にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/09/27 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/09/21-09/27

9/21(月)

Nakayama / 中山 (JPN) Firm

〇 Maiden / 障害3歳以上未勝利 2800m

1. ロスカボス J: 伴啓太 T: 大江原哲

逃げたグリニッジヴィレジを早々に捉えたキタノテイオウが逃げ込みを図るも、最後のダートコースでロスカボスがこれを交わして勝利した。ロスカボスはこれで障害は11戦目での嬉しい初勝利とした。2歳時には出世レースとして名高い野路菊ステークスを制した素質馬だが、その後はどうにもぱっとせず、2019年から障害入りしていた。さすがに障害経験の多い馬だけあって飛越は終始安定しており、キングカメハメハ由来のパワー溢れる馬体の持ち主だけあって坂の多い中山のコースも合うのだろう。ただし血統的にはステイヤーとは程遠い日本平地競争における芝中距離の王道血統の持ち主であり、当然今後は距離が課題になると思われるが、中山の比較的短い距離の競争であれば追走能力次第でチャンスはあるだろう。中央平地競争では未勝利に終わり、門別で3勝を上げてきたキタノテイオウは積極的な競馬で2着に入った。平地のスプリント能力という意味では勝ち馬と比べるとさすがに分が悪いのだが、それでも1馬身以内の着差まで食らいついた辺り、この馬が頑張ったというべきかロスカボスが伸びなかったと考えるべきかは少々微妙なところがある。ディードはどうにも決め手を欠く騎乗で3着。2歳時にはホープフルステークス (G1)で3番人気にも押されたフラットレーもいたのだが、どうにも慎重な飛越で加速が掛からず、前から大きく離された5着に終わった。

 

9/22(火)

Auteuil (FR) Tres Souple (3.9)

Prix Robert Lejeune (G3)

Haies Pour poulains entiers et hongres de 3 ans. 3600m (Replay)

1. Hermes Baie J: Theo Chevillard T: Francois Nicolle

レースは先に抜け出しを図るかと思われたBaladin de Mescを、外から伸びたHermes Baieが交わして勝利した。Hermes Baie自身はこれがHaies2戦目とした。ここではPrix Aguado (G3)の勝ち馬Magnetoを始め同レースの上位勢が揃っていたのだが、Hermes Baie自身は別路線から来た馬である。Prix Aguado (G3)では大敗していたBaladin de Mescは前走と比較すると飛越に向上が見られたためか今回は2着と好走したが、この路線の勢力図は現時点では確定していないと考えてよいだろう。Prix Aguado (G3)の勝ち馬Magnetoは人気になっていたが、直線伸びきれず4着に終わった。

 

Prix Ingre (G3)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4400m (Replay)

1. Figuero J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

本来は4月に組まれている競走なのだが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響でGrand Steeplechase de Paris (G1)が秋に延期になり、同レースの前哨戦となるこのレースもこの時期に変更になった。レースは後方から進めたFigueroが逃げるDeviceを始めCarriacou、Feu Folletなどとの叩き合いを制して勝利した。Figuero自身は昨年のPrix Maurice Gillois (G1)にてKapdam以下に30馬身をつけて圧勝した馬で、Goliath Du Berlaisが種牡馬入りした現在、Steeplechaseにおける5歳世代としては最強格の馬である。今年5月のPrix Murat (G2)における古馬との対戦はやや振るわなかったが、ここでは本番が楽しみになる勝利を挙げた。前半もたもたと飛越する場面はあったが許容範囲だろう。かつてはGrand Prix D'Automne (G1)の2着と活躍したDeviceはAuteuilのSteeplechase重賞はほぼ初参戦であったのだが、いきなり結果を残した。故障で長く休養していた経緯のある馬だが、レース振りを見ると今回のようにゆったりと先行するのが良いのだろう。昨年のGrand Steeplechase de Paris (G1)の勝ち馬Carriacouも僅差の3着に入った。この馬も調子は良さそうで、本番でも期待できるだろう。昨年のPrix La Haye Jousselin (G1)で2着に入り、今年のPrix Murat (G2)を含む重賞を連勝して力をつけてきた牝馬Eboniteは第一障害で落馬に終わった。残念ながら助からなかったそうだ。

 

Prix De Compiegne (G3)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 3900m (Replay)

