にげうまメモ

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15/5/21 National Hunt Racing

*3miles Chase

BHAから各路線のRatingが発表になった。Ratingの詳細はBHAのHPにエクセルファイルで落ちているのでそちらを参照されたし。こちらでは150以上の馬のみ参考までに記載しておく。内容は各路線の雑感と振り返り。

 

175 Don Cossack

172 Coneygree (Novice), Silviniaco Conti

170 Djakadam

168 Menorah, Road to Riches

167 Many Clouds

165 Carlingford Lough

163 Ballynagour, Don Poli (Novice), Foxrock, Saphir Du Rheu (Novice)

162 Holywell, On His Own, Rocky Creek

161 Houblon Des Obeaux

160 Cue Card, Sam Winner

159 Unioniste

157 Valseur Lido (Novice)

156 The Druids Nephew, The Giant Bolster

155 Puffin Billy (Novice), Smad Place

154 Kings Palace (Novice), Southfield Theatre (Novice), Virak (Novice)

153 Black Thunder, Wounded Warrior (Novice)

152 Double Ross, First Lieutenant, Medermit, Shutthefrontdoor, Taquin Du Seuil, Triolo D'Alene

151 Bobs Worth, Hey Big Spender, Val de Ferbet (Novice)

150 Goonyella, The Romford Pele (Novice), The Young Master (Novice)

   

参考レース

www.youtube.com

Melling Chase (2m4f)を快勝してきたDon Cossackが3m1fの長距離に挑戦、結果快勝したレース。このレースが評価されてDon CossackはRating175の最高値を獲得することになった。2着はCheltenham Gold Cup (G1)2着のDjakadam、3着は同3着、Lexus Chase (G1)勝ちなどのあるRoad To Riches。このように豪華なメンバーを相手にしての快勝によりRating175と評価されたと考えられる。

ただし、歴代の3miles Championsに比べるとやはり見劣りする感は否めない。もっとも、Kauto Star、Denmanらが健在であった頃のインフレ具合に比べるとここ数年は落ち着いた感はある。今年のDon CossackはSilviniaco Contiの174に比べるとまぁ同じ水準といったところだろう。実際、昨年のSilviniaco ContiもKing George Ⅵ ChaseとBowl Chaseが評価された感があり、肝心のCheltenham Gold Cupでは4着と惜敗していた。混戦模様の中、やや苦しいトップ評価であったものと考えられる。今年のDon Cossackの水準はConeygreeとDjakadamとの着差と、Don Cossackとの着差を比較したものによるものであろう。しかし、そうは言ってもPunchestownの一戦のみでここまでの評価を与えるのはやや疑問符をつけても良いのではないだろうか。理由は2点。第一に、Coneygree自身はNoviceの馬であったため評価を落としたことも考えられる。加えて、Road To RichesやDjakadamをはじめとするCheltenham Gold Cup組は疲労が溜まっていた可能性もあり、Punchestownで最高の出来にあったかというと微妙である。このように、Don Cossackの175という評価すらやや過剰評価気味なのではないか。いずれにせよ、来シーズンConeygreeとDon Cossackとの対決が見られるのが楽しみである。

その3miles路線を語る上で欠かせないのが、今期の台風の目、Coneygree。Noviceの身ながら長距離Chaseの最高峰Cheltenham Gold Cupを制覇。Noviceの身で同レースを勝利するのは約40年ぶりとなる歴史的快挙である。同馬はRoad To Riches、Djakadamとの着差を考慮して172というRatingがつけられたが、Noviceの身でこのような高いRatingをつけられた馬は1999年までさかのぼっても存在しない。これに次ぐRatingが1999-00のGloria Victisの166というのだから、いかに同馬が歴史的偉業を達成したかわかるだろう。

また、レース内容も圧倒的なものであった。Road To Riches、Djakadamといったスピードと持久力に優れる馬を相手に、On His Ownに絡まれながらもハイペースで飛ばし、最後まで我慢するという内容は非常に評価できる。Silviniaco Contiは途中でついていけなくなり、Lord WindermereやBobs WorthにいたってはPU。同馬はNoviceの馬であり、まだまだ伸びしろはあるはず。来シーズン、どのようなパフォーマンスを見せてくれるか非常に楽しみである。

なお、Road To RichesとDjakadamのレーティングはまさにCheltenham Gold CupとPunchestown Gold Cupの着差によるものだろう。また、4着に食らいついたHolywellは162とやや低評価に終わったが、その前のレースで凡走したりとやや安定味を欠くのでそのあたりも考慮されたのかもしれない。

