にげうまメモ

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21/08/01 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/07/26-2021/08/01

7/28(水)

Galway (IRE) Good

Galway Plate (Grade A) 2m6f11y (Replay)

1. Royal Rendezvous J: Paul Townend T: Willie Mullins

夏の風物詩Galway Festivalのメインレース。Tiger Rollが出走するとか出走しないとかいう話もあったのだが結局出走馬リストの中には含まれておらず、トップハンデは11st9lbを背負うEasy Gameとなった。とはいえ、Royal Rendezvous、The Shunter、Samcroなど、この時期としては珍しく重賞実績のある馬が多数集まってのレースとなった。

レースはSamcroがスタート直後から前に行く展開も、第4障害をミスしてRoyal Rendezvousが先頭に。そのまま軽快に逃げたRoyal Rendezvousが馬群を縫って追いかけてきたEasy Gameを凌いで勝利した。Modus、The Shunterと続いた。

Royal Rendezvousは昨年のこのレースの2着馬で、今年はその雪辱を晴らしたことになる。ここまで重賞勝ちとしてはNaas Directors Plate Novice Chase (G3)しかないのだが、どちらかというとこの時期の硬い馬場でスピードを活かす競馬の方が合っているのだろう。このハンデ戦で11st5lbを背負っての勝利はやはり価値がある。Easy Gameはまたしても大舞台での惜しい競馬となった。どうにも飛越にポカがあるタイプのようで大敗と好走を繰り返しており、いまいちストライクゾーンが分かりにくい馬なのだが、とはいえ11st9lbを背負ってここまで惜しい競馬をするのだから力はあるのだろう。昨シーズンG1路線ではやや頭打ち気味であったが、どこかで大仕事をやってのける力量はあるのだろうと思う。G1馬Battleoverdoyenもいたのだが、こちらはさっぱり見せ場を作れず。2019年から2020年の頭に掛けてのNovice Chaseでは強い競馬を見せた馬だが、それ以降は完全にスランプのようだ。Samcroは積極的に進めたが、途中で飛越をミスして後退、最終障害を越えてから失速し大敗に終わった。Noviceクラスでは強い競馬を見せていた馬だが、飛越の問題があるのと、ノドの問題のせいかスピードの持続性能の面でやや不安があるような印象がある。

 

Saratoga (USA) Firm (Result)

Jonathan Kiser Novice Stakes

To be run over National Fences a Hurdle for Four-Year-Olds upward which have not won over Hurdles prior to March 1, 2020, or which have never won three races, other than three-year-old. Two and One-Sixteenth Miles on the Hurdle. $75,000 (Replay)

1. Bodes Well J: Gerard Galligan T: Leslie Young

Bodes Wellが淡々と逃げるも、最終障害を越えて人気のThe Mean Queenが先頭に。しかし最後の直線で騎手がまさかの落馬。代わりに番手で頑張っていたBodes Wellが勝利した。

Gerard Galligan騎手のガッツポーズがなんとも微妙な空気感を醸しだしている。The Mean Queenは例によってKeri Brion厩舎のアイルランド遠征組の一頭だが、アイルランドWexfordのMaiden Hurdleを勝利し、Keri Brion調教師に貴重なアイルランド障害競馬での勝利をもたらした馬である。5月にアメリカに戻って、Margaret Currey Henley Hurdleを含む2連勝を上げていたのだが、どうやら内側のポールを避けようとして騎手が落馬したようで、内容的にはほぼほぼ完勝といっていいだろう。Bodes Wellはここまで障害では長い馬で、イギリスでは1勝、アメリカではハンデ戦にて2勝をあげているのだが、内容的には完全に棚ぼたの勝利と言ったところ。これでNoviceクラスは卒業となる。ただし対抗角と考えられていたFast Carも前走のGreen Pastures Hurdle Stakesにて大きく離された4着に終わっていたり、2着のCity Dreamerも2019年にMarcellus Frost Champion Hurdleを勝利したもののその後は微妙だったりと、The Mean Queenを除けばメンバー的には若干微妙で、次が正念場になりそうだ。

 

7/29(木)

Galway (IRE) Good

Galway Hurdle Handicap (Grade A) 2m11y (Replay)

1. Saldier J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

かなり主張して前に出たHannonが飛ばす展開だがレースは密集して進行。残り2障害辺りからCiel De Neigeが前に出てくるが、さらに外からCape Gentlemanが接近。しかし最終障害を越えて差し込んできたSaldierがMilkwoodを抑えて勝利した。Cape Gentleman、Jesse Evansと続いた。

