にげうまメモ

障害競馬の個人用メモ ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/04/09 National Hunt Racing - Grand National Entries

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Aintree (UK)

Randox Grand National Handicap Chase (G3) 4m2f74y (National)

Class 1, 7YO plus, Winner £500,000

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例によって少しずつ更新予定。ただし、出走馬については適宜変更が生じることに留意されたい。過去のGrand Nationalのレース回顧等に関する記事は以下のカテゴリーを参照のこと。

トップ > イギリス・アイルランド競馬 >Grand National(にげうまメモ)

 

今年は右のリンク先のホームページにあるGrand Nationalの紹介記事について、以下のとおり加筆・修正を行った。紹介記事とは名ばかりで実質的にはマニアックな知識を好き放題に詰め込んだものであるが、少なくともこの記事ではイギリス・アイルランド障害競馬に関する基本的な解説は記載しないので、適宜参照されたい。なお、ホームページのコンテンツは当ブログに移行中であり、ホームページ自体は縮小予定である。

22/04/01 Grand National ① - Introduction -  (にげうまメモ)

22/04/02 Grand National ② - レース条件 -  (にげうまメモ)

22/04/03 Grand National ③ - 障害 -  (にげうまメモ)

 

その他、障害競馬に関する基礎的な知識は以下のカテゴリーの記事を参照のこと。

トップ > 障害競馬ガイド (にげうまメモ)

 

表記フォーマットは以下のとおり。出馬表はRacing Postを参照している。

  • 馬番. 馬名 (生産国), 年齢 斤量 J: 騎手 T: 調教師 (血統表へのリンク)

斤量はストーン・ポンド表記で記載する。キログラムへの換算表は以下の記事を参照のこと。

21/09/16 障害競馬入門③ - レース条件 - (にげうまメモ)

 

なお、右のリンク先に掲載されている海外競馬ニュースch(webラジオ)において、昨年のGrand Nationalのレース回顧をSatieさんが簡潔に行ってくださっているので、適宜参照されたい。中の人は2つ目の番組で昨年のGrand Nationalについて話している。

グランドナショナル回顧@satie (海外競馬ニュースch)

2021海外競馬総まとめライブ@satie、おむすび、Toru、にげうま、名馬電機社長 (海外競馬ニュースch)

 

 

1. Minella Times (IRE), 9 11st10lb J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead (Pedigree)

Sadler's Wellsの直仔であるOscarはイギリス・アイルランドにおいて最も成功した障害種牡馬の一頭で、Punchestown Champion Chase (G1)やQueen Mother Champion Chase (G1)を含むG1を計6勝し、2008~2012年頃の16ハロンChaseを代表する名馬Big Zebをはじめ、Fighting Fifth Hurdle (G1)及びNeptune Investment Management Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Peddlers Cross、2012年のChampion Hurdle (G1)の勝ち馬Rock On Ruby、2019年のStayers' Hurdle (G1)の勝ち馬で、同時期における24ハロンHurdle路線では無敵を誇ったPaisely Parkなど、その産駒における活躍馬は枚挙に暇がない。昨年のGrand National (G3)には3頭の産駒が出走し、第1障害で早々に落馬したLake View Ladを除いてMinella TimesとAny Second Nowがそれぞれ1、3着に入るという大活躍を見せた。なお、Oscarの母Snow Dayの妹Vindanaは日本に輸入されたようだが目立った産駒は残せず、父にShady Heightsを持つホッカイサクセスという馬が1994年に未勝利戦を1勝した程度である。また、Oscarの半姉Ionian Seaは2012年のジャパンカップにも参戦したMount AthosやImperial Moarchといった活躍馬を送り出しているのだが、それらの姉Roman Empressは日本に輸入され、その産駒バルバレスコ(父ロードカナロア)は中央競馬で2勝を挙げている。

HISTORY! Rachael Blackmore wins the Grand National aboard Minella Times (Youtube)

Minella Timesは昨年のGrand National (G3)の勝ち馬である。アイルランドの障害競馬を代表する女性騎手Rachael Blackmoreとのコンビで挑んだ昨年のレースは、Grand National (G3)史上初の女性騎手の勝利ということで世界の競馬史に残る歴史的なレースとなった。しかしながら今シーズンはここまで2戦を消化するも、いずれも特段見せ場なく落馬又は途中棄権に終わっている。さすがに12月のJohn Durkan Memorial (G1)は20ハロン戦ですら傑出したスピードを誇るAllahoが相手、さらにその後のLeopardstown Handicap Chase (Grade A)も11st12lbのトップハンデと条件的には相当厳しかったものなのであり、明らかに単なる叩き台ということで度外視するのも一考なのだが、一方でアイルランド重賞戦線で良績を残してきた昨年と比べると馬の勢いの面で見劣りすることも事実である。そもそもTiger RollのGrand National (G3)連覇やMany Cloudsの活躍等で記憶が薄れがちなのだが、Grand National (G3)の勝ち馬がその後勝利を挙げたのは2002年のBindaree以降、2014年の勝ち馬Pineau De Reが2015年12月にPertemps Network Handicap Hurdle (C2)を勝利するまで例がないという記録があり、Grand National (G3)勝ち馬のその後というのはやや疑ってかかることも一案だろう。元々は20ハロン程度の距離にも対応できるスピードと、比較的馬場は不問で走ることが出来る安定感、ハンデ戦における豊富な経験、昨年のNational Fenceでの飛越の安定感など、さすがに昨年のチャンピオンだけあって能力的には信用できるものを持っており、間違いなくこのGrand Nationalが大目標でここまで2戦しかこなしていないローテーション自体は魅力的な一方で、昨年の10st3lbという最軽量に近い斤量から一気に11st10lbまで増加したハンデキャップは大きな懸念材料である。そもそもトップハンデでGrand Nationalを勝利した馬は1974年のRed Rumまで遡らなければならず、Minella Timesが今年勝利するとなると、ただでさえGrand National連覇という偉大な記録のみならず、トップハンデでの勝利というこれもまた歴史に残る偉大な記録を打ち立てることになる。鞍上は昨年に引き続きRachael Blackmoreの予定。

 

2. Delta Work (FR) (AQPS), 9 11st9lb J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott (Pedigree)

父NetworkはTamerlaneからMonsunに連なるドイツ系統の出自である。Monsunの産駒としては日本でも*ノヴェリストが繋養されており、2019年の京成杯 (G3)を勝利したラストドラフトを出している。Novelistの産駒は日本の障害競走でも走っており、2022年3月現在、インザムード、ノーザンクリス、シャンボールナイト、ジャストアジゴロの4頭が勝ちあがっているようだ。Monsunはドイツで一大系統を築いた種牡馬で、このNetworkを始め、Shirocco、Arcadio、Manduro、Maxiosなど、近年の障害競馬でも存在感を放つ種牡馬を複数送り出している。Networkの産駒として最も代表的なのは何と言ってもイギリス16ハロンChaseで無敵の強さを誇ったSprinter Sacreで、一時は出走したレースは全て圧勝に次ぐ圧勝と圧倒的な強さを誇った馬が、心臓のトラブルにより大きくパフォーマンスを落とし、そしてそれを乗り越えてQueen Mother Champion Chase (G1)を勝利した劇的な復活劇はイギリス競馬史に燦然と輝くエピソードである。NetworkはSprinter Sacreのみならず、フランスでLong Runと鎬を削りPrix La Haye Jousselin (G1)などG1を3勝したRubi Ballなど、数々の名馬を送り出している。

TIGER ROLL'S LAST EVER RACE AT THE CHELTENHAM FESTIVAL (Youtube)

2020 Paddy Power Irish Gold Cup - Racing TV (Youtube)

Delta WorkはそのNetworkの代表産駒の一頭で、ここまでにG1を計5勝しているアイルランドの名馬である。母RobbeがSelle Francais / Anglo-Arabianであるため分類上はこのDelta WorkもサラブレッドではなくAQPSとなる。Delta Work自身、特に2018年から2019年に掛けて勢いは凄まじく、コース形態との相性の問題かCheltenham Festivalでこそうまくいかなかったものの、アイルランド24ハロンChase路線では盤石の強さを誇った。しかしながら2020年の秋以降は精彩を欠いており、2022年のCheltenham FestivalではCheltenham Gold Cup (G1)ではなくGlenfarclas Cross Countryに挑戦するに至っている。このレースでは2018~2019年とGrand National (G3)を連覇したアイルランドの歴史的な名馬で、Delta Workと同厩舎・同馬主の12歳馬Tiger Rollがこのレースを最後に引退することが発表されていた。レースではそのTiger Rollがかつて往年の唸るような勢いで途中から先頭に立ち、このTiger Rollが引退レースを飾ることを期待したファンは大いに沸くことになる。しかしながらそのTiger Rollに対して唯一付いて行ったのがこのDelta Workで、しかも最終障害を越えての叩き合いでTiger Rollを退けるというドラマチックな勝利を挙げた*1Tiger Rollの引退レースということで若干ヒール役のような扱いを受けてしまったのも事実だが、かつてのアイルランドの名馬がその輝きを取り戻した復活勝利という側面もあることもまた事実である。近年のGrand National (G3)においてGlenfarclas Cross Countryが重要なステップレースであることは良く知られていることを踏まえると、3月のCheltenhamでは初のCross Countryにも関わらず非常に安定した飛越を見せ、そのCross Country SpecialistのTiger Rollを退けた内容は高く評価しなければいけない。斤量的にはやはり厳しい評価を下されてしまったが、本来このメンバーであれば抜けたトップハンデを背負っていてもおかしくない馬である。元々持っていた能力を考えれば、この馬に掛かる期待は非常に大きい。Gordon Elliott厩舎の主戦騎手の一人Jack Kennedyとコンビを組むこともこの馬に対する期待の表れだろう。なお、管理するGordon Elliott調教師は、この馬を含めて40頭中1/5となる8頭もの管理馬を出走させることになりそうだ。高いレーティングを持った有力馬を多数抱える巨大厩舎であるので仕方がないのだが、イギリスの障害競馬コミュニティを見ているとこの多頭出しはあまり好意的には受け止められていないようだ。

 

3. Easysland (FR) (AQPS), 8 11st8lb J: Jonjo O'Neill Jr T: Jonjo O'Neill (Pedigree) →Scratched

父Gentlewaveは上記Monsunの産駒で、2006年にイタリアダービー (G1)を勝利、アイルランドダービー (G1)でもDylan Thomasの2着に頑張っている。元々はフランスで種牡馬入りし、その後イギリスに渡ったようだが、現在はTrophée National du Crossのスポンサーであるフランス"Haras Du Lion"で繋養されているようだ*2*3。代表産駒としてはこのEasyslandは勿論、2021年のPrix Du President De La Republique (G3)を制したFanfaron Specialのほか、2019年のKerry National Handicap Chase (Grade A)を制したPoker Partyが挙げられる。なお、フランスGranville競馬場でSteeplechaseを1勝した母Island Du FreneがSelle Francais / Anglo-Arabianであるため、EasyslandもAQPSとなる。なお、フランス障害競馬においてAnglo-Arabianは一般的に存在しており、Anglo-Arabian限定競走も多数行われているが、所謂重賞競走に出走してくることはあまり見ない印象がある。

GRAND CROSS DE PAU 2020 | Easysland (Youtube)

Easyslandは元々フランスDavid Cottin厩舎に所属していたCross Country Specialistで、Cross Country初戦のDurtal競馬場の条件戦では圧勝するも、そこから3戦連続で落馬。しかしそこからの快進撃は衝撃的で、Grand Steeplechase Cross County de Compiegne (Listed)、12月のGlenfarclas Cross Country、Grand Cross De Pau (Listed)を含む一気の6連勝を上げると、再度のイギリス遠征となった2020年のCheltenham FestivalのGlenfarclas Cross CountryではあのTiger Rollを17馬身千切り捨てる圧倒的な走りを見せた。しかしその後は2度CheltenhamのCross Countryに参戦するも勝ち星は上げられず、2022年からはイギリスJonjo O'Neill厩舎に移籍するも、得意のGlenfarclas Cross Countryを含む3戦連続で途中棄権に終わっている。特に前走のGlendarclas Cross Countryでは先頭で進めるも、後続が殺到したところであっさりと脱落、そのまま途中棄権に終わるというレース内容で、重馬場自体は苦手ということだが*4、元々飛越の巧さよりも前向きな気性と桁違いのスピード能力で押し切るタイプであっただけに、馬の状態面で疑問符がつくというのが現状だろう。元々CheltenhamのCross Countryでも一時期National Fenceがオミットされていた頃に結果を残しており、このNational Fenceが復活してからはこの障害に手を焼いていたことも考えると、National Fenceへの対応にも不安が残る。元々持っていた能力としては近年のフランスCross Countryの中でも随一のものを持っていたと考えられる馬で、なんとか復活してもらいたいところなのだが、いきなりここでどうこうというのはさすがに厳しそうだ。

 

