にげうまメモ

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22/07/24 Weekly National Hunt / Jump racing

7/20(水)

Saratoga (USA) Firm

A. P. Smithwick Memorial Steeplechase (G1)

TO BE RUN OVER NATIONAL FENCES A HURDLE FOR FOUR YEAR OLDS AND UPWARD. Two And One Sixteenth Miles On The Hurdle. $150,000

1. Down Royal J: Bernard Dalton T: Kate Dalton

イギリスからの移籍馬Pistol Whippedが引っ張る展開も、早々に飛越をミスして後退。代わってIranistanが前に出るも、ここにFrench Lightなどが接近。最終障害を越えて内からChief Justiceが先頭に出て逃げ込みを図るも、ゴール直前でこれに食らいついてきたDown Royalが前に出て勝利した。

Down Royalはこれで昨年のRandolph D. Rouse Stakesから4連勝とした。基本的にはほぼここまでは牝馬限定戦ばかりを走ってきた馬で、牡馬・セン馬相手の大舞台というのはこれが初めてである。どうにもThe Mean QueenやSnap Decisionの不在、さらにはPistol Whippedが鼻出血ということで、G1競走としてのレース水準は若干微妙なところはあるのだが、どうやら騎手及び調教師のBernard DaltonとKate Dalton夫妻によって交配された牝馬による大舞台での勝利ということで*1、なんとも素晴らしい"Fairytale"となった。Chief Justiceは人気薄ながらも積極的な競馬で2着に入った。ここのところはG1クラスでは厳しいようなレースを続けていた馬で、一皮むけたと考えるべきなのかはもう少し様子を見た方がいいだろう。イギリスのNico De Boinville騎手がわざわざ騎乗しに来ていた元Nicky Henderson厩舎のPistol Whippedは早々に飛越をミスして途中棄権。どうやら鼻出血があったようだ。

 

7/21(木)

Bad Harzburg (GER) gut

〇 Preis der Firmen Elektro Hoyndorf und Holzbau Meinholz 

Hürdenrennen 7.777 € Für 4-jährige und ältere Pferde 3400m (Replay)

1. Roxalagu J: Luca Murfuni T: Kamila Harms

ドイツの4歳牝馬Tiki Fireがするすると逃げるも馬群は比較的密集して進行。好位から進めたRoxalaguが最終コーナー手前で抜け出すと、そのまま後続に15馬身差をつけて勝利した。

RoxalaguはこれがHurdleではデビュー戦となる。かなり長くドイツの平地競争を走ってきた馬のようで、平地ではここまでに1勝を挙げているのだが、いきなりいい勝ち方を見せた。やや操縦性に苦労するところはどうしても平地出身馬にありがちな部分だが、飛越の面でもさほど問題はなさそうで、ドイツ調教馬として障害競走でのキャリアを積むのであれば今後有望な存在になるだろう。やはりドイツのApollo Von Marlowが2着。イギリスでHurdle競走の経験があり、これがドイツ移籍初戦となるTiki Fireが3着に入り、仮にもTiki Fire自身はイギリスHurdleでは下級条件戦にて未勝利に終わった馬とはいえ、いきなりドイツ平地競争のHurdleデビュー戦の馬が上位を占めるというのは、やはりドイツ競馬の馬の質というのはなかなかに高いのだろう。ポーランドのDominaはいいところなく4着。チェコから参戦したBell ElyseesもこれがHurdle初戦だったが良いところなく大敗と、経験の少ない馬ばかりが集まるレースであったとはいえ、極端に仕草が幼い馬もおらず障害競馬としての形はきっちり作られており、かつドイツ出身馬が上位を占める結果となったことは、ドイツ競馬にとっては喜ばしい結果であった。

 

Preis der Harzer Volksbank eG (Listed)

Hürdenrennen 11.111 € Für 4-jährige und ältere Pferde 3400m (Replay)

1. Cabot Cliffs J: Hakim Tabet T: Christian Freiherr von der Recke

チェコのLocomitiveが前半からかなり引っ張る展開で、隊列はだいぶ長くなる。じわじわと進出したCabot Cliffsが2周目から前に出ると、追いかけてきたMary Elizabethを振り切ると、そのまま22馬身差の圧勝とした。

Cabot Cliffsはこれでドイツ移籍後は平地競争2勝を含む3連勝とした。元々イギリスDan Skelton厩舎にいた馬で、主にJuvenile Hurdleで3勝を挙げている。全体的にスピードに任せた飛越が目立っており、当初Hakim Tabet騎手がゆったりとレースを進めようと試みているのだが、そこからスピードの違いで前に出るなど、ここでは能力の違いが目立っていた。73kgのトップハンデを背負ってのこのレース振りは流石に能力が抜けており、ドイツ調教馬の代表格としてこの路線でこれから頑張って欲しい。これがHurdleは3戦目となるポーランドのMary Elizabethは遡れば2020年のポーランドオークスにてInter Royal Ladyの2着のある馬で、今年に入ってからはいずれもWroclawのHurdleを走り2着に終わっていた。ひとまず地元に帰って期待したいところ。チェコのLocomotiveは2021年のチェコダービーにも参戦した馬だが、その後はHurdleを使って1勝をあげていた。ドイツ調教馬としてはOrkan Von Marlow、Birthday Ladyの2頭も出走したのだが、さすがにいずれも障害経験馬には分が悪かったようで、さっぱりついていけず大敗に終わった。

