にげうまメモ

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23/04/09 Weekly National Hunt / Jump Racing

4/8(土)

Fairyhouse (IRE) Soft (Yielding in places)

〇 Hunters Chase 3m1f40y (Replay)

1. Annamix J: Mr Charlie Mullins T: Willie Mullins

この日から始まったFairyhouseのEaster Racing Festival。BillawayとFerns Lockが前で鎬を削る展開も、最後復活してきたAnnamixがBillawayを捉えて勝利した。

Annamixは2020年の11月以来となる勝利となる。かつてはアイルランドの重賞戦線で戦った馬だが、2022年の冬以降はHunter Chase又はPoint to Pointに移行している。そのPtPやHunter Chaseでもさっぱりいいところはなかったようだが、今回はやや驚きの勝利となった。道中はじわじわと先頭集団から遅れるような走りを見せており、このレースを見ていた観客にとってもなかなか驚きのレースだろう。Hunter Chaseでは常連となったBillawayが今回も力を見せての2着。3連勝で挑んできたFerns Lockは3着に終わった。

 

〇 Boylesports Mares Novice Chase (Listed) 2m5f150y (Replay)

1. Instit J: Danny Mullins T: Willie Mullins

Allegorie De Vassyが人気になっていたが、するすると逃げたInstitがAllegorie De Vassyを振り切って勝利した。InstitはこれでChaseは2勝目とした。基本的には牝馬限定戦ばかりを使っている馬で、おそらく今回のようにするすると逃げる形がよいものと思われる。人気のAllegorie De Vassyと比べると細身のスピードタイプといったところか。そのAllegorie De Vassyは全体的に着地部分で怪しい仕草を見せており、Institを交わさなければならない最終障害ではある程度リスクを掛けて飛越を試みているのだが、その着地地点で盛大に躓いて2着に終わった。ここまでの牝馬限定戦では馬の能力だけで圧倒できてしまっていたのだが、もう少し飛越面で向上が欲しいところである。

 

RYBO Handicap Hurdle (Grade A) 2m90y (Replay)

1. Risk Belle J: Mark Walsh T: Willie Mullins

Wajaahaが逃げる展開も馬群は密集して進行。Wajaahaは早々に馬群に飲み込まれ、代わってCaaptains Nephewが先頭に立つも、馬群を縫ってRisk Belleが前に出る。さらに外から出てきたMonbeg Parkが内に切れ込むような恰好で差し込んでくると、内で抵抗するRisk Belleを捉えて1位入線となった。しかしどうやらMonbeg ParkはRisk Belleにぶつかってきたということで2着に降着になったようだ。

Monbeg ParkはMaiden勝ちのみの馬で、現時点ではNovice馬である。Lawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)ではうまくいかなかったようだが、とはいえHandicap路線で適性を見せているようで、馬群を縫ってくるパワーと伸び脚は際立っていた。11st0lbを背負っての勝利ということもあり、極端に楽な斤量でもなかったことは特筆すべきだろう。Risk Belleは4歳馬で、CheltenhamのBoodles Handicap Hurdle (Premier Handicap)では3着に敗れていたのだが、勝負所から前の一列を抜けてくる加速は見事であった。3着以下はやや遅れた。Boodles Handicap Hurdleの勝ち馬Jazzy Mattyも出走しており、前々の外で運んだが勝負所から後続が殺到して大敗に終わった。

 

Auteuil (FR) Tres Souple (4.0)

Prix De Pepinvast (G3)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans. 3600m (Replay)

1. St Donats J: Felix De Giles T: Hugo Merienne

人気を背負ったSt Donatsがある程度後続にリードを取って飛ばす展開で、これについていったLosange Bleuをしのいで勝利した。

St Donatsは昨年のPrix Cambaceres (G1)の勝ち馬で、これが今シーズンの始動戦であった。Saint Des Saints産駒の良質なスピードを武器とした馬で、Felix De Giles騎手は過度に馬を抑えようとはせず、ある程度馬のスピードを生かした競馬を試みているのが印象的であった。ただしどうにも右に斜飛するようなきらいもあり、より距離が伸びてどうかという点ではやや不透明なところがある。ここまでHaiesで4連勝、前走の3月のPrix D'Indy (G3)を快勝していたLosange Bleuが2着に入った。距離延長等の対応についてはこちらの方が分がありそうだ。3着以下は大きく離れ、69kg及び68kgを背負った2頭が強い競馬を見せるレースとなった。St DonatsのペースについていったLes Cerfs Volantsは良く抵抗したが、最終障害で気の毒な落馬に終わった。

 

Prix Murat (G2)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4400m (Replay)

1. Gex J: Bertrand Lestrade T: Emmanuel Clayeux

途中からFelix De Giles騎手のGeneral En Chefがするすると引っ張る展開も、勝負所から前に出てきたGexがMetasequoiaを振り切って勝利した。