Reserve 2 → 3. School Boy Hours (IRE), 9 10st5lb J: Sean Flanagan T: Noel Meade (Pedigree)

上記Presentingの産駒。昨年12月のPaddy Power Chase (Grade B)を10st8lbを背負って勝ってきた馬で、基本的にこはここまでNoviceクラスを含めハンデ戦における実績が殆どである。前走はCheltenhamのFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupに挑戦するも、残り4障害で大きなミス、そこから脱落して途中棄権に終わっている。どうやら早々にこのGrand National (G3)またはIrish Grand National (Grade A)をターゲットにすることが決まっていたようで*5、ここまで距離を延長することでパフォーマンスを上げてきた経緯、さらに今シーズンこれが3戦目とフレッシュな点は強調材料だろう。出走さえ叶えば興味深い一頭である。前走は途中棄権とはいえ飛越時の大きなミスによるもので、そこまでは好位で運んでいただけに、当然飛越技術に疑問符がついてしまったのは事実だが、そこまで大きく悲観する必要はなさそうだ。

 

4. Any Second Now (IRE), 10 11st8lb J: Mark Walsh T: Ted Walsh (Pedigree)

Big Grand National contender? ANY SECOND NOW lands thrilling Bobbyjo Chase (Youtube)

上記Oscarの産駒で、昨年のGrand National (G3)では勝利したMinella Timesから8馬身離れた3着に入り、父Oscarの偉大さを知らしめた。元々2019年のCheltenham Festivalにおける26ハロンのアマチュア騎手限定戦Kim Muir Challenge Cupを勝った馬だが、その後は距離不問でレースに出走しており、16ハロンのWhatOddsPaddy Chase (G3)やWebster Cup (G3)を制すなど、16ハロンChaseのペースにも対応できるだけの優れたスピード能力を持っているようだ。今シーズンは2戦ほどHurdleを叩いたのち、2月のBobbyjo Chase (G3)を勝利してここに臨んできた。課題はなんといっても昨年ミスを連発していた障害への対応で、スムーズな立ち回りと飛越が目立ったMinella Timesに対して、この馬は飛越のミスと立ち回りのまずさが目立っていた。それでも3着に差し込んでくるのだから能力自体は疑いようがなく、今シーズンにおける馬の調子もよさそうなことを踏まえると、この馬の好走には大いに期待してもよいだろう。もっとも、昨年の10st9lbから大幅に増加する斤量は少々心配な材料である。鞍上は昨年に引き続きMark Walsh。

 

5. Run Wild Fred (IRE), 8 11st7lb J: Davy Russell T: Gordon Elliott (Pedigree)

St. Simon、さらにはRibotに連なる父系出身のShantouの産駒。世界的に既にこの血統は衰退の一途にあるのだが、Hoist The FlagAllegedの系統はFlemensfirth、Astarabad、Shantouを始め、障害競馬においては成功した種牡馬を多数輩出している重要な系統である。Shantouの代表産駒として挙げられるのは2017年のLawlor's Hotel Novice Hurdle (G1)等の複数のG1勝ちを挙げたDeath Dutyだが、それ以外にも世紀の珍レースとなった2018年のGrowise Champion Novice Chase (G1)で近年屈指のドラマチックな勝利を掴み*6、その後2020年のLadbroeks Champion Chase (G1)にて今度は実力でG1勝ちを収めたThe Storytellerが挙げられる。

RUN WILD FRED and Davy Russell combine for 2021 Troytown Chase triumph - Racing TV (Youtube)

Run Wild Fred自身はNovice馬だが、実際のところ2020年の秋からChaseに転向しており、既にここまでChaseは11戦を消化している。あまりNovice戦特有の緩い流れが得意な馬ではないようで、Novice Chaseではあまり結果を残せなかったものの、昨年のGoffs Thyestes Handicap Chase (Grade A)、Irish Grand National (Grade A)にて2着に入って頭角を現してきた。今シーズンはNavanのTroytown Handicap Chase (Grade B)で待望の勝利をあげると、その後Neville Hotels Novice Chase (G1)、National Hunt Challenge Cup (G2)と連続で2着に入っており、馬の調子としてはかなり良いようだ。どちらかというとスピードの持続性能を生かす超長距離のハンデ戦向きの馬であり、距離延長もさほど不安ではないだけに実績以上の結果を残す可能性も考えられる。この実績で11st7lbは少々不当な扱いであるような感もあるが、不安はやはり初のNational Fenceだろう。Gordon Elliott厩舎の主戦騎手の一人Davy RussellはTiger Rollにも騎乗していたアイルランドを代表する騎手の一人であり、やはり陣営としてもこの馬に対する期待は大きいようだ。

 

6. Lostintranslation (IRE), 10 11st6lb J: Harry Cobdon T: Colin Tizzard (Pedigree)

上記Hoist The Flagの系統に連なるFlemensfirthの産駒。Flemensfirthは障害種牡馬としては大成功を収めており、2012年のLexus Chase (G1)にて劇的な勝利を収めたTidal Bay、2010年のCheltenham Gold Cup (G1)の勝利を始め、DenmanやKauto Starといった現在でも名前の残る名馬たちと競ったImperial Commander、John Durkan Memorial Chase (G1)などG1を4勝したアイルランドの名馬Flemenstar、不良馬場における不屈の闘志を武器に2014年のWelsh Grand National (G3)を勝利したEmperor's Choiceなど、多数の活躍馬を送り出している。

LOSTINTRANSLATION and Robbie Power take the 2019 Betfair Chase from Bristol De Mai (Youtube)

LostintranslationはここまでG1を2勝している馬で、特に2019年のHaydock競馬場のBetfair Chase (G1)では、Haydock競馬場では無類の強さを誇るBristol De Maiを下して勝利を挙げ、翌2020年のCheltenham Gold Cup (G1)では勝ったAl Boum Photoから僅差の3着に入るなど、イギリス24ハロンChase路線では主役級の一頭であった馬である。しかし2020年の春までがそのキャリアのピークだったようで、その後は重賞戦線では大敗続き、唯一格好をつけたのが2021年のChanelle Pharma Chase (G2)の勝利のみに留まっている。どうやら度重なるノドの手術を行っているようで、上記Chanelle Pharma Chase (G2)も良馬場の21ハロン戦、しかも緩い流れであったこと、さらにその後の3戦はいずれも良いところなく終わっていることを考えると、あまり馬の状態が芳しいようには思えない。11st5lbという斤量はこの馬の全盛期のパフォーマンスから考えれば寂しいハンデキャップで、良馬場になればまだ可能性はあるものの、一気の距離延長、初のNational Fenceと課題は多い。ひとまず同馬はDavid Pipe厩舎でAintree Styleの障害の練習をしているらしく、それ自体は上手くいっているようで*7、今年で10歳となった実績馬の復活を期待したい。

 

7. Brahma Bull (IRE), 11 11st6lb J: Brian Hayes T: Willie Mullins (Pedigree)

父PresentingはBustedからDonatelloに連なる系統の出自である。Presenting自身は障害種牡馬としては大成功を収めており、2000年台後半に"The Tank"の異名で24ハロンChaseのG1路線で暴れまわったDenmanをはじめ、2006年にはCheltenham Gold Cup (G1)からPunchestown Gold Cup (G1)制覇の快挙を成し遂げたWar of Attrition、50戦して2着9回、3着12回という驚異的な堅実振りを誇ったFirst Lieutenant、2011年のGrand National (G3)の勝ち馬Ballabriggsなど、イギリス・アイルランドにおける活躍馬を多数送り出し、2017年に亡くなるまで計4回ものリーディングサイアーに輝いている*8

Brahma Bullは2021年のPalmerstown House Pat Taaffe Handicap Chase (Grade B)の勝ち馬。アイルランドの名門Willie Mullins厩舎の馬にはしばしばありがちなのだが、なにかとG1クラスの馬が出走してくることで小頭数になりがちなG3~G2クラスの競争と、ハンデキャップ重賞を織り交ぜながら使われてきた馬で、今シーズンもKerry National Handicap Chase (Grade A)にて2着に、Ladbrokes Trophy Chase (G3)でも3着に入ったりと元気なのだが、1月のThyestes Handicap Chase (Grade A)は途中棄権、ここに向けたステップレースとして選択したGlenfarclas Cross Countryでは若干不幸な感もあるものの第20障害で落馬と、ここ2走はいまいちな結果に終わっている。あまり冬の重馬場が得意な馬ではないらしく*9、かつ基本的にはゆったりとしたペースで運ぶのがいいようだが、この実績で11st5lbというのはやや過大評価され過ぎな感もあり、今シーズンはこれで7戦目と少々使いすぎな印象で、さらに初のNational Fenceということも踏まえると、あまり状況としては好ましいものではないだろう。

 

8. Burrows Saint (FR), 9 11st5lb J: Paul Townend T: Willie Mullins (Pedigree)

父Saint Des SaintsはNijinskyGreen Dancerに連なる父系の出身で、フランスで障害競走を走りPrix Amadou (G2)などを勝利している。障害種牡馬としては、2014年のGrand Steeplechase de Paris (G1)の勝ち馬Storm of Saintly、Prix Ferdinand Dufaure (G1)にて16馬身差の圧勝を飾った良血馬Whetstoneなどの多数の活躍馬を送り出しており、フランス障害競馬における代表的な種牡馬である。イギリス・アイルランドにおいても産駒の活躍は目立っており、John Durkan Memorial Chase (G1)勝ちを上げ、2015年頃の24ハロンChaseを彩ったDjakadam、JNwine.com Champion Chase (G1)の勝ち馬Quito de La Roqueなどを送り出している。しかし、なんといってもSaint Des Saintsに関して特筆すべきはその父系としての拡大の可能性で、このSaint Des Saintsの産駒としては2019年のPrix Ferdinand Dufaure (G1)で圧巻のパフォーマンスを見せた*10Goliath Du Berlaisをはじめ、Castle Du Berlais、Jeu St Eloiといった産駒が複数種牡馬入りしており、ヨーロッパ障害競走において今後大きく発展する可能性を秘めた系統と言えよう。特にGoliath Du Berlaisの圧倒的な身体能力を見せつけた上記のパフォーマンスは関係者から高く評価されているようで、同馬は障害種牡馬として大変人気のようだ。ここから障害競走において独自の発展を遂げる系統が現れてくることを期待したい。なお、Burrows Saintはフランス生産馬だがサラブレッドである。フランス産の障害馬というとAQPSの存在で有名だが、当然サラブレッドも多数存在しており、特に種牡馬となるのはサラブレッドが殆どである。

GRAND STEEPLE CHASE DE PARIS 2019 | Carriacou, le triomphe ! | Auteuil | Groupe 1 (Youtube)

Burrows Saintは2019年のIrish Grand National (Grade A)の勝ち馬で、2021年のGrand National (G3)の4着馬である。Chaseにおいて4戦しか経験していない馬のIrish Grand National制覇は大いに話題を集め、直後に挑んだフランスのGrand Steeplechase de Paris (G1)でも頑張って5着に完走している。ひとまず今シーズンはここまで3戦を消化し、Savills New Year's Day Chase (G3)ではAl Boum Photoの2着に入っている。ただし、昨年同様ここに向けてのプレップレースとして選択したBobbyjo Chase (G3)では案外な大敗、さらに昨年はPatrick Mullinsが完璧に騎乗したものの最後脚が上がっての4着ということで距離不安があること、加えて今年は昨年の10st13lbから斤量が増加することが見込まれるのはマイナス材料で、昨年よりも馬は良くなっているとの名伯楽の弁を信じたいところである*11。鞍上はアイルランドチャンピオンジョッキーPaul Townendとなった。

 

9. Mount Ida (IRE), 8 11st5lb J: Denis O'Regan T: Gordon Elliott (Pedigree)

Sadler's Wells産駒のYeatsは2006年から2009年にかけてAscot Gold Cup (G1)を4連覇した名ステイヤーで、引退後はアイルランドで障害種牡馬として繋養されている。その代表産駒としてはなんといっても2021年、2022年とStayers' Hurdle (G1)を逃げ切ったFlooring Porterが挙げられるが、他にも2016年のPrix Renaud Du Vivier (G1)の勝ち馬Capivari、2018年のJLT Novices' Chase (G1)の勝ち馬Shattered Love、2019年のPrix Maurice Fillois (G1)の勝ち馬Figueroなどが挙げられる。また、2022年にはConflatedが人気薄ながらもIrish Gold Cup (G1)で強豪を破る大金星を挙げ、父の障害種牡馬としての名声を高めることとなった。なお、Yeatsの半兄ツクバシンフォニーは日本でエプソムカップ (G3)を勝利した活躍馬で、競馬歴の長いファンであれば馴染みがあるだろう。また、その半姉レディフェアリーは日本で競争生活を送り、その後は繁殖牝馬として繋養されていたようだが、産駒としては計3勝を挙げたアースガルドが目立つ程度のようだ。

Mount Ida embarks on her path towards the GRAND NATIONAL with an impressive Listed win at Clonmel (Youtube)

