にげうまメモ

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22/10/26 ニュージーランド障害競馬 ③ - 出走馬統計 -

ニュージーランド障害競馬

2022年のニュージーランド障害競馬のHurdle及びSteeplechaseにおける平均出走頭数は以下のとおりである。

Figure.1 2022年ニュージーランド障害競馬における平均出走頭数

Hurdle競走全体の平均出走頭数は8.47頭であった。最も出走馬を集めたのが9月のTe RapaのMaiden Hurdleで13頭、最小出走頭数は5頭であった。Hurdle競走を小分けにすると、Maiden Hurdleは平均9.75頭、0-1 WIN Hurdleが5頭(計1レース)、RST OPN SWP Hurdleが平均8.2頭、Open Entry Hurdleは平均7.17頭であった。Open Entry HurdleはPrestige Jumping Raceに限れば平均8頭であるが、やはりクラスが上がるにつれて出走頭数が減少する傾向が見て取れる。実際に最少出走頭数となった5頭立てで行われた競争は、8月Riccarton Parkの0-1 WIN Hurdle、8月WaverleyのOpen Hurdle、及び10月WoodvilleのOpen Hurdleであった。

なお、8月Riccarton ParkのGrand National Meetingの状況はやや特殊であったと考えられることに留意されたい。この開催ではHurdle競走が計3レース行われ、うちAvon City Ford Sydenham Hurdles(OPN)が6頭、Grand National Hurdles (PJR)が7頭、Speight's Summit Ultra On Tap 0-1 Win Hurdleが5頭とやや全体の傾向から考えると寂しい状況であったが、そもそも南島における障害競馬開催は2022年においてはこのGrand National Meetingのみであり、南島に現役の障害馬が存在しないことから北島から出走馬を集めざるを得ず、北島から南島へと馬を輸送するコストの問題が大きかったものと考えられる。実際に、当該開催においてはそもそも事前に十分な数の出走馬が集まるか危ぶまれていたとの報も出ていた。

Steeplechase競走全体の平均出走頭数は7.21頭であった。最も出走馬を集めたのがPakuranga Hunt Cupの13頭、最小出走頭数はManawatu Steeplechase(OPN)及びKoral Steeplechase(OPN)の4頭であった。小分けにすると、Maiden Steeplechaseは平均7.29頭、0-1 WIN Steeplechaseは5頭、RST OPN SWP Steeplechaseは平均8頭、Open Steeplechaseは平均7.1頭、うちPrestige Jumping Raceに限ると平均8.33頭であった。Prestige Jumping Raceにはそれなりの頭数が集まっているようだが、一方でややクラスが上がると出走頭数が減少する印象があるというのはHurdleと同様だろう。なお、上記のとおりRiccarton ParkのGrand National Meetingはやはり特殊な状況で、当該開催ではSteeplechaseは2競走行われたが、Grand National SteeplechaseのプレップレースであるKoral Steeplechaseが4頭、大一番となるGrand National Steeplechaseは5頭と、ひとまず開催に漕ぎ着けたはいいものの、出走頭数という意味では寂しい状況であった。

 

オーストラリア障害競馬においてはオーストラリア生産馬が約半数程度を占めるものの、ニュージーランド生産馬、更には欧州生産馬もかなりの割合で存在し、これらの国外生産馬はオーストラリア障害競馬において2022年オーストラリア主要Hurdle競走を席巻したフランス生産馬のSaunter Boyをはじめ、かなりの存在感を誇っていた。一方でニュージーランド障害競馬においてニュージーランド以外の生産馬が出走した例はごくわずかであり、2022年のニュージーランド障害競馬に出走した国外生産馬は以下のとおりであった。

ニュージーランド障害競馬においてもオーストラリアと同様に平地競争馬を障害競走に転用する例が殆どである。その中にはオーストラリアと同様に平地競争において高いパフォーマンスを示してきた馬も存在し、Verry Elleegantの全兄であるVerry Flashは平地競争ではListed勝ちを含む計10勝をあげた実績馬だが、2022年からHurdle競走に参戦し、9月のTe RapaにてMaiden Hurdleを制している。少し前には香港で複数のG1勝ちを収めたWerther及びSAJC Australasian Oaks (G1)の勝ち馬Toffee Tongueの全弟/兄であり、自身もChristchurch Casino 154th New Zealand Cup (G3)等を勝利したGobstopper、フランスJuddmonte Grand Prix De Paris (G1)及びオーストラリアSydney Cup (G1)の勝ち馬であるGallanteもニュージーランド障害競馬に参戦している。ニュージーランド障害競馬にはオーストラリア障害競馬の経験馬も存在するが、その殆どはニュージーランドで障害競馬に参入した元平地馬がその後オーストラリアに移籍し、様々な理由でニュージーランドに(一時的に)戻ってきたというパターンで、近年の著名な活躍馬ではShamal、Alfee Dee、Tallyho Twinkletoe、Sea King、Tobouggie Nights等、そのような例はかなり多い。なお、ニュージーランド障害競馬出身馬がオーストラリア障害競馬で活躍する例はかなり多く、ニュージーランド障害競馬はオーストラリアにおいて重要な障害馬を発掘する場として機能している。詳細は以下の記事を参照されたい。

22/09/30 オーストラリア障害競馬 ③ - 出走馬統計 -  (にげうまメモ)

ニュージーランド生産馬はオーストラリア障害競馬においては現在でも数多く認められる。しかしながら、1991年にSeagram、1997年にLord GylleneがAintreeのGrand National (G3)を制した過去はあるものの、2022年現在においてニュージーランド生産馬を欧州障害競馬で認めることは稀である*1。この現象に関しては以下の論考が詳しい。

Whatever happened to New Zealand-bred jumpers in Britain and Ireland? (Racing Post)

*1:少なくとも中の人の観測範囲において、ニュージーランド生産馬を欧州障害競馬において認めた例はない