1. L'Autonomie J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

例によって軽快に逃げたL'Autonomieがそのまま8馬身差の圧勝とした。L'Autonomieはこれで2019年の6月からHaiesは8連勝とした。66kgと恵まれた斤量ではあったものの、3900メートルという比較的短い距離ではもはや手の付けられない強さを誇っており、ここでもそのペースについていける馬はPorto Pollo、Galop Marin程度であった。ただしやや前向きに走るところがあり、Grande Course De Haies D'Auteuil (G1)は5100メートルと距離延長が待ち受けている点が課題になるだろう。かえって距離延長よりもイギリスなどを選択肢に入れつつ、3000メートルクラスの距離にこだわるのも一案かもしれない。Compiegneで見せていた斜飛は目立たなかったが、外を振り回すことが可能なAuteuilのコース形態も味方したかもしれない。7月のPrix La Barka (G2)の勝ち馬Porto Polloはさすがに2着に入ったが、この条件下ではL'Autonomieとの勝負付けは既に済んでいる。

 

9/23(水)

Perth (UK) Good (Good to Soft in places)

〇 Handicap Chase (C2) 2m7f180y (Replay)

4. La Bague Au Roi J: Richard Johnson T: Warren Greatrex

La Bague Au Roiとしては今シーズン引退という報が出ており、これがシーズン初戦となる。前半からこの馬らしい軽快な飛越でリードを取ってレースを進めたが、最終障害で大きなミスがあり4着に終わった。La Bague Au Roiは2018-19のNovice Chaseではトップクラスの活躍を見せた馬で、Kauto Star Novices' Chase (G1)、Flogas Novice Chase (G1)の勝ち鞍があるのだが、その後はどうにも期待された走りを見せていない。今回もこの馬らしい運動神経の高さを生かした軽快な飛越が目立ったのだが、大きなミスのある最終障害の時点で他馬と比べて既に分が悪く、11st12lbのトップハンデの影響はあったもののやや心配な敗戦だろう。9歳牝馬ということでそろそろ年齢的なものが出ているかもしれない。勝ったのはAmalfi Dougで、Perthのコースを得意としている上に夏から順調に使っており、今回は条件が向いた結果と思われる。

 

9/25(金)

Uttoxeter (UK) Good

〇 Novices' Chase (C4) 1m7f214y (Replay)

1. Fusil Raffles J: Darryl Jacob T: Nicky Henderson

Gumballが元気よく逃げる展開も、残り3障害のOpen Ditchにてミス。代わって前に出たQuick Grabimを最終障害を越えてFusil Rafflesが捉えて勝利した。Fusil RafflesはHurdleではPunchestownのChampion Four Year Old Hurdle (G1)勝ちのある馬だが、昨シーズンはSenior Hurdleの壁に跳ね返され、これがChase初戦となる。昨年初戦のElite Hurdle (G2)でもいい勝ち方を見せたように決め脚という点ではいいものを持っているようだが、それ以上にペースが流れた際の対応にはやや不安が残り、Chase転向がこの馬に向くことを願いたい。飛越はChase初戦としては十分に合格点で、終始ミスなく運んでいたが、やや勝負所で反応が悪いのが気になった。昨シーズンはChampion Hurdle (G1)にも駒を進めたGumballは残り3障害での大きなミスで馬がリズムを崩したようだ。経験の浅い馬にはよくあるパターンで、ひとまず次に期待したい。

 

9/26(土)

Auteuil (FR) Tres Souple (4.1)

〇 Prix Isopani

Haies Pour poulains entiers, hongres et pouliches de 3 ans, n'étant pas de race Pur Sang, n'ayant jamais couru. 3600m (Replay)

1. Historien J: Alain De Chitray T: Nicolas De Lageneste

前半から前に行ったHistorienがそのままスピードの違いで差をつけると、最後は後続に17馬身差の圧勝とした。Historien自身はこれがHaies初戦となる。兄弟に目立った活躍馬はいないのだが、勝ち時計としては比較的優秀で、余裕のある勝ち方であったことを考えるとさらに時計は詰められると思われることから、今後注意しておきたい馬である。

 

Haras D'Etreham - Prix De Chambly (G3)

Haies Pour pouliches de 3 ans 3600m (Replay)

