*南オーストラリア州の障害競馬を巡る経緯
2022年7月、南オーストラリア州において障害競馬の開催を禁止する法案が可決され、南オーストラリア州の障害競馬はその長い歴史に幕を下ろすことになった。以下は一連の経緯に関する個人用の備忘録であり、それ以上の意図はない。なお、当ブログの紹介ページにも明記しているとおり、当ブログ内の文章・画像等の内容の転載及び複製等の行為の一切を禁止していることに留意されたい。
〇 このブログについて(にげうまメモ)
*南オーストラリア州の障害競馬の開催状況について
COVID-19以前の2020年にSA州において予定されていた開催カレンダーは以下のとおりであり、4月上旬のOakbank競馬場にて行われるGreat Eastern Steeplechaseを中心に、合計13開催において計22競走が予定されていた。
〇 2020 SA Jumps Racing Calendar(SAJR)
その主要競走は以下のとおりである。
- Great Eastern Steeplechase @ Oakbank 4950m $160,000
- Von Doussa Steeplechase*1 @ Oakbank 3250m $100,000
- Grand National Steeplechase @ Morphettville 3500m $50,000
- Classic Hurdle @ Oakbank 3600m $100,000
- Grand National Hurdle @ Morphettville 3200m $50,000
Oakbank競馬場で行われるGreat Eastern SteeplechaseはSA州の中心的なSteeplechase競走であり、倒れた大木を基にした"Fallen Log"と呼ばれる独特の障害*2も設置された4950メートルの起伏のある本格的な障害コースが設定されている。その歴史は長く、第1回開催は1877年にまで遡る*3。2019年のGreat Eastern Steeplechaseの総賞金額は$160,000であり*4、これは同年のVIC州を代表する障害競走であるGrand Annual Steeplechaseの$350,000*5、VIC州のGrand National Steeplechaseの$350,000*6と比べるとやや見劣りするものの、上記VIC州のSteeplechaseにおける中心的な2競走に次ぐ競走であるBrierly Steeplechaseの$150,000*7、Australian Steeplechase及びCrisp Steeplechaseの$125,000*8*9などと比較しても十分な金額が準備されており、Grand Annual Steeplechase等の主要競走が行われるオーストラリアの中心的な障害競馬開催である"The Bool"に向けた重要な競走として位置づけられていた。このGreat Eastern Steeplechaseをはじめ、Classic Hurdle、Von Doussa SteeplechaseといったSA州障害競馬の主要競走が行われるOakbankのEaster Racing Festivalは世界最大の"picnic-style race meeting"とも言われ、SA州における春の名物競馬開催として非常に有名であった*10*11。この開催はSA州の競馬産業において重要な役割を果たしており、10万人以上を集めた過去と比べるとだいぶ減少こそしていたものの*12、2009年には約50000人、COVID-19直前の2019年にも25000人以上の観客を集めたという記事もあり*13、この祭典は地元に1000万ドル以上の経済的利益をもたらしていたという調査結果もあるそうだ*14*15*16*17。SA州の障害競馬の開催の是非は以前から議論されていたようだが、2016年には業界及び一般市民等における大規模調査の結果として州内の障害競馬の存続について非常に肯定的な結論が得られている*18。また、2019年はSA州において障害競走(Hurdle / Steeplechase)は計23競走が行われたが、うちSA州調教馬の勝利数は7、全出走馬のうち約3割強をSA州調教馬が占めており、その中には同年のGreat Eastern SteeplechaseにおいてVIC州の大ベテランZed Emの2着に入ったSpying On Youも含まれている。なお、Great Eastern Steeplechaseは2020年はCOVID-19の影響で行われなかったものの*19、2021年は開催され、その総賞金額は$127,760、レースはSA州調教馬のSpying On YouがZed Emを破って勝利している*20*21。これらの馬は5月上旬のGrand Annual Steeplechaseでも中心となるオーストラリアSteeplechaseの超一流馬であり、そのレースレベルの高さは疑いようがない。過去の勝ち馬を遡っても、近年のオーストラリアを代表する名馬Zed Emのほか、Thubiaan、Lord of the Song、Tobouggie Nights、Real Tonic、さらには中山グランドジャンプを制したSt Stevenなど、近年のオセアニアの障害競馬を彩った名馬が多数名前を連ねており、このGreat Eastern Steeplechaseがオーストラリア障害競馬において中心的な役割を果たしてきたことは明白である*22*23*24。実際に、オーストラリアを代表する障害調教師であり、このOakbankで多数の成功を収めてきたEric Musgrove師は、オーストラリア障害競馬におけるこの開催の重要性を強調している*25。
〇 2019 SA Jumps Racing Season Results and Statistics(SAJR)
〇 2018 SA Jumps Racing Season Results and Statistics(SAJR)
〇 2018 AJRA Board Report(AJRA)
オーストラリアの障害競馬の歴史に関しては以下のサイトの記事が詳しい。オーストラリアにおける最初の障害競走は1832年にSydneyで行われ*26、元々Queensland、New South Wales、Western Australia、Tasmania、Victoria及びSA州*27で障害競馬が行われていた。しかしながら経済的な理由等から相次いで廃止され、2007年にTasmania州の障害競馬も廃止になった*28。さらにオーストラリア2008-2009年シーズンにおいて発生した計14頭の死亡事故はVIC州における障害競馬の廃止に関する強い議論を呼び起こし*29、VIC州の障害競馬は廃止の危機に追い込まれたが、徹底した安全対策を講じたうえで開催は継続され*30*31、2021年の段階ではVIC州及びSA州において障害競馬が開催されていた*32。