Mount Idaは牝馬で、牝馬がGrand National (G3)を勝利するとなると1951年のNickel Coin以来初の歴史的な勝利となる可能性がある。ただし、ここまでの戦績としてはCheltenham FestivalにおけるFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupでの勝ち星が目立つくらいで、それ以外はほぼメンバーが半ば固定された牝馬相手のChase競走のみの出走に終始している。少なくとも現時点では牝馬限定Chase路線では最上位の能力を持つ馬であることは間違いないのだが、どうにも牡馬・セン馬相手となると未知数というのが正直なところだろう。上記のFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupでの勝ち星もどうにも道中もたもたと飛越するところが目立っており、さすがにChase2戦目だった当時と比較して近走はそれよりはまともになってきているようで、今シーズンはかなり早くからGrand Nationalを目標にしていたようだが*12、前走のCheltenham FestivalにおけるMrs Paddy Power Mares' Chase (G2)では11月や1月に下してきたElimayやScarlet And Dove相手にさっぱり良いところなく案外な大敗を喫しているのは気がかりな材料で、どうにも信用しにくいところがある。近年牝馬Chase競走は以前と比較すれば整備されてきているのだが、まだメンバー的にあまり層が厚いとは言い切れない状況で、実績的にもこれで11st4lbというのは見込まれ過ぎているのではというのが正直な感想である。

 

10. Longhouse Poet (IRE), 8 11st4lb J: Darragh O'Keeffe T: Martin Brassil (Pedigree)

Gamble landed! LONGHOUSE POET has the final word in the 2022 Goffs Thyestes Chase - Racing TV (Youtube)

上記Yeatsの産駒。元々Novice HurdleではLawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)における3着など上位クラスの活躍を見せていた馬で、2020年の秋にChaseに転向するもBeginners Chaseを4戦し、ようやく4戦目に勝利したのみに留まっていた。しかしながら今シーズンのChase初戦となった1月のGoffs Thyestes Handicap Chase (Grade A)では前々で元気よく運ぶと、最後はFranco De Portとの叩き合いを制して勝利し、一気に重賞勝ち馬の仲間入りを果たした。当時はやや行きたがって走るところも見せていたようにまだ若いところがありそうなのだが、それでも素質馬がようやくここにきてChaseで能力を示すことができるようになってきたということで、なかなかに今後が楽しみな一頭である。その後はBoyne Hurdle (G2)を叩いてここに備えてきた。能力と勢いのあるフレッシュな馬ということは強調できそうだが、やはりここまでChaseは6戦のみの経験しかないことは少々微妙で、Thyestes Handicap Chase (Grade A)でも馬群に入らず外々を回る競馬をしていたことを考えると、やや立ち回りには注文がつくかもしれない。

 

11. Fiddlerontheroof (IRE), 8 11st4lb J: Brendan Powell T: Colin Tizzard (Pedigree)

父StowawayはNever Bend - Mill Reef - Shirley Heightsの系統の出身の種牡馬。障害種牡馬としては2016年のLexus Chase (G1)の勝ち馬Outlander、2021年のRSA Chase (G1)の勝ち馬Monksfish、2021年のQueen Mother Champion Chase (G1)の勝ち馬Put The Kettle Onなど、複数のイギリス・アイルランドG1勝ち馬を輩出している偉大な種牡馬で、2020-2021シーズンのリーディングサイアーに輝いている。残念ながら2015年に亡くなっているそうだが、イギリス・アイルランド障害競馬においてはもうしばらくその存在感を示してくれることが期待できそうだ*13

CLOUDY GLEN posts fairytale triumph in £250,000 2021 Ladbrokes Trophy (Youtube)

Fiddlerontheroofは2020年のTolworth Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬。頭を高く上げる特徴的な走りをする馬で、Novice Hurdleの後はChaseに転向するもどうにもなかなか勝ち星を挙げられず、ここまで目立った成績としてはCarlisleのIntermediate Chase (Listed)を勝利したのみに留まっている。しかしなにより特徴的なのはその惜敗の多さで、大きく崩れたのはSupreme Novices' Hurdle (G1)の11着のみ、Chaseは実に10戦して1着2回、2着7回、3着1回という驚異的な堅実振り、というよりは驚異的なシルバーコレクターである。どうもLadbrokes Trophy (G3)の走りを見ていると、Novice Hurdleでビッグタイトルはあるものの、じわじわと持続的なペースが流れるハンデキャップ競走においてスピードの持続性能とロングスパート能力を生かした方がよさそうなタイプという印象で、もちろん距離やNational Fenceなど課題はあるのだが、なかなかにここでの走りを楽しみにしたい一頭である。なお、陣営はこのFiddlerontheroofの素質を高く評価しているようだが、Colin Tizzard調教師はまもなくその息子であるJoe Tizzardに厩舎を引き継ぐ予定で*14、Cue Cardを始め多数のイギリス障害競走の名馬を管理した同調教師にとっては最後のGrand Nationalへの挑戦となりそうだ。なお、同調教師はこれまでにGrand Nationalに5頭の馬を出走させているが、いずれも大敗か競争中止に終わっている*15。なお、Brendan Powell騎手の父は1988年にRhyme 'N' ReasonでGrand Nationalを勝利しているが、Grand National史上、親子でGrand Nationalを勝利した騎手は1975年のTommy Carberry騎手(L'Escargot)と1999年のPaul Carberry騎手(Bobbyjo)の1例のみである*16

 

12. Two For Gold (IRE), 9 11st3lb J: David Bass T: Kim Bailey (Pedigree)

父Gold WellはMontjeuの未出走の全弟で、障害種牡馬として活躍したものの2013年の11月に既に亡くなっている。障害種牡馬としては2018年のIrish Grand National (Grade A)の勝ち馬General Principleや、2021年のSavilles Chase (G1)を制したGalvin等の活躍馬を多数送り出しているが、2014年生まれの産駒が最後の世代ということもあり、その産駒の活躍を見ることが出来る期間は残念ながらそう長くはない。

Top horse! Fakir D'Oudairies wins the Betfair Ascot Chase! (Youtube)

Two For Goldはここまで重賞勝ちとしては2020年のHampton Novices' Chase (G2)が目立つ程度なのだが、今シーズンは今年から新設されたLingfield競馬場の"Winter Million Festival"と呼ばれる開催におけるFleur De Lys Chase (C2)を勝利している。この開催はオールウェザーとの混合開催であるものの高額な賞金が用意されていることで話題になっており、例えばこのFleur De Lys ChaseはClass2だが、1着賞金は£78,045であり、前日のClarence House Chase (G1)の1着賞金が£85,425、同時期に行われたTauntonの名物競走Portman Cup Chase (C2)の1着賞金が£26,015であることを考えると、この賞金額がいかに破格のものであるかは明らかである。また、同レースにはBristol De Mai、Dashel Drasher、Master Tommytuckerなどの重賞クラスの有力馬が多数出走しており、単なるClass2の競争ではないことは明白である。Two For GoldはこのFleur De Lys Chaseの後もAscot Chase (G1)でしぶとい競馬を見せ、アイルランドのFakir D'Oudariesの2着に入るなど、かなり調子はいいようだ。大きなシャドーロールをトレードマークに、スピードの持続性能とパワーを生かしたガッツ溢れるレースが持ち味の馬で、これがAscotのような上り坂のあるタフなコースへの適性に繋がっているのだろう。ただし24ハロン以上での実績はあまりなく、昨年はTopham Chase (G3)に挑むも良いところなく落馬に終わっているのは気がかりな内容である。さすがにTopham Chase (G3)では後方から進めるというこの馬の良さをさっぱり引き出さない競馬で、さすがに当時よりは上積みはありそうだが、どこまでやれるだろうか。なお、陣営としては柔らかい馬場が良いということらしい*17

 

13. Santini (GB), 10 11st2lb J: Nick Scholfield T: Miss Polly Gundry (Pedigree)

Santiniの父Milan自身も例によってSadler's Wellsの直系である。英St Leger (G1)の勝ち鞍のあるMilanは障害種牡馬として活躍しており、アイルランドの至宝Jezki、スコットランド調教馬として歴史的なGrand Nationalの勝利を上げたOne For Arthur、2022年のClose Brothers Mares' Hurdle (G1)の勝ち馬Marie's Rockなどの活躍馬を多数送り出している。Milanの母Kithangaはアイルランドで重賞勝ちのある馬だが、このMilanの全妹Kitty Wellsが日本に輸入されており、モズハタラキモノというGolden Hornの産駒が存在するようだ。産駒の障害競走における活躍を期待したい。ちなみにKithangaの全妹Karlayaも日本に輸入されているようだが、残念がら目立った活躍馬は出していないようだ。

Cheltenham Gold Cup 2020: Al Boum Photo strikes again | Racing TV (Youtube)

Santiniは2018年のDoom Bar Sefton Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬。Chaseに転向してからも大活躍を見せ、そのキャリアハイの活躍してして特記すべきは2020年のCheltenham Gold Cup (G1)におけるAl Boum Photoに対する僅差の2着の実績だろう。しかしイギリス24ハロンChaseの中心格として期待された2020-2021シーズンはG1路線において頭打ち気味の結果に終わり、今シーズンからはNicky Henderson厩舎からPolly Gundry厩舎へと移籍している。Polly Gundry厩舎は2006年に開業した厩舎で*18、現在はPoint to Pointの競走馬を含む30頭以上の馬を管理しているそうだが、このG1戦線において一線級で戦ってきたSantiniを管理することになったことを"An out of body experience"とまで表現している*19。Santini自身は3月のCheltenham Gold Cup (G1)では勝負所から脱落して8着に終わっており、さすがに往年の勢いはなさそうなのだが、それでもこの厩舎にとっては転機となる可能性すら秘めたこの貴重な馬と共に挑む大舞台ということで、ここに賭ける意気込みは並大抵のものではないだろう。

 

14. Samcro (IRE), 10 11st1lb J: Sean Bowen T: Gordon Elliott (Pedigree)

父GermanyはGrosser Preis von Baden (G1)等を勝利したアメリカ産馬で、引退後はアイルランド種牡馬入りしている。その代表産駒として挙げられるのは2015年のChampion Hurdle (G1)勝ち等をはじめ、当時のイギリス・アイルランド16ハロンHurdle路線で圧倒的な強さを誇り、"The Machine"との異名で呼ばれていた伝説的名馬Faugheenが挙げられる。特にFaugheenは元々の圧倒的な強さは勿論のこと、その後故障もあってなかなかかつてのパフォーマンスを発揮できなくなっていったものの、11歳という異例の高齢ながらも果敢にChaseへと挑戦し、ChaseでもNoviceのG1路線の一線級で活躍したその姿は全ての競馬ファンの心に訴えるものであった。残念ながらGermanyは2013年に亡くなっており、その残された産駒は多くはない。Germanyの父Trempolinoも障害種牡馬として優秀で、2014年のPrix Cambaceres (G1)を勝利したBonito Du Berlaisのほか、2012年Svenskt Champion Hurdle等を制したノルウェーの英雄Omoto Sandoや、2017年Svenskt Champion Hurdleや2016年Wielka Partynicka等を制したスウェーデンの名馬Calvadosなど、2010年台の北欧障害競走を彩った代表的な活躍馬を複数送り出している。このSharpen Upからなる系統は複数の成功した障害種牡馬を輩出しており、Muhtathir - Doctor Dino、Halling - Coastal Path、さらにこのTrempolino - Germanyがその代表格である。

Marsh Novices' Chase (Grade 1) - Racing TV (Youtube)

SamcroはここまでにG1を3勝しているアイルランドの名馬である。2017-2018年は無敗でBallymore Novices' Hurdle (G1)まで駆け上がる鮮烈なデビューを飾り、その将来を大いに期待されていたのだが、残念ながらNovice卒業となった翌シーズンのHurdle路線では勝ち星を挙げられず、元々の評判を踏まえると大いに期待外れなシーズンに終わった。その後Chaseへと転向し、2020年当時12歳の高齢でのChase挑戦となったFaugheenと鎬を削り、3月のCheltenham FestivalではMarsh Novices' Chase (G1)ではそのFaugheenやMelonを僅差で下すというドラマチックな勝利を挙げた。しかしどうにも呼吸器系に問題を抱えているらしく*20その後は全くぱっとせず、2021年5月というシーズンオフにおけるAn Riocht Chase (G3)を1勝するのみに留まっており、今シーズンは4戦するもさっぱり良いところがない。過去の強さを知っている人間とすれば寂しいところがあるが、これまでに距離延長で上手くいったこともなく、近走成績を考えるとここでもどうしようもないというのが正直なところだろう。前走も勝ったRoi Mageから4馬身差の3着とはいえ、全体的にのんびりとしたレースであり、このようなレースでは結果的にあまり差のつかない結果になるのはよくあることである。とりあえず調教師によれば馬の調子はいいということだが、Racing Postの記事でもいまいち評判は芳しくないようだ*21

 