1. Hotesse Du Chenet J: Ludvic Philipperon T: Marcell Rolland

逃げたFortunes Melodyを最終コーナーで外から捲ったHotesse Du Chenetが10馬身差の圧勝。Hotesse Du ChenetはHaiesは初勝利とした。前走のListedではFortunes Melodyの2着に終わっていたが、今回はその雪辱を晴らした格好となる。当時の馬場と比べると若干重馬場ではあるだが、やはり10馬身差という着差はやや力の差を感じるものである。母は2010年のPrix Cambaceres (G1)を勝ったTanais Du Chenetという血統背景も魅力の馬である。前走のListed勝ちを含め、2連勝で来たFortunes Melodyはやや最後脚色が鈍り2着に終わった。前走CompiegneのHaras D'Estreham Prix D'Iena (Listed)を勝ってきたHa La Landは良いところなく3着。AuteuilのHaras D'Estreham Prix Sagan (G3)の勝ち馬Ladyvilleもいたのだが、好位から進めるも勝負所から手ごたえが悪くなり大敗に終わった。

 

Prxi De Maisons - Laffitte (G3)

Haies Pour tous poulais et pouliches de 4 ans 3600m (Replay)

1. Seduction J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

レースはJames Du Berlaisがゆるゆると逃げるも、最終コーナーで内を立ち回って抜けてきたSeductionがJames Du Berlaisを抑えて勝利した。Seductionは今年6月のPrix Christian De Tredern (G3)に続き、重賞は2勝目とした。James Du BerlaisにはPrix Questarabad (G3)で約12馬身差のついた3着に敗れており、今回は内を立ち回ったこと、及び2kgの斤量差があったことの利があった勝利と思われるが、全体的に馬場が悪化した内を避けて走る馬が多く認められる中、内を立ち回ることが出来たということはこの馬の武器として記憶しておかなければならない。James Du Berlaisはほぼ勝ちに等しい内容の2着。Prix Alain Du Breil (G1)の勝ち馬For Funは3着で、秋の復帰戦としてはこれで十分だろう。なお、この馬は現時点では未去勢で、種牡馬入りを考慮されている可能性も考えられる。

 

Merano (ITA) Tempo Vario - Terreno L.Pesante

Steeplechase D'Italia - Memorial Mario Argenton

Euro 40.000 TRIO per cavalli di 4 e 5 anni (Steeplechase - G2 - Fantini) 3900m (Replay)

1. First of All J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

例によってゆったりとFirst Of Allが逃げる展開。Oxer GrandeにてフランスのGalant Du Chenetを始め3頭が落馬すると、そのままゆったりと進めたFirst Of AllがLaldannを突き放して快勝とした。First Of Allは今年これで6戦無敗とした。うち重賞は4勝と、今年のNovice Steeplechase路線では明らかに一頭抜けた存在となっている。今回もほぼ勝負付けが済んだメンバーではあったのだが、目下のライバルと思われたフランスのGalant Du Chenetが落馬したことでレースとしては非常に平易なものになったことは気を付けた方が良いだろう。

 

76 Premio Delle Nazioni - Memorial Marco Rocca

Euro 40.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross Country - G2 - G.R.-Amazzoni-Fantini) 6000m (Replay)

1. Broughton J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

2. Vino Royale J: James Reveley T: David Cottin

本来はCrystal Cupの一環として行われるレースであるのだが、今年はコロナウイルス感染症の影響でCrystal Cupが中止となったため、特にその一環のレースとしては行われていない。レースは早々に第2障害でAll About Cossioが落馬するアクシデント。その後は順調にレースは進むも、例の3連続障害でどうにも怪しい飛越を見せていたWest Coast Time、さらにBurrows Laneが落馬。Vino Royaleが逃げ込みを図るも、これをぴったりとマークしていたBroughtonがゴール前でこれを捉えて勝利した。Power Zarは残り2障害辺りで落馬していたようだ。

