路線ではトップクラスの存在と返り咲いている。どうにも前向きに走るタイプなだけに16fの方がよさそうな感もあるのだが、16fで純粋なスピード勝負を仕掛けるよりも、20fである程度ペースを上下動させつつスピードを生かした方が良いのだろう。さすがにHatton's Grace Hurdle (G1)ではHoneysuckle相手に分が悪かったことから、おそらくCheltenham FestivalではMares' Hurdle (G1)を目指すものかと思われるが、展開のカギを握る馬として注意しておきたいところである。Brewin'upastormはもったいない落馬に終わったが、ChaseからHurdleに戻って相変わらず調子はいいようで、引き続きこの路線で楽しみにしておきたい。

 

Fairyhouse (IRE) Yielding (Yielding to Soft in places)

John & Chich Fowler Memorial EBF Mares Chase (G3) 2m5f110y (Replay)

1. Mount Ida J: Davy Russell T: Gordon Elliott

Scarlet And Doveが逃げるも、残り3障害辺りからMount Idaが接近。残り2障害地点でScarlet And DoveとMount Idaが着地地点で衝突するも、そこからMount Idaが脚を伸ばすと、追いかけてきたElimayを凌いで勝利した。Mount Idaはこれで今シーズンは2戦2勝とした。昨年の3月のKim Muir Challenge Cupを勝った馬だが、今シーズンは牝馬限定戦を使っている。おそらく距離的には伸びてもいいタイプで、どちらかというと力を抜いた高い飛越が目立っていた。人気のElimayは惜しい2着。Aintreeの牝馬限定Listed Chaseではやや案外な敗戦に終わっていたようだが、走りを見ているとAintreeの平坦なコースよりもFairyhouseのような起伏のあるコースの方がいいような印象がある。Put The Kettle Onもいたのだが、どうにも集中力を欠くような走りで、シーズン初戦のShloer Chase (G2)に引き続き大敗に終わった。

 

Tramore (IRE) Soft to Heavy

Savills New Year's Day Chase (G3) 2m6f (Replay)

1. Al Boum Photo J: Paul Townend T: Willie Mullins

Willie Mullins厩舎のみの出走馬4頭で構成されたレースであったが、途中から先頭に立ったAl Boum Photoがそのまま貫禄の勝利を挙げた。Al Boum Photoはこれが今シーズン初戦で、今年はCheltenham Gold Cup (G1)の3勝目を目指すことになる。このレースから始動するのはこれが4年連続で、このレースは4連覇とした。さすがに同厩舎の格下の3頭が相手となれば負けるはずもなく、10歳となった今年も元気なようだ。昨年のGrand National (G3)で4着に頑張ったBurrows Saintが2着で、この馬はG1戦線ではなく例によって超長距離のハンデ戦に向かうことになるだろう。Ladbrokes Trophy (G3)でトップハンデながら3着に入ったBrahma Bullが3着。今年12歳となるAcapella Bourgeoisはどうにも飛越がいまいちで、早々に遅れ途中棄権に終わった。

 

1/2(日)

Naas (IRE) Soft

Lawlor's of Naas Novice Hurdle (G1) 2m4f (Replay)

1. Ginto J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

Gintoが逃げるも馬群は密集して進行。最終コーナー辺りからGrand Juryが捲り、さらに外からWhatdeawant、内からHollow Gamesなどが接近するも、そこから再度加速したGintoがGrand Jury以下を振り切り勝利した。

GintoはこれでHurdleは3戦3勝とした。12月のNavanではNavan Novice Hurdle (G2)を圧勝しており、ここでも人気に推されていた。レース展開としては最終コーナーからGrand Juryが捲り外からプレッシャーを掛けてくるもので、決して楽ではなかったはずなのだが、それでもGrand Jury以下を振り切るのだから大したものである。おそらく16fのスピード馬というよりはある程度ゆったりとしたペースで進めた方がよさそうなタイプではあるのだが、現時点での完成度もかなり高いNovice馬として期待しておきたい。未勝利を勝ったばかりのTiger Groom産駒のGrand JuryはRachael Blackmore騎手の好騎乗もあり2着。NavanのMonksfield Novice Hurdle (G3)を勝ったHollow Gamesは終始狭いところを進めるレースで、もう少し順調であれば最低限2着はあっただろう。

 

その他

Oakbank ordered to share documents (Racing.com)

Legal fight intensifies into Oakbank jumps decision (punters)

Frances Nelsonを筆頭とする障害競馬支援グループは、特別総会招集の要請が拒否されたのち、地方裁判所にOakbank Racing Groupにおける一連の議事録等の開示を求めていたが、どうやらこれが受理され、一連の議事録を開示する方向となったそうだ。後者の記事にはKaren Thomas裁判官のコメントが詳細に記載されており、このOakbank Racing Clubの一連の決定に対して痛烈な批判を行っている。

2021 Full Of ‘The Stuff You Can’t Script’ For Trainer Keri Brion (Paulick Report)

The Mean Queenを始め、2021年のアメリカ障害競馬で大成功を収めたKeri Brion調教師のインタビュー。