にげうまメモ

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21/08/08 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/08/01-2021/08/08

8/7(土)

Pardubice (CZE) 3.3 (dobrá / Good)

〇 Cena podporovaná společností AGROVENKOV, o.p.s.

Steeplechase crosscountry IV.kat. - 4500 m, handicap, 5letí a starší 60.000 Kč (Replay)

1. Non Stop J: Carina Schneider T: Neuberg Filip

最終コーナーでBarcakoを競り落として前に出たNon Stopがそのまま勝利した。Non Stopは圧倒的最低人気であった馬で、もともとオーストリア製産馬でスイスでデビュー、その後チェコの障害戦を使うも、2020年にV. kat.にて2着があるのが最高と、ここまで全くいいところがなかった馬である。上記の2着も63kgの軽量を利したもので、Schneider Carina騎手もここまでわずか2勝とさっぱり実績がないことを考えると、さすがにこの前評判も納得のものだろう。メンバー的にも2着のScater産駒のKorneliaがこのクラスの常連とあまりぱっとはしないのだが、珍しいオーストリア産馬ということもあって注目しておきたい。ウクライナ産馬Chaikovskyは好位から進め、勝負所まではチャンスがあったのだが、なにかしらのトラブルがあったようで途中棄権に終わった。

 

〇 Cena Slavia pojišťovny a.s.

Steeplechase crosscountry III.kat. - 4000 m, handicap, 5letí a starší 90.000 Kč (Replay)

1. Medic J: ž. Marcel Novák T: Kvapilová Lenka

途中から一気に先頭に立ったMedicがそのまま押し切り勝利した。Medic自身はここまで3000メートルクラスで活躍してきた馬で、これが2018年の6月以来の4000メートルクラスのレースとなる。3000メートルクラスでは途中から一気に先頭に立ちロングスパートを掛ける戦術で結果を残してきたのだが、最近はどうにもズブさが目立っており精彩を欠いていた。今回はIII. kat.とはいえ、久々にこの馬らしいレースを見せての勝利となった。前半からMarcel Novák騎手がゆったりと進めており、我慢が利くようであればこの距離以上でも対応が可能だろう。上り馬Popinjayが2着に入った。前走スイスで結果を残してきたFort Ryanもいたのだが、残念ながらコーナーで転倒して競争中止に終わった。

 

〇 Cena společnosti Tipsport

Steeplechase crosscountry IV.kat. - 3300 m, cena, 5letí a starší 60.000 Kč (Replay)

1. Tiara Man J: ž. Jan Odložil T: Bodlák Radim

前半から元気よく飛ばしたTiara ManがそのままLianelを抑えて勝利した。Tiara Manは2018年及び2019年のPoplerův memoriál skupiny Profireal Group (Stcc NL)の勝ち馬。2020年はやや冴えない競馬を続けていたが、一気の相手弱化となったここではさすがに結果を残した。3000メートルクラスのSteeplechase Cross Countryでは現役屈指のスピードを有する馬で、ややDropの飛越など弱点はあるのだが、Dropの存在しないこのレースにおいては殆どこの馬のペースに付いていける馬はいなかった。むしろ71kgを背負ってこの馬のペースに付いて行ったLianelを褒めるべきで、この馬自身Cross Countryはこれが初参戦にも関わらず、ベテランTiara Manにここまで食い下がったのは高く評価していいだろう。

 

〇 Cena města Pardubic - Cena Registany

Steeplechase crosscountry II.kat. - 4150 m, cena, 4letí a starší - klisny 120.000 Kč (Replay)

1. Dajuka J: ž. Lukáš Matuský T: Holčák Radek

前半から軽快に飛ばしたDajukaがそのまま快勝。Dajukaは昨年のPoplerův memoriál skupiny Profireal Group (Stcc NL)の勝ち馬だが、今回は4150メートルと距離を伸ばしてのレースであった。70.5kgのトップハンデを背負っていたのだが、それでもここまで危なげのないレースをするあたり、牝馬相手では少々役者が違ったと考えていいだろう。この馬自身、3000メートルでは現時点で現役トップクラスの馬だが、上記Poplerův memoriál skupiny Profireal Group (Stcc NL)の連覇を狙うのではなく牝馬路線という選択肢もあるかもしれない。ドイツで結果を残したPiraniyaもいたのだが、こちらは早々に落馬に終わった。

 

Cena firmy Chládek a Tintěra, Pardubice a.s. - III. kvalifikace na 131. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou

Steeplechase crosscountry NL - 5800 m, cena, 5letí a starší 200.000 Kč (Replay)