BroughtonはMeranoのCross Countryではもはや常連のような馬なのだが、これでMeranoのCross Countryは今年に入って4連勝とした。今年初戦のSergio GiorgiではPower Zarの2着に敗れているが、その後は安定したレースを続けている。今年初戦の競争は3500メートルと比較的短い距離であり、Power Zarの持ち味であるスピードが生きる舞台であったことが想定され、やはり長距離戦に設置されている難易度の障害をこなすことが可能なこの馬にとっては長い距離を走る競走の方が向くのだろう。イタリアにおける長距離のCross Countryにおいては現時点では最強と考えてよいだろう。もともとはSteeplechaseでも実績を残した馬ということもあり、フランスから参戦したVino Royaleとのスプリント力の違いも目立っていた。フランス調教馬Vino Royaleはさすがの高い飛越技術を見せて2着に入った。GranvilleのGrand Crossを勝利した比較的若い馬で、どうにも道中積極的に走る部分があり、これが解消されればさらにパフォーマンスを上げてくる可能性がある。それにしてもこれほどの若い馬が初のMeranoのCross Countryにも関わらず、スムーズに難易度の高い障害をこなしていることにはやはり恐れ入る。フランス国内に戻っても期待したい。その他、途中で落馬したWest Coast Time、Power Zar、さらにAll About Cossioは再騎乗により完走したようだ。Power Zarは勝負所まで前の2頭について行くも、最後は脱落しての落馬に終わった。やはり距離的にはもう少し短い方がいいようで、ややレース終盤には脚色が衰える場面が目立った。West Coast TimeはOxer Grandeの大きなミスを始め、やや飛越には向上が必要であるように見えた。All About Cossioはこのコースでは長い馬なのだが、今回は勿体ないミスであった。

 

LXVI Gran Corsa Siepi Di Merano - Aimo Immobilien

Euro 60.000 TRIO per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi - G1 - Fantini) 4000m (Replay)

1. Stuke J: Lukas Matusky T: Radek Holcak

2. Beau Saonois J: Alessio Pollioni T: Josef Vana Jr

イタリアSiepiの頂上決定戦。フランスのCandalexが人気になっていたが、それ以外にもチェコのStuke、Beau Saonois、さらにイタリアのLive your Lifeなど、好メンバ―が揃っていた。レースは例によってDangerous Gleamが引っ張る展開も、どうにも飛越にミスが目立ち、途中からStukeが先頭に代わる。じわじわとCandalex、Cosi Fan Tutte、さらにCrack De Reveなどのフランス勢が位置を上げてくるも、最終コーナーを回るところで一気に外から加速したBeau Saonoisが逃げるStukeに迫る。しかし内で抵抗したStukeが2馬身ほどBeau Saonoisを凌いで勝利した。Cosi Fan Tutte、Candalexと続いた。

Stukeはこれで昨年のGran Corsa Siepi D'ITalia (G1)に続くG1は2勝目とした。人気を背負って挑んだ昨年のこのレースではまさかの落馬に終わっており、その雪辱を晴らしたことになる。MeranoのSiepiのコースは比較的狭く、コーナーも多数存在する形態となっており、それにより馬群も密集するため、単純なストライドの大きさよりは比較的馬群の中でも動くことが可能な機動力が問われるレースとなる。Stuke自身、今回は途中からハナに行ったことでレースはやりやすくなったという利もあるのだが、比較的MeranoのSiepiに適応した高い機動力を持つ馬で、今回もスピードを殺さない細やかな飛越が目立っていた。6月のGran Corsa Siepi D'ITalia (G1)ではPiton Des Neigesに対して僅差の2着に終わっていたのだが、同レースでは順調に使っていたPiton Des Neigesとの差もあったと考えられ、今回のレースを見る限りではやはりイタリアSiepiを代表する一頭と考えていいだろう。一方のBeau SaonoisはPisaのGran Corsa Siepi Nazionale (G1)以来のG1制覇を狙ったが、惜しい2着に終わった。先手を取ったStukeに対して展開の綾もあったのだが、Alessio Pollioni騎手が好位からじわじわと接近を試みるフランス調教馬3頭を封じ込めるような形で一気にスパートをかけた好騎乗も大きかった。やはりこの馬もまたイタリアSiepiを勝ち切るだけの技術とスピードを持った一流馬である。

