にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/04/09 National Hunt Racing - Grand National Result

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Aintree (UK) Good to Soft

Randox Grand National Handicap Chase (G3) 4m2f74y (National) (Replay)

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少しでも現地の雰囲気をということで掲載している上の写真は例によって2018年のもの。なんとか2年ぶりの開催に漕ぎ着けたものの、残念ながら無観客開催となった昨年と異なり、今年は無事にたくさんの観客を迎えての開催が実現したようだ。2022年4月10日現在、日本からイギリスへ入国する際の水際措置は撤廃されているようだが*1、とはいえイギリスは未だレベル2に指定されていること、さらにAintreeの競馬中継を見る限りでは日本と異なりマスクをしている人は殆ど見かけず感染対策としてはかなりの温度差があること、さらに昨今の欧州情勢等を踏まえると、競馬開催も危ぶまれた新型コロナウイルス感染症の流行直後からここまで辿り着いたことは感慨深いのだが、それでもやはり日本からGrand National Meetingへの遠征には依然として高いハードルがあることは事実だろう。

 

今年のGrand Nationalに際して、右のリンク先のホームページにあるGrand Nationalに関する紹介記事を以下のとおり加筆・修正を行っている。4月上旬は上田麗奈さんの供給が豊富だったのでちょっと頑張った*2*3*4*5。やはり紹介記事というのは時間の経過とともに情報が古くなっていくもので、訪問してくださった方に対して古い情報を提示するのは宜しくないので定期的にアップデートする必要があるように感じるのだが、おそらくブログの方が記載時期が明確となる点で良いのだろうと思う。

22/04/01 Grand National ① - Introduction -  (にげうまメモ)

22/04/02 Grand National ② - レース条件 -  (にげうまメモ)

22/04/03 Grand National ③ - 障害 -  (にげうまメモ)

22/04/08 Grand National ④ - 中継先・データベース - (にげうまメモ)

ブログを大々的に宣伝するのは好きではないもあってこっそりと更新していたのだが、いつもこんなマイナーでマニアックな話題しか扱わない辺境ブログの更新に気が付いてくださる方、読んでくださった方、さらにはラジオへのレターやtwitter等を通じてなにかしらの感想をくださった方には改めて感謝を申し上げたい。基本的にこのブログは個人的な備忘録と情報の整理が主な目的で、このブログ等をきっかけに海外障害競馬に興味を持ってもらおうとか、海外障害競馬のことを理解してもらおうとか、そういった意図は一切ないのだが、なにかしらのレスポンスを頂けると嬉しいものである。個人の趣味に全振りしたような記事ではあるが、ここをわざわざ訪問してくださった方にとってなにかの参考になれば幸いである。

Grand National (G3)の出走馬に関する短評については以下の記事を参照のこと。

22/04/09 National Hunt Racing - Grand National Entries (にげうまメモ)

 

なお、この日のGrand National (G3)以外のレース回顧は以下の記事を参照のこと。

22/04/10 Weekly National Hunt / Jump racing (にげうまメモ)

 

前評判としては、昨年の3着馬でこの日絶好調のMark Walsh騎手が騎乗するAny Second Nowが人気になっていた。これに続いて、Troytown Handicap Chase (Grade B)の勝ち馬で今シーズン好調のNovice馬Run Wild Fred、Glenfarclas Cross CountryであのTiger Rollを下してきたDelta Work、昨年歴史的な勝利を挙げたRachael Blackmoreとともに連覇を狙うMInella Times、葦毛の牝馬で故障と出産を経てきたことで有名なSnow Leopardess。その他、Fiddlerontheroof、Longhouse Poet、Eclair Surfなどが比較的上位人気となっていた。

 