 

〇 Preis der Harz Energie 

Jagdrennen 7.777 € Für 4-jährige und ältere seit 1.1.2021 sieglose Pferde. (Replay)

1. First of All J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

チェコのAngosturaを制してOne Downが軽快に逃げるも、最終コーナーで前に出たFirst of Allがそのまま勝利した。

First of Allはこの日のBad Harzburgに出走していた中では一番のビッグネームで、2020年まではMeranoのSteeplechaseにて重賞4勝を含む4戦無敗と素晴らしい成績を残していた。しかしながら2021年の4月にAuteuilに遠征して落馬すると、その後はどうにも精彩を欠いたようなレースに終わっていた。これがこの馬にとっては今年初戦であったが、久々にこの馬らしいスピードのある走りを見せてくれたことは大きな収穫だろう。おそらく今後はMeranoのSteeplechaseに向かうものと思われる。ドイツのOne Downは強敵相手に食い下がっての2着。22馬身と着差は開いたが、これは最終障害にてミスもあり馬を止めたものだろう。イタリアSteeplechaseでは最強格の一頭であるFirst of Allを相手にここまで抵抗したのだから大したものである。ドイツのForlito、Baashaがその後に続き、さすがにFirst of AllやOne Downのレースには参加できなかったものの、いずれもSteeplechaseの経験豊かな馬ではないのだが、ひとまず完走してくれたようだ。

 

7/23(土)

Warszawa (POL) lekki (2,2)

Nagroda Kastora

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 4-letnich i starszych koni. 3800m (Replay)

1. Leading Lion J: Rostislav Benš T: Janusz Kozłowski

Mola、Largo Forteなどが前に出るも、早々にMolaは落馬。代わってArkalonが引っ張るも、残り2障害辺りから前に出たLeading Lionがそのまま勝利した。

Leading Lionは昨年のWielka Partynickaの3着馬で、昨年はこのコースで2勝をあげている。今シーズンはこれが初のHurdle戦であったが、さすがに能力上位のところを見せた。ひとまず内容的には流石に完勝で、幅員の狭いWroclawとはだいぶ競走の性質が違うようだが、今年も楽しみな存在になりそうだ。4歳馬でこれがHurdleデビュー戦であったKhasmin Rmpは頑張って諦めずに走って2着。チェコから参戦したArkalonは2017~2018年にMeranoの重賞勝ちもある馬で、ここでは能力上位のところを見せたかったのだが、どうにも2021年に長い休養から復帰したあとはイタリアではなくチェコスロバキアを転戦しているようで、その成績としてもいまいちなようだ。

 

7/24(日)

Bad Harzburg (GER) fest

Preis der Bad Harzburger Bauwirtschaft - Harzburger Seekönig 2022 

Seejagdrennen Sonstige, 8.888 € Für 4-jährige und ältere Pferde 3550m (Replay)

1. Wutzelmann J: Hakim Tabet T: Anna Schleusner-Fruhriep

Bad HarzburgのSeejagdrennen第2戦。例によって積極的に引っ張ったWutzelmannがそのままJetstream Jackを振り切って勝利した。Wutzelmannはこれで今年のBad HarzburgのSeejagdrennenはいずれも勝利することとなった。12歳のドイツのベテランは遡れば2016年当時からこの路線を使っている馬で、ここ数年はすっかりレース数を減らしているドイツ障害競馬において、まだ年間二桁のレース数を確保していた時代の数少ない生き残りである。走り慣れたコースで安定した走りを見せたが、なんとかこの馬の後に続く馬が現れることを期待したいところである。イギリス、フランスと渡り歩いてきたJetstream Jackはこれがドイツ初戦であったが見せ場を作った。ただ、この馬も既に12歳と年齢を重ねており、どこまで現役生活を続けるかは微妙なところだろう。チェコのMilsueldosは途中から遅れ3着。今年はどうにもチェコから有力な馬の参戦が少ないことが気になる。ドイツのZenithはスタート直後から殆どマトモに走っていなかったようで、とりあえずは観客の拍手に迎えられながら完走は果たしたようだ。

 

Bro Park (SWE) god

〇 Baccarat Steeplechase

Steeplechase För 4-åriga och äldre hästar som ej segrat mer än 2 gånger fr o m 1 juni 2021 50,000 kr 3500m (Replay)

