にげうまメモ

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22/11/27 Weekly National Hunt / Jump Racing

11/26(金)

Newbury (UK) Good

Coral Racing Club Novices' Chase (G2) 2m3f187y (Replay)

1. Sebastopol J: Stan Sheppard T: Tom Lacey

人気を背負ったStage Starがかなりゆったりとしたペースで逃げる展開で、直線に向いてから一気にペースアップ。Stage Starに並んでいったSebastopolがStage Starを競り落とすと、最後は後続に5馬身差をつけて勝利した。

SebastopolはChaseでの経験は長い馬で、2021年の11月からChaseは使っている。2021-2022シーズンはFrom the Horse's Mouth Podcast Novices' Chase (G2)というCheltenhamでのG2でのThird Time Luckiの2着が最高だったのだが、今年は夏場もChaseに使っており、10月にはListed競走を勝利していた。Chaseでの経験値はここでは圧倒的で、トップスピードでの飛越が出来るほどの技術が成熟していない他馬に対してChaseでの経験における一日の長があった。11st9lbを背負っての勝利ということで現時点では他馬を上回っていたのだが、とはいえ良馬場におけるレースの経験値が出たという印象の競争で、あまり今後に繋がるレースではなさそうだ。2021年にはChallow Novices' Hurdle (G1)を勝ったStage StarはさすがにChaseでのステップアップを考えるとここは勝ち切りたかったのだが、全体的に飛越技術に拙さが残っていたようで、もう少し進捗が欲しいところである。

 

Long Distance Hurdle (G2) 3m52y (Replay)

1. Champ J: Jonjo O'Neill Jr. T: Nickey Henderson

前半からChampがある程度前向きに引っ張る展開で、これをThomas Darbyが追いかけていく。後ろからじわじわとPaisley Parkが接近し、最後の直線では2頭のマッチレースになるも、ChampがPaisley Parkをぎりぎり凌いで勝利した。

ChampはNovice ChaseではRSA Chase (G1)でMinella IndoとAllahoの2頭を下して勝利するなど、今考えれば素晴らしい実績を残した馬なのだが、2020-2021シーズンのChaseでは結果を残せず早々にHurdleに戻っていた。2021年はLong Walk Hurdle (G1)を勝利しこの路線で頭角を現していたのだが、とはいえCheltenham及びAintreeでは案外な結果に終わり、今回が仕切り直しの一戦であった。今回は前に行く馬がいないということもあって前に行く競馬を見せたが、Jonjo O'Neill Jr騎手がある程度行きたがって走るこの馬を宥めつつ、この馬の脚を使い切るという技ありのレースをやってのけた。本来加速とトップスピードに長けたタイプで、Cheltenhamのような下り坂を利して加速するタイプのコースではこの馬の加速性能を生かすことはできないのだが、とはいえ今回はChampにプレッシャーを掛けられるだけの馬は存在せず、Newburyのコースも合っていたということだろう。おそらくLong Walk Hurdle (G1)でも楽しみな存在になりそうだが、とはいえレース展開には注意しておきたい。Champと同い年の古豪Paisley Parkも自身のレースをしての2着で、最近はズブいところを見せていたのだが、今回はあまりそのような仕草は見られなかった。強靭なロングスパート能力を持ったタイプだが、馬場よりもむしろレース展開におけるペース推移の方がこの馬にとっては重要なのかもしれない。Thomas Darby、Tea Clipperなどはこの2頭の前に手も足も出ず。前走のBet365 Hurdle (G2)を圧勝したProschemaもいたのだが、今回はChampの加速の前にあっさり脱落し途中棄権に終わった。Bet365 Hurdle (G2)自体、シーズン最初の叩き台といった感触のレースであり、一頭別次元の伸び脚を見せていたとはいえ、あまりそのような緩いレースの圧勝劇は当てにならないということかもしれない。

 

11/27(土)

Newbury (UK) Good

John Francome Novices' Chase (G2) 2m7f86y (Replay)