レースはスタート直後からTwo For Gold、Lostintranslation、Freewheelin Dylan、Coko Beachなどが前に出てくる。第1障害でEnjoy D'Allen、Mount Idaの2頭が落馬。さらに第3障害のOpen DitchにてEclair Surfが落馬、これに躓いたAnibale Flyも落馬。Grand National (G3)は4回目の出走となる12歳馬の挑戦は早々に終わってしまった。Becher's Brookにて中段の内にいたBlaklionが大きなミスをするも立て直す。Foinavonを越えたあたりで早々に後方で手ごたえが悪くなっていたDeise Abaは途中棄権。葦毛の馬体が目立つCoko Beachを先頭にCanal Turnに挑むも、中段から後方にいたDeath Duty、Run Wild FredのGigginstownの2頭に加え、De Rasher Counterが落馬。さらにValentine's Brookにて後方にいたMinella Timesがどうやら前の馬に引っ掛かったようで落馬。この辺りではCoko BeachとTwo For Goldが並んで逃げるような展開で、好位からLostintranslation、Freewheelin Dylan、Longhouse Poet、Cloth Cap、Romain De Senamなどが続く。Top Ville Ben、Escaria Ten、Samcro、Santini、Fiddlerontheroof、Noble Yeats、Any Second Nowは中段から。後方からDelta Work、Class Conti、Brahma Bull、Burrows Saint、Fortescue、Snow Leopardessなど。第10障害で好位にいたAgusta Goldが落馬*6、どうやら落馬により大きく不利を受けたSchool Boy Hoursが途中棄権。Anchor Bridgeを越えて第13障害の手前辺りで、後方にいたDiscoramaが故障を発生し途中棄権。The Chairの手前の障害では馬群がかなり密集し、後方に居たMighty Thunder、Good Boy Bobbyなどがミスをしてごちゃつくシーンもあるが、特段のアクシデントは発生せず。Two For GoldとCoko Beachを先頭にThe Chairに向かうが、The ChairにてKildisart、Domaine De L'Isle、さらにBurrows Saintの3頭が落馬。ややここでリードを開いたTwo For GoldとCoko Beachの2頭に引き連れられて馬群は2周目へと向かう。

2周目の第17障害の手前で、後方でついていけなくなっていたSnow Leopardessは途中棄権。同じく追走に苦労していたMighty Thunderは競走を継続する。先頭にはCoko BeachとTwo For Gold。好位から引き続きFreewheelin DylanとLostintranslationの黄色の勝負服の2頭。Longhouse Poet、Samcro、Cloth Cap、Dingo Dollar、Noble Yeats辺りも好位から進める。第19障害のOpen Ditchは故障馬(Eclair Surf)の治療のため迂回されることになり、Anibale Flyに騎乗していたLuke Dempsey騎手にコース脇で見守られながら、Coko Beach、Two For Goldの2頭に引きつられられて無事に障害の迂回に成功する。Becher's Brookの手前で好位から脱落していたCloth Capが途中棄権*7。Grand National (G3)においても最大の難所となる2回目のBecher's Brookは無事全馬クリアする。Canal Turnで中段の外にいたDingo Dollarが落馬。この辺りから苦しくなってきたTwo For Goldが脱落すると、好位にいたLonghouse Poet、Freewheelin Dylan、さらにCoko Beachなどが先頭に代わる。好位からLostintranslation、Noble Yeats。その後ろにSamcro、Escaria Ten、Delta Work、Romain De Senamなど。Santini、Any Second Nowなども位置を上げてくる。残り4障害地点にて中段にいたFortescueが落馬。Longhouse Poet、Freewheelin Dylan、Coko Beachの3頭を先頭にしてAnchor Bridgeを越える。好位からNoble Yeats、さらに後ろからSantini、Delta Work、Any Second Nowが進出。残り2障害地点の手前で故障馬(Discorama)の治療が行われているが特に障害の迂回は発生せず、残り2障害では外から順にAny Second Now、Fiddlerontheroof、Delta Work、Coko Beach、Freewheelin Dylan、Novle Yeats、さらに内のLonghouse Poetが並んで越えるという大接戦となる。しかしそこから抜け出してきたAny Second Nowが最終障害を先頭で飛越しそのまま逃げ込みを図るが、ここから一頭ついてきたNoble Yeatsが抵抗。Hurdle Courseに入るところではAny Second Nowから先頭を奪うと、そのままAny Second Nowを2馬身突き放して勝利した。20馬身遅れた3着にDelta Work、続いてSantini。さらに離れてFiddlerontheroof、Longhouse Poet。加えてFreewheelin Dylan、Coko Beach、Escaria Ten、Romain De Senam、Samcro、Commodore、Class Conti、Blaklion、そしてLostintranslation。以上15頭が完走を果たした。

 