フランス調教馬の中では最も低評価であったCosi Fan Tutteだが、その低評価を覆す3着に入った。この馬自身、CraonのGrand Steeplechase Du Conseil Departemental De La Mayenne (Listed)の3着のある馬だが、Edgar Labaisse騎手がやや馬群とは少し距離を置きながら走ることで、この馬自身の航行能力の高さを生かす騎乗を行っており、これがフランス調教馬の中での再先着という結果に繋がった。人気のフランス調教馬Candalexは密集した馬群につき合う形でのレース運びとなり、結果として伸びきれず4着に終わった。フランス調教馬はイギリスですら障害部分での航行能力の高さが目立つのだが、馬群の中に入ってしまうとその能力の高さも生かし切れない。イタリアのLive your Lifeは後方からじわじわと足を伸ばし、直線では叩き合いに参加するも伸びきれず5着。やはり脚の使いどころの難しい馬で、どうしてもこのような形になるのは仕方がないのだが、やはり極端な競馬ではG1クラスで勝ち負けするのはやや難しいかもしれない。前走Prahaで勝利してきたチェコのCapivariは後方から進めるも6着で、やはり後方の内にいては何もできない。フランス調教馬の中で唯一勝負に加われなかったのがCrack De Reveで、遡ればAuteuilのHaiesではListed勝ちのある馬なのだが、近走はPloermelのCross Countryを使っていたりと、やや瞬間的なスピードには難があったようだ。レース運びとしても馬群の内に閉じ込められ何もできなかった。イタリアのMenschは徐々に馬群から置いて行かれ大敗。前走はBeau Saonois、Live your Lifeに続く3着に頑張っていたのだが、さすがにCondizionataとはペースが大きく違うため、このクラスでは苦しそうだ。チェコのDangerous Gleamは例によって先手を取ったのだが、やはり何かと落馬が多いように飛越には不安のある馬で、どうにもスピードに乗り切れないところがある。11歳という高齢もあり、さすがにそろそろ年齢的なものもありそうだ。

 

Nakayama / 中山 (JPN) Good

〇 Seisyu Jump Stakes / 清秋ジャンプステークス 3210m

1. ビッグスモーキー J: 植野貴也 T: 清水久詞

するすると前に行ったビッグスモーキーに途中からマサハヤドリームが絡んでいくも、ビッグスモーキーがこれを振り切り勝利した。ビッグスモーキー自身はオープンクラスではこれが初勝利となる。平地では全日本2歳優駿まで駒を進めた素質馬だが、どうにもそ4歳以降はぱっとせず、2019年から障害入りしていた。キングカメハメハ産駒らしいパワフルな馬体から繰り出されるパワーのある飛越が持ち味であり、中山の坂も苦にしないパワーを持っているようで、直線の坂でのスピードも目立っていた。ただしやはり本質的にはステイヤーではなく、最後はだいぶ苦しくなっていたように距離的にはこのくらいが限界だろう。3歳馬で未勝利を勝ったばかりのスマートアペックスはいきなり見せ場を作り2着に入った。マサハヤドリームは勝ち馬が楽に逃げているのを見て積極的に絡んで行ったが、上り坂の部分でやや水をあけられての4着に終わった。コウキチョウサンは中段から進め見せ場なく7着に終わった。石神騎手から乗り変わりの高野騎手は2018年の4月以降勝ち星がなく、同騎手にとっては千載一遇のチャンスであったのだが、残念ながら危機意識の感じられない騎乗であった。

 

9/27(日)

Merano (ITA) Tempo Bello - Terreno Morbido

〇 Trachtenmode Runggaldier

Euro 10.000 TRIO per cavalli di 4 anni ed oltre (Cross-Country - CONDIZIONATA - G.R.-AMAZZONI-PAT. FISE/FITETREC/ANTE) 3500m (Replay)

1. Brunch Royal J: Carrassi Del Villar Alberto T: Josef Vana Jr

出遅れたBrunch Royalだが、そこから少しずつ位置を上げると、最終障害を越えて逃げ込みを図るZubienaを捉えて勝利した。Brunch Royalは昨年のMeranoのCross Countryでは5000メートルの距離においてPower Zar、Silver Tangoといった同距離のスペシャリストを相手に勝利を収めていた馬で、当然Premio Delle Nazioni (G2)でも期待されていたのだが、残念ながら出走取消に終わっていた。今年は8月のCondizionataで復帰するも落馬に終わり、実績的には明らかにここでは格上になるようなメンバー構成であったのだが、Premio Delle Nazioni (G2)ではなくこちらに回って来たようだ。Josef Vana Jr厩舎の使い分けの可能性もあるが、Premio Delle Nazioni (G2)の難易度の高い障害を嫌った可能性も考えられる。同馬自体はSunday Breakの産駒ということで地味に日本人にも馴染みがあるかもしれない。このMeranoのCross Countryの3000メートルクラスのコースで使用する障害の難易度は全体的に低いため、レースとしては可能な限りペースを上げることになるのだが、コースの幅員が狭く急カーブが多いため、後方から他馬を交わして勝利することは非常に困難な形態となっている。そのため勝ちパターンとしては前半から先手を取って押し切るものが殆どであり、このように後方から捲り上げる形での勝利は殆ど見ることがない。このようなレースが可能であったということはここでは同馬の力量が数段上であったと考えてよいだろう。Zubienaは積極的な競馬で2着。この距離のCross Countryを連勝してきたManoloが3着に入ったが、いくらなんでも今回は相手が悪かった。