良馬場の2マイルハンデ戦ということで、前半から一切ペースを緩めずにレースが進行した上に、馬群が密集して進路取りにおいても難しいレースとなっている。Saldierは2018年にChampion Four Year Old Hurdle (G1)、2019年にMorgiana Hurdle (G1)を制した能力馬だが、その後はどうにも順調に使えず、昨年の12月に長期の休養を経て復帰するも、G1戦線ではさっぱり勝負にならないレースを続けていた。夏場に2回ほど平地を使ってのここへの参戦であったが、11st10lbのトップハンデを背負って勝ち切るのだから大したものである。この難しいレースを捌ききるPatrick Mullinsという騎手の手腕もまた見事であった。MilkwoodはScottish Champion Hurdle (G2)の勝ち馬でイギリス調教馬だが、最後追いこんで2着に入った。11st2lbを背負ってのレースであることを考えればやはり能力的は上なのだろう。実績馬ということであれば2020年のJCB Triumph Hurdle (G1)を棚ぼたで勝利したBurning Victoryもいたのだが、こちらは10st5lbという軽量にも関わらず見せ場は作れず。やや進路取りの面で難しい位置に入ってしまった感もあるのだが、Willie Mullins厩舎の騎手選択から考えてもやや格下と捉えられているのかもしれない。4月のMares Novice Hurdle Championship Final (G1)の勝ち馬Skyaceもいたのだが、こちらはさっぱり良いところなく途中棄権に終わった。

 

Manawatu RC @ Awapuni (NZ) Heavy11

Tod Seeds Steeplechase RST OPN STP SWP 4200m (Replay)

1. Coconut J: James Seivwright T: Stephen Nickalls

La Junglesを制して前に行った人気のItiswhatitisが逃げるも、最終コーナー手前辺りからCoconutとThe Rolling Stoneが競り掛けてくるとItiswhatitisは抵抗できずに後退。抜け出したCoconutとThe Rolling Stoneの叩き合いはCoconutが凌いで勝利した。CoconutはこれでSteeplechaseは3勝目とした。今年はManawatu Steeplechaseに次ぐ2勝目と調子はいいようだが、昨年まではRST OPNクラスでも頭打ち気味であった馬で、ここからPJRクラスとなるとどうだろうか。ひとまず69.5kgを背負っての勝利と言うことで、ここでは力量的には上であったようで、昨年までとは馬が変わっていることを期待したい。未勝利馬The Rolling Stoneはやや驚きの好走。前走Lacustreの2着に入ったItiswhatitisは実績や斤量面から人気を集めていたようだが、積極的にレースを進めたもののCoconutらが接近してきたところで脚色が一杯になり、そのまま途中棄権に終わった。

 

〇 Japac Homes Hurdles RST OPN HDL SWP 2800m (Replay)

1. Mizzena J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

Elusive Aceがゆったりと逃げる展開だが、最終コーナー辺りからSenassyが捲って先頭に。しかし外からさらに捲ってきたMizzenaが直線入り口で先頭に立つと、そのままMaster Fin以下を突き放して勝利した。MizzenaはHurdleはMDNから続く2勝目とした。ややMDNの脱出に時間を要した馬だが、レース内容としてはここではスピードの違いを見せるもので、特別斤量を背負っていた馬がいなかったにも関わらず9馬身差と言う着差は決定的だろう。2800メートルとHurdle競走としては最短距離に近い部類で、距離が伸びてどうだろうか。Hurdle未勝利馬Master Finが2着。さすがにWellington Hurdleは荷が重かったようだが、Senassyを抑えての2着は価値がある。RST OPNクラスでは力量上位のSenassyが3着に入った。なおCaptain Runは馬具の取り違えにより規定されていた斤量よりも軽い斤量でレースに参加したことがレース後に判明、失格となった。

 

8/1(日)

Ladbrokes Park Lakeside (AUS) Soft7

Crisp Steeplechase

Set Weights plus Penalties. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim 4200m (Replay)

1. Social Element J: Tom Ryan T: Gai Waterhouse

オーストラリアの伝説的な障害馬Crispの名を冠した競走。8月中旬に行われるGrand National Steeplechaseに向けた重要な一戦となる。レースは前半からやや押して前に行ったAblazeが引っ張るも、途中から好位にいたSocial Elementが先頭に。そのままSocial Elementが後続を振り切ると、Ablazeに8馬身差をつけて快勝した。