ただし、2019年及び2020年の当初は合計61の障害競走(Hurdleが計39競走、Steeplechaseが計22競走)を開催又は開催予定であったVIC州に対して*33*34、SA州の障害競走数はその3分の1程度であり、特に騎手の確保の観点においてSA州の障害競馬はVIC州に依存していることが指摘されているなど*35、近年賞金額や出走馬の増加等をはじめ再興が進むVIC州の障害競馬と比較して、その状況は決して芳しいものではなかった*36*37*38。実際に上記Oakbankの開催を除くと近年は全体的にVIC州と比べて低調な感は否めず、SA州Grand National Hurdle / Steeplechaseの総賞金額も$50,000と、VIC州の同競走と比べるとかなりの差異があったことは否定できない。レース水準としてもやや疑問符がつくというのが現状で、結果的に最後のSA州Grand National Steeplechaseとなった2019年のSA州Grand National SteeplechaseはSA州調教馬のSearavenが制しているが*39、この馬は基本的にSA州Steeplechaseの中では比較的上位の立ち位置ではあったものの、VIC州で行われる主要競走の一つであるBrierly SteeplechaseやVIC州の有力馬が多数遠征するOakbankのVon Doussa Steeplechaseでは大敗している*40。なお、同年のGrand National Hurdleを制したのはVIC州調教馬のDouble Bluffであるが、この馬もその後のVIC州Grand National Hurdleでは大敗を喫している*41*42。
〇 Brief history of Jumps Racing in Australia(Jenny Barnes Photography)
〇 The History of Jumps Racing in the States of Australia (The Virtual Form Guide) / National / 12 May, 2009(Australian Trainers Association)
〇 The History of Jumps Racing in Australia(AJRA)
*南オーストラリア州の障害競馬を巡る経緯
〇 Jumps racing removed from SA racing’s calendar(Racing SA)
〇 South Australian Jumps racing is no more (The Advertiser)
〇 Jumps racing to end in SA (Racing.com)
〇 South Australian jumps racing is no more(Townsville Bulletin)
2021年10月1日付で、Racing SAから2022年のSA州において障害競馬を開催しないことが発表された。この理由として、Racing SAのCEOであるNick Redin氏のコメントにあるとおり、SA州における障害馬の減少やSA州を拠点とする騎手の不足等の理由が挙げられている。実際にSA州の障害競馬は特に騎手の確保の観点においてVIC州に依存していることが以前から指摘されており*43*44、COVID-19流行下の2020年のOakbankのEaster Festivalにおける障害競走は騎手の移動制限により障害騎手が確保できないことを理由に中止されている*45。なお、歴史あるGreat Eastern SteeplechaseやVon Doussa Steeplechaseは代替となる平地競争において名前を残す旨のアイデアもあったようだ*46。
〇 SAJR - South Australian Jumps Racing(Facebook)
〇 SAJR - South Australian Jumps Racing(Facebook)
当該Racing SAの決定に対して、South Australian Jumps Racing(以下、「SAJR」)は上記のような声明を発表し、SAJRやAustralian Jumping Racing Association(以下、「AJRA」)、及びSA州に拠点を置く障害厩舎であるBarry Brook氏を含めたステークホルダーに対して一切の意見照会及び協議が行われなかったことを指摘した。また、COVID-19以前の2020年の冒頭でRacing SAにより3年間のKPIが設定されており、2020年以降の障害競馬開催に壊滅的な被害を齎したCOVID-19の影響を考慮しなかったうえに、当該決定を無視したものであることを指摘した。
以下に関係者のコメントを含む関連記事を示す。どうやら2021年9月23日にGreat Eastern Steeplechaseを開催するOakbank Racing Club(以下、「ORC」) Committeeが上記の決定を支持したそうだ*47*48。しかしながら、障害競馬を廃止することを条件にORCがRacing SAから補助金を受け取ったという噂もあること、Racing SAが障害競馬を廃止する根拠として引用した統計には長年Thoroughbred Racing SAのChair、Racing Australia、Asian Racing Federation等の要職を務めたFrances NelsonやSA州に拠点を置くBarry Brook調教師等から疑義が呈されているなど、その経緯及び根拠には複数の問題点が示されている*49。加えて、OakbankのEaster Festivalの中心的な競走であるGreat Eastern Steeplechase及びHarry D Young Hurdle*50の継続のため、AJRA会長のSandy McGregor氏から合計で$500,000の資金援助の申し出があったそうだ。
〇 Pateman Calls for Oakbank rethink(Racing.com)
〇 "Gutted" Brook vows to fight(Racing.com)
〇 AJRA working on Oakbank solution(Racing.com)
〇 Can History Be Trashed So Easily?(RSN)
〇 Furious Oakbank Members Turn on Club (RSN)
〇 Threats, Offers, Accusations in the Battle for Oakbank(RSN)
〇 No Jumpers In SA? Depends Who You Ask(RSN)
なお、Racing VictoriaとWarrnambool Racing Clubは以下の記事にあるとおり、OakbankのEaster Carnivalが行われない場合、それを補完する障害競馬開催を行うことを検討することにしたようだ。また、同時期にVIC州において精力的に障害競馬を開催するPakenham Racing Clubは障害競馬開催を支持する声明を発表している*51。
〇 Warrnambool Racing Club and Racing Victoria looking at program options after South Australia’s decision to dump jumps racing(Herald Sun)