 

Gran Criterium D'Autunno

Euro 66.000 TRIO per cavalli di 3 anni (Siepi - GRUPPO I - FANTINI) 3300m (Replay)

1. Lemhi Pass J: Jan Faltejsek T: Laura Marinoni

2. No Profit J: Gabriele Agus T: Raffaele Romano

No Profitを制してLawaaが先頭に行く展開も、残り3障害辺りから再度No Profitが先頭に。しかし最終障害を越えて先頭に立ったLemhi Passが食い下がるNo Profitを退けて勝利した。G1競走としては珍しくイタリア調教馬が1、2着を占める結果となった。Lemhi Pass自身はMaiden勝ちのみの馬で、前走はCondizionataにおいてMakitoの2着に入っていた。この路線はイタリアのMakitoが前哨戦までの結果を見る限りでは頭一つ抜けている感があり、この馬はその2番手といったところであったことから、今回の結果は前哨戦までの内容をそのまま反映したものといえよう。その前走においてNo ProfitはLemhi Passから5馬身離れた3着に終わっていたこともこれを裏付ける内容である。フランスのFiere De ToiはMoulinsで勝ってきたばかりの馬であり、フランスでの実績にしては戦えた方だろう。やや最後は脚色が鈍ったような感もあり、Meranoの狭いコースに適応しきれなかったのか、最終コーナーも曲がり切れずに外に膨らんでいた。

 

Corsa Siepi Dei 4 Anni - Redmoon Apple

Euro 50.050 TRIO per cavalli di 4 anni (Siepi - GRUPPO II - FANTINI) 3500m (Replay)

1. Sky Constellation J: Raffaele Romano T: Raffaele Romano

Pour Vous Et Nousを制してやや引き離し気味にNo Pasaranが逃げるも、途中からペースを落としたのか馬群は密集。好位から抜け出してきたSky Constellationが残り2障害辺りで先頭に立つと、内から差し込んできたApple's Catを凌いで勝利した。Sky Constellationはイタリア調教馬で、イタリア障害競馬の第一人者Raffaele Romano騎手兼調教師の馬である。Gran Premio Meranoの騎手紹介の際にもRaffaele Romano騎手が登場するとひときわ大きな歓声が上がっていたように、ここでも大きな歓声に迎えられている。やはり地元出身のスターということもあり人気があるようだ。Sky Constellationはこの路線では地元代表としてトップクラスの活躍を見せていた馬で、昨年のGran Criterium D'Autunno (G1)ではチェコNight Moonの2着に入っている。今年初戦は落馬、Criterium Di Primavera (G2)ではPour Vous Et Nousの3着と振るわなかったが、その後はこれで3連勝と勢いに乗っている。No Pasaranが非常にテクニカルな逃げを打ったことでこの馬の機動力が活きる展開となったことも味方したが、Raffaele Romano騎手がペースが緩んだ辺りでするすると好位に取りつき、外を回してエンジンを吹かし切る好騎乗も光った。フランスのApple's Catは勝負所で前が壁になり加速しきれない部分があった。Meranoの狭いコースではどうしても前に馬がいてもそれを捌いてくる機動力が必要になるのだが、今回はチェコJosef Vana Jr厩舎のPour Vous Et NousとNo Pasaranの2頭による包囲網に囲まれて難しいレースを強いられたようだ。前述のCriterium Di Primavera (G2)の勝ち馬Pour Vous Et Nousが3着。前走は落馬に終わっていたが、今回は飛越に特段の問題は見られなかった。テクニカルな逃げを打ったNo Pasaranは僅差の4着で、Pour Vous Et Nousと比べるとやや格下感のある馬なのだが、このような逃げを打った上でここまで抵抗させるJosef Bartos騎手の手腕は恐るべきものである。

 

LXXXI Gran Premio Merano Alto Adige

Euro 250.000 TRIO per cavalli di 4 anni ed oltre (Steeplechase - GRUPPO I - FANTINI) 5000m (Replay)

