にげうまメモ

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22/10/28 ニュージーランド障害競馬 ④ - 出走馬統計 -

ニュージーランド障害競馬

2022年のニュージーランド障害競馬には以下50名の調教師が管理馬を出走させた。なお、ニュージーランド競馬は8月にシーズンが開始し7月末で終了するが、障害競馬の開催時期を踏まえ、2021年8月~2022年7月末で区切るのではなく、2022年全体(障害競馬の行われた2022年5月~10月)における数値を使用していることに留意されたい。

 

Trainer Location 出走回数 勝利数
Aaron Bidlake Opaki 3 0
Allan Smith Ardmore Lodge 1 0
Andrew Meikle Pukeatua 2 0
Barry Beatson Dannevirke 12 0
Bill Thurlow Waverley 3 0
Bob Autridge Matamata 7 0
Buddy Lammas Otaki 2 0
Clinton Isdale Cambridge 8 1
Dan O'Leary Marton 10 1
Dean Cunningham Marton 21 2
Dean Wiles Cambridge 3 1
Diana Kennedy Cambridge 12 3
Eamonn Green Pukekohe Park 1 1
Gail Temperton Foxton 12 0
Gary Alton Cambridge 4 1
Gavin Opie Te Aroha 2 0
Grant & Tana Shaw Waiuku 8 2
Harvey Wilson Waverley 6 1
Jo Rathbone Wanganui 6 0
John Wheeler New Plymouth 17 1
Joshua Lavelle & Sacha Rennie Foxton 2 0
Ken Duncan Hunterville 24 1
Ken Harrison Cambridge 4 0
Kevin Myers Wanganui 74 12
Lauren Brennan Cambridge 3 0
Lucy De Lautour Waipukurau 7 1
Mark Brooks Cambridge 4 0
Mark Brosnan Matamata 9 0
Mark Oulaghan Awapuni 20 4
Mark Walker Matamata 6 0
Maxim Van Lierde Cambridge 5 0
Niall Quinn Wanganui 9 0
Paul Mirabelli Cambridge 1 0
Paul Nelson & Corrina McDougal Hastings 45 20
Peter & Jessica Brosnan Matamata 24 0
Rachel Masters Te Awamutu 1 0
Raymond Connors Bulls 5 2
Sean Cameron Waiuku 5 0
Shaun & Emma Clotworthy Byerley Park 19 2
Shaun Fannin Awapuni 3 0
Shaun Phelan Cambridge 1 0
Shelley Houston Cambridge 7 0
Stephen Beatson Marton 5 1
Stephen Nickalls Rangiotu 5 0
Stephen Ralph Te Awamutu 13 0
Tarissa Macdonald Cambridge 5 0
Team Rogerson Tuhikaramea 5 0
Tim & Margaret Carter Cambridge 1 0
Toby Autridge Matamata 2 0
Trevor Chambers Foxton 7 1

 

勝利数ベースで圧倒しているのはPaul Nelson & Corrina McDougalとKevin Myersの2厩舎で、2022年に行われた全58競争のうち、この2厩舎だけで全体の約55%にあたる計32勝をあげたことになる。この2厩舎に次ぐのがMark Oulaghan厩舎の4勝、Diana Kennedy厩舎の3勝なのだからその勢力は圧倒的だろう。特にKevin Myers厩舎の出走馬はかなり多く、6月及び7月に行われたHastingsの開催においてのみ計9レース中出走があったのが1レース(1頭)のみであったのだが*1、それ以外の開催においてはほぼ全てのレースで出走馬を送り込んでいる。Kevin MyersはNZ Derbyを勝利した実績もあるニュージーランド一流のトレーナーだが、約20年近くに渡ってメディアによる取材を断ってきたようで、その沈黙を破ってニュージーランド障害競馬の現状と重要性について述べたことはニュース記事として取り上げられた*2。一方のPaul Nelson & Corrina McDougal厩舎は出走回数45回のうち20勝という驚異的な勝率を誇った。Paul Nelson & Corrina McDougal厩舎はここ数年のニュージーランドHurdle路線の最強馬であるThe Cossackを管理することで知られており、Kevin Myers厩舎と同様にかなり頻繁に管理馬を送り込んでいる。ただし、The Cossackのオーストラリア遠征のためRiccarton ParkのGrand National Meetingには参戦しなかったようだ。

有力な調教師が多数参戦しているオーストラリア障害競馬と異なり、2021/22シーズンの全体のリーディングにおいて上位10位以内に位置した調教師としては、Kevin Myers厩舎(6位、47勝)が挙げられる程度である。その他Team Rogerson(11位、33勝)、Mark Walker(18位、24勝)も障害競馬に管理馬を送り込んでいるが、それぞれ出走回数は5回及び6回と小規模な参戦に留まっている。

Mark Oulaghan調教師はニュージーランドAwapuniに拠点を置く調教師で、Grand National Steeplechaseをこれまでに7回制している。日本には中山グランドジャンプにRandを送り込んでおり馴染みがあるだろう。2017年にはYamanin Vital産駒のUpper CutでGrand National Steeplechaseを制したほか、2022年にはWest CoastでGrand National Steeplechase7回目の勝利を飾った。John Wheeler調教師は2002年にSt Steven中山グランドジャンプを制し、ニュージーランド競馬にて殿堂入りを果たしている調教師だが、オーストラリア障害競馬でもGreat Eastern Steeplechaseの勝利など多数の実績を残しており、今年はオーストラリアに管理馬を送り込むなど、未だにその存在感は健在である。

2022年のニュージーランド障害競馬の出走馬は全て北島調教馬で、南島調教馬の参戦はなかった。COVID-19以前から障害馬の不足が懸念されていた南島であるが、COVID-19の大流行により甚大な影響を受けた2020年において南島の障害競馬は全てキャンセルとなり、110年以上もの歴史を誇るRiverton競馬場のGreat Western Steeplechaseは現役障害馬及び騎手の不足から2021年から行われず*3、2021年にはRiccarton Parkで行われたGrand National Hurdleには南島からRingboltが参戦するもさっぱり勝負には加わることはできずに大敗し、その後同馬も北島に拠点を有するKevin Myers厩舎に移籍するなど、ニュージーランド南島の障害競馬は危機的状況に陥っている*4。今年のRiccarton ParkのGrand National Meetingは南島唯一の障害競馬開催であったが、事前に調教師に対して出走を予定している障害馬の頭数に関する照会が行われるなど*5、出走馬の確保に苦労して行われた開催であった。結果的にレースの成立に十分な出走馬を集めることに成功したものの、上記のとおりThe Cossackのオーストラリア遠征のため有力馬を多く含むPaul Nelson & Corrina McDougal厩舎の管理馬はGrand National Meetingには参戦せず、Grand National Meetingに行われた5レースに出走馬を送り込んだのはKevin Myers厩舎(計14回)、Mark Oulaghan厩舎(計5回)、Dean Cunningham厩舎(計4回)、Aaron Bidlake厩舎(1回)、Ken Harrison厩舎(1回)、Trevor Chambers厩舎(1回)であり、参戦頭数及び参戦厩舎数の面から鑑みても寂しい開催となった。Grand National Steeplechaseは今年で147回を迎える長い歴史を持ち、本格的で美しい障害コースを使用する素晴らしい競争なのだが、残念ながらその状況は芳しいものではない。