Social ElementはこれでSteeplechaseは4戦4勝とした。いきなりSteeplechase初戦で71kgの斤量を背負いながらAmerican In Parisなどの強豪を退けて勝利したのは記憶に新しいところだが、毎回そのパフォーマンスを上げてきており、前走のMosstrooper SteeplechaseではThackeray Steeplechaseにて技ありの逃げを打って勝利してきたThe Dominatorの逃げに付き合いながらこれを9馬身突き放す勝利をあげていた。今回は復帰戦を叩いてきたAblazeを始め、現状オーストラリアSteeplechaseではトップクラスのメンバーが揃っていたところを危なげのない完勝を上げており、まさに今シーズンのオーストラリアSteeplechaseにおける最大の上り馬と言ってよいだろう。2020年のGrand National Hurdleを始め、昨年強いレースをしてきたAblazeはこれが復帰戦で、明らかに前走とは走りが違っていた。おそらく今後はGrand National Steeplechaseに向かうものと思われるが、不良馬場に泣かされた昨年の雪辱の可能性もある。今シーズンの前半で結果を残してきたFlying Agentは3着で、さすがにそろそろ使い詰めの疲労が出てきているような感もある。馬場もSoft7とこの馬向きではなかった。前走Maidenを勝って注目されたBig Blueはどうにも飛越にちぐはぐなところがあり、勝負所から後退して大敗に終わった。

 

Grand National Hurdle

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 4200m (Replay)

1. Wil John J: William John McCarthy T: Ciaron Maher

Hurdle競走としてはオーストラリアVIC州最大のもの。前評判としてはCiaron Maher厩舎の3頭、Saunter Boy、Norway、それからWil Johnと、今シーズンの上り馬3頭が人気を集めていた。その中でも64kgとやや頭一つ恵まれた軽ハンデのWil Johnが人気を集めていたようだ。

レースは人気の一角Norwayが引っ張るも、これにぴったりとFirefreeがついて行く。好位からWil John、Wolfe Toneなど。Firefreeと比較してややスピードのある飛越を見せていたNorwayが途中からFirefreeを振り切りにかかるが、これにWil Johnが接近。そのままWil Johnが前に出ると後続を振り切り、最後差を詰めてきたInayforhayを寄せ付けず勝利した。Norwayは5着。Saunter Boyは途中で脱落し途中棄権に終わった。

William John McCarthy騎手はアイルランドからアメリカを経てオーストラリアと渡り歩いてきた人で、大きなアクシデントを乗り越えてきた苦労人でもある。"Will John" McCarthy騎手が"Wil John"に騎乗して勝利したとのことで、本人にとっても大変嬉しい勝利となったそうだ。Wil JohnはこれでHurdleはMaidenから3戦無敗とした。かなり大柄な馬体を誇る馬で、やや前半行きたがって走る場面も散見されたのだが、それでも正確な飛越でここまで強い競馬を見せるのだから大したものである。特に前半からNorwayが引っ張り、Firefreeが執拗に絡んで行った中、前々で運んで脚を伸ばし切る競馬は、単なる64kgの軽量の恩恵と片付けられるものではないだろう。今後は2019年にTallyho Twinkletoeが達成した"Grand National Double"に挑むということで、次が初のSteeplechaseということで課題は多いのだが、この馬の挑戦を楽しみにしたい。

後方から進めたInaygorhayは最後追いこんで2着。ここまでHurdleはMaiden及び1JW Hurdle勝ちのみとあまり実績は残していなかったのだが、4200メートルへの距離延長でパフォーマンスを上げてきたこのは、この馬の障害馬としてのポテンシャルを測る上で興味深い結果である。やはり後方に構えたInstigatorが3着に入り、この辺りの馬は今後Steeplechaseでも面白い存在となるだろう。アイルランドダービー3着馬のNorwayはFirefreeに絡まれて失速。4200メートルというのはやはりこの馬にとっては未知の距離であり、さすがに今回は前走のようにスムーズに行かせてはもらえなかった。特にFirefree自身、この距離には不安はないタイプであり、Tom Ryan騎手の強気な騎乗は実らなかったものの、レースを本格的なものとする大きな要因となった。Saunter Boyは全くいいところなく失速。4200メートルは初距離ではあったのだが、3900メートルのAustralian Hurdleでは10馬身差の快勝を見せており、距離的には問題はなかったように思えることを考えると、どうにも解せない敗戦である。