騎乗していたSam Waley-Cohen騎手は今年で40歳となるアマチュア騎手で、Long Runとのコンビで2010年のKing George VI Chase (G1)及び2011年のCheltenham Gold Cup (G1)を勝利したことで有名である。5カ国で250カ所の歯科診療を行うPortmanDentalCareを運営する起業家として知られるSam Waley-Cohenは*8マチュア騎手とはいえここまで"Under Rules"にて通算75勝、うち重賞競走13勝という目覚ましい活躍を見せている騎手で*9、Point to Pointでも通算100勝以上を上げている*10。Grand National (G3)にもこれまで9回挑戦し、2011年にはOscar Timeとのコンビで2着に入った実績があるように*11、イギリス・アイルランド障害競馬という日本とは比べものにならないほど分厚い層を持った世界において、一流の舞台で一流の騎手たちと互角以上に戦ってきた超人であり、一般的な日本の競馬ファンが想像するような、いわば仕事の片手間に騎乗を楽しむような「アマチュア騎手」ではなく、一般のプロ騎手を凌駕する高い技術を持った騎手であることは明らかであろう。残念ながらレース前にこのGrand National (G3)を最後に引退することを表明していたのだが*12、この最後の最後の騎乗においてとんでもない大仕事をやってのけた。そもそもこのNoble Yeatsという馬自身、Sam Waley-CohenとともにGrand Nationalを目指すことを目的として父Robert Waley-Cohenにより購入されたという経緯もあり*13、同じくこれまでSam Waley-Cohenと共にビッグタイトルを掴んだLong RunやOscar Timeといった歴代の名馬を所有し、息子であるSam Waley-Cohenを騎乗させ続けた父Robert Waley-Cohenとの二人三脚で掴んだ勝利ともいえるだろう。また、Sam Waley-Cohenの2歳年下の弟であるThomas Waley-Cohenは20歳の若さで癌で亡くなっており*14*15、その鞍にはThomasのイニシャルを刻んでいたという話もある*16。"That's beyond words, it's a fairytale and a fantasy. I'm full of love and happiness and gratefulness"とは本人の言葉だが、このSam Waley-Cohenという騎手に関わる全てが繋がったのが今年のGrand Nationalと言えるだろう。まるで御伽噺のような結果となった今年のGrand National、ここまで劇的な結末が他にあるだろうか。残念ながらこの勝利を機に引退を撤回することはないようだが*17、引退したアイルランドのトップジョッキーBarry GeraghtyはこのSam Waley-Cohenに対して、"He was a true amateur but he was no amateur as an opponent"と最大級の賛辞を送っている*18

なお、Sam Waley-Cohen騎手のインタビューは上記の記事で閲覧可能である。

Sam Waley-Cohen: My joy at winning the Randox Grand National (Racing TV)

 

このレースには本来積極的な先行策でIrish Grand National (Grade A)で激走したFreewheelin Dylan、同じく積極策でClassic Chase (G3)で他馬を圧倒したEclair Surf、Charlie Deutsch騎手の技ありの先行策でBetfair Handicap Chase (G3)を逃げ切ったCommodore、さらにはScottish Grand National (G3)で積極策で結果を残したDingo Dollarなど、どちらかというと積極的にペースを作っていくタイプが多数出走していたのだが、昨年のJettのように特定の馬が強引なペースを作っていくわけではなく、特にスタート直後にも激しい先行争いが繰り広げられるわけでもなく、比較的平穏にレースが進行している。その結果、特段脚の早いタイプではない先行馬であるTwo For GoldとCoko Beachの2頭がレースを引っ張ることとなった。良馬場のスピードはそれなりに必要なレースではあるのだが、このペースに付いていける馬に取ってはさほど無理な展開ではなく、コースの幅が狭くなるThe ChairからThe Waterにかけてはやや馬群が縦長になるも、全体的に馬群は密集してレースは進行しており、残り2障害地点ではAny Second Now、Fiddlerontheroof、Delta Work、Coko Beach、Freewheelin Dylan、Novle Yeats、さらに内のLonghouse Poetまでが並んで飛越するという大接戦が繰り広げられている。

