にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/09/18 Weekly National Hunt / Jump racing

9/15(木)

Belmont At the Big A (USA) Firm

William Entenmann Novice Stakes

TO BE RUN OVER NATIONAL FENCES A HURDLE FOR FOUR-YEAR OLDS AND UPWARD WHICH HAVE NOT WON OVER HURDLES PRIOR TO MARCH 1, 2021 OR WHICH HAVE NEVER WON THREE RACES, OTHER THAN THREE-YEAR OLDS. Two And Three Eighth Miles On The Hurdle. $75,000 (Replay)

1. Proven Innocent J: Jamie Bargary T: Jack Fisher

どうやら本来Belmont Parkで行われる予定だったのが、今年はBelmont Parkの改装のため"The Big A"と呼ばれるAqueductに場所を移して行われたようだ*1。このAqueduct競馬場で障害競走が行われるのは1974年以来となる*2

レースはStaet of Affairが引っ張るも早々にThe Mean Queenが先頭に。そのままThe Mean Queenが押し切るかと思いきや、最終障害から接近したProven Innocentがこれをゴール直前で捉えて勝利した。

The Mean Queenの復帰戦ということで注目されていたのだが、やや案外な結果となった。Proven InnocentはこれでSaratogaのAllowanceから連勝とした。元々アメリカ産馬でヨーロッパで障害競走の経験があるわけではなく、平地競争でもMaidenを勝ったのみと実績的には乏しいのだが、とはいえ上がり目のありそうな若馬ということで期待してもよいだろう。ただ、内容的にはほぼ平地のスピードで長期休養明けの馬を捉えきったというもので、The Mean Queenの本来の能力に匹敵する内容かと言われると少々微妙である。The Mean Queenはまさかの敗戦に終わったが、とはいえ約1年ぶりの休養明けということを考えれば上出来だろう。牝馬にも関わらずトップハンデの158lbとさすがに斤量もだいぶ背負っていたようで、内容的にはあまり悲観しなくてよさそうだ。

 

Lonesome Glory Handicap Stakes (G1)

TO BE RUN OVER NATIONAL FENCES A HURDLE HANDICAP FOR FOUR-YEAR-OLDS AND UPWARD. Two And One Half Miles On The Hurdle. $150,000 (Replay)

1. Noah And The Ark J: Harrison Beswick T: Todd McKenna

レースは例によってSnap Decisionが引っ張る展開で、やや隊列は全体的に長くなる。最終障害までを先頭で越えたSnap Decisionだが、そこから一気にNoah And The Arkが接近。そのままNoah And The ArkがSnap Decisionを突き放すと、終わってみれば約6馬身差をつけて圧勝した。

Noah And The Arkは元々イギリスにいた馬で、イギリス時代はClass4あたりをうろうろしており大レースへの出走歴はさっぱりないのだが、とはいえここにきてCamdenのHandicap Hurdleから連勝とした。140lbと最軽量の斤量であったとはいえ、ここにはイギリス時代にはこの馬と比べれば遥かに格上のSong For Someone、Ask Paddington、Belfast Banterも出走していたのだからわからないものである。ひとまず最終障害を越えてからのスピードは群を抜いており、今回は大いにハンデ的には恵まれたとはいえ期待したい一頭である。

Snap Decisionは168lbを背負って頑張った。今回の斤量はキログラム換算すれば約76.2kg、勝ち馬の140lbは63.5kgと、もはや別次元のレースをしているに等しい。3着のAsk Paddington、4着のSong for Someoneもそれぞれ146lb、150lbで、すなわち66.2kg、68.0kgなのだから、この馬の斤量的な負担の大きさは一目瞭然だろう。こればかりはチャンピオンホースの宿命故仕方がないのだが、それでもこの斤量を背負って2着に残るのだから大したものである。Danny Mullins騎手が騎乗したAsk Paddingtonはこれがアメリカ移籍初戦であったが、アメリカのHurdleにも無事対応できていた。今年の夏にはClass3から一気に4連勝を飾っていたように調子もよく、良馬場への適性もあったようだ。イギリスでは実績を残していたSong for Someone、Belfast Banterもいたのだが、いずれもどうにもぱっとしない結果に終わった。イギリスのSam Twiston-Davies騎手もこの日はアメリカに来ており、地元のRediceanに騎乗していたようだが、特に良いところなく終わったようだ。

 

9/18(日)

Bro Park (SWE) Steeplechase god, Häckbana god

H. M. Drottingens Pris

130.000 kr H.M.Drottningens hederspris till segrande hästens ryttare. Minnespris till segrande hästens ägare, För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechase eller häcklöpning 3800m häck (Replay)