15. Escaria Ten (FR), 8 11st1lb J: Adrian Heskin T: Gordon Elliott (Pedigree)

父Maresca SorrentoはフランスHurdleで2勝を挙げた馬で、その代表産駒としては2014年のGrand National (G3)を勝利したPineau De Reのほか、2019年のTop Novices' Hurdle (G1)を制したFelix Desjyが挙げられる。Maresca Sorrentoの父CadoudalはBig Buck'sやLong Runといった伝説的な名馬を複数送り出すなど障害馬の父として優秀だが、その後継種牡馬も多く、このMaresca Sorrentoのほか、Indian River、Saint Des Saints、Buck's Boumなど、成功した種牡馬が複数存在する。その中でも特に優秀なのがSaint Des Saintsで、その活躍馬の多さは勿論のこと、Jeu St Eloi、Goliath Du Berlaisなどの後継種牡馬が多数存在し、ここからフランス障害競馬独自の系統が発展する可能性に期待したい。

Escaria TenはここまでChaseでの勝利はBeginners Chaseしかないのだが、Chaseではほぼ徹底して24ハロン以上の競争を使われており、CheltenhamのNational Hunt Challenge Cup (G2)でがGalvinの3着に入っている。この競走自体はアマチュア騎手限定の超長距離戦なのだが、当時の上位馬はなかなか優秀で、勝ったGalvinはその後Savills Chase (G1)を制しており、さらに僅差の2着のNext Destinationも故障でなかなか順調には使えないものの元々はHurdleでG1を2勝している能力馬である。ここでの僅差の3着というのは例年のNational Hunt Challenge Cup (G2)にはない水準の高さなのだが、それよりもこの馬に関して懸念されるのがハンデ戦での実績の乏しさで、Chaseでは2戦ほどハンデ戦の大舞台に立っているのだが、Irish Grand National (Grade A)は途中棄権、Thyestes Handicap Chase (Grade A)も大敗に終わっている。前走もBobbyjo Chase (G3)にてAny Second Nowに対して差のない2着に入っており、持っている能力は高く調子もよさそうで、8歳という若さによる上積みに期待したいところだろう。オーナーのMax McNeill氏もこの馬の走りを楽しみにしているそうだ*22

 

16. Good Boy Bobby (IRE), 9 10st13lb J: Daryl Jacob T: Nigel Twiston-Davies (Pedigree)

Gutsy GOOD BOY BOBBY secures deserved success in the William Hill Rowland Meyrick Chase at Wetherby (Youtube)

上記Flemensfirthの産駒。2019-2020シーズンに1度Chaseを使うも、下級戦で2勝を挙げたのみで再度Hurdleに戻している。しかしながら今シーズンは再びChaseへと転向し、WetherbyのListedを勝利、さらにRowland Meyrick Handicap Chase (G3)を勝利して一気に重賞勝ち馬の仲間入りを果たした。どうやらここまでの実績的には平坦な左回りのコースがいいようで、特にWetherbyのChaseではここまで3戦3勝と素晴らしい成績を残している。おそらくそういう意味ではAintreeのコースというのはこの馬向きだと思われるが、ただどうにも前に行って結果を残してきた馬だけに、今回は一気の多頭数ということで乱ペースに巻き込まれるリスクも高い。前走のCoral Trophy (G3)も中段から進め良いところなく大敗している。24ハロン超での実績も少なく、この馬自身の調子は良さそうだが、乗り越えねばならないハードルも多い。ひとまず鞍上のDaryl Jacobによれば左回りの方がいいとのことで*23、Kemptonの大敗からの上積みは期待できるだろう。

 

17. Lord Du Mesnil (FR), 9 10st13lb J: Kielan Woods T: Richard Hobson (Pedigree) →Scratched

上記Saint Des Saintsの産駒。母父Turgeonは障害種牡馬としては大成功を収めた馬で、2013年のPrix La Haye Jousselin (G1)の勝ち馬Shannon Rockを始め、Lexus Chase (G1)の勝ち馬Exotic Dancer、2011年Grand Prix D'Autonno (G1)の勝ち馬La Segnora、2014年のTopham Chase (G3)を勝利した牝馬Ma Filleuleなど活躍馬を多数送り出している。Turgeonの産駒として日本ではグレイスカノン、ノモチアーの2頭が登録されており、グレイスカノンはヒシピナクルの勝利したローズステークス (G2)にも挑戦している。

Lord Du Mesnilは24ハロン超のハンデ戦においてはもはや常連となった馬で、Grand National (G3)は昨年に続き2年連続の参戦となる。途中でオーナーが変わったり、生命を脅かす重症を乗り越えてきたりと色々あった馬だが*24、HaydockのGrand National Trial (G3)を勝利して挑んだ昨年と異なり、今シーズンはRowland Meyrick Handicap Chase (G3)にて2着に入ったことが唯一の好走で、前走のGrand National Trial (G3)も空前絶後の不良馬場だったとはいえ途中棄権に終わっており、やや昨年の勢いに比べると見劣る面がある。ここまでNational Fenceを使う競走は2度ほど走っているのだが、いずれも徐々に脱落して途中棄権に終わるというレース振りから考えると、ここでもスピード性能の点でついていけるかどうか怪しいというのが現状だろう。本来ある程度渋った馬場でゆったり運ぶことを得意としている馬で、オーバーペース気味になるとどうしようもないのがこのタイプの特徴でもある。ちなみに、公式なのか不明だがそれっぽいtwitterアカウントもあるようだ(@MensilDu)。

 

Reserve 3 → 17. Romain De Senam (FR), 10 10st5lb J: Philip Armson T: David Pipe (Pedigree)

上記Saint Des Saintsの産駒。もともとイギリスでのキャリアはPaul Nicholls厩舎でスタートした馬で、Juvenile Hurdleの重賞戦線を戦っている。その後はDan Skelton厩舎、さらに昨年11月からはDacid Pipe厩舎と転々としている。基本的にはClass2の2m5f戦で勝ち星がある馬といったところで、昨年4月のSilver Trophy (G2)では3着に頑張っている。とはいえDavid Pipe厩舎への転厩初戦となったMidlands Grand National (Listed)では10st6lbと斤量的にもさほど厳しくなかったにもかかわらず、特に見せ場も作れずに途中棄権に終わっている。いちおうDavid Pipe厩舎への転厩のきっかけとなったオーナーのこの馬購入の目的は3マイル戦への出走だそうで*25、3マイル戦自体はそれなりに対応は可能なようだが、やはり一気の距離延長となると不安が大きく、ここまでの実績面から考えても強調材料に乏しいというのが正直なところである。

 

18. Coko Beach (FR), 7 10st13lb J: Jonjo O'Neill Jr T: Gordon Elliott (Pedigree)

父Cokorikoは遡れば大種牡馬Mill Reefに行きつく系統で、この系統は日本でも20世紀末に活躍した*ミルジョージや*マグニテュードでお馴染みである。このMill Reef産駒のGarde RoyaleからRobin Des Champs、Kapgardeと2頭の成功した障害種牡馬が現れており、さらにRobin Des Champsの産駒で2013年のPrix Gerald De Rochfort (Listed)を勝利したCokorikoが障害種牡馬として頑張っているようだ。Coko BeachはそのCokorikoの代表産駒で、他にはPrix Congress (G2)の勝ち馬Polirico、Grande Course De Haies De Compiegne (G3)の勝ち馬Flying Startandco等を送り出している。

What a performance! Coko Beach - 2021 Goffs Thyestes Chase (Youtube)

Coko Beachは2021年のThyestes Handicap Chase (Grade A)の勝ち馬。どちらかというとパワーのある緩慢なストライドの持続性能で走るこの馬は明らかに長距離のハンデ戦向きの馬で、それも馬場が重くなって力を発揮するタイプである。今シーズンはすでに6戦を消化しており、明らかに適性外であったJoin Racing TV Chase (G2)等の3戦を除けばそれなりに勝負には参加しているようだ。比較的高さのある伸びやかで安定した飛越を見せることを考えると、おそらくここにおいて初のNational Fenceとなるメンバーの中では障害飛越自体には比較的不安は少ない方だろう。ただし、やはり馬場は渋った方がよく、ここまでのレースでも基本的には好位でスピードの持続性能を生かすようなレースをしていることを考えると、やはり立ち回りには色々と制約が付きそうだ。

 

19. De Rasher Counter (GB), 10 10st12lb J: Adam Wedge T: Miss Emma Lavelle (Pedigree)

DE RASHER COUNTER gives Ben Jones a landmark success in the 2019 Ladbrokes Trophy (Youtube)

上記Yeatsの産駒。どうやらこの馬の名前は母父Rasharから来ているようだ。De Rasher Counterは2019年のLadbrokes Trophy (G3)をConditional JockeyのBen Jones騎手とのコンビで制した馬で、ゴール前でのBen Jones騎手の派手な喜びようはなかなかに爽快なものであった。しかしながらその後はどうにもいまいちで、結局2020-2021シーズンは故障もあってか順調にレースに使えず*26、ようやく今年の2月にDenman Chase (G2)にて復帰を果たしている。おそらく良馬場の方が良いタイプで、昨年のMidlands Grand National (Listed)での途中棄権は不良馬場によるものであり、かつG2クラスのレースに適性のある馬ではなさそうであることを考えると、2019年のビッグタイトル以降結果が出ていないことについては言い訳はできそうである。しかしやはり故障で順調に使えていなかったことを考えると、どこまで馬の状態が戻っているかは少々疑問だろう。

 

20. Kildisart (IRE), 10 10st11lb J: James Bowen T: Ben Pauling (Pedigree)

Kimgmanboの産駒Dubai Destinationは日本でも三木ホースランドパークジャンプステークスを勝利したダノンバッカスを送り出しているが、その産駒は欧州障害競馬でもなかなか優秀で、Irish Daily Mirro Novice Hurdle (G1)の勝ち馬Next Destination、OLBG Mares' Hurdle (G1)の勝ち馬Roksana、さらに2018年のWelsh Grand National (G3)の勝ち馬Elegant Escapeが代表産駒として挙げられる。面白いところだと、Cheltenhamの20ハロンChaseのみを執拗に使い、ついにはCheltenham FestivalのCraft Irish Whiskey Co. Plate Handicap Chase (G3)で劇的な逃げ切り勝ちを収めたCoole CodyもまたDubai Destibationの産駒である*27

Kildisartは元々JLT Novices' Chase (G1)まで駒を進めた馬だが、主な勝ち鞍としてはNovice馬としてのBetway Handicap Chase (G3)勝ちが挙げられる。その後も2020年のUltima Handicap Chase (G3)でThe Conditionalの2着に入るなど頑張っているが、今シーズンはどうにもいまいちで、3戦していずれも勝ち馬から大きく離れた入線に終わっている。おそらくGood~Softの馬場の方がよさげなタイプで、Ladbrokes Trophy (G3)も11st5lbと斤量的にはそれなりにしんどいものであったことが敗因として挙げられそうなのだが、良馬場のLadbrokes Trophy (G3)では一度効果のあったチークピーシーズを試しても大敗と、どうにも信用しにくい面が残っているのも事実である。James Bowenは21歳の若手騎手で、どうやら当日は両親とガールフレンドが応援に来るそうだ*28

 

21. Discorama (FR) (AQPS), 9 10st11lb J: Bryan Cooper T: Paul Nolan (Pedigree)

父Saddler Maker自身は平地競争では未勝利に終わったものの、障害種牡馬としては大成功を収めており、その代表的な活躍馬としては持続的なスピード能力を生かしてHurdleのG1競走を計11勝したアイルランドの名牝Apple's Jade、Haydock競馬場で異様な強さを誇るBristol De Mai等が挙げられる。残念ながら2016年の5月に故障で亡くなっているようだが、そのラストクロップの中からPrix De Pepinvast (G3)を勝利するHaut Les Coeursが現れており、その産駒の活躍が楽しみである。2022年に中山グランドジャンプに予備登録を行ったアイルランドのGevreyもこのSaddler Makerの産駒である*29

DiscoramaはいわゆるAQPSという類の馬で、AQPSのGevreyが中山グランドジャンプに予備登録を行った際には主に海外競馬ファンの間で話題になったようだが、AQPS自体は欧州障害競走においてごく一般的な存在である。Saddler Makerはサラブレッドだが、母QuentalaがLes anglo-arabes de complément (AC)という類の馬であるため*30、Discorama自身はAQPSとなる。Discorama自身はここまでChaseではBeginners Chaseの1勝のみに留まっているが、超長距離戦においてはもはや常連といったところで、2019年のNational Hunt Challenge Cup (G2)はLe Breuilの2着、2020年のUltima Handicap Chase (G3)では僅差の3着に入っている。今シーズンはHurdle戦とRated Chaseを2回使ってここに備えてきた。基本的にはある程度重い馬場において、スピード能力よりもともかくパワーを生かしてしぶとく走るタイプといったところで、特に見せ場を作れず7着に終わった昨年のGrand National (G3)では馬場が良すぎたという言い訳もできそうだ。ただし、昨年の10st6lbと比較して、この1年間大した実績はさっぱり残していないにも関わらず相手関係の問題で10st10lbまで斤量が増加したのはマイナス材料で、条件が少々好転したところで昨年の7着から大きく巻き返せるかと言われるとやや微妙なところではある。陣営としては昨年よりはいい準備ができたとの弁だが、果たしてどこまで進歩があるだろうか*31

