にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/09/25 Weekly National Hunt / Jump racing

9/21(水)

Listowel (IRE) Good

Kerry National Handicap Chase (Grade A) 3m (Replay)

1. Busselton J: J J Slevin T: Joseph O'Brien

この時期の名物レースだが、Hewickの参戦が話題になっていた。レースはBusseltonが積極的に逃げる展開で、好位からHewick。Hewickはじわじわと前に差を詰めると、最終障害では先頭に並びかけるが、最終障害で落馬。前で抵抗していたBusseltonがそのまま逃げ切り勝利した。

Busseltonは昨シーズンNovice Chaseを走っていた馬で、Joseph O'Brien厩舎にはよくありがちなのだが、Chaseはすでに12走とやたらと経験はあるようだ。重賞クラスでは少々厳しそうな成績だったのだが、とはいえ良馬場のスピード勝負がいいようで、ここではJ J Slevin騎手の積極的な騎乗と10st5lbという軽量も生かして逃げ切ることに成功した。Galway Plate (Grade A)を勝利し、ここでは11st12lbのトップハンデを背負っていたHewickは勝ちに等しい内容で、このスピードが生きる展開で一頭抜けたトップハンデを背負っていたことを考えれば大したものだろう。そのGalway Plate (Grade A)で3着に頑張ったEl Barraはじわじわと遅れ途中棄権。Freewheelin Dylan、Ronald Pumpといった実績馬もいたのだが、さっぱりレースについていけず大敗に終わった。

 

9/24(土)

Auteuil (FR) Tres Souple (4.0)

Prix Robert Lejeune (G3)

Haies Pour poulains entiers et hongres de 3 ans. 3600m (Replay)

1. St Donats J: James Reveley T: Hugo Merienne

淡々と引っ張ったSt DonatsがNot Too Badを振り切って勝利した。St DonatsはこれでHurdleは3勝目とした。前走のListedでは良血馬David Du Berlaisに僅差で敗れていたが、ここでは結果を残した。Saint Des Saints産駒らしい良質なスピードのある馬だが、G3とはいえ全体的にメンバーが楽になったという印象もあり、相手関係には注意したほうがいいかもしれない。そのListedでは大敗していたNot Too Badが2着に来た。Ulysses産駒の牡馬Lincolnも出走していたが、良いところなく離れた5着に敗れた。

 

Prix The Fellow (G3)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans. 4400m (Replay)

1. Diamond Carl J: Bertrand Lestrade T: Francois Nicolle

PrimcoやAltesse Du Berlaisなどが前に行く展開も、じわじわと後方からDiamond Carlが進出。そのままImpressive以下を4馬身半ほど振り切って勝利した。

Diamond CarlはこれでSteeplechase転向後4戦4勝、6月にはPrix La Perichole (G3)を圧勝している。Gros Open Ditchなどを積極的に飛越したAltesse Du Berlaisを見ながら余裕をもって追い出すレース運びは明らかにここでは一枚上手のものであり、着差は4馬身半とあまりつかなかったのだが、レース内容としては格上のものであった。Prix Ferdinand Dufaure (G1)には参戦していないのだが、ここから楽しみな馬だろう。そのPrix Ferdinand Dufaure (G1)で2着に入ったImpressiveが2着。Prix Ferdinand Dufaure (G1)を勝ったAltesse Du Berlaisは積極的に運んだが、最終コーナーから後続が殺到し、そこから伸びきれず4着に終わった。Prix Ferdinand Dufaure (G1)では途中棄権に終わったものの、そこまでPrix Jean Stern (G2)を含めいいレースを続けていたLa Maniganceが3着で、この辺りは今回がシーズン初戦ということも考えると、引き続き力関係は慎重に判断するべきだろう。

 

Prix De Compiegne (G3)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 3900m (Replay)

1. Hermes Baie J: Bertrand Lestrade T: Francois Nicolle

レースは好位から進めたHermes Baieがそのまま後続に8馬身差をつけて圧勝した。Hermes Baieはいうまでもなく春のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)でL'Autonomie以下を凌いで勝利した5歳馬で、これが秋の始動戦であったがさすがに力を見せた。メンバー的にはかなり格下で、最終コーナーでは馬群が密集するように慎重なレース展開ではあったが、それでもこれだけ千切るのだから大したものだろう。5歳牝馬Roberta Hasは春にはPrix Christian De Tredern (G3)を圧勝してきた馬だが、強敵相手に頑張って2着に入った。Folsom Prison、Porto Polloといったこの路線の常連が上位に来た。5歳馬としてはPrix Renaud Du Vivier (G1)ではThelemeの2着に入ったColbert Du Berlaisもいたのだが、こちらは良いところなく大敗。イギリスからはGoa Lil、Eden Du Houxの2頭が参戦していたが、Goa Lilが5着に入ったのが最高となった。いずれもイギリスの重賞クラスでどうこうという馬ではなく、この馬たちなりに頑張った結果だろう。