〇 Racing SA confirms Jumps Call(Racing.com)
〇 Racing SA Rejects Oakbank Salvage Offer(RSN)
しかしながら、Racing SAは諸々の抗議や提案にも関わらず、2022年においてSA州で障害競馬を開催しないことを改めて発表した。上記の資金援助の申し出も却下されたようだ。
〇 SAJR Submission to Racing SA Board(SAJR)
これらの決定を受け、2021年10月11日付でSAJRはSA州の障害競馬に関してRacing SAの幹部との会合等の要請を行った。SAJRからRacing SAへの提出書類の副本はリンク先からダウンロードが可能である。
〇 OAKBANK BATTLE GOES TO COURT(RSN)
〇 UPDATE Jumps Racing at Oakbank(SAJR)
ORCの既存の理事会を覆すことを目的として、豪州障害競馬の支持者を中心として100人以上が新規にOakbankのメンバーシップの申請を行ったのだが、ORCの理事会はこのメンバーシップ申請を拒否したことに加え、主に障害競馬の支持者を中心にSA州競馬における多数の著名人の既存のメンバーシップの更新も取り消された*52*53。この一連の経緯について、脚注の記事中にあるとおり、Mike Symons氏によるとORC Comitteeはこの15~20年間、メンバーシップの審査を行っていなかったという話もあるようで*54、このメンバーシップの意図的な操作はORCから障害競馬支持者を排除することを目的としたものであると推測される。また、Greg Griffin氏による特別総会の開催要請もORCの理事会に拒否された。そこで、Racing SAの会長等の要職を務めたFrances Nelsonらを中心として、ORC内部の意思決定プロセスを明らかにするため、2021年11月上旬にORCが保有する文書を公開すること等を目的とした訴訟がSA州地方裁判所に提出された。
〇 Oakbank Members go to court(gofundme)
上記の訴訟活動に関してクラウドファンディングが行われた。Eric Musgrove、Steven Pateman、Amy McDonaldといった日本でも良く知られた競馬関係者の名前もあるようだ。中の人も微力ながら寄付している。
〇 Oakbank ordered to share documents(Racing.com)
〇 Legal fight intensifies into Oakbank jumps decision(punters)
〇 Legal fight to obtain club records amid threat to Easter racing tradition(skynews.com.au)
上記の訴訟は2021年12月末に判決が下り、2011年以降のORC Comittee内部及びRacing SAとの協議の議事録並びに電子メール等の開示がなされることになった。puntersの記事にはKaren Thomas裁判官のコメントが詳細に記載されており、このOakbank Racing Clubの一連のプロセスに対して痛烈な批判を行っている。なお、判決の内容は以下のサイトで入手可能である。
〇 Courts Administration Authority of South Australia - Judgements
〇 Nelson v Oakbank Racing Club Inc [2021] SADC 160(pdf)
〇 Jordan: Oakbank has nothing to hide(Racing.com)
一連の障害競馬支持者のアクションに対するORC側の主張。筆者のJames JordanはORCの委員であり、障害競馬の廃止の理由としてOakbank Racing Clubの経済状況が芳しくないことや、老朽化した施設の修繕に多額の費用が必要であること等が記載されている。
〇 Explosive documents reveal mistrust, bribery accusations(RSN)
上記の訴訟に基づいて公開された文書の内容に関する記事。過去、Great Eastern Steeplechase等の開催を目的としてAJRA会長のSandy McGregor氏から30万ドルの資金提供があったのだが、Racing SAのCEOであるNick Redin氏はこのMcGregor氏の資金提供を"bribery in its lowest form"と述べている。さらに、2021年の9月末にNick Redin氏はORCが障害競馬を廃止することを前提にRacing SAから300万ドルの資金提供を行うことを否定しているが、一方でORCのChief ExecutiveであるShane Collins氏のメールによるとそのような資金提供があったことも仄めかされている。また、上記Racing.comに尤もらしい長文記事を掲載したJames Jordan氏のORC委員会における委員資格の妥当性についても疑問視されているほか*55、ORCの決定に抗議するため委員会を辞任した複数の委員(Mark Angus氏及びRoman Williams氏)から、事前に必要な協議等がなされなかったことが明らかにされている。
〇 Racing SA slams ‘disgraceful’ legal action against Oakbank(Racenet)
これに対するRacing SA側の主張。Racing SAのRob Rorrison会長のコメント等が記載されている。障害競馬を開催しないことはORCを越えたRacing SAの決定であり、これは経済的な理由によるものであると述べられている*56。また、Oakbankの従業員や委員会メンバーは障害競馬支持者の一部から罵倒や脅迫等を受けており、ORCのChief ExecutiveであるShane Collins氏も辞任する等、一連の抗争に関連したOakbank側の負担についても言及されている。
〇 Pateman holds out hope for 2023 Oakbank jumps racing return(Punters)
一方、SA州の障害競馬の開催可能性に関するオーストラリア障害競馬を代表する障害騎手兼調教師であるSteven Pateman氏の見解。特にSA州の障害競馬はCOVID-19による騎手の移動制限により騎手の確保に苦労していたものの、COVID-19による緊急時の対策に基づいて廃止を判断することは妥当性を欠くこと、SA州の調教師は障害馬を確保していたこと、長年に渡ってRacing SA側からSA州の障害競馬において、障害競走の出走に必要なTrial開催の不足、トレーニング施設の不足、不十分な手当等、障害競馬の開催に際して適切な施策が行われなかったこと、さらにOabankのEaster Carnivalの重要性等が指摘されている。