Noble Yeats単勝50倍の低評価を覆す走りを見せた。Novice馬のGrand National (G3)制覇となると2016年のRule The World以来となる記録的な勝利である。さらに、Novice馬のGrand National (G3)制覇はRule The Wolrd以前となると、1958年のMr. Whatまで遡らなければならないことを踏まえると*19、やはりこのNovice馬の勝利というのは前例を破るものと言っていいだろう。加えて7歳馬の勝利というのも歴史的なもので、1940年にBogskarが勝利したのが7歳馬としては最後の勝利である*20。Noble Yeats自身もここまでの実績としてはBeginners Chaseでようよう勝利したのみで、それ以外の競走ではAhoy Senorにとっての練習台のような雰囲気すらあったTowton Novices' Chase (G2)にてそのAhoy Senorの2着に入ったのが最高で、だからといってハンデ戦に適性がありそうなわけでもなく前走のCheltenhamのUltima Handicap Chase (G3)を含めさっぱり良いところはなかったのだが、ここまで一気にパフォーマンスを上げてくるとは驚きの結果である。初のチークピーシーズ着用、National Fenceや34ハロンという超長距離、良馬場への適性などの色々な要因があったと思われるが、それにしてもこの激走は殆ど想像ができなかったというのが正直なところだろう。Sam Waley-Cohen騎手は前半こそ馬群の外でゆったりと走らせながら、Canal Turnの辺りから内に潜り込み、そのまま馬群が密集している箇所の不利を巧みに交わしながらいつの間にか好位まで取りついているというレース振りで、残り3障害辺りを過ぎてから一気に後方から押し上げてきたAny Second NowやDelta Workなどとは対照的なレース運びであった。このわりとがっかりな実績で10st10lbという斤量も決して楽ではなかったと思われるのだが、様々な前例を破る画期的な勝利であり、7歳という年齢も考えるとおそらく来年もGrand National (G3)を目指すことになるだろう。この若さでGrand National (G3)のタイトルを掴んだこの馬が今後どのような競走馬生活を歩むことになるのか、残念ながらその背にSam Waley-Cohen騎手がいる姿を見ることはなさそうだが、それでも今から楽しみにしたい。ちなみに、どうやらNavanのMaiden Hurdleを勝った時からEmmet Mullins調教師の中にはGrand National (G3)を目指すオプションがあったようで、その慧眼には感服するばかりである*21。一方で、この馬に関して以下のように失礼な記述をしている某クソブログの管理人は腹を切ってお詫びすべきであろう*22

距離が伸びてよくなる可能性はあるが、ここまでの実績的には強調材料に乏しく、今シーズンは休みなく使ってここまで計7戦、さらにここまで良績を残していない7歳馬、さすがに厳しそうだ。

一番人気のAny Second Nowは惜しい2着。昨年は飛越のミスと途中での大きな不利が目立っていたのだが、今年はかなり飛越がまともになっており、道中で若干他馬と衝突したりする事象はあるのだが、特段目立った不利もなかった。2周目からMark Walsh騎手が馬を促して前に取りつこうと試みているのだが、なかなか反応せずようやく進出できたのはAnchor Bridge Crossingを過ぎて進路が空いてからである。若干飛越面でも慎重に飛越し過ぎる場面もあり、前が壁になったりと未だにいまいちな部分はあるのだが、それでもほぼトップハンデに近い11st8lbを背負ってこれだけ走ることが出来るのだから大したものである。昨年はひたすら立ち回りのまずさだけが目立ったMark Walshはこの日絶好調で、その好調ぶりを示すような完璧に近い競馬をしており、ほぼ1st近い斤量差を持った勝ち馬に最後は屈したものの、この馬もまたチャンピオンに近しい競馬をしたことは明らかだろう。Ted Walsh調教師によれば"I don't think I'll be here again with him, it's hard to come back that often."とのことだが*23、この馬もまた10歳であり、1年でこれだけの進歩を見せたということも踏まえると、来年もこそはという思いも強くするレースであった。

Glenfarclas Cross CountryでTiger Rollを下してきたことで話題になっていたDelta Workは上位2頭からはかなり離れた3着に終わった。スタート直後こそJack Kennedy騎手が好位で進めようという意図はあるのだが、そこからミスを連発した上に障害飛越時に不利を受けたりとで位置を下げ、Canal Turnを過ぎるころにはすっかり後方に置かれている。とはいえそこから少しずつ飛越のリズムを取り戻すと、第17障害では空馬に絡まれたりと色々と苦労しながらも少しずつ位置を上げ、残り2障害地点では先頭に並びかけるだけの位置までやってきている。2周目に入る地点でこのDelta Workと同じような位置にいた馬は全て途中棄権又は落馬に終わっていることを考えると、序盤のがっかりな走りから巻き返してきたこの走りは驚異的であり、さすがに最後は脚が上がったようだが、11st9lbという大きなビハインドを背負った馬の走りとは思えない内容であった。残り2障害前の馬群の捌きにも失敗しており、最終障害の地点では前2頭の間に挟まれるシーンもあったのだが、最終障害の手前の時点で前2頭を追いかける気配があった馬はこの馬だけであったことを踏まえると、この馬も来年また見てみたい一頭であることは間違いない。おそらく近走の走りを踏まえると、今年の11st9lbからそう大きく斤量が増加する可能性は低く、来年で10歳という年齢を考えても再度のチャンスはあるだろう。