 

22. Top Ville Ben (IRE), 10 10st11lb J: Thomas Dowson T: Philip Kirby (Pedigree)

父Beneficialは、Phalaris - Nearcoのラインのうち、NasrullahやTurn-To、Northern Dancerを経ないDanteの系統の出身である。障害種牡馬としてはなかなか頑張っており、RSA Chase (G1)及びDr PJ Moriarty Novice Chase (G1)を勝利したCooldine、FairyhouseのGold Cup Chase (G1)やFrank Ward Solicitors Arkle Novice Chase (G1)を勝利したRealt Dubh、2014年のWorld Hurdle (G1)の勝ち馬More of Thatなど活躍馬を輩出している。代表産駒としては主に牝馬限定戦で活躍し、Yorkshire Rose Mares' Hurdle (G2)など計15勝を上げたLady Buttonsもいるが、残念ながら生殖能力がないことが判明している。Beneficialは2013年に既に亡くなっているが、昨年のTopham Chase (G3)でもLivelovelaughが鮮やかな逃げ切り勝ちを収めており、その産駒がイギリス・アイルランド障害競馬からいなくなるのは寂しいものがある。

Top Ville Benの目立った実績としては2019年のMildmay Novices' Chase (G1)における3着のほか、2019年のRowland Meyrick Handicap Chase (G3)勝ちが挙げられる。その後はやや長い休養を経たりもしているのだが、昨年の10月に復帰すると、今シーズンはRowland Meyrick Handicap Chase (G3)にてトップハンデを背負って3着に入ったりと、なかなかに元気なようだ。ここ2走はLingfieldの"Winter Million Festival"のCazoo Hurdleを勝利し、Rendlesham Hurdle (G2)で2着に頑張ってここに挑んできた。おそらくやや渋った馬場の方がいいタイプで、G2クラス以上で通用する瞬間的な加速力という意味ではやや微妙だが、ハンデ戦におけるスピードの持続性能という意味ではいいものを持っていそうだ。調子の良さという意味でも興味深い一頭だろう。ただし昨年のBecher Chase (G3)では落馬に終わっており、National Fenceへの対応力という点では上積みが欲しい。

 

23. Enjoy D'Allen (FR) (AQPS), 8 10st11lb J: Conor Orr T: Ciaran Murphy (Pedigree)

上記Networkの産駒。この馬に関して最大の話題は、昨年の勝ち馬Minella TimesのオーナーでJP McManusがつい最近この馬を購入したことである*32。元々HurdleではMaidenも勝てなかった馬で、Chaseに転向後もなかなか勝利を挙げられず、2021年の1月にようやく勝利を挙げている。しかし勝てないながらも確実に上位争いをしている馬で、2021年のIrish Grand National (Grade A)では10st10lbを背負ってFreewheelin Dylanの3着に入った。今シーズンはHurdle2走に加えてPaddy Power Handicap Chase (Grade B)にて3着に入っている。Hurdleでも勝てないながらも大きくは負けておらず、この堅実な走りはタフなステイヤーとしての資質を感じさせるものである。Irish Grand National (Grade A)の走りを踏まえると距離延長が苦になるタイプでもなく、飛越もなかなかに上手いようで、勢いのある8歳馬ということで期待がかかる。なお、Grand Nationalに挑む陣営にはありがちなことだが、Ciaron Murphy厩舎ではこの馬のためにAintree Fenceらしきものを作っているようで、その様子がtwitterに上がっている*33。Ciaran Murphyは2021年に開業した調教師で*34、双子の兄弟Josephはロンドンオリンピック馬術競技アイルランド代表である*35

 

24. Anibale Fly (FR) (AQPS), 12 10st11lb J: Luke Dempsey T: Tony Martin (Pedigree)

父AssessorはNearctic - Northern Dancer - Nijinsky - Niniskiの系統の出身で、その代表産駒としては2012年から2014年にかけてLong Walk Hurdle (G1)を3連覇し、フランスのGrand Prix D'Automne (G1)の勝ち星もあるReve De Sivolaや、2006年のWorld Hurdle (G1)及び2007年のArkle Challenge Trophy (G1)を勝利したMy Way De Solzenが代表的な産駒として挙げられる。日本ではGran Corsa Siepi Di Roma (G1)を勝利したフランス調教馬のAnge De Beaumont(*アンジュドゥボモン)が2006年のペガサスジャンプステークスに出走しているが、いまいちいいところなく13着に大敗、その後調教中の骨折が原因で中山グランドジャンプには出走せずに帰国している。なお、Ange De Beaumontはサラブレッドだが、Anibale Flyの母で未出走馬のNouba FlyはSelle Francaisであるため、Anibale FlyはAQPSとなる。

Al Boum Photo wins his first Cheltenham Gold Cup for Paul Townend and Willie Mullins (Youtube)

Anibale FlyはこれがGrand National (G3)は4回目の出走となる。2018年は4着、2019年は5着と比較的上位争いをしていたのだが、さすがに年齢的なものもあったのか、2021年は早々に途中棄権に終わっている。2018年のCheltenham Gold Cup (G1)ではNative Riverの3着、2019年のCheltenham Gold Cup (G1)でもAl Boum Photoの2着に入っているように、瞬間的なスピード能力よりも厳しい流れの消耗戦になった際にじわじわと復活してくるタイプの馬であり、本来この舞台への適性は高いものを持っている。しかし最近はもはやほぼ後方をのんびりと付いて回ってくるだけというのがいつものパターンになっており、元々車間距離を要する高い飛越と豊富な持久力を武器としており、スピード能力に優れた馬ではないのだが、12歳という年齢もあってここのところは大きくスピード能力や馬のやる気を落としている印象もある。とはいえそんなことを言っていたら昨年のPunchestownのColm Quinn BMW Group Handicap Chaseでは良馬場で11st10lbを背負っていたにも関わらず、突然僅差の3着に突っ込んできたりもするので、いまいちこの馬のことはよくわからない。過去実績のあるNational Fenceということで馬がなにかを思い出せばいいのだが、どうだろうか。

 

25. Dingo Dollar (IRE), 10 10st11lb J: Ryan Mania T: Sandy Thomson (Pedigree)

父Golden LariatはMr Prospectorの産駒で、イギリスで競走馬生活を送り2勝を上げている。どうやらプライベート種牡馬として活動しているようで、その産駒数は少なく、活躍馬としてもこのDingo Dollarが目立つ程度である。

2018 Ladbrokes Trophy goes to SIZING TENNESSEE who leads home a Colin Tizzard one-two (Youtube)

Dingo Dollarは目立った実績としては2018年のNewburyのLadbrokes Trophy (G3)におけるSizing Tennesseeの3着や2021年のScottish Grand National (G3)の2着が目立つ程度である。基本的には前々で張り続けてしぶとさを発揮するタイプで、おそらく今回も展開のカギを握る一頭とになるだろう。特に2021年のScottish Grand National (G3)では、かなり出入りの激しい展開を前々で頑張っている。おそらく良馬場の方がいいタイプで、特にこの大一番に際して勝負を掛けて強気に出して行った場合はそれなりにペースが上がる可能性には留意しておきたい。唯一のNational Courseへの出走となった2020年のGrand Sefton Chaseでは良いところなく終わっているが、後方から進めるというこの馬の良さは出していないレースであった上に、当時のAlan King厩舎からSandy Thomson厩舎に移籍している。スコットランドのSandy Thomson厩舎は高齢馬の管理においては高い技術を持っており、どうにも不気味な一頭である。今年のスコットランドからの参戦馬としては、このDingo DolloarとMighty Thunderの2頭になりそうだ*36スコットランド調教馬はGrand Nationalにおいてあまり良績はなく、1979年のRubstic*37と2017年のOne For Arthurが勝利したのみである*38。なお、2022年のGrand Nationalにおいてウェールズ調教馬としてはIwilldoit、Secret Reprieve、Potters Cornerの3頭の登録があったが、いずれも除外に終わりそうだ。ウェールズ調教馬として勝利したのは過去に1905年のKirklandのただ一頭のみである*39

 

26. Freewheelin Dylan (IRE), 10 10st10lb J: Ricky Doyle T: Dermot McLoughlin (Pedigree)

父Curtain TimeはSadler's Wellsの産駒。産駒として目立つのはこのFreewheelin Dylanのほか、Dr. PJ. Moriarty Novice Chase (G1)にてBoston Bobに対して僅差の2着など、アイルランド重賞戦線で活躍したTaxas Jack、2021年のEFT Systems Handicap Hurdle (G3)の勝ち馬Hometown Boyが挙げられる。

WOW! 150/1 WINNER of the Irish Grand National as Freewheelin Dylan makes all under Ricky Doyle (Youtube)

Freewheelin Dylanが2021年のIrish Grand National (Grade A)の勝ち馬。そこまでKilbegganのMidlands Nationalの勝ち星こそあれ、近走はさっぱりだったこの馬は当時単勝150倍と全く評価されていなかったのだが、Ricky Doyle騎手の積極策が嵌ったのか、Run Wild Fred以下を抑える見事な逃げ切り勝ちを収めた。今シーズンは夏場に2度ほど出走した以外はCheltenhamのGlenfarclas Cross CountryとHurdle戦を叩いてここに備えてきた。Irish Grand National (Grade A)の後のハンデ戦でも大きく負けていないだけに、上記Irish Grand Nationalの勝利はフロックではなさそうなのだが、Cheltenhamではあまりこの馬らしいレースはしていなかったとはいえ、Aintree Fenceで落馬とどうにもいまいちで、本来良馬場が良い馬であることを差し引いても、ややNational Fenceへの対応という意味では不安が残る結果になってしまった。おそらく確実に前々でペースを握って運びたい馬だけに、どうにも展開面で左右されやすい点も不安材料だろう。また、直近までこのAintreeの翌週に予定されているIrish Grand National連覇を目指すという報道もあるようだ*40

 

27. Class Conti (FR) (AQPS), 10 10st10lb J: San Twiston-Davies T: Willie Mullins (Pedigree)

お馴染みSadler's Wellsの直系であるPoligloteの産駒。イギリスでJLT Melling Chase (G1)、Tingle Creek Chase (G1)を勝利した葦毛のPolitologueが代表産駒として良く知られているが、チェコVelka Pardubickaを制したTzigane Du Berlaisや、2015年、2016年とGrand Steeplechase de Paris (G1)を制したSo Frenchなど、欧州障害競走を中心に多数の活躍馬を送り出している。日本では2012年の凱旋門賞を制し、2012年のジャパンカップにも参戦したSolemiaがこのPoligloteの産駒でお馴染みなのだが、実はそれから約10年ほど前にアンドアイラブハーという馬が輸入され日本でデビューしている。ただし成績的にはあまり良いところはなく、ダートの中距離未勝利戦を勝利したのみで障害競走への出走もなく終わっている。どうやら後継種牡馬もいるようで、Irish Wellsが2018年のGran Corsa Siepi Nazionale (G1)の勝ち馬Vodka Wellsを送り出しているほか、フランス障害競走への出走歴もあるDinkが2020年Desert Orchid Chase (G2)を勝利したスペイン産馬Nube Negraを送り出している。

Class Contiは例によって"Autre Que Pur-Sang"(AQPS)という呼ばれる類の馬で、元々はフランスでデビューした馬である。母Gazelle LuluはSelle Francais / Anglo-Arabianである。Class Contiはフランス時代の2016年のPrix The Fellow (G3)では後にGrand Steeplechase De Paris (G1)を制すCarriacouやGalop Marinといった将来の活躍馬に混じって4着に入っているが、2019年からはアイルランドに移籍している。ただし、アイルランドでは初戦の平場戦を制したのみで、2020年のThyestes Handicap Chase (Grade A)で2着に入ったのが目立つ良績である。昨年もこのGrand National (Grade A)には参戦し、Minella Timesから129馬身離れた15着と完走を果たしているが、今シーズンは3戦してさっぱり良いところがない。Politologueの産駒でありがちなのだが、どちらかというと重い馬場での超長距離戦で浮上するといったタイプで、昨年の敗戦はさすがに馬場が良すぎたという言い訳はできそうなのだが、直前のレースでもそれなりに好走していた昨年と異なり、今シーズンはさっぱり良いところがないのは頂けない。斤量的にも昨年の10st6lbから増えるというのも微妙で、仮に条件的に好転したとしても、いきなりここでどうこうというのは厳しいだろう。

 

