*オーストラリア障害競馬
2022年のオーストラリア障害競馬のHurdle及びSteeplechaseにおけるそれぞれの平均出走頭数のは以下のとおりである。最少出走頭数は5頭で、オーストラリアでは最大出走頭数が10頭程度*1に制限されていることを踏まえると、2022年はコンスタントに出走馬を集めることに成功していたと考えてよいだろう。
Figure.1 2022年オーストラリア障害競馬における平均出走頭数
Hurdle競走全体では平均8.22頭の出走馬を集めた。Hurdle競走のうち、Maiden Hurdleにおいては平均9.13頭の出走馬を集めており、オーストラリア障害競馬においては新規の障害競走への参戦馬が多く存在していたことが推測される。一方で、特段Benchmark等による制限等が設けられていないHurdle競走及びSteeplechase競走における平均出走頭数はそれぞれ7.57頭及び7.50頭で、さすがにMaiden Hurdleと比べるとやや出走頭数こそ少なくなるものの、イギリスの一部のレースでありがちな極端な小頭数のような現象は生じていないようだ。Figure.2に各出走頭数におけるそれぞれの合計競争数を示す。特にHurdle競走においては殆どの競争が8頭立て以上で行われていることがわかる。
Figure.2 2022年オーストラリア障害競馬における出走頭数別の競争数
Figure.3 2022年オーストラリア障害競馬における各国生産馬の出走回数
Figure.3に2022年のオーストラリア障害競馬における出走馬の生産国を示す。当該Figureにおける数値は各国生産馬の出走回数を示しており、総出走頭数ではないことに留意されたい*2*3。グラフが小さくて見えにくいが、ドイツ生産馬は2回、日本生産馬は計4回出走している*4。やはりオーストラリア生産馬がその半数近くを占めているものの、意外にもそのシェアは圧倒的ではなく、3分の1近くをニュージーランド生産馬が占めるうえに、欧州をはじめそれ以外の国の生産馬も4分の1程度を占めているようだ。ニュージーランド障害競馬の出走馬の殆どがニュージーランド生産馬が占めることを考えると、その出走馬の出自の多様性は特徴的だろう。
オーストラリア障害競馬における出走馬は殆どが元平地競争馬だが、その中には平地競争で高いパフォーマンスを発揮してきた馬も参戦している。以下に2022年におけるその一例を示す。なお、2022年は故障が原因で出走は叶わなかったが、Irish Derby (G1)で3着に入ったNorwayもオーストラリアで現役の障害馬である。また、過去には2013年のイタリアダービー (G2)で3着に入ったAncient Kingがその後オーストラリアGrand National Hurdleを制している*5。
- Big Blue (GB) 平地:Prix Michel Houyvet (Listed) 障害:Gallywood Hurdle
- Blenheim Palace (IRE) 平地:Diamond Stakes (G3) 障害:Maiden Hurdle
- Chains of Honour (AUS) 平地:Mullins Grand Prix Stakes (G3) 障害:Maiden Hurdle
- Constantinople (IRE) 平地:Gallinule Stakes (G3) 障害:BM120 Hurdle 2着
- Count Zero (NZ) 平地:Jericho Cup 障害:Shojun Concrete Open Hurdle
- Double You Tee (AUS) 平地:Hobart Cup (G3) 障害:Maiden Hurdle 2着
- Gobstopper (NZ) 平地:New Zealand Cup (G3) 障害:Australian Hurdle
- Hush Writer (JPN) 平地:Newcastle Gold Cup (G3) 障害:Maiden Hurdle
- Into Rio (NZ) 平地:SA Derby (G1) 7着 障害:Maiden Hurdle FF
- Saunter Boy (FR) 平地:Sydney Cup (G1) 10着 障害:Grand National Hurdle等
- Port Guillaume (FR) 平地:Prix Hocquart Longins (G2) 障害:Maiden Hurdle
- Runaway (AUS) 平地:Geelong Cup (G3) 障害:Australian Hurdle 2着
- St Arnicca (AUS) 平地:SA Derby (G1) 10着 障害:Grand National Steeplechase
- Tolemac (AUS) 平地:VIC Derby (G1) 14着 障害:Maiden Hurdle
- Valac (IRE) 平地:Dominant Queens Cup (G3) 障害:Mostrooper Steeplechase
また、ニュージーランド障害競馬からの移籍馬(又は参戦馬)は比較的多く、過去にもSea King、Tallyho Twinkletoeといった多数のニュージーランド障害競馬の有力馬がオーストラリアで成功を収めているが、2022年のオーストラリア障害競馬に出走した実績馬は以下のとおりである。特に、ここ数年のニュージーランドHurdle路線で無敵を誇るThe Cossackの参戦は興味深いものであった。
- Bee Tee Junior (NZ) NZ:Maiden Hurdle AUS:Grand National Steeplechase
- Chief Sequoyah (NZ) NZ:KS Browne Hurdle 2着 AUS:Mosstrooper Steeplechase FF
- Te Kahu (NZ) NZ:Great Northern Steeplechase AUS:Mosstrooper Steeplechase 2着
- The Cossack (NZ) NZ:Great Northern Hurdle等 AUS:Grand National Steeplechase 2着
- Zed Em (NZ) NZ:Frank & Annie Matijasivich Memorial Open Steeplechase AUS:Great Eastern Steeplechase等
欧州障害競走の経験馬は多くはないのだが、面白いことに元々イギリスPaul Nicholls厩舎の所属で、2022年のCheltenham FestivalのBoodles Juvenile Handicap Hurdle (G3)ではBrazilの3着に入ったBell Ex Oneはオーストラリア障害競馬初戦としていきなりJJ Houlahan Hurdleに出走し、そこまで圧勝劇を続けていたStern Idolを下して勝利している。一方でこのStern Idolは元々フランス調教馬で、フランス時代にはDieppeの4歳限定Haies競走で勝利しているほか、AuteuilのPrix Alain et Gilles De Goulaine (Listed)にも出走している。フランス障害馬がオーストラリア障害競馬に出走したことは過去に例がないようだが、興味深いことにオーストラリア移籍後はBell Ex Oneに敗れるまで圧倒的なスピードで派手な圧勝劇を続けていた。この二頭は来年以降注目に値する馬たちであろう。
*1:例えば、Grand National SteeplechaseのField Limitは12頭である
*2:作業中、Figure.1及び2で使用したデータと微妙に数頭の齟齬があることに気が付いたが、修正作業を行うに際して速攻で心が折れたので凡その目安として提示する
*3:また、円グラフとしては降順ではないのが不自然なのだが、オセアニア→欧州→それ以外 という並びということでご容赦頂きたい
*4:いずれの出走頭数は1頭であり、その1頭がそれぞれ2回及び4回出走したという意味である
*5:当時のイタリアダービーでAncient Kingと共に走ったNotti Magicheはその後Grand Steeplechase D'Italia (G1)を4連覇した。