1. Mcfabulous J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

軽快に逃げたMcfabulousに人気にThyme Hillが度々絡んで行くも、あっさりとMcfabulousがThyme Hillを振り切って勝利した。

McfabulousはこれでChaseは3戦2勝とした。Chase初戦となったWincantonのRising Star Novices' Chase (G2)では極端な良馬場によるトラブルで途中棄権に終わっており、実質的には2戦無敗といったところだろう。HurdleではRelkeel Hurdle (G2)の勝ち鞍のあるもののG1クラスでは通用せずに終わっていたのだが、今回はHurdle時代に敗れていたThyme Hillを一蹴する走りを見せた。飛越としては終始安定しており、この時期のNovice馬としては非常に高い完成度を持っていたと考えていいだろう。Thyme Hillは人気になっていたが、どうにももたもたと飛越をしたりと飛越の安定感の面で勝ち馬にはだいぶ見劣っており、もう少し飛越技術の向上が必要のようだ。

 

Coral Gold Cup Handicap Chase (Premier Handicap) 3m1f214y (Replay)

1. Le Milos J: Harry Skelton T: Dan Skelton

元々は"Hennessy Gold Cup"などと呼ばれていたレースなのだが、その後"Ladbrokes Trophy"となり、今年は"Coral Gold Cup"になったようだ。"Gold Cup"という文言が戻ってきたのは良いのだが、ころころと名前が変わるのはどうにも慣れない。そもそも"Hennessy"と比べるとブックメーカーの名前というのはどうにも威厳に欠けるイメージがあるのだが、これは日本人的な感覚なのだろうか。

レースはAdam WedgeのAnnsamとアイルランドのBusseltonが元気一杯引っ張る展開。早々にThreeunderthrufiveが落馬し、Fanion D'Estruvalは後方に置かれる。そのままAnnsamとBusseltonは緩めずに引っ張るも、残り3障害辺りから好位にいたLe Milosが前に出ると、追いかけてきたRemasteredとの叩き合いを制して勝利した。

Adam Wedgeは前に行った場合はかなり強気にレースを作り出す騎手で、今回も10st5lbの軽量を生かしつつ逃げ馬であるAnnsamとともにハイペースでレースを引っ張っている。アイルランドのBusseltonも前走は良馬場のKerry National (Grade A)を逃げ切った勢いのある5歳馬で、結果的にこの2頭が一歩も引くことなく元気一杯前に行ったことで、良馬場のスピードが強く要求されるハイテンションなレースが展開された。Le Milosは前走のBangor-on-DeeのClass 2から連勝とした。馬場は案外不問で走ることが出来る馬のようだが、今回はスタート直後のスプリントに付き合うことなく、そこからじわじわと進出していくHarry Skelton騎手のペース配分が光った。同様のレースをしたのがRemasteredで、昨年は好位でチャンス十分に見えながらも勝負所で派手に落馬していたという経緯もあり、その雪辱を晴らしたかったのだが惜しい2着に終わった。先行集団で頑張ったのはGericault Roqueだが、とはいえ早々にペースを見て引いたというところもあるかもしれない。昨年好走したFiddlerontheroofもいたのだが、ペースに巻き込まれる形で苦しくなり途中棄権。11st9lbの斤量も厳しかったようだ。Oscar Eliteは勝負所からいい感じで進出してきたのだが、そこからは大いに失速し10着と大敗。一度ノドの手術を行っている馬だけに、やや心配な負け方となった。

 

Newcastle (UK) Good to Soft

Fighting Fifth Hurdle (G1) 2m46y (Replay)

1. Constitution Hill J: Nico de Boinville T: Nickey Henderson

昨シーズンのNovice Hurdleで圧倒的なパフォーマンスを見せたConstitution Hillと3連覇を目指すEpatanteとの対決ということで注目が集まっていた。レースは前半からやや積極的にConstitution Hillが逃げる展開で、これを追いかけてEpatante、Not So Sleepyなど。Constitution Hillはそのまま元気に逃げると、残り3障害地点でミスをしたEpatanteを尻目に12馬身の圧勝とした。2着にはEpatante、Not So Sleepyと続いた。