〇 VIDEO: Oakbank Easter Racing Carnival goes ahead without some traditional races(abc.net)
〇 Fight for the Oakbank up and overs not over(RSN)
Oakbank開催を含むSA州の障害競馬の開催是非について議論が続く中、2022年4月には初の平地競争のみとなったOakbankのEaster Carnivalが行われた*57。平地競争の質については本記事の領域ではないことから記載を省略する。どうやらRacing SA側は観客数7000人と主張しているものの、実際の観客数はたったの3500人だったようで、歴史あるOakbankの名物開催は歴代観客数の最低記録を更新し、新たなOakbankのEaster Carnivalは閑古鳥が鳴く門出となった。しかも例によって動物愛護団体が出張ってきていたようで、なかなかに悲しい光景が作り出されたようだ*58*59。一方で、ORCの幹部はこの開催を"milestone"と評価したようだ*60*61。
〇 SA Jump Racing v The Greens - AGAIN!(SAJR Newsletter)
2022年5月に入り、Greens Legislative CouncilのメンバーであるTammy FranksがSA州議会にSA州の障害競馬を禁止する法案を提出した。以前にもこれと同様のアクションがあったようだが、今般のこのアクションはRacing SA及びORCが障害競馬を開催しないことを決定した一連の経緯に基づくものだと考えられる。Australian Greensは以下のとおり2021年11月にオーストラリア全土で競馬産業を廃止する計画を発表しており、この法案はその一部である。
〇 Greens launch plan to shutdown horse racing(The Greens)
偽善と欺瞞に満ちた筆舌に尽くし難い醜悪さ。これが本場の動物愛護団体です。一般常識と一般的な教養を備えた方にとっては吐き気を催す内容なので閲覧注意ですが、精神的に余力のある場合はご笑覧ください。
〇 SAJR - South Australian Jumps Racing(Facebook)
〇 SAJR - South Australian Jumps Racing(Facebook)
〇 Your How to Vote Card for the Oakbank Committee Election(SAJR Newsletter)
上記の訴訟等を踏まえ、2022年5月17日にORCの特別総会、さらに2022年6月10日に臨時総会が開催されることになり、ORCは新たな委員会メンバーを選出することになった。上記の記事のとおり、候補者の中にはFrances Nelson元調教師等を含む障害競馬支持者が複数含まれていた。
〇 RV: Lobby email ‘totally inappropriate’(Racing.com)
この投票においては議論があり、どうやらVIC州において障害競馬を開催する主要な競馬場であるWarrnambool Racing ClubのCEO、Tom O'Connor氏がメンバーにOakbankの投票に参加するよう促した旨が指摘されている。
〇 SAJR - South Australian Jumps Racing(Facebook)
〇 New legal challenge looms as racing rebels reject 'flawed' Oakbank ballot(In Daily)
しかしながら、ORCの委員会選挙は現在の8人の委員全員が再選された。一方で、どうやら投票方法に問題があるという話が主に障害競馬の支持者から出ており、投票用紙の配達遅れや電子投票が不許可になる等により*62*63、州外や海外の会員をはじめとする一部の会員に実質的に投票権が付与されなかったそうだ。現会長のArabella Bransonはこの選挙の正当性を主張したようだが、Frances Nelsonら障害競馬支持者はこの選挙の無効性を主張し、更なる法的措置が取られる可能性を示唆した。
〇 Jumps racing to be banned in SA(Racing.com)
2022年7月、上記のSA Greensにより提出された法案が州議会で可決され、残念ながらSA州の障害競馬が全面的に禁止されることになった。SA州副首相Susan Close及びRacing SAのCEOであるNick Redin氏のコメントによれば、この決定は動物愛護上の問題ではなく経済的な理由によるものであるとされている。この法案の可決に際して、SA州副首相Susan CloseによればRacing SA側から政府へのロビー活動があった旨の言及があり*64、すなわちRacing SAはThe Greensと提携して障害競馬の禁止を進めた旨が指摘されている*65。
〇 'The racing industry gave up' - South Australia calls it quits on jump racing(Racing Post)
この決定にはRacing Postも反応した。内容的には流石に表面的なものだが、facebookの投稿についたコメントを読む限りではイギリス・アイルランド競馬ファンはやはり鋭敏に反応しているようだ*66*67。
〇 Jumps racing to be banned in South Australia with state government backing Greens bill(abc.net)
上記の決定について、元Oakbank Easter Racing Carnivalの会長であるJohn Glatz氏はこの決定によりOakbankの衰退は避けられないこと、さらにThe Greensがさらに競馬産業全体を攻撃のターゲットにすることを懸念している。特に2歳馬限定競走、競馬産業以外ではグレイハウンドレースがそのやり玉に上がることが懸念されているようだ。一方で、現ORC会長のArabella BransonやGreensのTammy Franksはこの決定がOakbankの発展に繋がると述べているようだが*68、いくらなんでもこの管見には失笑するしかない。
〇 “Welcome To South Australia, Where Jumps Racing Came To Die”(RSN)
上記の決定に関するMatt Stewart氏の記事。タイトルはVIC州とSA州の州境に存在するわかりにくい標識に掛けた強烈な皮肉となっている。記事にはここまでのVIC州における障害競馬の再興と、一方のSA州の凋落に関する経緯も記載されている。また、記事中にはWarrnambool Racing ClubのNick Rule氏により、The Greensが持ち出した統計は不適切である旨の指摘がされているとの記載もある。
〇 “Poor governance and representation” questioned as SA looks to ban jumps racing(sen.com)