1. Al Zaraqaan J: Gavin Sheehan T: Archie Watson

Stockholm Cup Dayということで話題になっていたようだが、この日のBro Parkで行われる障害競走2レースはいずれもスウェーデン障害競馬における主要競走の一つとして数えられる。レースはゆるゆると引っ張ったAl ZaraqaanがそのままMonsieur Vicを振り切って勝利した。Al Zaraqaanはイギリス調教馬で、イギリスにおいてはClass5のHurdle競走を勝利している。Golden Hornの産駒ということで元々は平地競争を目的に使ってきたようで、今年2月のWinter Derbyにも参戦しているようだ、この日のStockholm CupにArchie Watson調教師の馬が参戦していたようで、それに合わせて遠征してきた可能性もあるが、とはいえさすがにここでは馬の能力自体が違ったようだ。イギリスに戻って期待したい。今年のSvenskt Champion Hurdleを勝った地元代表のMonsieur VicはAl Zaraqaanに食い下がって地元の意地を見せた。3着にはチェコから遠征してきたAmbrosiusが入った。

 

H. M. Konungens Pris

130.000 kr H.M.Konungens hederspris till segrande hästens ryttare. Minnespris till segrande hästens ägare För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechase. 4200m steeplechase (Replay)

1. Her Him J: Henrik Engblom T: Ivana Porkatova

なぜかスタート直後にThree Is Companyの騎手が落馬するアクシデント。レースはのんびりとLuris Pegasusが逃げて好位からMutadaffeqが追いかけるも、後半からえっちらおっちらと上がってきたHer HimがLuris Pegasusを振り切って勝利した。

Her Himはチェコからの遠征馬で、今年はSvenskt Grand Nationalの勝利もある。前走はBad Harzburgに遠征して良いところはなかったのだが、どうやらかなりズブいところがあるようで、ドイツのスピードには対応できなかったということだろう。とはいえ特別飛越が上手いという印象もなく、一方でかなり押っ付けて走る必要もあるということで、今後もレース選択には悩みそうなところである。2019年にSvenskt Champion Hurdleを勝ったLuris Pegasusが2着。ここまでSteeplechaseでは勝ち星がないのだが、とはいえメンバーが揃った中でいい競馬で、飛越についてはHer Himよりも良いものを見せていた。地元期待のMutadaffeqは好位から進めるも、伸びきれずに3着に終わった。Svenskt Grand Nationalで2着に入り、その後Pardubiceにも遠征したThree Is Companyは不幸な落馬で、Pardubiceでも返し馬で落馬し、結果的に本番での騎乗が叶わなかったKim Stern騎手の不幸っぷりが目立つ結果となってしまった。

 

Waikato RC @ Te Rapa (NZ) Soft6

Peter Kelly - Bayleys Great Northern Hurdle (PJR) OPN HDL 4200m (Replay)

1. Abu Dhabi J: Hamish McNeill T: Shaun & Emma Clotworthy

今年から正式にTe Rapaに場所を移して行われるGreat Northern Day。海に近いEllerslieと異なり、Te Rapaは内陸に存在し、この地理的な条件により天候及び馬場条件の傾向が異なる可能性があるのだが、この辺りは今後の検討課題だろう。レースは人気のNedwinが逃げるも、途中からAbu Dhabiが前に行く。このAbu Dhabiを内からKajinoが捉えに係るも、Abu Dhabiがこれを凌いで勝利した。

Abu DhabiはこれでHurdleは2勝目とした。前走のPakuranga Hunt Open HurdleではNedwinやKajinoから大きく離されての5着で、明らかにここでは格下と思われていただけに番狂わせの勝利となった。Soft6とニュージーランド障害競走としてはやや珍しい良馬場で、かつNedwinがゆったりと引っ張るところを早々にプレッシャーを掛けに行ったHamish McNeill騎手の好騎乗が光った。ただし、ここまでHurdleでもFlatでもあまり良いところはなかった馬だけに、今後どのようなレース振りをするかは少し注意した方がいいだろう。今年の上り馬Kajinoが惜しい2着で、68.5kgを背負っていたことを考えるとこちらを上に取った方がいいだろう。Shaun Phelan騎手の騎乗はさすがに安定していたが、今回はHamish McNeill騎手がやや上手であった。Emily Farr騎手が後方から一発に賭けたBanks Roadも人気薄ながら3着に来た。Emily Farr騎手はこのような思い切った騎乗をしばしば見せることがあり、そのような場合の番狂わせには引き続き注目した方がいいだろう。NedwinはあえてAbu Dhabiが前に行ったところをスルーして直線に賭けたが、そこから後退して4着に終わった。

 

Ben Foote Racing Great Northern Steeplechase (PJR) OPN STP 6500m (Replay)

1. Kiddo J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

途中に大きな丘のあるEllerslie競馬場のレース条件とは異なり、Te Rapaでは全部で32もの障害を飛越するコースが設定されたようだ。レースは例によってMagic Wonderが前に伺うも、やや飛越をミスしたタイミングでEmily Farr騎手のMagic Cannonが絡んで行く。Magic Wonderは一時は抵抗するもそのままMagic Cannonが先頭に。しかし勝負所から上がってきたKiddoが先頭に出てくると、そのまま追いかけてきたDonardo以下を振り切って勝利した。Magic Wonderは勝負所から脱落し4着。No Tipは最後位置を下げて5着に終わった。