イギリス勢で再先着を果たしたのが10歳のSantini。中団から無理なく運び、少しずつ好位に押し上げてくるという競馬はほぼ完璧な内容で、残り2障害を過ぎてからさすがに脚が上がったようだが、そこからじわじわと伸びて一度は3番手集団から抜け出したDelta Workに1馬身差まで食らいついているのはさすがの走りであった。Polly Gundryのような小さな厩舎*24がこれだけの結果を残したことはやはり業界にとっては喜ばしいことであり、多くの人たちに夢を与えてくれるものである。この馬自体はかなり馬格がある馬で、おそらくあまり斤量面で苦労することはないと思われるが、今年で10歳となったかつてのG1戦線の常連の現役生活を楽しみにしたい。似たような勝負服で似たような斤量を背負ったFiddlerontheroof、Longhouse Poetは同じような位置での入線となった。特にLonghouse Poetは馬群の内で進めたにも関わらず、特段不利も受けることなくのんびりとこの馬のペースで進めることに成功している。やや引っかかり気味で走るのは仕方がないのだが、この辺りは今後解消されていくことを期待したい。Fiddlerontheroofはどうにも小脚が効くタイプではなさそうな印象もあるだけにもう少しレース運びがスムーズであればという思いはあるのだが、いずれも初のNational Fenceということでこれだけ見せ場を作れれば十分だろう。この二頭は随分馬の能力としては異なっており、さらにFiddlerontheroofはイギリス調教馬、Longhouse Poetはアイルランド調教馬なのだが、またどこかで一緒に走って欲しいところである。

Irish Grand National (Grade A)を逃げ切ったFreewheelin Dylanは好位から進めて残り3障害辺りでは先頭集団に取りつくも、最後は脚が上がっての7着。目立つチークピーシーズをつけているようにやや集中力の面で課題がある可能性があるのだが、やはりここでも単勝50倍という低評価を受けるような馬ではないということだろう。戦術次第ではどこかでまた大仕事をやってのける可能性もある。レースを引っ張ったCoko Beachは最後は脚が上がっての8着で、これはこの馬のやるべきことはやったということだろう。飛越の安定感という意味ではこの中でも高い水準のものを持っており、早々に脱落したTwo For Goldと異なりこの馬は勝負所まで抵抗していた。さすがにこの良馬場ではどうしようもないわけで、むしろこれだけ抵抗したことを褒めるべきである。Escaria Tenは勝負所まで勝負圏内に食らいつくも、最後は脚が上がって9着。"Reserve"として再先着を果たしたのがRomain De Senamだが、中段から進めるも特に見せ場は作れなかった。かつての素質馬として期待されたSamcroは好位から進めるも、少しずつ遅れ11着。残念ながらCanal Turnの地点で脚が上がっていたそうだ*25。最近は健康面の問題で苦労している馬だが、紆余曲折を経てこの大舞台に立ち、最後まで堂々と走り切ったことは素晴らしいことである。これだけ高い技術を持った人馬が揃ったにも関わらず、半数以下しか完走を果たすことができないようなこの大舞台で完走することがいかに難しいことであるか、このレースを見れば一目瞭然であろう。同じく"Reserve"のCommodore、後方に居たClass Contiは特になにもせず12着、13着。Commodoreは本来先行したいタイプであっただけに、スタートのタイミングが不幸だったかもしれない。4回目のGrand National (G3)への挑戦となる13歳馬Blaklionは中段から進めるも、少しずつ遅れ大敗に終わった。途中で大きなミスもあったのだが、さすがにこの良馬場のスピード勝負は厳しかったのかもしれない。13歳という年齢的なものもあるだろう。道中は先頭集団で進めたLostintranslationは残念ながら勝負所から脱落し、完走馬の中で最下位の15着とはいえなんとかゴールまでは辿り着いた。ノドの持病がある馬だけに苦しくなってから一気に脱落するのは仕方がないのだが、少しでもこの馬のかつての走りを見ることが出来たことは喜ばしいことだろう。