こちらも上記決定に関する論考。VIC州のManny Gelagotis調教師はSA Racingの貧弱なガバナンスにより、Tony McEvoy調教師をはじめとする多くの有力な調教師がSA州を離れたことを指摘している*69*70。
〇 The World of Jumps Racing(Facebook)
南オーストラリア州の障害競馬の歴史を踏まえた今般の一連の経緯に関するJohn Adams氏の論考。John Adams氏はAJRA等で要職を務めたオーストラリアの障害競馬の歴史家であり、その著書も存在する*71*72。1970年代には年間70以上の障害競馬を開催していたSA州だが、レースレベルを維持するための適切な施策が欠如していたこと、及び、騎手並びに競走馬の減少に伴うレース数の減少がSA州の障害競馬の衰退を引き起こした旨が指摘されている。この論考は隣のVIC州や、特に南島において類似の現象が生じているニュージーランドの障害競馬は勿論*73、日本の障害競馬においても非常に重要な教訓となるだろう。
〇 新たな打撃を受け絶滅の危機に晒される豪州障害競走(オーストラリア)(JAIRS)(2022年7月22日付追記)
JAIRSから2022年7月21日付で発表された記事。2022年6月26日付のThoroughbred Racing Commentaryの記事の和訳である。しかしながら、そもそも元の記事は当ブログにおいて追加の情報を提供しないことから掲載する価値がないと判断した記事であり、その内容の質は残念ながら劣悪である。当ブログを訪問されている賢明な皆様ならばお気づきかと拝察するが、オーストラリア障害競走に関する背景情報*74*75*76及び動物愛護団体のアクション*77等に関して断片的かつ偏った情報のみ提示することで読み手のミスリードを誘う記載となっているほか、当ブログで掲載している複数の重要な経緯*78*79*80や廃止に至った理由*81といった不可欠な情報が省略されている等*82、複数の問題を孕んだ粗悪な偏向記事であると言わざるを得ない*83。
*VIC州の動向について
〇 The Bool announces record Carnival(Racing.com)
一方で、VIC州の主要障害競馬であるGrand Annual Steeplechaseを中心とするWarrnamboolのMay Carnivalが2022年5月に開催され、3日間の売上高は6700万ドルを超え、合計約3万人が集まるなど、過去最高の大成功を収めた*84。過去、VIC州の障害競馬の開催は2009年頃に危機的状況に陥ったこともあるのだが、上記のOakbankの末期的で悲惨な状況と比較するとその成功は一目瞭然である*85。
〇 Jump racing has leapt forward. Where to now?(RSN)
上記のMay Carnivalを含めたVIC州の障害競馬の成功に関する記事。Warrnamboolだけではなく、Casterton、Sandownといった他の競馬場の障害競馬開催でも多数の観客を集めた旨が記載されている。特に、一部の開催では一日のレーシングプログラム全てが障害競走のみで構成されており、非常に好評を博しているようだ*86。記事中にはJumps Racing Associationの元CEOで、オーストラリア障害競馬の歴史に詳しいJohn Adams氏や、元Melbourne Racing Clubの会長であるMike Symons氏の考察も記載されており、John Adams氏は起伏のあるYarra Valley競馬場の障害競馬の復活が鍵であると述べている*87。
〇 Green paper to guide discussion on Victorian racing infrastructure(Racing Victoria)
2022年6月に発表されたRacing Victoriaによる次の10年間におけるVIC州競馬開催に関する指針。この中にはVIC州障害競馬の発展に関する記載も盛り込まれている。
〇 JUMPS RACING CONTINUES TO GROW IN VICTORIA(AJRA)
SA州の決定を踏まえ、AJRAが発表したMedia Statement。VIC州の障害競馬は2009-2010年から大幅に改善されており、出走馬や賞金額の増加、落馬率の低下と安全性の向上が強調されている。特に、2021年の出走馬は計186頭で2009年以降最多であること、2021年のOne Fit Hurdleの導入により落馬率が最低であったこと等、具体的なエビデンスに基づいた主張がなされている*88。この主張を裏付ける意見としては、例えばオーストラリアの著名な調教師であるEric Musgrove氏は、近年のオーストラリア障害競馬におけるGai Waterhouse調教師やCiaron Maher調教師をはじめとする多数の有力な調教師の参戦はオーストラリア障害競馬の再興を示していると述べている*89。同記事の中で師は動物愛護団体がしばしば引き合いに出す安全性上の問題について、転倒して怪我をしたのはトラクターのギアで躓いて鎖骨を骨折した自分くらいなものだと笑い飛ばしている*90。
〇 Part 1: Beginnings, 1872-1882(Country Racing)
Grand Annual Steeplechase150周年を記念したその歴史をたどる記事。(おそらく)全17回。
*参考
〇 New industry report finds high rehoming rate for ex-jumps horses, despite claims of animal cruelty(abc.net)
障害馬の余生と障害競走の安全性に関する記事。VIC州及びSA州の障害馬を追跡調査した"Life After Jumps Racing"によると、障害馬の95%が新しい住まいを見つけることに成功していること、及びイギリスで開発されたOne Fit Hurdleは障害競馬の安全性の向上に大きく貢献していることが記載されている。
〇 AJRA and Racing Victoria trial the British Authority Approved One Fit Hurdle(AJRA)
近年イギリスで導入されたOne Fit Hurdleに関する記事。このHurdleは安全性を向上させることを目的として開発されたもので、オーストラリアでも導入され、イギリス及びオーストラリアにおいて統計学的に安全性の向上に肯定的な結果を示しているほか、調教師や騎手からも前向きな意見が寄せられている。
*1:Alfred von Doussaに因んだ競走
*4:https://www.racing.com/form/2019-04-20/oakbank/race/5#/results
*5:https://www.racing.com/form/2019-05-02/warrnambool/race/7#/results