 

Merano (ITA) Tempo Coperto - Terreno Morbido

Steteplechases D'Italia Euro 45,000

per cavalli di 4 e 5 anni (Steeple-Chase -  GRUPPO II  - FANTINI) 3500m (Replay)

1. Zio Reginaldo J: Pavel Slozil Jr T: Josef Vana Jr

この路線では突出した実績馬Roncalに、フランスからTonguettedが参戦して行われたレースだが、早々にフランスのTonguettedは落馬、さらにOxer GrandeにてRoncalも落馬。イタリアのLucechericamaがゆるゆると逃げるも、あっさりとZio Reginaldoが抜け出して勝利した。

Zio Reginaldoは前走Roncalにあっさりと敗れるまでいちおうMaidenから3連勝で挑んできた馬で、Roncalの2番手という立ち位置は守ったようだ。平地ではイタリアのListed競走で4着のある馬のようだが、イタリアの3歳限定戦におけるListedという水準はよくわからない。Raffaele Romano厩舎のLucechericamaは頑張って走ったが、とはいえZio Reginaldoに対してはかなり分が悪いようだ。フランスではPrix Duc D'Anjou (G3)でLatino Des Islesの2着に入っているTonguettedもレースに参加できず。RoncalはどうやらFatal Injuryであったようで*1、可能性のある馬は多く出走していたものの残念なレースとなってしまった。

 

Premio Delle Nazioni Euro 40,000

per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross-Country -  GRUPPO II  - G.R.-AMAZZONI-FANTINI) 6000m (Replay)

1. Brunch Royal J: Lukas Matusky T: Josef Vana Jr

Crystal Cupの一部として行われるレース。フランスからPolinuit、Vino Royale、さらにドイツからJetstream Jackを迎えて行われた。レースは前半からかなりゆったりとしたペースでAlmost Humanが引っ張る展開も、どうにも我慢しきれなかったのかJetstream Jackがこれに絡んでいく。前半の障害は問題なくクリアするが、中盤のOxer GrandeでJetstream JackとPolinuitの2頭が落馬。さらに3連続生垣障害にてVino RoyaleとSanta Klaraの2頭が落馬すると、残った2頭のマッチレースはBrunch Royalに軍配があがった。

Brunch Royalは最近はポーランドやフランスCross Countryで結果を残していた馬で、昨年はポーランドにてWielka Wrocławskaを勝利しているほか、今年はTrophee National du Crossに参戦している。MeranoのCross Countryは2020年以来であったが、Meranoの難関障害を含めて十分な飛越を見せていた。レースとしてはかなりAlmost Humanが遅いペースで引っ張ったためスプリントを掛けたのはほぼ最後の数障害といったところだが、とはいえこのレースは完走すること自体の難易度が高く、久しぶりのMeranoのCross Countryでこれだけ走れるのは大したものだろう。どうやらVelka Pardubickaにも登録があるようだが、PardubiceのCross Countryの経験はあまりなく、この馬の動向には注意しておきたい。この路線の常連Almost Humanが2着で、おそらく行きたがって走るこの馬の特性を踏まえてゆったりとレースを進行したものと思われるが、後半はやや飛越で斜飛するようなところも見せており、もう少しペースを上げてもよかったかもしれない。

ドイツのJetstream JackはOxer Grandeで落馬。イギリス、アイルランド、フランスと渡り歩いてきた12歳のベテランだが、今回のような極端なスローペースに戸惑うような仕草を見せていた。Oxer Grandeのミスは着地時に躓いたもので、このように飛距離を要する障害では仕方のないことだろう。Waregemで結果を残してきたPolinuitもOxer Grandeでの落馬で、こちらは飛距離が十分ではなかったものと思われる。最近の上り馬Santa Klaraは難関の3連続障害で落馬。フランスのVino Royaleは昨年の2着に引き続きの出走であったが、こちらも3連続障害で落馬に終わった。

 