Kiddoにとっては"Fairytale Story"となる勝利となった。Kiddo自身は2018年にMaiden Hurdleを勝利し、Ready EddieやJackfrostの勝利したGrand National Hurdlesにも参戦した馬であるが、2018年の終わりには大きな故障で引退の危機にあったようだ。しかしながらそこから幹細胞治療と長期の休養を経て、2021年の頭にレースに復帰することに成功したそうだ。Kiddoは同馬を共同で生産したWarren Kidd氏の名前にちなんで命名された馬だが、Warren Kidd氏はこのレースの直前に癌で亡くなっており、氏に捧げる記念すべき勝利にもなったようだ*3。Kiddoは直前のPakuranga Hunt Cup (PJR)ではNo Tip及びMagic Wonderからは離れた3着に終わっており、そこから馬場が良化したことが良かった可能性もあるのだが、競馬とは何が起こるかわからないものである。DonardoもまたPakuranga Huntでは4着に終わっていた馬、The Anarchistに至っては同レースで6着と、直前の前哨戦で振るわなかった馬が総じて前に来たというのは面白いものである。

人気のMagic Wonderは積極的に引っ張るも、最後は失速して4着。全体的に低い飛越を見せる馬なのだが、この日はやたらとミスを先発しており、どうやらStewards Reportによれば胸部の裂傷があったようだ。ただ、それよりはMagic Cannonに執拗に絡まれた結果ペースを乱したことが原因だろう。No Tipは最後失速したが、どうやら脱水症状を呈していたようで、こればかりは仕方がないことだろう。No Tipは11歳、Magic Wonderは10歳といずれも年齢を重ねているが、今年のここまでのレース振りを見る限りではまだまだ元気なようで、この日はあまり条件的に向かなかったものの、来年もまたこの路線で見てみたい馬たちである。

 

その他

Willie Mullins and Gigginstown back together after six-year split (Racing Post)

以前GigginstownとWillie Mullinsは調教費用の問題で決裂したのだが、どうやら6年間の時を経て再度タッグを組むことになったようだ。Gigginstownは競馬活動を縮小することを過去に発表しているが、未だにその存在感はアイルランド競馬において大きなものがあり、有力な馬主と調教師のコンビ復活ということで再び期待できそうだ。

Dostihy na Ukrajině i přes konflikt pokračují. V neděli se v Oděse poběží ukrajinské derby (Fitmin)

チェコ競馬メディアにウクライナ競馬に関する記事が掲載されていたので紹介まで。どうやらロシアによる侵攻にも関わらずウクライナ競馬は開催が継続されており、今週は"Великий Всеукраїнський приз"(Ukranian Derby)が開催されるようで、戦火の中で逞しく生きている人々や馬たちの姿が伝わってくる良記事でである。一方で、ロシアによる侵攻で大きな打撃を受けているようで、ハリコフ地域のスタッドファームに繋養されていた馬の30頭中22頭が死亡したという痛ましい情報も記載されている。

На Одеському іподромі відбувся благодійний захід «Шепіт.Одеса» (priboi.news)

上記9月17日にオデーサ競馬場(Одесский ипподром)で行われた"Шепіт.Одеса"に関する記事。どうやら入場料無料で、ロシアの攻撃によって被害を受けた"Дніпропетровському кінному заводу N65"の修復費用を集めるチャリティーイベントとして実施されたようだ。同競馬場のFacebookに投稿された写真を見ると、どうやら"Великий Всеукраїнський приз"(Ukranian Derby)"МЯТА"という馬が勝ったようだ。

 

以下、直近のウクライナ競馬産業に関する参考情報を示す。今年のオデーサ競馬場は3月の時点で飼料の不足が問題になる可能性がある旨の報道がされていたが、どうやら6月25日から開催が始まっていたようだ。キーウには速歩競走を行う競馬場が存在するが、こちらも6月19日から開催されている。一方でウクライナの馬産業は大きな被害を受けており、特にロシアによる占領を受けた地域での被害は甚大で、繋養されていた殆どの馬が失われたようだ。

На одесском ипподроме открылся новый сезон скачек (видео) (фото) (Odessa Life)

〇  Одесский ипподром: овса осталось на месяц (Moldavskie Vedomosti)

"У них может случится разрыв сердца": Украина может потерять сразу несколько конных заводов (focus.ua)

Киевский ипподром открывает сезон: в первых заездах поучаствуют французские рысаки (focus.ua)

У Миколаєві врятували усіх тварин зі школи верхової їзди — новою домівкою для 30 коней став Одеський іподром (nikvesti.com)