にげうまメモ

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21/07/25 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/07/19-2021/07/25

7/22(木)

Bad Harzburg (GER) Boden: Gut

Preis des Elektrohandwerks Goslar/Bad Harzburg - Professor Dr. Werner Glahe-Memorial

Listenrennen 10.000 € Für 4-jährige und ältere Pferde. Hürdenrennen (Replay)

1. Bitcoin J: Josef Bartos T: Josef Vana

昨年は年間2レースしか行われなかったドイツ障害競走だが、今年はBad Harzburgのこの日の開催だけで3レースの障害競走が実施された。レースは前半からPop RockstarとBitcoinが並んで引っ張る展開だが、途中からPop Rockstarは脱落。代わって追い上げてきたAztekをBitcoinが凌いで勝利した。

Bitcoin自身は現時点ではチェコ調教馬だが、元々はドイツのMarkus Klug厩舎に所属していた馬で、ドイツ時代にはGrosser Preis der VGH Versicherungen (Listed)の4着もある。同レースの勝ち馬Ashrunはその後フランス・アメリカで平地重賞を勝利しており、それなりに水準としては高かったのだろう。その後チェコに移籍し、PardubiceのProutky II. katを勝利してのここへの参戦となった。障害2戦目とあまり経験はないのだが、全体的に豊かなスピードで押し切る飛越が目立っており、名門Josef Vana厩舎の新星として今後の活躍が楽しみな一頭である。2018年のGran Corsa Siepi Di Merano (G1)勝ちのある実績馬Aztekはさすがの安定したレース運びで2着に入った。2018年当時程の勢いという点ではやや微妙なところもあるのだが、やはりHurdleでの経験値という意味ではここでは一枚上手であった。ポーランドのHurdleチャンピオンのSpasskiは全体的にスピード負けする印象の3着。71kgと斤量はなぜか背負っていたのだが、やはりここに入るとスピード能力の面で厳しいのかもしれない。上位はチェコポーランド調教馬が占めた一方で、ドイツ調教馬は全体的に振るわない結果に終わった。今年の5月までイギリスJonjo O'Neill厩舎に所属したPop Rockstarが前半から積極的に飛ばして見せ場を作ったが、途中で脱落、落馬に終わった。現在はKölnのChristian Freiherr von der Recke厩舎に所属しているのだが、元々イギリスでは長く障害競走を使ってきた馬ということもあり、今後の動向に注意したい。ドイツ調教馬再先着を果たしたのが名門Pavel Vovcenko厩舎のFeuerblumeだが、どうにも障害手前で躊躇する場面があったりと、障害3戦目の馬らしい若さを見せていた。Svenskt Champion Hurdleでも地味に3着に入っていたり、途中で走る気になったときのスピードはそれなりによさげなものを見せていたりと能力はありそうなので、なんとかレースに使って慣れてもらえないものだろうか。ドイツElfi Schnakenberg厩舎のGood Willは前半からレースについていけず。ここまで障害競走は数戦使っているようだが、いずれも結果を残せておらず、今回もとりあえず離れた5着と完走は果たしたようだが、やはり厳しかったようだ。

 

〇 Bocksberg-Burgberg-Aussichtsreich-Rennen

Sonstige 6.000 € Für 4-jährige und ältere Pferde. Hürdenrennen (Replay)

1. Meeradler J: Josef Bartos T: Josef Vana

前半からドイツのSpiritual Manが飛ばす展開だが、早々に人気のArkalonが接近。そのまま抜け出しを図るも、最終障害で小さなミス。これに乗じて前に出たMeeradlerがそのままArkalonを凌いで勝利した。