Gexは昨年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の2着馬で、これが今シーズンの2戦目となった。始動戦となったPrix Hubert D'Aillieres (Listed)は4着に敗れていたが、とはいえHaiesで僅差の4着ということで十分な内容であり、今回も立ち回りの上手さを見せての勝利であった。昨年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の段階では伏兵程度の立ち位置であったが、この馬としても確実に力をつけているようで、今年の5月には楽しみな存在になりそうだ。Metasequoiaはこれで4戦連続となる2着で、PauのGrand Steeplechaseを含め確実に走るところがあるようだが、どうにも勝ち切れないレースが続いている。今年の2月にPrix Robert De Clermont-Tonnerre (G3)を勝ったGrandeur Natureも僅差の3着で、このあたりは立ち回り一つだろう。この路線の常連Starlet Du Mesnilも差のない4着に入り、全体的にこのレースの混戦ぶりを示す結果となった。5歳馬としてはPrix Maurice Gillois (G1)を勝ったGessy Raiselleも出走していたが、途中から脱落して大敗に終わった。Prix Troytown (G3)でもいいところなく敗れており、どうにも上の世代相手に厳しい競馬が続いているというのが現状のようだ。

 

4/9(日)

Cork (IRE) Yielding (Good in places)

Bar One Racing Chase (G3) 3m (Replay)

1. Bachasson J: Sean Flanagan T: Willie Mullins

ゆるゆると逃げたBachassonがFeronily及びChacun Pour Soiの追い上げをしのいで勝利した。Bachassonはこれで長い休養を挟みながら7連勝とした。基本的にはどちらかというと空き巣感のあるような重賞ばかりを使ってきた馬で、G1やHandicap路線で同行ということはないのだが、とはいえ12歳になるまでしっかりと活躍を続けるというのは大したものだろう。Voix Du Nordの産駒だがやや大柄な馬体を生かしたダイナミックな飛越が武器の馬で、年齢のわりにはフレッシュなような感がある。6歳のFeronilyが2着。11歳のChacun Pour Soiは僅差の3着に入った。基本的に24fは長すぎるような感があり、ひとまず我慢して走らせればいちおう距離は持つのだが、とはいえ瞬間的なスピードがある馬ではなく、我慢しながらの追走ではこの馬の本来の良さを生かすことは難しいような感がある。

 

Fairyhouse (IRE) Yielding

Irish Stallion Farms EBF Honeysuckle Mares Novice Hurdle (G1) 2m4f100y (Replay)

1. Ashroe Diamond J: Paul Townend T: Willie Mullins

今年から2019年にこのレースを勝利したHoneysuckleの名前を冠した競走となったようだ。レースはHarmonya Makerが元気よく逃げる展開も、残り3障害辺りから一気に馬群が密集して脱落。代わって出てきたWhatcouldhavebeenが抜け出すも、持ったままで出てきたAshroe Diamondがこれを捉えて勝利した。3着以下は大きく遅れた。

Ashroe DiamondはCheltenhamはスキップしていた馬だが、1月のこのコースでSolerina Mares Novice Hurdle (G3)を快勝していた。レースとしては見事な快勝だが、とはいえWhatcouldhavebeenが勇気をもって仕掛けていったのをワンテンポ遅らせて追いかけていくPaul Townend騎手の騎乗は見事で、あそこまで冷静に前を見ることができる騎手はなかなかいないだろう。馬群の中でじっと構えていたレース運びで、慌てて前を追いかけてはかえって足をなくす可能性も考えられ、着差よりも難しいレースであったように思われる。Maiden勝ちのみで重賞クラスではやや厳しいレースが続いていたWhatcouldhavebeenは強気の仕掛けでの2着で、これは騎手のファインプレーだろう。Princess Zoeも出走していたが、好位から進むも早々に馬群に飲み込まれて途中棄権に終わった。飛越にミスは散見されたが、基本的には前走のように馬群の中で我慢をさせるレースの方がこの馬の能力を生かせるものだったように思われる。ただ、スタート直後から騎手が前に行く構えを見せており、おそらくこの展開は陣営の作戦だった可能性もありそうだ。

 

Paddy Kehoe Suspended Ceilings Novice Hurdle (G2) 2m4f100y (Replay)

1. Nick Rockett J: Danny Mullins T: Willie Mullins

The Gunner Yeatsがゆるゆると逃げるも、どうにも前半から飛越がいまいちで進行。好位にいたNick Rockettがじわじわと接近すると、そのまま最終障害前では後続にリードをつけると、最終障害を越えてからは一気にリードを開いて快勝した。

Nick RockettはHurdleは2戦2勝とした。今回はMaiden勝ちのみからのレースであったが、伸び脚という点ではここでは明らかに抜けており、新勢力としてかなり楽しみな存在になりそうだ。いちおう既存勢力としてはLeopardstownのDublin Festivalの名前の長い24f Novice Hurdle (G1)で4馬身差の5着に入ったDeep Caveも出走しており、この馬を物差しにすれば極端にメンバーが揃っていないということはなさそうだ。逃げたThe Gunner Yeatsはどうにも終始飛越がいまいちで、残り2障害地点で気の毒な落馬に終わった。

 

Cafe En Seine Novice Hurdle (G2) 2m (Replay)