1. L'Estran J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

2. Northerly Wind J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

6. Le Costaud J: James Reveley T: Guillaume Macaire

ここでも話をしたのだが、イタリア障害競走としては最高峰となるレース。2018年のこのレースの勝ち馬で、2019年にも参戦し圧倒的な一番人気を背負うも、まさかの途中でコースを間違えて途中棄権という実に悲しい結果に終わっていたフランス調教馬Le Costaudが今年も参戦し、人気を集めていた。その他、連覇を狙うチェコのL'Estran、実績馬Notti Magicheなど、イタリアSteeplechaseではお馴染みの実績のあるチェコ調教馬が多数参戦していた。フランスからはLe Coustaudの他にDavid Cottin調教師のSoldier's Queen、地元からはVolcancito、Quick Davierの2頭が参戦していた。

レースは前半からNotti Magicheが主張してハナに行く展開。例によってじわじわとLe Costaudが前に取りついてくるが、Notti Magicheが譲らず先手を取る。しかしMuroの手前からLe Costaudが先頭に立つと、そのままNortherly Wind、Zanini、さらにL'Estranなどを引き連れてレースを引っ張る展開となる。しかしSiepone Verticaleの手前からJan Faltejsek騎手のNortherly Windが先頭に立つと、Le Costaudは後退。さらにここから加速を掛けてきたL'EstranがNortherly Windを捉えると、Northerly Windを4馬身ほど突き放して勝利した。Soldier's Queen、Al Bustanの激しい3着争いはSoldier's Queenが制していたようだ。Le Costaudは6着まで。

Le Costaudはパワーのある大きなストライドから繰り出されるスピード性能と卓越した飛距離を稼ぐ飛越を武器に、高い航行能力で他馬を圧倒するタイプの馬である。これは2018年のGran Premio Merano (G1)や、2016年のGrand Steeplechase D'Europa (G1)で見せた通り、イタリアSteeplechaseにおいては頭一つ抜けた性能を持っており、フランスSteeplechaseの重賞クラスでも通用するものである。一方で、やや胴長でパワーのある馬体は、本質的なステイヤー性能というよりは持続的なスピード能力に長けたものであることから、疲労が溜まってくるとこの馬本来のパワーのあるストライドを持続することが困難になり、あっさりとこの航行性能が減衰する弱点を有する。これは2019年のGrand Steeplechase de Paris (G1)などで見せた通り、苦しくなると極端に減速し大敗に終わるという結果が示している。フランスでも鞍上を務めていたJames Reveley騎手は、フランスではMeranoで見せたようにスピードで圧倒するのではなく、後方から慎重に進めるレース運びを試みており、おそらくこれは上述のこの馬の弱点を補う意図であったものと思われる。

Josef Vana Jr厩舎は実にここにはL'Estranの他、Zanini、Notti Magiche、Il Superstite、Martinstarの5頭出しで挑んでいた。明らかに調子を落としておりまともにレースに参加できなかった葦毛のMartinstarはともかくとしても、ことNotti Magicheに関してはハナに行ってレースを進めることで良さを発揮するタイプであり、できればこの馬にとってペースは落ち着かせたかった可能性もあるのだが、前半からLe Costaudが絡んできても積極的にハナを主張している。さらにNotti Magicheの直後にはIl Superstiteも隙あらばLe Costaudに絡む構えを見せており、Josef Vana Jr厩舎管理馬によるLe Costaud包囲網が存在している。Le CostaudはMuroを越えてOxer Grandeに至る辺りで先頭には立っているのだが、この馬のやや行きたがって走る気性もあり、前半~中盤にかけてかなり消耗の大きいレースになっている。また、この馬自身重馬場に対する実績もあり、持ち前のパワーで重馬場自体には対応は可能なのだが、上述の通り疲労が蓄積した際のスピードの減衰性が大きいため、一定量を越えて疲労の蓄積が生じるレースにおいて重馬場はかえってこの馬にとって大きなビハインドとなり得る。従って、この馬にとってはできれば僅かに渋った程度の重馬場が理想的であり、重馬場で2日間開催を行ったことでかなり馬場が荒れたMeranoの馬場はこの馬にとっては不向きなものであった。Meranoのコースは何度も繰り返し記載している通り幅員が狭く、幅員の広いAuteuil競馬場のように重馬場においてレースを繰り返すことにより荒れた個所を避けて走ることが困難である。さすがにSiepone Verticaleの辺りまでは抵抗しているのだが、そこから交わされると鞍上も強引な抵抗をせずにあっさり後退しており、この大敗も致し方なしといったところだろう。