Gran Corsa Siepi Di Merano - Memorial Guido Zibellni Euro 60,000

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi -  GRUPPO I  - FANTINI) 4000m (Replay)

1. Zanini J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

フランスからBuen Star、ドイツからMilos及びCabot Cliffsを迎えて行われた。レースはやや強引にSuroitが出ていく展開も、どうにも飛越が安定せずあっさりと後続が殺到し、番手にいたZaniniが引っ張る形となる。途中で中段まで後退していたSuroitは落馬。Cabot Cliffs、Skins Rockなどが前を伺うも、そのまま前に居たZaniniがMauriciusを振り切って勝利した。3着にはCabot Cliffsが入った。

Zaniniはこの路線の常連で、今年の2月にはGran Corsa Siepi Nazionale (G1)にてMauriciusの2着もある。ようやくここにきて初のG1タイトルということで嬉しい勝利となった。ここのところはやや早いペースで積極的に引っ張るのが芸風となっていたのだが、今回はSuroitを見ながら番手で我慢しながらも、早々に後退したSuroitに代わってじわじわとペースを上げていくレースを見せていた。そのMauriciusが2着で、Gran Corsa Sipi D'Italia (G1)ではまさかの落馬に終わっていたのだが、今回は能力があるところを見せた。6歳と若い馬だが、イタリア移籍直前となったAuteuilのClaimingからGran Corsa Siepi D'Italiaを除けば連を外さない堅実なレースを見せており、この2頭は今後もそのレース運びも含めて注目した方がよさそうだ。

ドイツのCabot Cliffsは3着まで。元々はイギリスのDan Skelton厩舎にいた馬で、いちおう重賞競走への出走歴もある。ドイツに移籍してからはドイツのHurdle競走で強い競馬を見せており、今回はドイツの代表格としての出走であった。やはり初の生垣障害ということもあって全体的に飛越はいまいちであり、この障害に慣れた馬と比べるとかなり競馬的にはロスが多いものであったが、それでもMauriciusから2馬身差の3着に来るのだから大したものだろう。今年のドイツの障害競馬はあとHonzrathの特殊な開催を残すのみとなっており、このままドイツ調教馬として残るのであればおそらく今後は周辺諸国を転戦することになると思われる。今年で5歳と若い馬で、しばらくドイツ代表として頑張って欲しいところである。

最近調子を上げていたSkins Rockは後方から押し上げるも、どうにも前にはさっぱり参加できず4着まで。前走のListedでもZaniniのハイペースを追走して抜け出すという強い競馬を見せていただけにこの凡走は謎である。フランスのGreat Journey産駒Buen StarはWaregemのHurdle戦を勝っての参戦であったが、こちらもさっぱり良いところなし。ドイツからは元々フランスにいたMilosという馬も参戦していたが、こちらも大敗に終わった。フランスからの移籍馬Suroitは、元々フランスではAuteuilのHandicap競走を含め4勝をあげた馬なのだが、全体的に飛越がいまいちで、結果的に落馬に終わった。

 

Shawan Downs (USA) Firm

Brown Advisory Timber Stakes

FOR FOUR YEAR OLDS AND UPWARD. Three And One Eighth Miles On The Timber $40,000 (Replay)

1. Storm Team J: Graham Watters T: Jack Fisher

この日から始まったアメリカ障害競馬の秋シーズン。Junior Senatorが引っかかり気味で前に出てくるも早々に落馬。代わってStorm TeamがAndi'amu以下を引き連れて逃げるも、そのままStorm Teamが押し切り勝利した。

Storm Teamはこの路線の常連で、春にはMiddleburg Hunt Stakesを勝利している。馬場が極端に悪くなったVirginia Gold Cupでは早々に途中棄権に終わったのだが、今回は力を見せた。昨年のInternational Gold Cup Timber Stakesでは謎の途中棄権に終わっており、National Sporting Library and Museum Cup Stakesで連覇を目指しつつ、同様の路線を歩むことになるだろう。Andi'amuもまたこの路線ではお馴染みとなった馬で、春にはWillowdale SteeplechaseやVirginia Gold Cupを勝利している。4月に2年間の休養から復帰したところだが馬の状態はいいようで、引き続き期待したい。アイルランド産馬Flaming Swordは差のない3着。2019年にAllowanceを勝った程度で大きなタイトルはないのだが、どこかでチャンスはあるだろう。

 

9/25(日)

Merano (ITA) Tempo Bello - Terreno Morbido

Gran Criterium D'Autunno Euro 66,000

per cavalli di 3 anni (Siepi -  GRUPPO I  - FANTINI) 3300m (Replay)