1. Hercule Du Seuil J: Mark Walsh T: Willie Mullins

前半からHercule Du Seuilが元気よく逃げる展開で、一時は後続に大きなリードをつける。Hunters Yarn、Amir Kabir、American Mikeと接近してくるが、Hercule Du SeuilがHunters Yarn以下を振り切って勝利した。

Hercule Du Seuilはこれで重賞は2勝目とした。飛越がいまいちだったBar One Racing Royal Bond Novice Hurdle (G1)は早々に脱落して途中棄権に終わっているが、126日の休養を経て出走してきたここではMark Walsh騎手によるかなり強気なレース運びで結果を残した。大逃げを打ったとはいえ途中で息を入れるようなレース運びはしばしばMark Walsh騎手が見せるもので、これも技ありのレースだろう。County Hurdle (Premier Handicap)では案外であったHunters Yarnが2着。American MikeはNHFで結果を残してきた馬だが、どうにも勝負所からは案外で、あっさり脱落して4着に終わった。Mahlerの産駒らしくシンプルに脚が速いタイプではないのかもしれない。

 

WillowWarm Gold Cup Novice Chase (G1) 2m3f170y (Replay)

1. Flame Bearer J: Sean O'Keeffe T: Willie Mullins

Flame Bearerが前に行く展開も、これにJames Du Berlaisが途中から絡んでいく。これに抵抗してFlame Bearerがそのままペースを作る展開となる。Sir Gerhard、Mighty Potter、Appreciate Itと前に接近するが、第10障害でMighty Potterは落馬。そのままFlame Bearerを射程圏に入れたSir Gerhardとのマッチレースとなるが、Flame BearerがSir Gerhardをしのいで勝利した。Appreciate Itが3着に入った。

Flame Bearerは前走のPierce Molony Memorial Novice Chase (G3)から連勝とした。2月のIrish Arkle Novice Chase (G1)では大敗に終わっていたが、どうやら20fの方が現状ではいいらしく、距離を伸ばして結果を残している。今回はJames Du Berlaisがある程度積極的に絡んでくる中、やや展開としてはオーバーペース気味であったのだが、それでもしのぎ切るというのだから大したものだろう。一方でChase3戦目のSir Gerhardはいまいちな飛越を繰り返していた前走のCheltenhamから大いに進捗のある2着で、さすがはNovice Hurdleで高い素質を見せた能力馬であるところを見せてくれた。今回のようなレースができるのであれば引き続き要注目だろう。Appriciate Itは最後は勝負所から置かれての3着で、16fの重馬場でいい競馬を見せてきた馬であることを踏まえると、引き続き馬場と距離適性については注意した方がよさそうだ。フランスHaiesではG1クラスでの実績のあるJames Du Berlaisは最後遅れての4着で、今回はこの馬としてはややオーバーペースであったと考えてよさそうだが、どうにもアイルランドでは結果を残せていないことは心配なところである。人気を背負っていたMighty Potterは途中で落馬に終わったが、残念ながら助からなかったとのことで、レース展開としては見所があったのだが後味の悪いレースとなってしまった。

 

その他

'I'd just like to finish with a smile on my face' says Davy Russell as he expands on decision to ride at Aintree (Racing Post)

Davy RussellはおそらくAintreeのGrand National Meetingには騎乗するようだ。ただしCheltenhamでも背中の怪我で途中から交代しており、Aintree以降の騎乗は不透明なようだ。Grand Nationalでの騎乗馬としてGalvinの名前が挙げられている。

Plat et obstacle : rien ne résiste à Martinborough en 2023 ! (France Sire)

フランスで繋養されているDeep Impact産駒のMartinboroughはPlatのみならず障害でも成功を収めている。先週のAuteuilでも産駒が勝利しており、じわじわとこのフランスで存在感を強めている。

D'Auteuil à Pardubice, le guerrier Chicname de Cotte prend sa retraite sur ses terres natales à 11 ans ! (France Sire)

2019年のVelka Pardubickaで3着に入ったChicname de Cotteは腱の故障により引退し、生まれ故郷に戻ったそうだ。大きな事故を乗り越え、Auteuil、フランスのCross Country、そしてPardubiceで活躍した老戦士は穏やかな余生を過ごしているそうだ。

7News Adelaide (Facebook)

7News Adelaide (Twitter)

4月7日から10日にかけて行われるOakbank Easter Festivalは集客のため金曜日には音楽のコンサートも行われたそうだ。主催者は楽観的なコメントを出しているようだが、どうだろうか。

America’s Best Racing, NSA join forces for coverage of Middleburg Spring Races (National Steeplechase Association)

4月のVirginia州Middleburg Spring RaceはAmerica's Best Racingにて放映されるそうだ。America's Best Racingには50万人近いフォロワーがいるようで、アメリカ障害競馬のメディアへの露出の促進に寄与することが期待される。

2023年度夏季競馬番組が決定しました (JRA)

新潟ジャンプステークス及び小倉サマージャンプの2競走は暑熱対策の観点から第4競走に設定されるそうだ。さすがに日本の真夏の酷暑の中での障害競争の開催は動物福祉の観点から厳しいものがあるように思われる。