1. Lombargini J: ž. Jan Odložil T: Popelka Stanislav

Velka Pardubickaの3rd Qualification Race。Velka Pardubickaのレース条件は貼り付けたツイートから。要するに、例えばアメリカのTimber、オセアニアのSteeplechase辺りは対象外らしい。レースは前半からVandualが引っ張るも、スタンド前のDropを越えたあたりからLondgian Whistleが先頭に。そのままペースを上げて引っ張るが、Steeplechase Courseに入る辺りからDirect Lagrangeが先頭に代わり逃げ込みを図る。しかしさらに後方から押し上げてきたLombarginiが最終障害手前で先頭に立つと、Direct Lagrangeに6馬身差をつけて快勝した。

Qualification Raceはしばしば出走権を取るためにスローでレースが進行することがあるのだが、今回はVandual、さらにLodgian Whistleが積極的に運んだために激しいレースとなった。Lombarginiは昨年のCena Labe (Stcc L)にてEvženの2着に入った馬。昨年もQualification Raceを使ってAnge Guardianの3着に入りながらもその後Cena Labeに参戦したように、どうにも本番のレース選択には未知数のところがあるのだが、今回の勝ち方としては10歳にしてこの馬の本格化を感じさせるものであった。レース内容としては上記の通り激しいレースが展開されており、比較的着差が接近した4着までは高く評価しておきたい。8歳のDirect Lagrangeはここまであまり実績のない馬だが、今回は大きな進境を感じさせる2着。古豪Vandualは3着に終わったが、13歳となった今年も衰えはなさそうで、本番でも期待したい。4着のLodgian Whistleは少々道中積極的に運び過ぎた感もあり、この辺りはレース条件や仕掛けのタイミングで着差は入れ替わる可能性はあるだろう。

Lysá nad Labemで強い競馬を見せてきたAeneasはレースについていけず大敗。いちおうは完走は果たしたようだが、ここまで抵抗できない辺り、現状Pardubiceの一線級のCross Countryにおける対応力には疑問が残る。2nd Qualification Raceで4着に入ったImphalも上位には肉薄できず。当該レース自体、ややゆったりとした流れからなだれ込んだ印象もあり、やはり激しいレースとなるとやや格落ちの印象もある。レース後の検量で1kgの過重量が報告されたRui Faleiroも勝負には加われず。途中で転倒して騎手が落馬したのがKaiserwalzerとParis Eiffel。2019年のVelka Pardubicka以来となるBeau Rochelaisは全く走る気を見せず途中棄権。飛越を見ているとどこか痛いところがあるのかもしれない。Saint Josephは勝負所で何度か大きなミスがあり、そのまま脱落して途中棄権に終わった。

 

Riccarton Park - Canterbury JC @ Riccarton Park (NZ) Heavy11

〇 Avon City Ford Sydenham Hurdles OPN HDL 3100m (Replay)

1. Chief Sequoyah J: Emily Farr T: John Wheeler

5頭立てとやや寂しいメンバー構成であったが、中段から進めたChief SequoyahがBeau Gesteを5馬身半ほど突き放して快勝した。Chief SequoyahはこれでHurdleは3勝目とした。前走のWellington Hurdle (PJR)ではThe Cossackの4着に敗れていたが、メンバーが弱化したここでは力の違いを見せる勝利であった。陣営はこの馬の障害馬としての素質を高く評価しているようで、ここまでの戦歴としてPJRではやや不安があるのも事実なのだが、ひとまず今後を楽しみにしたいところ。5月にMaidenを勝ったばかりのBeau Gesteが2着。Chief Sequoyahとのキャリアの違いを考えると、再度の逆転もあってもおかしくなさそうな印象もある。人気を集めたAigneは伸びきれず3着。Jackfrostは復帰後障害は2戦目であったが、途中から脱落して離れた5着に終わった。さすがに大きな故障で長らく休んできた馬ということもあり、復調にはだいぶ時間がかかりそうだ。

 

〇 Stallion Tender Now Open Maiden Steeplechase MDN STP 3200m (Replay)

1. Bak Da Master J: Michale Roustoby T: Jamie Richards

2周目の途中から逃げるSon Of Anna Kayに絡んで行ったBak Da MasterがCarnabyとの叩き合いを制して勝利した。Bak Da MasterはHurdleではそれなりの実績を残した馬で、今年の5月のWaikato Hurdle (PJR)では2着の実績もある。ややPJRクラスでは頭打ち気味な印象もあったのだが、Steeplechase初戦でいきなり結果を残した。全体的に飛越は及第点といったところで、Hurdleでの実績を考えれば今後が楽しみな一頭である。同様にSteeplechase初戦のCarnabyが2着に入った。こちらもHurdleではRST OPNクラスで実績のある馬で、Maidenクラスであれば勝ち上がりは早そうだ。

 