Newcastleのコースは直線の入り口がコースにおける最も低い地点で、そこから直線は上り坂、直線の出口がコースにおいて最も高い位置となっている。コース形態自体は比較的単純で、コーナーの下り坂を利して加速し、そこから上っていくというシンプルなものである。Constitution HillはHurdleはこれで4戦無敗、そのいずれにおいても2着に10馬身以上の差をつけるという圧倒的なものを見せている。傾斜のきつい上り坂が存在するSandownでも強力な伸び脚を見せていたが、それ以上に印象的であったのがCheltenhamのSupreme Novices' Hurdle (G1)で、下り坂での加速と上り坂を駆け上がるスプリントでJonbon以下を千切り捨てたレースは圧巻の一言であった。今回はNovice上がりの初戦ということであったが、Epatante以下を圧倒する走りを見せた。コーナーまで後続が付いてくるのは下り坂が存在するため仕方がないのだが、そこからの直線での伸び脚は圧倒的で、この馬のCheltenhamでの走りを再現するかのようなレースであった。より厳しいアップダウンが存在するCheltenhamのコース形態を考えると、このメンバーが相手であればおそらくCheltenhamではさらに後続に着差をつけることが可能だろう。

3連覇を狙ったEpatanteは完全にConstitution Hillの引き立て役となってしまった。基本的にはトップスピードに優れたタイプで、比較的のんびりとしたこのレースや、Kempton、Aintreeといった平坦なコースにおいてスプリント勝負をかけることを得意とする。今回はそもそもConstitution Hillのペースで進んだうえに、直線の入り口に存在する残り3障害地点でミスがあり苦しくなったが、それ以上にそこからのスプリントで勝ち馬に置いて行かれてしまったのは厳しい結果だろう。イギリスのChristmas Hurdleが行われるKemptonであればもう少しやりやすくなる可能性もあるが、Cheltenham Festivalでのターゲットは少し考え直した方がよさそうだ。Not So Sleepy、Voix Du Reveといったこのレースのいつものメンバーがそれ以降の入線で、Constitution Hillが出てきたとはいえ、G1ならばもう少しメンバーが集まって欲しかったというのは正直な気持ちである。

 

11/27(日)

Navan (IRE) Soft (Yielding in places)

Monksfield Novice Hurdle (G3) 2m4f (Replay)

1. Dawn Rising J: Mark Walsh T: Joseph O'Brien

圧倒的人気を背負ったAmerican Mikeが逃げるAffordale Furyにプレッシャーを掛けていき、2頭で後続を引き離す展開。最終障害でAffordale Furyが落馬しAmerican Mikeが先頭に残るも、そこから復活してきたDawn RisingがAmerican Mikeを交わすと、一杯になったAmerican Mikeを突き放して勝利した。

Dawn Risingはアイルランドダービー馬であるSovereignの全兄という良血で、これでHurdleは3戦2勝とした。平地でもNewmarketのBahrain Trophy (G3)にて2着に入った良績はあるようだが、今年の7月からHurdleに転向している。Sovereignはアルゼンチンで種牡馬入りしたようだが、この馬は既に去勢されているようだ。ただし、レースとしてはAffordale FuryとAmerican Mikeが道中からオーバーペース気味にやり合った結果、完全に遅れていたこの馬が復活してきたという印象のレースで、若干取捨選択に困る内容というのが正直なところだろう。Joseph O'Brien厩舎はどうも今シーズンは複数の平地の実績馬を集めて障害に送り込んでいるようで、ひとまずその一員としてどこまでやれるかは注意しておきたいが、道中完全に先頭集団から遅れていたというのは少々いまいちな内容ではある。NHFでは良績を残したAmerican MikeはこれがHurdle2戦目であったが、上記の通りオーバーペース気味のレースで最後は一杯になってしまった。とりあえず頑張って最後まで走っていたようで、これがいい経験になってくれたことを期待したい。

 

Troytown Handicap Chase (Grade B) 3m (Replay)