Meeradlerはチェコ調教馬で、これが障害競走初出走となる。ドイツ生産馬のようだがいきなりこの障害初戦で結果を残してくる辺りはさすがはJosef Vana厩舎といったところだろうか。2017~2018にかけてイタリアでG2を2勝してきたArkalonはこれが約2年ぶりの出走であったが、ほぼ勝ちに等しい内容の2着。 チェコのPavel Tuma厩舎は先ほどのAztekといい悔しい結果となってしまったが、能力馬が戻ってきたことを素直に喜びたいところ。昨年のポーランド3歳Hurdle路線で結果を残したDagoraが3着で、例によってチェコポーランド調教馬が上位を独占した。なお上記リンク先でDagoraの斤量が57kgとなっているが、おそらくDeutcher Galoppを見ると67kgとなっており、Turf-Timesの記載は誤記だろう。ドイツ調教馬として再先着を果たしたのがElfi Schnakenberg厩舎のZenithで、ここまで平地競争を使っていたものの障害競走としては初出走であった。平地競争では8勝と実績のある馬で、いきなりこれだけ走れれば次を楽しみにしたい。ベルギー調教馬のPont De Bercyが5着。もともとはフランス障害競走で11戦して未勝利だった馬で、今回も勝負に加わることはできなかった。ベルギーの障害競走はWaregemで年間数戦行われているのみで、ベルギーではとりあえず平地競争を使われているようだが、今後はどうするのだろうか。ドイツ勢のForlito、Spiritual Man、Vexed、Oriental Gloryはいずれも大敗か落馬に終わった。

この日のHurdle競走2鞍において、ドイツ調教馬が多数出走していたものの、そのいずれもが残念な結果に終わった。ドイツ調教馬として、ドイツ又は周辺国での障害経験に優れた馬は認められず、その殆どが障害経験に乏しいか、せいぜいイギリス・アイルランドからの移籍馬といった状況であった一方で、障害競走を盛んに実施しているチェコポーランドといったドイツ国外からは障害経験を有する馬や、障害経験こそ少ないものの技術を適切に習得した馬が数多く出走しており、レース内容としてもそのようなドイツ国外調教馬がドイツ調教馬を障害への対応力で圧倒するというものであった。これはやはりドイツ障害競馬が近年レース数を大きく減少させたことの弊害だろう。本来ドイツ障害競馬は、良質な馬産と高い調教技術、そして美しい障害コースに設置された難易度の高い障害に裏打ちされた高い技術と能力を持った競走馬を誇っていたのだが、この日のドイツ調教馬の内容を見る限り、もはやそれは過去の栄華であり、ヨーロッパ障害競馬シーンにおけるドイツ勢はもはや壊滅的な状況であると考えてよいだろう。

 

RaceBets.de-Seejagdrennen

Sonstige 7.000 € Für 4-jährige und ältere Pferde. Seejagdrennen (Replay)

1. Piraniya J: Jan Faltejsek T: Grzegorz Witold Wroblewski

いわゆる池を泳ぐ障害競走。ドイツ語ではSeejagdrennenと呼ばれる。レースは早々に人気の一角であったSerienlohnが制御を欠き騎手が落馬するアクシデント。人気を背負ったドイツの古豪Wutzelmannが軽快に飛ばすが、池を渡るところでまさかの落馬。代わって前に出てきたPiraniyaが飛ばすと、最後追い詰めてきたShoemakerを抑えて勝利した。Zuckerprinzが3着に入った。

この日絶好調のチェコ調教馬だが、Seejagdrennenもまたチェコ調教馬が上位を独占した。Piraniyaはだいぶ珍しいウクライナ産馬で、2017年にスロバキアでProutkyを2勝している。その後イタリアのPremio Guilio Berlingieri (G2)に参戦するも4着、スロバキアポーランドなどを転々とし、前走はPardubiceのCross Countryに参戦するも落馬に終わっていた。この馬にとっては久々の勝利となる。MeranoのSteeplechaseにも対応してきた馬だけあってBad Harzburgの障害に対応すること自体は特に問題なかったようだが、やはりWutzelmannの落馬など、人気どころに色々アクシデントが相次いだ結果によるものと考えた方がいいだろう。Shoemakerはもともとドイツ調教馬で、昨年11月のHoppegartenのErdbau & Containerdienst Brieskorn-Hürdenrennenで2着に入っているのだが、その後チェコに移籍したようだ。もう少し飛越に慣れてくれば逆転はできそうだが、ひとまずチェコ名門のJosef Vana厩舎ということで、レース選択に注目したいところ。ドイツ調教馬として最先着を果たしたのがUwe Schwinn厩舎のZuckerprinz。とはいえこのコースには経験のある馬であり、人気どころが落馬に終わった以上もう少し見せ場を作って欲しかった。

 

Hawke's Bay RI @ Hastings (NZ) Slow8

Hydra-Cell Pumps Wellington Hurdle (PJR) OPN HDL 3100m (Replay)