1. New Friend J: Felix De Giles T: Pavel Tuma

フランスからNow or Neverを迎えて行われた一戦。前半からCosta Ricaが引っ張る展開で、早々に追走に苦労していたMore Than A Habitは脱落すると、途中からFelix De GilesのNew Friendが前に。そのままNew FriendはCosta Ricaを引き連れて引っ張ると、そのままCosta Ricaに14馬身差をつけて勝利した。

New Friendはこれで平地を含めて4戦4勝とした。チェコでは平地の長距離戦を2戦した馬で、7月のMeranoで障害デビュー戦を飾っている。Ettore Tagliabue (G3)は出走を取り消していたようだが、今回はそのEttore Tagliabue (G3)を勝ったCosta Rica以下を圧倒する走りを見せた。若干飛越が怪しいのは若い馬にありがちなことだが、3歳馬としては非常に楽しみな馬が出てきたと言ってよいだろう。馬のペースを乱さずに走らせるFelix De Giles騎手の手腕もさすがのものであった。2着にはCosta Ricaが入り、ひとまず実績馬としての面目は保った。フランスのNow or Neverはひとまずレースには参加したようだが、New Friendからはかなり離された3着に終わった。

 

Corsa Siepi Dei 4 Anni - Red Moon Sparkling Euro 66,000

per cavalli di 4 anni (Siepi -  GRUPPO I  - FANTINI) 3500m (Replay)

1. Royale Margaux J: Kevin Nabet T: David Cottin

フランスからRoyale Margaux、ドイツからRaffles Speedを迎えて行われた。レースはそのRoyale Margauxのハナを叩いてイタリアのVelo Dipintoが前に行くも、途中でVelo Dipintoは落馬。前に出たRoyale MargauxにDionisなどがついて行くも、あっさりとRoyale Margauxがこれらを振り切り勝利した。

Royale MargauxはAuteuil及びCompiegneにてListed勝ちがある馬で、春にはPrix Alain Du Breil (G1)にも出走がある。フランスでも先手を取る戦法を得意としていた馬で、Prix Alain Du Breil (G1)では空馬に絡まれて苦しくなったものの、Auteuilの重賞路線でも勝負ができるだけの力を持った馬である。内容的には明らかにここでは一枚馬の能力が上手であったという格好の勝ち方で、このクラスの馬が出てきてはどうしようもないところがある。むしろ頑張ったのが2着のDionisで、ここまで障害は3戦して未勝利であったのだが、圧倒的にレース経験のあるRoyale Margauxに対して空馬にぶつけられながらも頑張ってついて行ったことは褒めるべきだろう。昨年のSlovenské derbyでは4着に入った能力馬で、そのうちいいことがあって欲しいものである。地元のVelo Dipintoは強力な遠征馬に対して真っ向勝負を挑んだが、途中で落馬に終わった。ドイツのRaffles Speedも途中まではレースについて行ったが、勝負所から苦しくなり5着に終わった。この馬自身は元々フランス調教馬で、フランスでの実績としてはRoyale Margauxと比べると遥かに格下であることを考えると、いちおうはレースに参加したというのは頑張った方だろう。

 

Gran Premio Merano Alto Adige Euro 250,000

per cavalli di 4 anni ed oltre (Steeple-Chase -  GRUPPO I  - FANTINI) 5000m (Replay)

1. L'Estran J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

この日のメインレースで、イタリア障害競走としては最大のものである。4連覇を狙うチェコのL'Estranが人気の中心になっていたが、一方でフランスからRootster、Viking De Balme、Beryl Baie、My Way、Embrun D'Oudariesと、計5頭もが参戦していた。元々Premier Vertも出走を予定していたことを踏まえると、約半数近くをフランス調教馬が占めるというレースであった。なお、L'EstranをはじめとするScuderia Aichnerの勝負服の馬は5頭も出走しておりわかりにくいのだが、腕章なしがGangster De Coddes、青い腕章がNotti Magiche、黄がPiton Des Neiges、赤がL'Estran、白がIl Superstiteである。なお、この日のレーシングプログラムは以下のリンク先にpdfファイルがあるので参照されたい。いつまでアップロードされているかはわからない。

Benvenuti nel nostro programma di corse online(Ippodromo di Merano)