〇 Racecourse Hotel & Motor Lodge Koral Steeplechase OPN STP 4250m (Replay)

1. Tallyho Twinkletoe J: Shaun Phelan T: Kevin Myers

好位から押し上げてきたTallyho Twinkletoeが最終コーナー前で後続を振り切ると、そのまま余裕残しで16馬身差の圧勝とした。Tallyho Twinkletoeはもはや説明が不要なオセアニア障害競馬の名馬。今年はHawke's Bay Hurdle (PJR)、Wellington Hurdle (PJR)といずれも惜敗に終わっていたのだが、ようやくここでこの馬らしいレースを見せた。11歳とだいぶ高齢で、さらにこれまでの実績を踏まえて厳しい斤量を背負いながらも、HurdleのPJRクラスで十二分に通用するスピードと、Steeplechaseの障害を難なくこなせる飛越技術を備えた馬で、71kgのトップハンデを背負いながらPJRクラスのメンバーを圧倒するパフォーマンスはさすがとしか言いようがない。来週のGrand National Steeplechaseに登録はあるようだが、今月末のオーストラリアVIC州Grand National Steeplechaseを目指す話もあるようで、この馬の動向には注意しておきたい。途中棄権したWholetthefoxoutは右前繋靭帯の断裂、落馬したNotabadroosterも故障で引退の方向ということで、ややアクシデントの多いレースになってしまった。

 

8/8(日)

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno Pesante

〇 Vincenzo Pollio - Trofeo Hotel Vinea Euro 18.000 TRIO

per cavalli di 4 anni ed oltre (Steeple-Chase - NOVICES - FANTINI) 3800m (Replay)

1. Gangster De Coddes J: Josef Bartos J: Josef Vana Jr

イタリア競馬にはIppica.Bizという(インターフェースはごちゃごちゃしていてわかりにくいものの)使い方さえわかれば非常に有用なデータベースがあったのだが、残念ながら先月辺りから有料になったようだ。レースは前半から軽快に引っ張ったGangster De Coddesがそのまま圧勝。Gangster De Coddesは6月のPremio Ezio Vanoni (G2)から連勝とした。今年の5月にはDieppeの条件戦でも2着に入っており、今シーズンのNoviceクラスにおいては非常に有望な一頭だろう。Meranoの難易度の高いSteeplechaseへの対応も問題なく出来ていた。これを番手で追いかけたPeace Gardenが2着。PisaのNeni Da Zara (G3)にてHoney Sexyの2着に入ってからのここで、MeranoのSteeplechaseはこれが挑戦であったことを考えれば、上々の内容と言っていいのではないだろうか。地元のAirviが3着だが、比較的この中ではSteeplechaseの経験があったことを考えると、やや上位勢からは力量差がありそうだ。

 

Coleraine (AUS) Soft7

〇 Casterton Steeplechase

Handicap. Three-Years-Old and Upwards, No sex restriction. No class restriction. 3600m (Replay)

1. Historic J: Aaron Mitchell T: Steven Pateman

本来オーストラリア国内で唯一の生垣障害を誇るCasterton競馬場で行われるSteeplechaseなのだが、残念ながらCasterton競馬場が馬場の悪化によりColeraine競馬場に場所を移して行われることになった。レースは前半から例によってThe Dominatorが飛ばすも、2周目の後半からZedmanがこれに絡んでいく。しかし最終障害を越えて接近したHistoricがThe Dominator以下を抑えて勝利した。

Historicは前走のBM120 Steeplechaseから連勝とした。どうにも走るときと走らないときの落差が激しいのだが、昨年もこのColeraineのコースで勝利しているようにコース適性はあるのだろう。71kgを背負ったThe DominatorはZedmanに散々絡まれながらも、最後はHistoricを再度追い詰めるような走りを見せていた。5kgの斤量差を考えればこちらを上に取るべきだろう。San Remoは道中やや置かれる場面があったが、最後追い上げて3着まで来た。飛越が向上すればもう少しやれるかもしれない。

 

その他

From Towcester to Tokyo: ex-chaser Glenfly ready for world stage (Racing Post)

少し前の記事だが、障害馬としてイギリスで9戦を走り、未勝利に終わったGlenflyという馬がオリンピックに出場するという話。引退した競走馬のキャリアにおける大きな可能性を示唆するとともに、馬産業における馬術というものの重要性を示す記事である。そういう意味でも、この状況下でオリンピックを開催したことに一定の意義があったことは確かなのだろう。もっとも、この状況下で開催したことについては、スポーツの感動だとか希望だとか、開催国の責任だとか、そういった曖昧で浅薄な結論で終わるのではなく、バイアスを排除した確かなエビデンスに基づいた検証と、それに基づいた徹底的で多角的な議論が行われる必要があることは言うまでもない。