*6:https://www.racing.com/form/2019-08-25/sportsbet-ballarat/race/6
*7:https://www.racing.com/form/2019-04-30/warrnambool/race/6#/results
*8:https://www.racing.com/form/2019-05-26/ladbrokes-park-lakeside/race/4#/results
*9:https://www.racing.com/form/2019-08-04/ladbrokes-park-lakeside/race/1#/results
*10:Oakbank is an Easter Racing Carnival to remember
*11:WHY YOU SHOULD ATTEND THE OAKBANK EASTER RACES
*12:Melbourne Cup winner Gai Waterhouse hits out at jumps racing move, joins Oakbank Racing Club
*13:Clear favourite for Great Eastern Steeplechase
*14:CAN HISTORY BE TRASHED SO EASILY?
*15:Oakbank Easter Racing Carnival numbers dropping as protesters target jumps racing
*16:Legal fight to obtain club records amid threat to Easter racing tradition
*17:Oakbank Carnival To Generate Millions For Hills Economy
*18:Jumps Racing to Remain the Highlight of the Easter Racing Carnival at Oakbank
*19:TRSA announces massive changes
*20:https://www.racing.com/form/2021-04-03/oakbank/race/5
*23:21/12/24 第9回(2007)中山グランドジャンプ 海外からの参戦馬
*24:21/12/16 第4回(2002)中山グランドジャンプ 海外からの参戦馬
*25:King of Oakbank Eric Musgrove staying one jump ahead as industry enjoys a resurgence
*26:Heyday of jumps racing now a distant memory
*27:South Australia西海岸の障害競馬についてはJohn Adams氏の解説が詳しい
*28:2004年の中山グランドジャンプに参戦したMisty Weatherはタスマニア州Grand National Steeplechaseの勝ち馬であり、タスマニア州障害最強馬としてほぼ最後の競走馬である
*29:Jumping to Conclusions? Media Coverage of Jumps Racing Debates in Australia. Daniel Montoya, et al. 2012, Society & Animals
*30:Jump Horse Safety: Reconciling Public Debate and Australian Thoroughbred Jump Racing Data, 2012–2014. Karen Ruse et al. Animals 2015, 5
*31:Warrnambool Grand Annual Steeplechase: Horse welfare now 'front of mind' in Australian jumps racing
*32:SA州Riverland地域のRenmark Berriに関するJohn Adams氏の解説
*33:https://www.racingvictoria.com.au/news/2019-01-09/2019-victorian-jumps-racing-program
*34:https://www.racingandsports.com.au/news/racing/news/2019-12-16/rv-releases-2020-jumps-racing-program/504727
*35:Jump Horse Safety: Reconciling Public Debate and Australian Thoroughbred Jump Racing Data, 2012–2014. Karen Ruse et al. Animals 2015, 5
*36:10 reasons why you should support jumps racing
*37:Future of jumps races in doubt because of declining numbers
*38:Veteran trainer Eric Musgrove thrives as jumps revival gathers momentum
*39:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2019/06/22/000000_1
*40:https://www.racing.com/horses/searaven-2011
*41:https://www.racing.com/horses/double-bluff-ire-2010
*42:同レースを勝ったTallyho Twinkletoeは今世紀のオセアニア障害競馬において最強クラスの馬であり、いくらなんでも相手が強すぎたというのはあるのだが、SA州Grand National Hurdleの直後のBrendan Drechsler Hurdleでも大敗しているのは少々頂けない。
*43:Jump Horse Safety: Reconciling Public Debate and Australian Thoroughbred Jump Racing Data, 2012–2014. Karen Ruse et al. Animals 2015, 5
*44:ただし、2021年には元々配管工を務めていたDarren McLeadがSA州を拠点とする障害騎手として初勝利をあげたという明るいニュースもある
*45:TRSA makes a call on Oakbank Still major prize money for owners as Victorian races continue.
*46:実にくだらないアイデアである。仮に中山グランドジャンプを廃止し、代替競走として「中山グランドジャンプメモリアルステークス」とか適当な名前のついた芝1600メートルの凡庸な平地競争が行われたとして、そんなものに障害競馬ファンの誰が関心を示すだろうか?