その他、競争中止した馬。連覇を狙ったMinella TimesはValentine's Brookで落馬に終わったが、おそらくこれは前の馬にぶつかったものだろう。どうしても多頭数となるGrand National (G3)ではこのように他馬との接触による落馬が多発するものである。逃げたTwo For Goldは途中までは元気に運んだのだが、2回目のValentine's Brookの辺りから苦しくなり脱落。この馬のやることはやっているのだが、もしかすると距離的な問題があるかもしれない。好位で進んだCloth Capは2周目に早々に脱落して途中棄権に終わったが、どうやら鼻出血があったそうだ*26。事前にその御伽噺のようなストーリーがあちこちで持て囃されたSnow Leopardessは早々についていけなくなり途中棄権に終わったが、この馬は本来不良馬場でパワーを生かした方が良いタイプで、この良馬場ではどうしようもないだろう。牝馬で10歳という年齢を考えるとどこまで現役生活を続けるかは不明である。1周目で故障を発症した途中棄権したDiscoramaは残念ながら骨盤骨折を発症し助からなかったそうで*27*28、日曜日に落馬時の外傷性脳損傷が原因で亡くなったEclair Surfを含め*29*30*31、残念ながら今年は2頭の死亡事故が発生してしまった。

*1:日本から英国へ入国する際の水際措置について

*2:https://twitter.com/pj_sekai/status/1509728805425868801

*3:【公式】『タコピーの原罪』1話前編(CV:間宮くるみ、上田麗奈、黒木ほの香)【ボイスコミック】

*4:【公式】『タコピーの原罪』1話後編(CV:間宮くるみ、上田麗奈、黒木ほの香)【ボイスコミック】

*5:アニメ「わたしの幸せな結婚」ティザーPV

*6:At The Racesの記録だと第9障害での落馬となっているが、映像を見るとValentine's Brookは無事にクリアしているようだ

*7:At The Racesには残り3障害手前で途中棄権とあるが、Becher's Brookの手前での途中棄権が正確である

*8:Sam Waley-Cohen: Grand National-winning jockey pays tribute to brother after 'fantasy' win

*9:Mr Sam Waley-Cohen

*10:Mr Century up for long-serving Sam

*11:Mr Sam Waley-Cohen

*12:'It's the right moment' - Gold Cup winner Waley-Cohen to retire after National

*13:'He has the right profile' - Robert Waley-Cohen buys National hope Noble Yeats

*14:Sam Waley-Cohen writes National fairytale after starring in royal romance

*15:Royal matchmaker bows out on a high! Amateur jockey who helped rekindle Prince William and Kate Middleton's romance wins Grand National on 50/1 shot Noble Yeats in his final race before retirement - as the Duke and Duchess hail his dramatic victory

*16:Grand National fairytale as 50-1 Noble Yeats wins for retiring Sam Waley-Cohen

*17:Noble Yeats, a 50-1 shot, seals stunning Grand National win on amateur jockey Sam Waley-Cohen's final ride, edging favourite Any Second Now and Delta Work to claim victory at Aintree

*18:'No amateur has a better CV' - Barry Geraghty leads praise for Sam Waley-Cohen

*19:Rule the World (horse)

*20:1940 Grand National

*21:Grand National: Emmet the latest of the Mullins dynasty to shine

*22:22/04/09 National Hunt Racing - Grand National Entries

*23:'I thought at the last we might just get there' - Ted Walsh on Any Second Now

*24:‘I’m punching above my weight’ – Meet the smallest trainer in Grand National with just ten horses taking on the giants

*25:The Grand National: What the beaten jockeys had to say

*26:The Grand National: What the beaten jockeys had to say

*27:'I thought at the last we might just get there' - Ted Walsh on Any Second Now

*28:https://twitter.com/nolan_racing/status/1512866756733411332

*29:Grand National: Eclair Surf and Discorama die from injuries suffered at Aintree, Elle Est Belle suffered suspected heart attack

*30:Emma Lavelle pays tribute to Classic Chase winner Eclair Surf

*31:https://twitter.com/ELavelleracing/status/1513076038397476870