1. The Big Dog J: Keith Donoghue T: Peter Fahey

レースは前半から空馬に絡まれたLifetime Ambitionが積極的に運ぶ展開で、やや後続にリードを取って進める。そのままLifetime Ambitionは逃げ込みを図るも、最終障害でミス。代わって前に出たThe Big DogがLifetime Ambitionを抑えて勝利した。

The Big Dogはこれで前走のMunster National (Grade A)から連勝とした。昨年にはGrand National Trial (Grade B)を勝っているようにSoft程度の馬場の超長距離戦を得意とするタイプで、11st10lbを背負っての勝利と言うことで今後が楽しみになるものであった。おそらく今後はGrand Nationalを目指すことになると思われるが、基本的には重馬場で良績を残してきた馬だけに、スピード能力の面では注意しておきたい。11st5lbを背負ったLifetime Anbitionは惜しい2着で、空馬に絡まれてややオーバーペース気味になってしまったことは勿体ない内容であった。3着以下は大きく遅れたが、中段で頑張っていたDeath Dutyが最後3着まで浮上してきたようだ。今年で11歳になるベテランで、馬場が重ければもう少しやれるだろう。2022年のアメリカ障害チャンピオンジョッキーであり、今年19歳の若手Parker Hendriksはこれがアイルランドでは初めての障害戦で、Coko Beachに騎乗して挑んだが、好位からいい感じで進めるも、最後は脱落して4着に終わった。Coko Beach自身、極端な重馬場のワンペース型という馬で、この日はさすがに馬場が早すぎたということを踏まえると仕方のない敗戦だろう。Coko Beachの良さを生かす競馬はしており、今後に期待の持てるレース内容であった。

 

Auteuil (FR) Lourd (4.6)

Prix Renaud Du Vivier (Grande Course De Haies Des 4 Ans) (G1)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans 3900m (Repaly)

1. Il Est Francais J: James Reveley T: Tom George

スタート直後からHawai Du Berlaisが前に行く構えを見せるも徐々に遅れて中段から。代わってIne Anjouが前に行く展開も、じわじわと進出してきたIl Est Francaisが直線に入ってこれを振り切ると、そのままIne Anjouに8馬身差をつけて勝利した。

Il Est FrancaisはこれでHaiesは4戦4勝とした。AQPS限定の平地G1で2着に入った馬で、前走のPrix Pierre De Lassus (G3)でもIne AnjouやHawai Du Berlais以下を圧倒していたのだが、今回もその実績及び前評判に違わぬ走りを見せた。Tom George調教師はイギリスの人だが、最近はフランスで精力的に活動しており、その努力が実った結果といえる。Il Est Francais自身はイギリスでの出走歴はなく、ここまでフランスのみの出走に留まっているが、今後のレース選択には注意しておきたい。戦前、パドック等でファンクラブと思しき一団がこの馬の横断幕を持って大合唱していた牝馬Ine Anjouが2着に入った。勝ち切れないまでもコンスタントに走っている馬で、Il Est Francais相手にはやや分が悪そうだが、とはいえこの馬も実力上位であることは確かなのだろう。3着以下は大きく遅れた。春の実績馬Hawai Du Berlaisは案外な内容で、前走はやや仕掛け遅れのような展開での敗戦であっただけにスタート直後は前に行ったのだが、そこからじわじわと脱落し、そのまま巻き返すことはできずに終わった。Martaline産駒の牝馬で、この重馬場を苦手にすることはないと思われるのだが、やや残念な結果であった。

 

その他

New whip rules to start in early 2023 following extensive technical discussions with key industry figures (British Horseracing Authority)

2023年の1月からイギリスで新しい鞭の使用規則が導入されることになった。National Huntでは4週間の"Bedding in period"を経て、2023年2月6日から正式導入される。

Au conseil d'administration de France Galop (France Galop)

11月21日のFrance Galopの取締役会における決定事項。欧州における大幅なインフレにも関わらず馬券の売り上げは伸びているようだが、昨年と比べると現役競走馬数が減少(-0.9%)しているほか、出走頭数の減少が発生しているようで、これを受けて2023年の競馬開催には変更が生じるようだ。