1. The Cossack J: Shaun Phelan T: Paul Nelson & Corrina McDougal

本来先週に予定されていたPJRだが、悪天候の影響でこの日に延期された。

レースは例によって途中から一気に捲りをかけたTallyho Twinkletoeがそのまま押し切りを図る展開も、これを後ろから虎視眈々と狙っていたThe Cossackがゴール直前でこれを差し切り勝利した。The Cossackは昨年のGreat Northern Hurdle (PJR)の勝ち馬で、今年もWaikato Hurdle (PJR)から連勝と絶好調である。極端に重くはない馬場においてスピードを生かすタイプで、Tallyho Twinkletoeの71kgに対して66kgで挑むことが出来たことは大きなアドバンテージであった。実績馬Tallyho Twinkletoeは前走はやや動きが重い感もあったのだが、さすがに今シーズンHDL2戦目ということもあって調子を上げてきたようだ。完全にTallyho Twinkletoeを目掛けてスパートを掛けたThe Cossack相手に71kgを背負っての2着は立派であり、Slow8と本来もう少し馬場が重くなったほうが良いことを考えると、実力的にはこちらを上に取るべきだろう。昨年のGreat Northern Hurdle (PJR)の3着馬Aigneが3着。前走Awapuni Hurdleを快勝してきたChief Sequoyahが人気になっていたが、こちらは4着に終わった。

 

Grant Plumbing Wellington Steeplechase (PJR) OPN STP 5500m (Replay)

1. Yardarm J: Shaun Fennin T: Kevin Myers

前半からZartan、Notabadroosterが後続を大きく突き放して逃げる展開も、早々にZartanは脱落。中団からShamalが一気に動いてくるも、Shackletons Edge、Yardarmがこれを振り切り2頭のマッチレースに。そのままShackeltons Edgeが逃げ込みを図るが、ゴール直前でYardarmがこれを捉えて勝利した。

Hastingsの障害自体はニュージーランドとしては比較的平易なものだが、前半から前2頭がかなり飛ばしたためにタフなレースとなっている。YardarmはHawke's Bay Steeplechase (PJR)から連勝とした。当時の4800メートルからは一気に距離延長となるが、それでもこの厳しいレースを自ら動いて勝ち切ったあたりは高く評価すべきであり、おそらく今年が最後となるだろうEllerslie競馬場のGreat Northern Steeplechaseに向けて楽しみな一頭と言える。驚きのレースを見せたのがShackeltons Edgeで、前走Maidenでいい勝ち方を見せていたとはいえ、1kg差しかないYardarm相手にここまで食い下がったレースはほぼ勝ちに等しいものであった。Steeplechaseでは比較的豊かなスピードを有するタイプのようで、この馬も今後注目しなければいけない一頭だろう。Shamalは3周目から一気に動いて行くも、最後は余力をなくして後退。大成する以前のこの馬としてこのようなレース運びはしばしば見られた形であるが、やはりレース運びとしては無理があった感もある。Mesmerizeは人気の一角に推されていたが、第1障害で早々に落馬に終わった。

 

Saratoga (USA) Good

A. P. Smithwick Memorial Steeplechase Stakes (G1)

To be run over National Fences a Hurdle Handicap For Four Year Olds and Upward. Two and One Sixteenth Miles on the Hurdle $150,000

1. Baltimore Bucko J: Thomas Garner T: Keri Brion

レースは前半からBaltimore Buckoが積極的に逃げる展開。これをCite、Galway Kidなどが追いかけ、勝負所からFrench Lightが接近してくるも、Baltitmore Buckoの逃げ足は衰えず。そのままBaltimore Buckoが後続を突き放して勝利した。