*47:UPDATE Jumps Racing at Oakbank – South Australian Jumps Racing
*48:この決定に抗議して2名のORC Committeeのメンバーが辞任したそうだ
*49:https://twitter.com/PatemanRacing/status/1450746150852579331
*50:現Classic Hurdle
*51:https://twitter.com/PakenhamRacing/status/1447409152930713605
*52:OAKBANK MEMBERSHIP APPLICATIONS REJECTED – WHY?
*53:https://twitter.com/FHoulahan/status/1464411723004211201
*54:OAKBANK MEMBERSHIP APPLICATIONS REJECTED – WHY?
*55:上記の記事の中で、James Jordan氏はORCの現会長であるArabella Brasonより勧誘を受けた旨が記載されている
*56:元VIC州の障害騎手であり、現Rising Sun Syndicate(https://www.risingsunsyndicate.com/)の代表取締役である川上鉱介氏の著書によると、SA州の競馬自体が賞金額等の面から伸び悩んでいるようで、そもそもSA州の競馬全体としてあまり芳しい状況ではないのかもしれない
*57:Oakbank to 'come to life' this Easter
*58:https://www.facebook.com/SAJR5243/videos/1207520276740031/
*59:https://www.facebook.com/SAJR5243/posts/pfbid036toUzNDVtFWHkvDzVkXBsoAzXPc5T1n3kTUSJWa93WqF5geBaBeRXZZDGRRq3NDZl
*60:https://twitter.com/hvasstan/status/1516748373856243713
*61:一種の自虐かもしれない。オーストラリア人の笑いのセンスはよくわからない。
*62:https://twitter.com/TheCalebBond/status/1536635047893032960
*63:https://twitter.com/Voiceof64877458/status/1535463397550354432
*64:https://www.facebook.com/groups/178235632224453/posts/5204309819616984/
*65:https://www.facebook.com/SAJR5243/posts/pfbid0tYW4UXKhFVfAtBaVWMjA48jJFnEDEdjC3koZNbmAbbRSrYtdKsdCVVT7BoXJe83ol
*66:https://www.facebook.com/racingpost/posts/pfbid0336dmFnfrHjbdnQckWDVKCpAEQ85niLzhLc7e114TNiqnBAKmok7CtoqphLxXPU3Al
*67:例によって日本の競馬メディアで関連する記事はなく、日本の障害競馬ファンで反応している人が殆どいないことは残念である。
*68:所謂「おまいう」案件である
*69:https://twitter.com/hvasstan/status/1544614945119420416
*70:End of an era as Tony McEvoy shuts down iconic SA training base
*71:Over the Hurdles: The History of Jumping Racing in Australia
*72:https://www.spire.org.au/resources/peer-support/peer-support-team/john-adams/
*73:Jumps racing unlikely to return to Riverton racecourse
*74:例えば、オーストラリア障害競馬の状況として20年前と比較して記載されているが、そもそも当ブログに記載したとおり、特に近年のVIC州とSA州は大きく状況が異なることから区別して考察すべきであり、特にVIC州は上記2009年頃の危機的状況とそこからの動向を含めて論じる必要があることを踏まえると、20年前の状況のみを現在との引き合いに出すことは不適切である。さらに、記事中には競争数の推移のみが具体的な数値すら示さずに記載されているが、競馬の開催状況は競争数のみならず出走頭数や賞金額等、様々な観点から多角的に考察する必要があることは自明の理であり、特にVIC州の障害競走は出走頭数や賞金額等に着目すると大きく異なった姿が見えてくる。記事中にはVIC州及びSA州以外の障害競馬開催状況についても記載されているが、これらの2州及びタスマニア州以外は第二次世界大戦以前に障害競馬を様々な理由で廃止しており、そこからもはや70年近くが経過した2022年現在においてこれらの州の障害競馬の開催状況を引用することはいくらなんでも妥当性を欠くことは明らかである。実際に、20世紀後半のOakbankのEaster Carnivalの素晴らしい成功を踏まえると、この記載のいい加減さは明白である。加えて、John Adams氏の論考にあるとおりタスマニア州は"Tasmanian Grand National"を開催していたDeloraine競馬場の経営母体が替わった影響で当該競走をはじめとする障害競馬開催を廃止しており、その経緯は複雑であり、当該記事のいい加減な記載のように要約できるものではない。このように、オーストラリア障害競馬に関する背景情報に関する記載のみを取っても、その記載は悪意を持って一部の情報を論旨に合わせて都合よく切り取ったものであり、中立的で正確な記載とは程遠い内容となっている。