L'Estranはこのレースは連覇とした。昨年は上述の通りLe Costaudがコースアウトしたため、Le Costaudと前半からLe Costaudについて行こうと試みた馬を除く集団にとってはさほどペースも厳しいものではなく、どちらかというと棚ぼたといった勝ち星であったのだが、今年は堂々たるレースでチャンピオンとしての能力を見せてくれた。前走のMemorial Massimo Caimi (G3)自体、まともに完走したのが2頭とかなりしょんぼりな結果ではあったのだが、この馬自体力をつけており、Le Coustaudのペースについて行き、Northerly Windを完封した今回の内容を見る限りでは立派なイタリアSteeplechaseのチャンピオンと言っていいだろう。どちらかというとパワーのある走りを見せるタイプであり、荒れた馬場もこの馬には味方した可能性もある。上り馬Northerly Windも堂々たるレース振りで2着に入った。Creme Anglaise (Listed)でややG1では足りない感もあるZaniniを下してきたばかりで、Grand Steeplechase D'Europa (G1)では無念の取り消しに終わっており、実績的にはさほど目立ったものではないのだが、この馬もまたイタリアSteeplechaseにおいて今後が楽しみな馬だろう。L'Estranが7歳、Northerly Windが8歳と、しばらくはこの路線で頑張ってくれそうな年齢であることも楽しみな要素である。

Le Costaudと比べるとフランス母国の実績では大きく見劣るSoldier's Queenは頑張って3着に入った。Le Costaudのペースにはついて行けなかったようで、あくまで第2集団の中で抜けてきたといった内容だが、この馬もこの馬なりに頑張ったようだ。この馬を管理するDavid Cottin調教師は若手だが精力的に国外遠征にもチャレンジしており、今年は振るわなかったがそのうちいいことがあって欲しい。古豪Al Bustanは後方から進め4着に入った。2018年のGran Premio Merano (G1)の結果からわかる通り、Le Costaudのペースにはついて行くことは困難であり、加えてAl Bustan自身は2017-2018年の全盛期から比べるとだいぶ力落ちもあるようだが、かつてのチャンピオンとしての意地は見せたようだ。やはりこのMeranoの狭いコースで、大型のSteeplechaseを使用するレース条件にも関わらず、後方から馬群を縫って上がってくる器用さというのはAl Bustanに特有のものである。Josef Vana Jr厩舎のZaniniは途中まで前の集団について行くも、最後は大きく遅れ5着。この馬自身G1クラスでは若干足りないところがあり、この馬自身のできることは十分やり切った結果である。Notti Magicheは上述の通りできればペースは落として逃げたかったのだが、十分にLe Coustaudを潰すためのラビットとしての役目は果たした。展開が変われば再度のG1タイトルの奪還まであり得る能力を持った馬である。イタリア調教馬は2頭出ていたが、Volcancitoは最初からペースについて行けず早々にリタイア、Quick DavierはOxer Grandeで前の馬に触れて落馬に終わった。Quick Davierの落馬は少々不幸な形であったが、前哨戦の内容からここでは能力的に厳しいことは明らかであり、さすがに地元調教馬が全く勝負に加われないというのは寂しいものがある。

 

Chukyo / 中京 (JPN) Firm

〇 Maiden / 障害3歳以上未勝利 3000m

1. ストレートパンチ J: 伴啓太 T: 堀井雅広

前半から前に行ったストレートパンチがそのまま逃げ切り勝ち。ストレートパンチは障害は11戦目での勝ち上がりとした。平地では全くいいところがなく終わった馬だが、メジロダイボサツ産駒のJRA初勝利も兼ねる嬉しい勝利となった。飛越はスピードに乗せた低いものを見せていたが、全体的に踏み切り位置が合わない場面があり、やはり上のクラスでの対応となると不安が残る。これが引退レースとなる山本康志騎手のアーネストホープは出遅れ、その後位置を上げようと試みるも引っかかり、前からはだいぶ離された9着に終わった。騎乗としては決して褒められたものではなかったが、ひとまずお疲れさまといったところだろう。