*Aintree Soft (Good to Soft in places)
Randox Health Becher Handicap Chase (G3) 3m1f188y (National)
年に5回行われるNational Courseを使ったレース。前半からAs De Meeなどが出てくる展開も、好位から進めたWalk In The Millが抜け出すとKimberlite Candyを退けて勝利した。Alpha Des Obeaux、Definitly Redと続いた。One For Arthurは5着まで。
Walk In The Millはこのレースは連覇とした。昨年のこのレースを勝ってからはC4のNovice Hurdleを適当に走りつつGrand National (G3)に備えてきた馬で、Grand National (G3)ではTiger Rollの4着に入っている。現役を代表するNational Specialistの1頭であり、昨年から5stの斤量増があったにもかかわらず、そのレース運びは安定したものを見せていた。来年で10歳となるが、来年のGrand National (G3)でもチャンスはあるだろうが、昨年の勝負所で動ききれなかったことを考えると、若干距離延長には不安が残る。Kimberlite Candyは初のNational Courseであったが見せ場を作った。C2のハンデ戦で勝負になるクラスの馬だが、National Courseにはうまく対応することが出来ていた。馬場はもう少し渋った方が良いかもしれない。トップハンデのAlpha Des Obeauxも3着までは行った。本来の実力であればアイルランドの24f重賞路線で優に勝負になるクラスの馬であり、このクラスの馬がGrand National (G3)を目指すとなるとトップハンデ級の斤量を背負うことにはなるのだが、以前は落馬に終わったGrand National (G3)におけるパフォーマンスの向上を期待させる走りであった。Definitly RedはMany Clouds Chase (G2)ではなくあえてこちらに向かってきた意図が分かりかねるのだが、National狙いであるのであれば十分な走りだろう。One For Arthurも前半もたもたと飛越するのは相変わらずなのだが、とりあえず調子は良さそうだ。As De MeeはBryony Frostは上手く走らせていたのだが、最後止まったあたり若干距離が長いだろう。Le Breuilも同様。Vieux Lion Rougeは案外。この馬のNational Courseの経験を考えればもっと走れておかしくないのだが、どうにも近年はパフォーマンスを落としている。Vintage Cloudsは第一障害で落馬したGrand National (G3)の影響があったのか、どうにもNational Fenceを大事に飛び過ぎている感があった。
Many Clouds Chase (G2) 3m210y
いつぞやのCheltenham Gold Cup (G1)でマッチレースを繰り広げたNative RiverとMight Biteの対戦ということで注目されたのだが、第4障害でMight Biteはあっさり落馬。そのままNative Riverが軽快に逃げると、2着のBlack Cortonに33馬身差をつける勝利。
Native RiverはそのCheltenham Gold Cup (G1)の勝ち馬で、バネの効いた飛越とスピードの持続能力を武器にして先行するタイプの馬なのだが、どうにも昨シーズンはズブさを見せており、Richard Johnson騎手がかなり馬を押していくシーンが見られた。今回は初めてブリンカーをつけてきており、どうやらこれが効いたのか、かなり行きっぷりには進境が見られた。現在9歳と老け込むような年齢ではなく、持っているものを考えれば現役屈指の実力のある馬。King George VI Chase、Cheltenham Gold Cupに向けて楽しみな走りとなった。一方のMight Biteはさすがにあそこまで早々に離脱されるとなんとも言えないものがある。昨シーズンは気持ちが切れたような走りであっただけに、精神的に戻っていればいいのだが。Black Cortonはスタート直後はハナに行くような構えも見せたのだが、Native Riverのスピードには全くついて行けず。Outlanderも遡ればJNwine.com Champion Chase (G1)など、複数のG1競走の勝ち鞍のあるアイルランドの名馬なのだが、近年はさっぱりパフォーマンスを落としている。Grand Nationalの出走馬というのは付加価値になるようで、今年のGrand National (G3)の出走に合わせて競りに掛けられていることを考えると、さすがに往年の力はないようだ。
Grand Sefton Chase (C2) 2m5f19y
Valentinesの辺りから進出してきたHogan's HeightがWishfull Dreamingに16馬身差をつける圧勝。
Hogan's HeightはさかのぼればMildmay Novices' Chase (G1)に出走した経歴もある馬だが、さすがにG1クラスではさっぱり勝負にならず。2018年の冬にWind Surgeryを行い、そこからはだいぶパフォーマンスを上げてきたようだ。これが初のNational Fenceであったが、うまく対応していた。ここを勝っていきなりGrand National (G3)というのはあまり考えにくいのだが、4月のレース選択が楽しみな走りとなった。フランスの名手Felix De Giles騎手を背に参戦したIt's Jenniferは第一障害で落馬し、残念ながら予後不良とのこと。National Courseにフランスを含め他国から参戦することは珍しく(アイルランドを除く)、概ね結果が出ていないところ、興味深い挑戦であったのだが、残念な結果となってしまった。