*75:当該記事中にはIFHAの統計が引用されているが、仮に20年前であったとしてもオーストラリア障害競馬の開催規模として年間数千競走を実施しているイギリス・アイルランド・フランスと比較することは不適切であり、しかもこの記事には2019年の統計しか提示されておらず、肝心の「20年前」の数値がどこにも記載されていないという、まともな科学的思考ができる人間にとっては失笑もののエビデンスレベルである。また、「欧州」と雑に一括りにされているが、特に近年大きく競争数を減らしているドイツをはじめ、イタリアやチェコ、ハンガリー、北欧等において障害競馬の開催状況は決して順調ではなく、オーストラリアと比較しても遥かに脆弱な基盤しか持たない障害競馬開催国は多い。今世紀に入って、日本で広く知られることなく消えて行った欧州の障害競馬は無数に存在する。むしろ近年のVIC州の再興は世界的にみても非常に明るい話題である。
*76:2019年以降もオーストラリア障害競争数が減少している旨の記載があるが、当たり前である。2020年以降、我々がどのような世界を生きていたか理解しているのだろうか? おそらく筆者はコロナはただの風邪だと思っているのだろう。
*77:The Greensは今般のアクション以前にも障害競馬を廃止する法案を提出しており、今般のアクションは障害競馬を廃止する旨の発表を行ったSA Racing側の動きを踏まえたものである。さらに、SA Racing側からThe Greensが提出した法案を可決させるようロビー活動が行われた旨が多数指摘されており、この記事に記載されているように、Oakbankの障害競馬存続を求める活動を引き起こしたことで人間と動物の共生する社会に仇なす偽善者たちが動き出したわけではない。むしろ、本来競馬産業の振興において主体的な役割を果たすことがその存在意義であるはずのSA RacingがThe Greensのような社会的害悪と手を組んで競馬産業の一部を廃止に追い込んだことは大いに問題視されなければいけない。
*78:例えば、そもそもなぜ法廷にまでこの問題が持ち込まれたのか? それはORC側の不誠実かつ強引な対応が理由であり、ステークホルダーへの事前協議、メンバーシップ申請及び更新並びに総会招集の拒否等、数多くの問題を踏まえてやむを得ず訴訟沙汰となったことはもはや火を見るよりも明らかである。さらに、この訴訟の結果として公開されたORCの内部文書にも多数の問題点が指摘されており、議論の火種となっている。しかし、この記事においては一切触れられていない。
*79:当ブログに記載したとおり、SA州競馬の衰退を招いたRacing SAの不十分な競馬開催に対する施策については識者から複数の指摘がなされているが、そもそもSA州全体の競馬の推移についての記載はなく、この記事においてはそのような経緯及び施策については一切触れられていない。
*80:他にも、この記事中でFrances Nelsonらによる投票の公平性に関する指摘については多数の競馬関係者及び専門家からエビデンスに基づいて同様の意見が出されているが、この記事ではひどく矮小化された記載となっている。なお、記事中にぐだぐだと記載されたORC側の反論も全くの的外れで意味不明なものである。
*81:そもそもRacing SAが持ち出してきた統計情報すら提示されておらず、客観性に欠く記事である。実際のところ、SA Racing側の言い分としては、廃止の理由として主に経済的な理由が挙げられている。実際にORCの経営状況は芳しくないようで、競馬中継を見れば一目瞭然だが、老朽化した設備はその惨めな状況を雄弁に物語っている。しかしそれらが歴史上この競馬場を支えてきた、そして支え続けていた重要な障害競馬を廃止する理由としての適切性については本来非常に慎重かつエビデンスに基づいた多角的な議論が必要であり、The Greensのようなカルト教団のアクションによって終焉を迎えてよいものではなかった。なお、SA Racing側の言い分として、州内の騎手や競走馬の不足等もまたその理由の一つであったが、当該記事には一切記載されていない。なお、その統計情報にも問題点が指摘されている。
*82:重要な経緯や記載が大幅に省かれているわりに、Warrnambool Racing Clubのアクションのようなどちらかというとどうでもいいような情報が盛り込まれており、やはり恣意的かつ悪意を持った情報の取捨選択がなされていると言わざるを得ない。おそらくこの記載はFrances NelsonらによるORC理事会への投票の公平性に対する疑義に対する反論として挙げたものと考えられるが、上記Frances Nelsonらによる指摘、及びORCはメンバーシップの更新及び申請において恣意的な操作を行っていたことが指摘されており、このWRCのアクションのみを取り上げるのはフェアな記載とはかけ離れたものである。なお、WRCにおいて最も重要な開催である"The Bool"の開催価値の維持において、Oakbank Easter Carnivalの存在は非常に重要であり、WRCにとってもこの問題が対岸の火事ではないことはまた事実である。
*83:JAIRSは定款第4条に「海外の競馬に関する情報の収集及び国内への提供」を当該財団の事業として掲げているが、このようないい加減な記事を選択したことを踏まえると、そのリテラシーについては大いに疑問である。和訳スキルが素人レベルなのは致し方ないとしても、情報発信を謳うプロフェッショナルであるのであれば、せめて発信する情報はきちんと精査しては如何でしょうか。
*84:https://twitter.com/Racing/status/1522070285318778880
*85:Wikipediaの障害競馬の項にはVIC州の障害競走は廃止されている旨の記載があるが、この情報は間違いである。そもそもこのページの記載は既に10年以上前のものと思われる記述が多く、残念ながら2022年現在の状況にそぐわないものが殆どである。
*86:素朴な疑問なのだが、日本の障害競馬ファンは1日のうち障害競馬が最高でも2レースしかないような開催に満足しているのだろうか?
*87:Yarra Valley競馬場は過去に生じた落馬事故が原因で障害競馬開催を廃止している
*88:10 reasons why you should support jumps racing
*89:Veteran trainer Eric Musgrove thrives as jumps revival gathers momentum
*90:Veteran trainer Eric Musgrove thrives as jumps revival gathers momentum