Keri Brion調教師は昨年引退したJonathan Sheppard調教師の後を引き継いだ人で、昨年は数頭の管理馬をアイルランドに遠征させていた。その中では大将格のWinston CをCheltenham Festivalに挑戦させるプランもあったようだが、そこまで上手くは行かなかったものの、アイルランド障害競走及びNational Hunt Flatで合計2勝をあげるという大金星をあげて帰国していた。上位のBaltimore Bucko、French Lightはいずれもそのアイルランド遠征組に含まれていた馬である。Balttimore Buckoはその中でもアイルランドで4戦と非常に精力的にレースに出走した馬で、極端な重馬場や距離、最終障害の落馬など色々と不幸で勝ち星を上げることはできなかったが、アイルランドでの1勝に近いところにいた馬である。今回はアメリカ帰国後2戦目となるが、アイルランド時代とは打って変わっての先行策で、どうもやや前向きな気性のこの馬にとってはこれが良かったようだ。メンバー的にはG1とはいえやや手薄であり、レース水準には気を付けたいところ。French LightはKeri Brion調教師が非常に高く素質を評価していた馬で、こちらもアイルランドでは勝ち星を上げることはできなかったが、NoviceのListed競走に挑戦するなどこちらも精力的にレースに出走していた。内容的にはBaltimore Buckoに突き放されてしまったが、この馬もまた調教師の見立て通り、G1路線で活躍できる馬だろう。実績馬としてはDavid L. (Zeke) Fergason Memorial Hurdle (G2)の勝ち鞍のあるGibralfaroが3着と再先着を果たした。昨年のNew York Turf Writers Cup (G1)にて2着のあるRediceanはこれが今季の初戦であったが、どうにも振るわず4着。Galway Kidは前半から積極的に進めたが、途中で大きなミスがありそのまま後退し大敗に終わった。

 

7/25(土)

Warszawa (POL) lekki(2,2)

〇 Nagroda Baracza

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 3-letnich koni. 2400m (Replay)

1. Artysta J: Kamil Grzybowski T: M. Pilipczuk

Warszawaではこの日は障害競走が2鞍行われた。このままコンスタントに障害競走を開催して欲しいところ。2レースあるうちのこちらは3歳限定戦。2400メートルと障害競走としては異例の短距離である。レースはNickleが前に行くも、途中からKontrargumentが先頭に。そのままKontrargumentが逃げ込みを図るが、ゴール前でArtystaがこれを捉えて勝利した。

3歳戦ということで全体的に挙動の怪しい馬が多い。ArtystaはMikhail Glinka産駒で、ポーランド生産馬となる。血統的には先日亡くなったGalileoの孫となるが、Mikhail Glinkaは現在チェコで繋養されているようだ。それなりに人気の種牡馬のようで、2018年スロバキアのCena Arvyを勝利し、チェコのみならずスウェーデンポーランドの障害競走で勝利をあげている牝馬Slivkaを輩出している。Artysta自身はここまで平地競争ではデビュー戦の2着に入ったのが最高といまいち残念な結果しか残していないが、初障害で初勝利を挙げた。とはいえ内容的にはいまいち挙動が怪しく、障害馬としてもう少し落ち着いて走ってほしいところ。直線に入るところでも危うくラチに衝突しかけたりと、たいぶ危なっかしいレースであった。Rutan産駒のKontrargumentが2着。こちらも平地では2戦して未勝利だった馬で、スプリント能力の面では勝ち馬とはだいぶ差があるように見えた。

 

〇 Nagroda 1. Dywizji Kawalerii Wojska Polskiego

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 4-letnich i starszych koni. 3800m (Replay)

1. Leading Lion J: Rostislav Benš T: Janusz Kozłowski

前半からNoble Eagleが引っ張り、そのまま隊列はかなり長くなる展開。唯一食らいついて行ったLeading LionをNoble Eagleが振り切りにかかるが、終盤の障害でまさかの落馬。そのまま残ったLeading LionがNeapolを凌いで勝利した。

Leading Lionは前走WarszawaのNagroda Bojgardaから連勝とした。当時はHibernianとの叩き合いを制した結果だが、今回はNoble Eagleがかなり早いペースを作ったためか、このペースへの対応力の面で明暗が分かれる結果となった。しかしNoble Eagleに3kgの有利があったことも考えると、だいぶ追っつけてNoble Eagleのペースに付いて行ったように、Noble Eagleとはそれなりに力量差がありそうな印象がある。途中でやや目立つミスもあり、やはりもう少し経験が必要だろう。2着のNeapolはWroclawのSteeplechaseでは比較的経験のある馬で、最後追いこんで2着に来た。とはいえこれは飛ばしたNoble Eagleを追いかけた前がバテたものによるだろう。期待されたNoble Eagleはもったいない落馬に終わった。