28. Noble Yeats (IRE), 7 10st10lb J: Mr Sam Waley-Cohen T: Emmet Mullins (Pedigree)

上記Yeatsの産駒。Noble Yeats自身はHurdleではMaidenを勝ったのみで、今シーズンからChaseに転向しているNovice馬である。ただし、ChaseではBeginners Chaseを勝ったのみで、目立った実績としてはTowton Novices' Chase (G2)においてAhoy Senorの2着に入った程度である。ハンデ戦で良績を残しているかと言われるとそれも微妙で、前走はUltima Handicap Chase (G3)に参戦しているが後方から進めるも特に前には肉薄できず9着に終わっている。距離が伸びてよくなる可能性はあるが、ここまでの実績的には強調材料に乏しく、今シーズンは休みなく使ってここまで計7戦、さらにここまで良績を残していない7歳馬、さすがに厳しそうだ。なお同馬は今年の2月にGrand Nationalを目指すことを目的としてRobert Waley-Cohenにより購入されているようだ*41。Mr Sam Waley-Cohen騎手はアマチュア騎手だが、プロ騎手顔負けの高い技術を持った騎手であり、過去Cheltenham Gold Cup (G1)やKing Goerge VI Chase (G1)等を制した名馬Long Runとのコンビで有名である。さらにPortman Dentalcareの設立を行った起業家としても知られており*42、その活躍は多岐に渡る超人なのだが、残念ながらこのGrand Nationalが現役生活最後の騎乗となるそうで、今年で40歳となった卓越したアマチュア騎手最後の騎乗に期待したい*43

 

29. Mighty Thunder (GB), 9 10st10lb J: Derek Fox T: Miss Lucinda Russell (Pedigree)

父MalinasはAssessorと同じくNiniskiに連なる系統の出身だが、こちらはドイツで活躍したLomitasの産駒である。Lomitas自身は父として2011年の凱旋門賞などを制しジャパンカップにも参戦したDanedreamを出しているが、Danedreamは2021年からは日本で繋養されるなどそれなりに日本にも馴染みのある系統かと思われる。Malinas自身は障害種牡馬としてもそれなりに頑張っており、最近ではMaster McsheeがFaugheen Novice Chase (G1)を勝利している。

MIGHTY THUNDER wins the 2021 Coral Scottish Grand National Handicap Chase for Lucinda Russell (Youtube)

Mighty Thunderは2021年のScottish Grand National (G3)の勝ち馬。昨シーズンはこの馬にとっては飛躍の年で、Edinburgh National (C2)にて20馬身差の圧勝、Midlands Grand National (Listed)では2着、さらにScottish Grand National (G3)と、超長距離戦で大きな存在感を放った。しかしながら今シーズンはいまいちで、Welsh Grand National (G3)は途中で大きなミスをして途中棄権、連覇を狙ったEdinburgh National (C2)も途中棄権とどうにも良いところがない。いずれも飛越でミスをしてそのまま後退という負け方を続けているだけに、いきなりのこのNational Fenceというのは不安材料の方が大きそうだ。なお、日本にも2004年から2007年に掛けて下級条件戦を戦い、名古屋で1勝を挙げたマイティーサンダーという馬が存在する*44

 

30. Cloth Cap (IRE), 10 10st10lb J: Tom Scudamore T: Jonjo O'Neill (Pedigree)

One of the best rounds of jumping ever? Cloth Cap is ALL CLASS in the Ladbrokes Trophy - Racing TV (Youtube)

上記Beneficialの産駒。Ladbrokes Trophy (G3)、Premier Chase (Listed)と連勝して挑んだ昨年は1番人気に推されていたが、第26障害でミス、そこから脱落して途中棄権に終わっている。今シーズンも昨年と同様のローテーションで挑んできたのだが、斤量が全体的に増加したこともあってか全体的に勝負に加われずに終わっている。元々2019年のScottish Grand National (G3)でも3着のある馬で、距離に対する適性自体ははそれなりにありそうなのだが、昨年の勢いがあるかと言われると微妙なところだろう。昨年の10st5lbから5lbしかハンデが増加しなかったこと、一度National Fenceを経験したことによる上積みはありそうだが、どうにも10歳という年齢を考えると、今シーズンの勢いのなさは気になるところである。

 

31. Snow Leopardess (GB), 10 10st9lb J: Aidan Coleman T: Charlie Longsdon (Pedigree)

Lyphard - Bellypha - Mendez - Linamixと連なる父系出身の種牡馬Martalineは成功した障害種牡馬で、フランスを中心にヨーロッパ障害競馬において大きな存在感を放っており、2020のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)の勝ち馬Paul's Saga、2014年のRyanair Chase (G1)の勝ち馬Dynaste、2015年のGrande Steeplechase D'Europa (G1)の勝ち馬Kamelie等、その活躍馬は枚挙に暇がない。障害種牡馬としては珍しく後継種牡馬にも恵まれており、2018年のPrix Cambaceres (G1)の勝ち馬Beaumex De Houelle、2019年の同レースの勝ち馬Nirvana Du Berlais等、複数の活躍馬が種牡馬入りしているようだ。Lyphard - Bellypha - Mendez - Linamiの系統は平地競争という意味ではやや下火になりつつある系統だが、2018-2019とPrix La Haye Jousselin (G1)を連覇したBipolaireを輩出したFragrant Mix、2015年から2018年にかけてING Grand Steeplechase Des Flandresを4連覇したTaupin Rochelaisを輩出したAl Namix、2013年のArkle Challenge Trophy (G1)の勝ち馬でその破天荒なレース振りで人気を集めたSimonsigの父Fair Mix、さらに2013年~2014年のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)の勝ち馬で、種牡馬としても2020年のPrix Maurice Gillios (G1)を制覇したLe Berryを輩出したGemixなど、ヨーロッパ障害競馬において多数の活躍馬及び成功した種牡馬を輩出している。残念ながらGemixは2022年に早逝してしまったが、この辺りから平地競馬とは一線を画す障害系統が現れることを期待したい。

SNOW LEOPARDESS records fairytale 2021 Becher Chase success at Aintree (Youtube)

Snow Leopardess seeks fairytale Grand National success (Racing TV)

Snow Leopardessは葦毛の牝馬ということでなにかと人気になりやすいキャラクターなのだが、それ以上にドラマチックなストーリーを持った馬である。元々2017年のMares National Hunt Novices' Hurdle Finale (G2)を勝利し、その勢いでフランスAuteuilのHurdle戦でも勝利を挙げているのだが、その後故障を発症し休養、なんとその間にSir Percyの産駒を出産しているしているそうだ*45。その後はなんと2019年の11月からレースに復帰、しかも2020年の秋からはChaseに挑戦し、Rowland Meyrick Handicap Chase (G3)の2着、National Hunt Challenge Cup (G2)の4着など健闘。さらにNovice卒業となった今シーズンは、2021年12月にNational Fenceを用いるBecher Chase (G3)を勝利している。今シーズンはここまで3戦3勝と勢いに乗っており、一度出産を経て今年10歳となる牝馬とは思えないほどのパフォーマンスを示していることは特筆すべき内容だろう。牝馬というだけでもGrand National (G3)における良績は乏しく、しかも出産を経た牝馬というのは少なくともCharlie Longsdon調教師はそのような例は知らないということで*46、この馬の挑戦が競馬史史上どれだけ稀少なものであるかはもはや言うまでもない。今シーズンにおける調子の良さ、National Fenceへの適性、さらに超長距離への適性という意味でも最有力の一頭で、この馬が10st8lbのハンデで出走圏内に潜り込むことが出来たというのは非常に楽しみなことである。ただし、どちらかというとMartalineの産駒らしく渋った馬場でスピードの持続性能を生かした方がいいタイプで、レース運びと馬場状態には若干の注文がつくかもしれない。

 

32. Agusta Gold (IRE), 9 10st9lb J: Danny Mullins T: Willie Mullins (Pedigree)

上記Gold Well産駒の牝馬。例によってなにかと牝馬限定戦を主に使っていた馬なのだが、元々アイルランドMs Margaret Mullins厩舎に所属していた際は驚異的な安定感を誇っており、20戦して全て4着以内に入っている。その中には牡馬・セン馬相手のGrand National Trial (Grade B)の2着や、Navan Handicap Hurdle (Grade B)勝ちも含まれており、その能力の高さを示していた。ただし、2021年にWillie Mullins厩舎に移籍してからはいまいちで、 ようやく前走のDown RoyalにてRoi Mageの2着に入って格好をつけた。Willie Mullins厩舎の移籍後はIrish Grand National (Grade A)やThyestes Handicap Chase (Grade A)といった前厩舎に所属していた際には出走歴にないような大舞台にも挑戦したこともその理由として挙げられそうだが、その中には牝馬限定戦も含まれており、さすがにここまで絶対的な安定感を誇っていた馬が急にここまでぱたっと走らなくなったことは気がかりな内容である。前走ようやく復調の兆しを見せたと思いたいところだが、そのレース内容としてはどちらかというと試走といったニュアンスが強い印象で、ここから完全復活とまでは判断できないだろう。

 

33. Phoenix Way (IRE), 9 10st9lb J: Kevin Brogan T: Harry Fry (Pedigree) →Scratched

上記Stowawayの産駒。Novice時代はManifesto Novices' Chase (G1)でProtektoratの4着がある程度の馬だが、今シーズンはAscotのHowden Silver Cup (Listed)で2着、続くAscotのClassで10st4lbを背負ってFanion D'Estruvalを下して勝利している。ただし、期待されたCoral Trophy (G3)では第3障害で早々に落馬に終わっている。9歳と比較的上がり目のある馬で、ここまで21ハロン~24ハロンで結果を残しているように比較的スピード能力もありそうなのだが、今シーズンは4戦してうち2戦で飛越のミスにより結果を出せていないというのはいまいち頂けない。おそらく馬群の後方から進めるタイプで、なにかとこのようなタイプは馬群の中での動き方が課題になるのだが、2着に突っ込んできたAscotのListedも13頭立てとさほど頭数が多いわけでもないことを考えると、色々と乗り越えるべきハードルは高そうだ。

 

Reserve 1 → 33. Commodore (FR) (AQPS), 10 10st5lb J: Charlie Deutsch T: Miss Venetia Williams (Pedigree)

父Fragrant MixはLyphard - Bellypha - Mendez - Linamixと連なる父系出身の種牡馬で、2018年、2019年とPrix La Haye Jousselin (G1)を連覇したBipolaireがその代表産駒として知られている。他にも2015年JLT Novices' Chase (G1)の勝ち馬Uxizandre、Grand Steeplechase De Lyonの勝ち馬Boccage等を送り出しているほか、2007年にAuteuilのHurdle競走であるPrix Gaston Branere (Listed)を勝利したPrince Des Boisが後継種牡馬として存在しているようだ。ただし、Prince Des Boisの産駒は数が少なく、ここまで10戦してAuteuilのClaimingで2着が最高のGhosty Rosetgriが唯一良績を残している産駒で、特段目立った活躍馬は送り出していないようだ。

Commodore in charge with dazzling display to land Grade Three Betfair Handicap Chase at Cheltenham (Youtube)

Commodoreは母MorvandelleがSelle Francais / Anglo-ArabianであるAQPS。ここまでの目立った実績としては昨年のBetfair Handicap Chase (G3)の勝利がある。Charlie Deutsch騎手の十八番である正確かつ精密なラップをCheltenhamのトリッキーな形態を最大限に利用して刻んだ逃走劇は圧巻の一言で、ここまでClass3程度でしか勝ち星のなかったこの馬の新たな一面を引き出すものであった。どうやら昨年のBetfair Handicap Chase (G3)の前に行ったWind Surgeryも奏功したようで、昨年2月までのこの馬とは明らかに別の馬と考えた方がいいだろう。今シーズンはこれで2走目とフレッシュな点や、今シーズン絶好調のVenetia Williams調教師とCharlie Deutsch騎手のコンビという点も魅力なのだが、とはいえCharlie Deutsch騎手のように自在にペースを操ることが出来る騎手にとって得意とするCheltenhamから平坦なAintreeに代わる点、前々で運ぶことが想定されるため自身のペースで走ることができないリスクなど、それなりに乗り越えなければならないハードルは多い。

 

34. Deise Aba (IRE), 9 10st8lb J: Tom O'Brien T: Phillip Hobbs (Pedigree)

Sadler's Wells、Galileoに連なる父系出身のMahlerの産駒。Mahlerは競走馬としてはAscotのQueen's Vase (G3)の勝利がある他、2007年のMelbourne Cup (G1)にてEfficientの3着に入っている。その後は障害種牡馬として繋養されており、イギリス・アイルランドを中心に活躍馬を送り出している。2019年のMaghull Novices' Chase (G1)を勝利したOrnuaがビッグタイトルを持つ産駒であるが、他にもNational Hunt Challenge Cup (G2)にてRathvindenの2着のある牝馬Ms Parfois、Albert Bartlett Novices' Hurdle (G1)の2着のあるOk Corral、面白いところでは2018年のSvenskt Grand Nationalを勝利したTruckers Gloryなどが挙げられる。2021年に亡くなったGalileoは現代障害競馬における最大の根幹種牡馬であるSadler's Wellsの後継種牡馬の筆頭格であり、Sadler's WellsからGalileoを経る系統は大きな発展を遂げているが、そこから障害競馬に適性のある種牡馬を送り出すことが出来るかは今後の障害競走におけるトレンドを議論する上で非常に重要な論点である。