レースは開始早々からIl Superstiteが積極的に出ていく。序盤の障害で葦毛のRootsterが大きなミスをするもなんとか立て直すも、後方にいたPiton Des Neigesが早々に落馬。レースはIl SuperstiteやGangster De Coddes、Beryl Baieが前に行く展開で、やはり先頭集団にいたRootsterはミスをしたりArginello Picolloの地点でアブミを掛けなおしたりするも頑張ってついて行く。L'Estranは中段、First of Allは後方から。スタンド前に設置されたFence Grandeにおいて後方にいたMy Wayがスライディングのような格好になるも立て直す。スタンド前を通過し、Doppio TravoneにてBeryl BaieがIl Superstiteを交わして前に出てくる。Oxer GrandeにてフランスのEmbrun D'Oudariesが落馬、Il Superstite及びMy Wayは飛越後に途中棄権。Talusを越えてスタンド前に出てきた辺りで外に膨れたBeryl Baieを交わしてL'Estranが先頭に。これを追いかけるのがGangster De Coddes、First of All、Viking De Balme。フランスのBeryl Baieは後退。そのままL'Estranは安定した飛越で引っ張ると、食らいついてきたFirst of AllとGangster De Coddesを振り切って勝利した。

L'Estranはこのレースは2019年から4連覇とした。過去、このレースは1994年からOr Jackという馬が3連覇を達成したことや、Aégiorという馬が1955年、1959年、1961年に3勝を挙げたはあるのだが*2、4連覇は史上初である。このレースはOcer Grande(高さ110cm及び150cmの生垣が90cmの間隔を置いて設置された全体で4メートル近い障害)やFence Grande(高さ190cm、幅3メートルの生垣)*3といった世界最難関クラスの障害が設置されているうえに、コースの幅員は狭く複雑なコーナーを有するために重複落馬のリスクが極めて高くなっている。さらに、なにかとフランスなどから強力な遠征馬を迎えることでレース展開が大きく変わるなど、レースにおける不確定要素の大きさは並のG1競走を遥かに凌駕する。今回も直前から強い雨が降ってきたことで急激に馬場が悪化していたうえに、2日間の激しい競争を経て馬場もかなり荒れている。実際にどうやら飛越時に滑ることもあったようで、さらにJosef Bartoš騎手はOxer Grandeのあとはどうやらゴーグルを外してレースをしていたようで*4、まさに死闘と言っていいだろう。このような厳しい条件の中で終始安定したレース運びを見せ、First of All、Gangster De Coddesというスピードのある6歳馬を凌ぎ切るのだから、その価値は計り知れないものがある。9月に大きな怪我から復帰したJosef Bartoš騎手にとっても嬉しい勝利になったようだ。なお、このL'Estranの偉業はどうやらイギリスでも報道されたようだ。

L'Estran makes history in Italy's equivalent of Cheltenham Gold Cup, Gran Premio Merano(Mirror)

First of AllはL'Estranに迫る走りを見せた。本来どうにも行きたがって走るタイプの馬で、ここまでどうも制御を欠くことが多かったのだが、今回は怪我のJan Faltejsek騎手に代わってFelix De Giles騎手が騎乗していた。この変更がかなりうまくいったような感があり、Felix De Giles騎手はこの馬本来の良質なスピードに持続力を存分に引き出す競馬を見せていた。Gangster De Coddesも勝ち馬に迫る走りで、Grande Steeplechase D'Europa (G1)では落馬に終わったものの、やはりこの馬もイタリアSteeplechaseでは実力上位であることを示した。

フランス勢で最先着は13歳のViking De Balmeで、この馬自身このレースには2019年に3着に入っているのだが、最近はSteeplechaseではなくCross Countryを使っていた。とはいえ2021年のGrand Cross de Craonでも頑張っていたくらいには飛越の成熟度が高い馬で、一方で重馬場でペースが落ち着いたことを考えると、あまりコースに馴染みがない組としてはかえってこのような高い技術を持った高齢の障害馬の方が適性があったのかもしれない。今年はこれが2戦目のようで、フランスに戻って期待したい。Bdx Le BouscatのGrand Steeplechaseを勝ったRoosterは2年ぶりの休養明けからの2戦目で、ここへのステップとしてはあまり良くなかったことを考えると、あれだけミスをしても踏ん張るのだから大したものである。Notti Magicheはとりあえず付いて回っていたようだが、さすがに上位勢が強かったようで、この馬のレースには持ち込めず良いところなし。MeranoのSteeplechaseにおいては卓越した経験を持つ馬だが、この馬の守備範囲に入らなければどうしようもないところがある。フランスのBeryl Baieは人気薄ながら積極的なレースを見せたが、勝負所から後退して最下位に終わった。