1. Steccando J: Bourke Gabi T: Lamm Maria

Three is Companyを制して前に出たSteccandoが軽快に逃げると、そのままThree is Company及びMutadaffeqを凌いで勝利した。レース条件としては2021年6月以降に2勝以上していない馬というものだが、レース数もさほど多くないスウェーデンSteeplechaseにおいてこの縛りは殆ど意味がないようで、実質的には概ねこの路線の常連が集まっている。Steccandoはイギリスでは平地・障害併せて未勝利に終わった馬で、2019年からスウェーデンに移籍している。移籍してしばらくはKahlil De Burca厩舎に所属し、Hurdle及びSteeplechaseで勝利を収めている。これがLamm Maria厩舎への移籍初戦で、移籍初戦となったSvenskt Grand Nationalは4着に敗れているが、今回は結果を残した。ただし、内容としてはスピードが生きるBro ParkのSteeplechaseで軽量を生かして勝ち切ったというものだろう。Three is Company、Mutadaffeqとこの路線の常連が続いた。

 

Casterton (AUS) Soft7

〇 Selkirk/Mane on Henty Casterton Hurdle

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices can claim. 3480m (Replay)

1. Mighty Oasis J: William McCarthy T: Andrew Robbin

Buckeye Nationを制して積極的に逃げたMighty OasisがそのままTolemac、Onsetの追い上げを凌いで勝利した。Mighty OasisはこれでMaidenから2勝目となる。地味に昨年からHurdleには参戦していたようで、Maidenではかなり惜しい競馬を続けていたようだが、今年に入ってようやく一皮むけたといったところだろう。前走のWarrnamboolの1JW Hurdleでは一頭爆走したStern Idolからだいぶ遅れた2着に終わっていたが、さすがにStern Idolが異常なペースで引っ張ったというレースで、常識的な流れならこのクラスでもやれるようだ。じわじわと内から差を詰めたTolemacが2着。Onsetは最終障害を飛んだ直後にMighty Oasisにタックルされる不利があった。Big Blueはどうにも走る気を見せず途中棄権。どうやらこれで引退だそうで、オーストラリア調教馬としてCheltenham Festivalまで参戦したキャリアを積んだ同馬の引退後の余生が幸多からんことを願うとともに、オーストラリアからまた欧州障害競走に挑戦する馬が現れることを期待したい。SA州からはBuckeye Nationが参戦していたが、早々に脱落して途中棄権に終わった。昨年のMurray BridgeのBM120 Hurdleなどの勝ち鞍はある馬だが、VIC州のこのクラスに入ると苦しいようで、なんとか頑張って欲しいところではあるのだが、既に9歳と年齢も重ねており、状況としては厳しそうだ。SA州にはまだ残された障害馬も存在するのだが、このまま消えてしまうのだろうか。

 

〇 Moredun Hill Casterton Steeplechase

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 3800m (Replay)

1. Elvison J: Aaron Kuru T: Symon Wilde

前半から元気よく飛ばしたElvisionがそのまま勝利した。ElvisonはこのCastertonのCorse Specialistで、このコースは5月にも勝利している。いちおうAustralian Steeplechaseでも好勝負できる能力を持った馬だが、Castertonのこの生垣障害はお手の物といったところで、74.5kgの抜けたトップハンデを背負っての勝利なのだから大したものである。CastertonのSteeplechaseはその独特の形状ゆえにここを専門に使う馬がいるようで、このメンバーの中ではトップクラスのようだが、どこまで斤量が増えるかには注意したい。Steven Pateman厩舎は4頭出しであったが、その4頭がLaylite、Power of Words、Historic、Mappingの順に2~5着を占めた。

 

その他

BHA confirms introduction of Junior National Hunt Development Hurdle races from Autumn 2022 (BHA)

BHAから以前にも話題になったJunior National Hunt Development Hurdleの詳細が発表された。どうやらレース条件としてはClass4、毎月3~4レース程が実施されるらしい*2。現時点ではかなり小規模で試験的な試みと思われるが、どうだろうか。

"Werbung für Hindernissport und tolles Ergebnis" (GaloppOnline)

Mehr als eine halbe Million! Rekordumsatz in Bad Harzburg (GaloppOnline)

複数の障害競走を含む夏のBad Harzburg開催だが、多数の観客を集め、多額の売り上げ記録し、なかなか好調のようだ。特に土曜日は10000人を越える観客を集め、50万ユーロ以上を売り上げるという記録的な一日になったようで、近年は苦しい話題が続くドイツ障害競馬においては珍しく明るい話題となった。

Dostihy bez bičíků? V Československu to byla realita již před 43 lety (Fitmin)

近年は競馬における鞭の使用に関する議論が盛んに行われており、特に北欧ではその規制が厳しくなっているようだが、43年前にチェコ・スロバキアにおいて鞭を使用しない競馬が行われたそうだ。

Alfred P. "Paddy" Smithwick (National Museum of Racing and Hall of Flame)

アメリカSaratogaで行われたAP Smithwick Memorialの名前となったAlfred Paddy Smithwickについて。Alfred Paddy Smithwickはアメリカにおいて最も成功した騎手の一人であり、彼の弟であり同じく殿堂入りを果たした調教師であるD. M. "Mikey" Smithwickとのコンビで多数の主要競走を制した。