*Sandown Soft (Good to Soft in places)
Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f199y
Torpilloが淡々と逃げる展開だが、残り3障害辺りから先頭に立ったEsprit Du LargeがNube Negraを抑えて勝利した。Grand Sancy、Torpilloは遅れた。Summerville BoyはWaterで落馬。
ブービー人気の馬が勝利し馬券は大荒れの結果となった。Esprit Du LargeはChaseは2勝目としたHurdleでは重賞クラスではどうにも勝負にならず、前走もExeterのC3ということを考えると人気にならなくて当然の実績である。飛越自体は伸びのある完成度の高いものを見せていたが、人気どころがいまいちな飛越を繰り返していたことを考えると、持っている能力というよりは完成度で勝ってきた印象で、今後どこまでやれるかは未知数といったところ。スペイン産馬Nube Negraも重賞クラスでは厳しかった馬で、勝負所でかなり進路を切り替えるロスはあったことを考えると、Esprit Du Largeとはさほど差はないだろう。HurdleではKingwell Hurdle (G2)の勝ち鞍があるGrand Sancyは初のChaseであった。さすがに勝負所から飛越を伸ばしていく技術という面では経験馬とはやや見劣っており、さすがにいきなりここでは厳しかったようだ。Torpilloも同様の未熟さを露呈した。Supreme Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Summerville Boyは期待されたのだが、WaterにおいてHurdleでしばしば見られるようなミスをして落馬。Waterのような高さのない障害ではしばしばあるタイプのミスである。
Tingle Creek Chase (G1) 1m7f119y
G1をここまで10勝しているアイルランドの名馬Un De Sceauxの参戦で盛り上がっていた。人気はDefi Du Seuilから。スタートからだいぶうるさいところを見せていたOrnuaが元気よく引っ張る展開だが、残り3障害辺りからUn De Sceauxが持ったままで進出。しかしこれにDefi Du Seuilが迫ると、最終障害を越えて先頭に立ち、食い下がるUn De Sceauxを僅差凌いで勝利した。3着には猛然と追い上げてきたWaiting Patientlyが入った。
Defi Du SeuilはこれでG1は6勝目とした。Juvenile Hurdleで暴れまわっていた頃の3勝が入っているのだが、その後のChaseでもNoviceで2勝、Seniorで1勝をあげているのだから大したものである。とにかく一瞬のスピード能力には長けた馬で、16fの厳しいペースに対応できるかはやや未知数のところがあったのだが、きっちりと脚を伸ばし切ったあたり、この馬の新たな可能性を見出すことが出来た一戦だろう。11歳となった古豪Un De Sceauxはこの馬の出来ることをやり切ったレースであった。最終障害において完歩合わせの関係で若干のブレーキを踏んでおり、この動作さえなければ勝利まで見えたレースであった。11歳という年齢ながら、16f路線においてここまでの気迫で追走することが出来る若さには恐れ入る。Waiting Patientlyは久々の16f戦であった。どうやらレース振りを見ると24fではやや距離が長いようで、この馬の適距離としては20fと思われていたようなのだが、16fのペースに対応が出来るのであればこの路線でもやれるだろう。
London National Handicap Chase (C2) 3m4f166y
https://www.attheraces.com/racecard/Sandown/07-December-2019/1535
例によってStep Backが軽快に逃げる展開も、好位から抜け出したDoing FineがDark Flameを凌いで勝利、と思いきや、途中で故障馬が発生し、コース上で治療を行っていた影響でレースは無効となった。Doing Fine自身、このレースは3度目の挑戦でようやく嬉しい勝利かと思ったのだが、残念ながら取り消しとなってしまった。なお、途中で黄旗が振られていたこと(Void Raceを意味する)を無視したとのことで、複数名の騎手が制裁を受ける運びとなった。また、途中で故障を発生しコース上で治療が行われた12歳のベテランHoublon Des Obeauxは心不全で死亡と、Tingle Creek Dayを締めくくる伝統のある超長距離戦なのだが、どうにも今年は残念なレースとなってしまった。
*Navan Soft
Klairon Davis Novice Chase (G3) 2m1f
好位から抜け出してきたTornado FlyerがI'm A Game Changerを振り切って勝利。Eclair de Beaufeuは3着。
Tornado Flyerは昨シーズンのChampion Novice Hurdle (G1)でReserve Tankの4着に入った馬。ChaseはこれでBeginners Chaseから連勝とした。Reserve Tank自身がつい先日案外な走りを見せていただけにどうにも信頼しにくいところはあるのだが、レースの内容としては現状及第点だろう。ただし、メンバー的にはここから重賞クラスでどうこうといった相手ではなく、ひとまず次に期待したいところ。