 

Bratislava (SVK) 3.9 (dobrá / Good)

Prútenky šampiónov – podporované spoločnosťou DANFOSS, spol. s.r.o. Zlaté Moravce

Proutky - - 3800 m, cena, 4letí a starší 4.500 EUR (Replay)

1. Petarda J: ž. Jan Odložil T: Tůma Pavel

地元のKubikがやや早いペースで引っ張るも、早々に並んでいったPetardaがついてきたWhirtenを振り切って勝利した。Petardaはこれで前走のCena obce Topoľčianky s podporou společnosti Danfossに引き続き、Hurdle競走は2戦2勝とした。昨年のスロバキアダービーでは5着に入った実績馬だが、4歳となった今年は9月からHurdle戦に移行している。有力馬を多く抱えるPavel Tůmaということでそのレース選択には注意した方がよさそうだが、これから楽しみな一頭だろう。スロバキアのHurdle戦ということで評価を下げる必要はなさそうだ。スロバキアのHurdle戦では常連となった4歳牝馬Whirtenが2着に入った。障害経験豊富なOption Beは勝負に加われず4着。2017年のスロバキアダービーでは4着のあるOroblancoもいたのだが、どうにも今年の春に約2年半の長期の休養から復帰してからはいまいちで、一度2017年から2年ほどの長期の休養を経ていることを考えると、その馬の状態には疑問が残る。

 

Cena Hlavného mesta SR Bratislava - 47. Veľká starohájska steeplechase

Steeplechase - - 4500 m, cena, 5letí a starší 5.500 EUR (Repaly)

1. Swinging Thomas J: ž. Jan Odložil T: Tůma Pavel

Swinging Thomasがゆったりと逃げるも、途中からFort Ryanが並んでいく。2頭のマッチレースはゴール前でFort Ryanを振り切ったSwinging Thomasに軍配が上がった。

Swinging ThomasはこれでSteeplechase自体は5戦4勝とした。とはいえその殆どがスロバキアであげたもので、SlušoviceのCena moravských podnikatelůでは勝ったKing Heartからだいぶ離された4着に終わっている。前走のVelká mostecká steeplechaseではそのKing Heartを下して勝利しており、上がり目のある5歳馬ということで期待できそうな感もあるのだが、とはいえレース選択によっては相手関係が課題になりそうだ。Veľká topoľčianska steeplechaseを勝ったFort Ryanはこの路線の常連としての意地は見せての2着。Pardubiceではお馴染みのParis Eiffelも出走していたが、特にレースには参加できず離れた4着に終わった。

 

その他

Emozioni al Galoppo I Gran Premio Merano 2022 (#18 27.09.21) (Youtube)

Tipsport vidí jako favorita Velké obhájce vítězství Talenta. Irskému zástupci příliš nevěří (Fitmin)

今年のVelka Pardubickaの登録馬が発表され、どうやらチェコブックメーカーであるTipsportによると、連覇を狙うTalentが一番人気に推されているようだ。驚いたことにアイルランドのYoung Devが登録しているが、チェコ国内の前評判としては高くはないようだ。

Vítěz Velké pardubické Theophilos: konec kariéry! Váňová ho nechce trápit (iSport.cz)

今年のVelka Pardubickaへの出走を目指していたTheophilosだが、残念ながら故障が判明し、そのまま引退することになったようだ。2019年のVelka Pardubickaを制した馬だが、Josef Vana厩舎を中心とした共同所有馬であり、さらに熱心なファンがいたことで有名である。

Sbírka pro trenérku po pádu: poranění mozku i plic. Koně z Velké stáhli (iSport.cz)

Velka PardubickaにBeau Rochelaisを出走させる予定であったTamara Křídlová調教師だが、落馬により重傷を負い治療中だそうだ。Beau RochelaisはVelka Pardubickaの出走馬から取り下げられたが、どうやら師の治療のためチェコJockey Clubが寄付を募っているそうだ。

Vale John Adams (Racing.com)

28年もの間Australian Jumping AssociationのExecutive Officerを務め、歴史家及びジャーナリストとしてもオーストラリア競馬において多大な功績を残したJohn Adams氏が亡くなったそうだ。つい最近まで氏は精力的にSNSを使った発信を続けており、その内容は氏の深い知識と慧眼に支えられたものであった。