Deise Abaは重賞クラスでの実績はないのだが、Class2辺りではコンスタントに走っている馬で、今シーズンはWelsh Grand National (G3)では大敗したものの、London National (C2)ではHighland Hunterの2着、SandownのClass2でもLe Milosの2着とコンスタントに頑張っている。Class2では既に上位のハンデキャップを背負わされるようで、Sandownでは11st9lbを背負っているようだ。ただし、この馬の場合はどうやら好位から進めることが好走における条件のようで、概ねハナから好位で進めた場合は目前で頑張っているようだが、後方に置かれたWelsh Grand National (G3)では早々に遅れ途中棄権に終わっている。また、この馬でやはり心配なのが大舞台での実績のなさで、Class2とはいえCheltenham Festivalゆえに全体的にやる気が出るFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupでも後方から進めて途中棄権に終わっているように、どうにも全体的にやる気の高いレースにおいては出足を挫かれることが多そうだ。今回もさすがに前に行きたい馬が複数存在することを考えると、早々に位置取りを悪くする可能性が高く、スムーズに進めた時のしぶとさはそれなりにいいものがありそうなのだが、どうにも不安材料の方が大きいというのが現状だろう。

 

35. Blaklion (GB), 13 10st8lb J: Harry Skelton T: Dan Skelton (Pedigree)

父Kayf Taraはイギリス・アイルランドにおいて大成功した障害種牡馬で、2016年King George VI Chase (G1)等を制したThistlecrackをはじめ、2017年Queen Mother Champion Chase (G1)の勝ち馬Special Tiara、2021年Liverpool Hurdle (G1)の勝ち馬Thyme Hillといった数々の活躍馬を多数送り出し、11回ものイギリス障害競馬リーディング種牡馬に輝いている偉大な種牡馬である。Kayf Tara自身は*オペラハウスの全弟としても有名だが、日本では2頭の産駒が出走したのみで、あまり日本競馬への馴染みはない。その中ではニシノマニッシュという馬が京都の3歳未勝利戦を勝利しているようだが、日本で出走した2頭の産駒の障害競馬への出走はない。

Admirable 12-year-old BLAKLION rolls back the years in the Veterans’ Chase at Haydock - Racing TV (Youtube)

BlaklionはこれがGrand Nationalへの挑戦としては実に4回目となる。もともとNovice Hurdle路線ではChallow Novices' Hurdle (G1)の3着など活躍した馬で、その後のNovice ChaseではRSA Chase (G1)の勝ち鞍もある。Noviceを卒業後は24ハロンのG1戦線に進むのではなく、むしろGrand Nationalを目指してレースを使われ、2017年のGrand National (G3)はOne For Arthurの4着、2017年のBecher Chase (G3)は同じくNational SpecialistのThe Last Samuriに9馬身差をつける圧勝と、順調に"National Specialist"としての地位を築いていた。2018年の春にWind Surgeryを行い、それまでの活躍が高く評価された結果としての11st10lbの斤量を背負い、満を持して挑んだ2018年のGrand Nationalだが、第1障害で他馬の煽りを食ってまさかの落馬という悲しい結果に終わっている。その後は転厩や長期の休養もあり、ようやく復帰した2020年の秋以降は全て大敗に終わっていたのだが、12歳となった2021年のGrand National (G3)では出走順40番目とぎりぎりで滑り込んだにも関わらず、勝ち馬から37馬身差の6着と、かつての"National Specialist"としての意地を感じさせる走りを見せた。驚くべきなのが12歳~13歳となった今シーズンの走りで、空前絶後の不良馬場となったGrand National Trial (G3)は途中棄権に終わったものの、4戦して2勝となかなかに好調である。全盛期はNational Fenceをものともしない飛越技術、高いスピード能力と持久力に裏打ちされた強靭なステイヤーであり、さすがに全盛期のスピード能力こそなさそうだが、それでも距離適性とNational Fenceへの適性という意味ではいいものを持っている馬である。さすがに好走には相当な条件が揃うことが必要そうだが、13歳馬の飽くなき挑戦を楽しみにしたい。なお、13歳馬の勝利となると、1923年のSergeant Murphy以来となる歴史的な勝利となる。

 

36. Poker Party (FR), 10 10st8lb J: Robbie Power T: Henry de Bromhead (Pedigree)

上記Gentlewave産駒。長くハンデ戦を使ってきた馬で、2019年にはListowellのKerry National (Grade A)をRachael Blackmore騎手とのコンビで勝利している。ただし、2020年のTRI Equestrian Handicap Chase (Grade B)を最後に長い休養に入り、今シーズンはその666日の休養から復帰してここまで3戦を消化しているが、いずれも特に良いところはなく大敗に終わっている。666日ぶりとなったPaddy Power Chase (Grade B)、続く11st8lbを背負ったHurdle戦、さらに初のCross Countryでメンバーが非常に強力であったGlenfarclas Cross Countryと、いちおういずれも言い訳はできるにはできるのだが、とはいえ長期休養明けから3走いずれも大敗と、いきなりここから大化けするというのは少々考えにくいというのが現状である。

 

37. Death Duty (IRE), 11 10st7lb J: Jordan Gainford T: Gordon Elliott (Pedigree)

Grand National hope Death Duty wins for the first time in more than FOUR YEARS! (Youtube)

上記Shantouの産駒。Death Duty自身はもともとNovice戦線では高い素質を示していた馬で、2017年のLawlor's Hotel Novice Hurdle (G1)、Drinmore Novice Chase (G1)とG1競走2勝の実績がある。しかしながら2017年のRacing Post Novice Chase (G1)を最後に故障により長期の休養を強いられ、そこから758日間の休養に入っていた。復帰後はなかなかかつての走りを取り戻すことはできず苦労していたのだが、2022年2月のPunchestownのGrand National Trial (Grade B)にてようやく待望の勝利を挙げた。故障さえなければ本来アイルランドのG1戦線で活躍していてもおかしくない程の馬であり、11歳となったこの馬の復活勝利が陣営にとってどれほど嬉しいものであったかは想像に難くない。元々不良馬場~重馬場においてスピードよりもパワーを生かして突き進むタイプの馬で、さすがに故障に加齢もあってか全盛期の能力はないようだが、それでもGrand National Trial (Grade B)において28ハロン戦に対応しつつ、ようやく現在のこの馬なりに調子を上げてきたことはこの馬にとっては大きな収穫だろう。馬場状態にはそれなりに注文がつくことは想定されるが、この馬の辿ってきた現役生活を考えると、なんとか頑張って欲しい一頭である。

 

38. Domaine De L'Isle (FR) (AQPS), 9 10st7lb J: Harry Bannister T: Sean Curran (Pedigree)

上記Networkの産駒。2019年2月まではフランスにいた馬で、同5月からイギリスに移籍、その後はほぼHandicap Chaseばかりを使われている。移籍直後はClass4からClass2まで3連勝と波に乗っていたのだが、2020年秋から2021年1月はノドの影響もあってかやや苦労したようで、2021年の春にWind Surgeryを行ってからはまたもや2連勝と頑張っているようだ。基本的には20ハロン以上の距離で実績を残してきた馬のようだが、馬場は不問で走れること、昨年12月のBecher Chase (G3)で4着に入り、National Fenceを一度経験していることは大きな味方だろう。ただし、直前のEinder Chaseでは前々で進むも途中から脱落して大敗に終わっており、どうにも信用できない部分が残っている。おそらくここまでの実績的にはあまり前半から無理をせずに進める方がよさそうなのだが、一度ノドの手術を行っている馬ということを考えると、少々疑ってかかってよさそうな印象がある。

 

39. Eclair Surf (FR), 8 10st6lb J: Tom Bellamy T: Miss Emma Lavelle (Pedigree)

父CalifetはNureyev - *ソヴィエトスター - Freedom Cryの系統出身の種牡馬で、その活躍馬としてはその快速を武器に2015年のPrix Renaud Du Vivier (G1)等を勝利したBlue Dragonをはじめ、PauのCross Country SpecialistのSaying Again、2018年のGalway Plate (Grade A)の勝ち馬Clarcamなどが挙げられる。*ソヴィエトスターは日本でも繋養されていた種牡馬であるが、その来日前、イギリスで繋養されていた頃の産駒であるTiutchevはArkle Challenge Trophy (G1)、Swordlestown Cup Novice Chase (G1)を勝利し、2003年の中山グランドジャンプにも参戦している*47

ECLAIR SURF dominates £100,000 Classic Chase at Warwick (Youtube)

Eclair Surfは4月7日(木)における出走馬40頭及びReserve4頭の発表時点でようやく出走圏内に潜り込んできた馬だが、この馬の当落はGrand National (G3)の予想をするうえで非常に重要な論点となっていた。2020-2021シーズンにNoviceクラスを卒業した馬だが、今年に入ってWarwickのClassic Chase (G3)は13馬身差の圧勝、さらにNewcastleのEider Chaseでは11st11lbのトップハンデを背負ってのちにScottish Grand National (G3)を圧勝するWin My Wingsの僅差の2着に入っている。この時のWin My Wingsの斤量は11st0lbであったことを踏まえると、このEider Chaseは実質的にはほぼ勝ちに等しい内容だろう。ここまで比較的積極的に前に行くことで結果を残してきた馬で、特にこの戦術が奏功したのが好走したここ2走であることを踏まえると、今回もおそらく積極策を取ることが想定される。ここまでの実績を踏まえると距離が問題となることはなく、10st6lbという最軽量でぎりぎり出走圏内に滑り込んだことは間違いなくこの馬にとって大きなチャンスだろう。ここ数戦の主戦騎手Tom Bellamyを確保したことも当然プラスである。懸念材料は飛越面で、Classic Chase (G3)及びEider Chaseにおいてややミスが散見されたことを踏まえると、初のNational Fenceというのは心配な材料である。

 

40. Fortescue (GB), 8 10st6lb J: Hugh Nugent T: Henry Daly (Pedigree)

Shiroccoは上記Monsunの産駒で、近年障害競馬において大きな存在感を放つMonsunの後継種牡馬の一頭である。その代表産駒はなんといっても2016年のChampion Hurdle (G1)勝ち等、当時のイギリス・アイルランドのHurdle路線で絶対的な強さを誇っ名牝Annie Powerだろう。それ以外にも、2014年Mersey Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Lac Fontana、2013年のGran Criterium D'Autunno (G1)の勝ち馬Prince Del Mareなどが挙げられる。日本でもその産駒は僅かに走っていたようで、トレードウィンドという馬が2013年に福島の3歳未勝利戦を勝利している。

Royale Pagaille pulls out all the stops to retain his Peter Marsh crown - Racing TV (Youtube)

Fortescueは今シーズンの上がり馬で、ここまでNovice時代も含めてあまり良いところはなかったのだが、昨シーズンの終わりにClass3の24ハロン戦を連勝。今シーズンは1月のPeter Marsh Chase (G2)にてRoyale Pagailleの3着に入ると、Swinley Chase (Listed)ではFiddlerontheroofを下して勝利した。Peter Marsh Chase (G2)は9st13lbという裸同然の斤量であったとはいえ、Royale Pagaille相手に3馬身差の3着というのは立派な内容で、Swinley Chase (Listed)でもAscot競馬場でしばしば見られるような壮絶なバテ合いにおいて、最後力強く抜け出してきたパフォーマンスは強靭なステイヤー資質を感じさせるものである。24ハロン超の競争への出走歴こそないが、ここにきての上昇度という意味ではメンバー随一のものを誇る馬。元々出走が確実で、前評判としても高いものがあったScottish Grand National (G3)をスキップしてまでこの出走に賭けてきた陣営の意気込みはやはり買わなくてはならない*48。つい最近までConditonal JockeyであったHugh Nugent騎手にとっては祖父Tim Nixonが生産し所有している馬と共に挑むGrand Nationalということで*49*50、ここに賭けてくる意気込みは並大抵のものではないだろう。

 

 

以下、Scratch済*51

Battleoverdoyen (IRE), 9 11st6lb J: ● T: Gordon Elliott (Pedigree)

Sadler's Wells産駒のDoyenは障害種牡馬として成功した一頭で、その代表産駒として挙げられるのは2021年のWexfordでMaiden Hurdleを勝利し、アメリカの伝説的な調教師であるJonathan Sheppard調教師の後を継いだKeri Brion調教師に初のアイルランド障害競走における勝利をプレゼントしたThe Mean Queenが挙げられるだろう。そのThe Mean Queenアメリカに戻ると、2021年のJonathan Sheppard Handicap (G1)、Lonesome Glory Handicap (G1)、さらにGrand National Hurdle Stakes (G1)とアメリカHurdle戦線を席巻する3連勝を挙げたことでその年のEclipse Winnerに輝き*52アメリカ競馬の歴史に残る名牝となった。海外障害競馬における近年の牝馬の活躍というとやはりHoneysuckleが有名だが、フランスのL'Autonomie、アメリカのThe Mean Queenの活躍ももう少し知られても良いのではないだろうか。