昨シーズンのチャンピオン、Silviniaco ContiはややRatingを落として172という結果に終わった。この馬自身、マイペースでいけた場合は尋常ならざるしぶとさを発揮するが、Cheltenham Gold CupではConeygreeが作り出したハイペースを追走するのは少々厳しかったようだ。今回はその大敗が響いての評価だろう。もっとも、Cheltenham God Cupは重馬場が響いた感もあるで、これで見限るのはやや早急か。事実、マイペースで運んだBowl Chaseではしっかりと勝利を収めている。

168のMenorahはListed勝ちがある程度の馬だが、Betfair ChaseにてSilviniaco Contiの2着があるので評価されたのだろうか。ただし、それ以外はSilviniaco Conti相手に完敗続きであり、これ以上の評価を望むのは酷か。

Rating167を獲得したのがGrand Nationalの勝ち馬Many Clouds。Cheltenham Gold CupこそConeygreeの作り出したハイペースに対応できずに大敗したが、Grand Nationalでは11st9lbの重いハンデを背負ってSaint Areの追撃を抑えて勝利。RatingこそCheltenhamの結果が反映されているが、Rating以上に強い結果といって間違いないだろう。とにかく精神面で強い馬で、持久力・飛越という点で卓越したものを持っている。スピード決着にこそ難があるが、来シーズンも超長距離のハンデ戦、そしてGrand Nationalの有力候補になることは間違いないだろう。

昨年のRyanair Chaseの勝ち馬Dynasteは3miles路線に挑戦するも、 残念ながらSilviniaco Contiに水を空けられる結果になった。来シーズンは2 1/2miles路線のほうがよいのではないだろうか。3mだとやや末が甘くなる感がある。

Hennessy Gold Cup (G1)勝ちのあるCarlingford LoughもCheltenham Gold Cupでは歯が立たず。165という結果も納得だろう。スローからのしまい勝負に強い馬なので、Cheltenhamはやや厳しかった感がある。

その他めぼしいところから何頭か。Cue Cardは骨盤の骨折から復帰するも成績が冴えず、Ratingは160に終わった。腸骨翼は仙腸関節を形成しており、ここの骨折はNational Hunt Horsesにおいて非常に多い。ここの関節は後肢の殿筋により上半身を持ち上げる際の支点となる関節である。骨折の詳細は不明だが、万が一ここだとすると後遺症が心配である。2013 Cheltenham Gold Cupの覇者Bobs Worthは今期の成績は冴えず。Ratingも151と全盛期から比べると大きく落とした。やや衰えが見られるか。また、2014 Cheltenham Gold Cupの覇者Lord Windermereはどうも冴えないレース振りが続き、不慣れなハイペースに戸惑ったCheltenham Gold CupではPU。こちらも157とRatingを落とす結果となった。

その他上がり馬を何頭か。163のBallynagourはBowl ChaseでSilviniaco Contiの完勝の流れかと思われたところを半馬身まで追い詰めた馬である。まだ10戦目とキャリアは浅く、まだまだこれからの馬である。落馬が多いのが気がかりだが、それ以外では成績は安定しており、今後の活躍が期待される。なぜか今年の5月はAuteuilに参戦しているのでこちらも要注目。

RSA Chaseを勝利したDon Poli。本来であればこちらが3miles Novice Chaserのチャンピオンとなるはずの馬である。Ratingは163とNoviceとしてはなかなか高いほうであり、昨年のHolywellが同値であることを考えると決して低いものではない。ただし、PunchestownではValseur Lidoに完敗しており、これがややRatingを下げる原因になったかもしれない。 

忘れてはならないのは、Midmay Novices' Chaseの勝ち馬Saphir Du Rheu。一度はChaseに転向するも落馬が相次ぎ、Hurdleに戻してWorld Hurdleを2着。しかしながらAintreeでは再度Chaseに転向し、2着に15馬身差をつける大楽勝。163とDon Poliと同値をつけられたのも道理だろう。ただし、どうにも飛越がまだ安定しないところが懸念事項か。夏の休暇を超えて、飛越が向上すればまだまだ上を狙える馬。来シーズンに期待したい。

 

いずれにせよ、やや過剰評価気味のDon Cossack、Cheltenhamで圧倒的なパフォーマンスを発揮したConeygree、それに食らいついたRoad To RichesとDjakadam、そして昨年のチャンピオンSilviniaco Conti、Grand Nationalの勝ち馬Many Clouds。この辺が来シーズン3miles路線を引っ張っていく上で中心的な存在だろう。ここにHolywell、あがり馬Ballynagour、NoviceのDon Poli、Saphir Du Rheuあたりがどれくらい絡めるか。来シーズンも楽しみなものになりそうだ。