にげうまメモ

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22/06/01 障害競馬におけるSadler's Wells系とその分枝 ④ - *オペラハウス、El Prado -

*障害競馬におけるSadler's Wells系とその分枝

引き続き、Sadler's Wellsの小系統について記載する。

 

**オペラハウス系

Sadler's Wells (USA) 1981 (Flat)
 |*オペラハウス Opera House (GB) 1988 (Flat)
 | |テイエムオペラオー (JPN) 1996 (Flat)
 | | |テイエムエース (JPN) 2003 2008 東京ハイジャンプ (G2)
 | | |テイエムトッパズレ (JPN) 2003 2009 京都ハイジャンプ (G2)
 | | |テイエムオペラドン (JPN) 2009 2017 京都ハイジャンプ (G2) 2着
 | |シングンオペラ (JPN) 1998 (Flat)
 | | |シングンマイケル (JPN) 2014 2019 中山大障害 (G1)
 | |マイネルオーパー (JPN) 1999 2004 秋陽ジャンプステークス
 | |スプリングゲント (JPN) 2000 2009 中山グランドジャンプ (G1)
 | |バローネフォンテン (JPN) 2000 2005 東京オータムジャンプ (G3)
 | |コウエイトライ (JPN) 2001 2010 阪神ジャンプステークス (G3)等
 | |スリーオペレーター (JPN) 2003 2007 阪神スプリングジャンプ (G2)
 | |メイショウサムソン (JPN) 2003 (Flat)
 | | |メイショウソラーレ (JPN) 2010 2017 三木ホースランドジャンプステークス
 | | |アスターサムソン (JPN) 2013 2018 京都ハイジャンプ (G2)
 | |マジェスティバイオ (JPN) 2007 2011 中山大障害 (G1) 2012 中山グランドジャンプ (G1)
 | |ウインヤード (JPN) 2011 2016 清秋ジャンプステークス

 

*オペラハウスはKing George VI & Queen Elizabeth Stakes等の勝ち馬だが日本で種牡馬生活を送り、Sadler's Wells産駒の種牡馬としては珍しく、日本平地競争においてテイエムオペラオーメイショウサムソンといった活躍馬を送り出すことに成功した。その産駒には卓越した勝負強さとタフネスを武器とする産駒が多いのだが、中でもマジェスティバイオスプリングゲントコウエイトライといった近年の日本障害競馬を彩った名馬を複数輩出しており、障害競馬におけるその産駒の活躍は目覚ましいものがある。さらに、後継種牡馬としてテイエムオペラオーメイショウサムソンシングンオペラの3頭が存在するが、中央競馬では未勝利に終わったシングンオペラを含め、そのいずれもが障害重賞勝ち馬を送り出したことは特筆すべき事項だろう。ただし、平地競争において卓越した成績を残したテイエムオペラオーメイショウサムソンを含め、後継種牡馬は平地競争において目立った産駒を送り出しておらず、ゴーカイ等の僅かな例外を除いて障害馬が種牡馬となる例がほぼ存在しない日本において、父系としてこれ以上日本で存続する可能性は乏しいようだ。テイエムオペラオーの産駒には同馬主が所有する名牝テイエムオーシャンとの間に生まれ、「10冠ベイビー」とすら言われたテイエムオペラドンがいるのだが、残念ながら平地では未勝利勝ちのみ、障害でも京都ハイジャンプ (G2)の2着が最高で、種牡馬入りは果たせず麻布大学で乗馬になっている*1。*オペラハウスの後継種牡馬のうち、一頭でも欧州で種牡馬生活を送っていれば状況は少しは変わっていたかもしれない。また、*オペラハウスは欧州で大成功を収めた偉大な障害種牡馬Kayf Taraの全兄であり、仮に*オペラハウスが欧州で種牡馬生活を送ったのであれば、もしかすると近年のイギリス・アイルランド障害競馬シーンを大きく変化させていたかもしれない。

 

El Prado

Sadler's Wells (USA) 1981 (Flat)
 |El Prado (IRE) 1989 (Flat)
 | |Medaglia d'Oro (USA) 1999 (Flat)
 | | |Bugler’s Dream (USA) 2008 2015 Bad Harzburg - Luciano-Rennen
 | | |Medal of Valour (JPN) 2008 イギリス障害6戦未勝利
 | |Senor Swinger (USA) 2000 (Flat)
 | | |All The Way Jose (USA) 2010 2017 Lonesome Glory Handicap (G1)
 | |Kitten's Joy (USA) 2001 (Flat)
 | | |Diplomat (USA) 2009 2017 New York Turf Writers Cup (G1)
 | |Spanish Moon (USA) 2004 (Flat)
 | | |Grand Roi (FR) 2006 2020 Grant Thornton Hurdle (G2)
 | | |Dallas Des Pictons (FR) 2013 2019 William Fry Handicap Hurdle (Grade B)
 | | |Laurina (FR) 2013 2018 Irish EBF Mares Novice Hurdle Championship (G1)
 | | |Spanish One (FR) 2014 2022 Prix Bernard De Dufau
 | | |Ever Soleado (FR) 2017 2020 Nagroda Przewodniczącego Sejmiku Dolnośląskiego
 | | |Iberique Du Seuil (FR) 2018 2022 Donohue Marquees Juvenile Hurdle (G2)
 | |Ruten (USA) 2005 (Flat)
 | | |Džidžali (POL) 2013 2018 Nagroda Otwarcia Sezonu
 | | |Dallina (POL) 2014 2017 Wroclaw ploty 3勝

 

El Prado自身はアイルランドで競走馬生活を送った馬だが、アメリカで種牡馬生活を送り、どうやらアメリカを中心に一大系統を築き上げたようだ。ちらほらとその後継種牡馬アメリカ障害競馬において活躍馬を送り出しているようだが、しかしながら基本的にはアメリカ血統ということもあり、その広がりとは裏腹に近年の障害競馬における産駒の存在感は小さい。その後継種牡馬としてSpanish Moonがフランスで繋養されているようで、種付け数は最大で145頭に達するなどかなりの人気を集め、代表産駒として2018年のIrish EBF Mares Novice Hurdle Championship (G1)を制し、翌年のChampion Hurdle (G1)でも有力馬の一頭として期待された牝馬Laurinaをはじめとする活躍馬を送り出しているのが数少ない例である。なお、ポーランドNagroda Przewodniczącego Sejmiku Dolnośląskiegoを制したEver Soleadoが未去勢のようだが、2022年5月現在、2020年の同レースを最後に出走がなく、その後の動向は不明である。

それ以外のEl Pradoの系統出身の馬としては、*トレトレジョリの産駒であるMedal of Valour(父Medaglia d'Oro)は日本産馬としては珍しくイギリスHurdle競走に出走しているが、Novice HurdleやSelling Hurdleを中心に6戦するもいいところなく未勝利に終わっている。また、ポーランドダービー等を勝利したRutenはその後ポーランドで繋養されており、その産駒はチェコポーランド等ではすっかりお馴染みの存在である。Rutenの産駒のTkliwy Nihilistaはチェコ生産馬としては珍しくフランスで現役生活を送っており、2021年のイタリアGran Criterium D'Autunno (G1)で3着に入ったほか、CompiegneのPrix Vatelys (Listed)でも4着に入るなど頑張っているようだ。

いずれにせよ、このEl Pradoの系統自体はアメリカを中心に大きく発展していることを踏まえると、今後障害競馬においてもなにかとその子孫を見かけることになりそうだ。