2019 Neville Hotels Novice Chase - Racing TV (Youtube)

Battleoverdoyenは元々Lawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)の勝ち馬で、Chaseに転向直後は一気の3連勝でNeville Hotels Novice Chase (G1)を勝利した素質馬である。しかしその後はどうにもいまいちで、重賞勝ちとしては2020年のLough Construction Ltd. Chase (G2)を勝ったのみに留まっている。今シーズンも2戦を消化するも、直前のHorse & Jockey Hotel Chase (G2)では勝ったAllahoから遅れ、しかも最終障害では派手に落馬するなど、どうにもいまいちな成績に終わっている。持っている能力自体は良いものがありそうなのだが、どうにもスピード能力の面では一線級相手だと苦しく、しかも苦しくなるとあまり踏ん張りが効かないという印象で、いきなりの距離延長に加えてNational Fenceというのは少々厳しそうだ。

Elliott to run eight in Grand National with Death Duty replacing Battleoverdoyen (Racing Post)

管理するGordon Elliott調教師によると、同馬はTopham Chaseに向かう予定。

 

Farclas (FR), 8 11st1lb J: ● T: Gordon Elliott (Pedigree)

祖父にMontjeuを持つJukebox Juryの産駒。Irish St Leger (G1)やPreis von Europa (G1)の勝ち鞍のある同馬は、2010年のブエナビスタが参戦し2着に入ったDubai Sheema Classic (G1)にも参戦しているので、名前を見たことがあるという往年の競馬ファンは多いかもしれない。代表産駒としてはこのFarclasのほか、2020年のWielka Partynickaの勝ち馬Spasski、2020年のGran Corsa Siepi Di Merano (G1)の勝ち馬Stukeが挙げられる。どちらかというとチェコやイタリアでこの産駒を見かけることは多い。

2018 JCB Triumph Hurdle - Farclas - Racing TV (Youtube)

Farclasは2018年のJCB Triumph Hurdle (G1)の勝ち馬で、昨年のGrand National (G3)の5着馬である。過去あまり好走歴のない7歳の若齢ながら挑んだ昨年は全体的に細かいミスが散見されたが、それでも初のNational Fenceにも関わらず見せ場を作ったことは立派な内容である。今シーズンは9月と11月に2回ほどレースを使い、Troytown Handicap Chase (Grade B)ではRun Wild Fredの2着に入っている。一度このNational Fenceを経験したことで上積みが見込めること、さらに今シーズンは十分に余裕のあるローテーションを組んできたことで馬がフレッシュな状態であることは大いに魅力である。過去のJCB Triumph Hurdle (G1)の勝ち馬のGrand National (G3)制覇というと、やはりあのTiger Rollが思い出される。ただし、斤量的には10st3lbから11st0lbと大きく増加することになる。

 

Caribean Boy (FR), 8 10st12lb J: ● T: Nicky Henderson (Pedigree)

父MyboycharlieはDanehill - Danetimeのライン出身の種牡馬で、イギリス・フランス・オーストラリアで種牡馬生活を送ったのち、2020年からはトルコにいるようだ。約10世代程が欧州で誕生しているがその産駒に目立った活躍馬は少なく、このCaribean Boyのほか、2021年のAustralian Hurdleを制した葦毛のSaunter Boyが挙げられる程度である。このDanhillのラインはさすがに巨大なだけあって成功した障害種牡馬も多く、その例としてはDanehill Dance産駒のJeremyがAppriciate ItやSir Gerhard等を輩出して気を吐いている他、ここ数年のニュージーランドHurdleにて圧倒的な強さを誇るThe Cossackを送り出したMastercraftsman、Ferny HollowやCole Hardenを送り出したWesterner、Ahoy SenorやSwansea Mileを送り出したDylan Thomasなどが挙げられる。近年ではEstejo産駒のポーランド生産馬で、元々はポーランドでデビューするもフランスGuillaume Macaire調教師のお眼鏡に叶いフランス障害競馬で活躍したTunisがフランスで障害種牡馬として繋養されており、どうやらフランスではなかなかの人気のようで、その産駒の活躍に期待がかかる*53

Caribean Boyは元々フランス調教馬で、フランスではListedクラスで好走した実績もある。2020年からイギリスに移籍し、NewburyのThe Berkshire Novices' Chase (G2)を勝利しているが、早々にNovice戦線からハンディキャップ路線へと路線変更しているようだ。ただし、ここまでハンデキャップ戦線では今年1月のClass2を勝ったのみで、Listed以上では結果を残せていない。24ハロン超への距離への対応力も未知数で、昨年のTopham Chase (G3)では次第に脱落して途中棄権に終わっていることを考えると、いきなりここでどうこうというのはあまり考えにくいというのが現状である。Nicky Henderson調教師は言うまでもなくイギリスを代表する有力な調教師の一人だが、Grand Nationalにおいてはあまり良績はなく、1987年にThe Tsarevichが2着に入ったのが最高である*54。とりあえず調教師からはポジティブな記事が出ているようだが、どうだろうか*55

 

Court Maid (IRE), 9 10st12lb J: ● T: Henry de Bromhead (Pedigree

父Court Caveは未出走のSadler's Wells産駒だが、Beat Hollowの全弟、母はIrish Oaks (G1)の勝ち馬という超良血で、早々にアイルランド種牡馬入りしたようだ。障害種牡馬としてはそれなりに優秀で、2019年のBallymore Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬City Islandや、2017年のNeptune Investment Management Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Willoughby Courtなどを送り出している。

Court Maidは牝馬で、上記の通り牝馬としては歴史的なGrand National勝利が期待される。ここまでの主な実績としては、2020年にはNovice馬ながらThomas Mullins調教師とDavid Mullinsの親子コンビでPorterstown Handicap Chase (Grade B)を13馬身差で圧勝する勝利を挙げている*56。主に牝馬限定Chase路線を使った今シーズンはどうにもぱっとせず、Opera Hat Mares Chase (Listed)もElimayから5馬身差の2着に終わっているものの、おそらくある程度渋った馬場で走った方が良さを発揮するハンデ戦向きの馬と考えると、今シーズンの敗戦はいずれも言い訳はできそうであり、上記Porterstown Handicap Chase (Grade B)の29ハロン戦にも対応したことを考えると、距離適性という意味では無視していい馬ではないだろう。上記Elimayもメンバーが乏しいとはいえ現時点の牝馬Chase路線では筆頭格の一頭であり、適性外の16ハロン戦で頑張ったというのは強調材料とも考えられる。ただし、これがHenry de Bromhead厩舎への転厩初戦ということで、昨年においてGordon Elliott厩舎の騒動の影響である程度の実力馬が同厩舎から引き揚げられたものの、その一部は元々期待された走りを見せていない場合があることを踏まえると、少々未知数の部分が多いというのが正直なところである。

Domaine De L'Isle set for National run after De Bromhead rules out Court Maid (Racing Post)

同馬はスクラッチ予定。

 

Reserve 4. Roi Mage (FR), 10 10st3lb J: James Reveley T: Patrick Griffin (Pedigree)

GRAND STEEPLE CHASE DE PARIS 2019 | Carriacou, le triomphe ! | Auteuil | Groupe 1 (Youtube)

上記Poligloteの産駒。この中ではやや異色の経歴を持つ馬で、イギリスでの出走歴はなく、アイルランドでも2走したのみである。この馬自身は昨年11月までフランスで走っていた馬で、2018年及び2020年のCompiegne競馬場のPrix De La Gascogne (G3)勝ちがあるほか、2016年のPrix Ferdinand Dufaure (G1)ではPunch Nantaisの2着に、2019年のGrand Steeplechase De Paris (G1)ではCarriacouの3着に入っている。最近ではスピードが生きるAuteuilのSteeplechaseの重賞戦線ではなくCompiegneのSteeplechaseの重賞戦線を主戦場としていたようだが、現在でもフランスSteeplechaseの重賞戦線で好勝負できるだけの能力を持った馬である。前走はDown RoyalのBlugrass Stamm 30 ChaseでAgusta Goldを下してここに臨んできた。あまりフランスSteeplechaseで経歴の長い馬が近年のイギリス・アイルランド障害競馬でうまくいった例は少ないのだが、どうやらこの馬自身Grand National (G3)への出走を目的として購入されたようで*57、さすがにReserve4と出走自体は絶望的で、鞍上も同日のAuteuilで騎乗予定のあるJames Reveleyとさっぱりやる気はなさそうなのだが、前走のパフォーマンスを見る限りアイルランド型の障害に苦労しているということもなさそうで、引き続きこの馬の動向には注意しておいた方がいいだろう。

*1:22/03/16 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

*2:Gentlewave

*3:22/01/23 障害競馬入門⑫ - Trophée National du Cross -

*4:Easysland on course to make Sandown debut for Jonjo O’Neill

*5:Nationals the target for School Boy Hours

*6:The Storyteller (Crazy Ending) - 2018 Punchestown G1 3m Novice Chase (Build Up, Race & Reaction)

*7:Lostintranslation seeks to make sense in Grand National

*8:Breeding industry mourns loss of star jumps sire Presenting

*9:Mullins has five-strong team going for Irish National honours

*10:PRIX FERDINAND DUFAURE 2019 | Goliath du Berlais | Auteuil | Groupe 1

*11:Mullins namechecks Burrow Saint as best shot for Grand National

*12:'I've been thinking about the Grand National for her' - Aintree on Ida's agenda

*13:Still paying his way

*14:Grand National News: "Class horse" Fiddlerontheroof top chance for Team Tizzard at Aintree

*15:Colin Tizzard

*16:'His last two runs have been good, he is an economic jumper': Fiddlerontheroof is the real deal for the Grand National, says Brendan Powell, after bypassing Cheltenham handed son Brendan Jnr Aintree shot

*17:Randox Grand National: Bailey eyeing Aintree for Two For Gold

*18:Polly Gundry Training

*19:POLLY GUNDRY DESCRIBES TRAINING SANTINI AS LIKE “AN OUT OF BODY EXPERIENCE” AS HE BIDS TO ENHANCE GOLD CUP CREDENTIALS AT CHELTENHAM THIS MONTH

*20:Grand National stable tours: Gordon Elliott and Willie Mullins

*21:'It would be a Samcro thing to do, wouldn't it? Run a massive race at Aintree'

*22:Max McNeill looking to Escaria Ten to scoop ‘race like no other’ at Aintree

*23:Daryl Jacob to ride Good Boy Bobby in Randox Grand National 2022

*24:Twist of fate and tale of survival behind potential Grand National contender Lord Du Mesnil

*25:Aintree regular Romain De Senam joins David Pipe’s yard

*26:De Rasher Counter on target for crack at the 2022 Grand National

*27:22/03/17 National Hunt Racing - Cheltenham Festival - 

*28:James Bowen targeting Randox Grand National glory on Kildisart

*29:22/02/26 中山グランドジャンプ 予備登録馬

*30:L’Anglo-Arabe : tout savoir sur cette race de cheval

*31:Nolan delighted with Discorama's National prep

*32:Grand National 2022: How Enjoy D'Allen's trainer sold the key runner to owner JP McManus

*33:@Ciaran Murphy Charlestown Racing

*34:Ciaran Murphy

*35:Enjoy D’allen gearing up for Randox Grand National at Aintree

*36:Grand National: Two Scottish entries confirmed for big race at Aintree

*37:Rubstic

*38:One For Arthur

*39:Kirkland

*40:Irish Grand National: Freewheelin Dylan seeking repeat win

*41:'He has the right profile' - Robert Waley-Cohen buys National hope Noble Yeats

*42:Sam Waley-Cohen

*43:'It's the right moment' - Gold Cup winner Waley-Cohen to retire after National

*44:マイティーサンダー

*45:Mum's the word as brave Snow Leopardess clings on over the National fences

*46:Snow Leopardess bids to win Grand National after having a foal

*47:21/12/18 第5回(2003)中山グランドジャンプ 海外からの参戦馬

*48:Henry Daly's Grand National hope Fortescue may skip Ayr in a bid to gain a late entry for £1m Aintree race

*49:Fortescue a family favourite as Hugh Nugent wins for his grandfather

*50:Family affair at Ascot for Nugent and Fortescue

*51:参考のために記載は残しておく

*52:The Mean Queen wins Eclipse Award

*53:The new stallion who is Polish-born, obscurely bred ? and fully booked

*54:Nicky Henderson Grand National Wins

*55:'It's exciting because he's got a chance' - Henderson sweet on National outsider

*56:Court Maid wins €125K Porterstown Chase

*57:DOWN ROYAL THURSDAY: Roi Mage does the talking