にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/07/31 Weekly National Hunt / Jump racing

7/27(水)

Galway (IRE) Good

Galway Plate Handicap Chase (Grade A) 2m6f111y (Replay)

1. Hewick J: Jordan Gainford T: Shark Hanlon

夏のGalway Festivalのメインレース。Joseph O'BrienのFire Attackが元気に引っ張るも、残り5障害地点で落馬。代わって前にでたHewickがLe Barra、Ash Tree Meadowを振り切ると、空馬に絡まれた影響で内埒一杯まで釣り出されるも、Darassoの追い上げを凌いで勝利した。

Hewickは春のbet365 Gold Cup (G3)の勝ち馬で、以前からも夏場にレースを使っていたようだが、今シーズンはBallinrobeのHurdle戦を叩いてここに向けて仕上げてきたようだ。昨年はSedgefieldのDurham Nationalを勝っているのだが、その後のMidlands Grand Nationalは途中棄権に終わっており、明らかに良馬場巧者といったところだろう。たった850€で購入された馬ということもあり、なかなかいいサクセスストーリーとなっている*1。11st7lbを背負っての勝利は価値があるが、ややレース条件的には迷うところが多いかもしれない。Joseph O'BrienのDarassoは惜しい2着。この馬自身しばらくHurdleを使っており、Chase自体は昨年のKerry National (Grade A)以来だったのだが、とはいえ能力のあるところを見せてくれた。Battleoverdoyen、Ronald Pump、NotebookといったG1クラスで実績を残してきた馬もいたのだが、いずれも見せ場を作れずに終わった。落馬に終わったGabynakoは残念ながら助からなかったそうだ*2

 

7/28(木)

Galway (IRE) Good

Guinness Open Gate Brewery Novice Chase (G3) 2m2f54y (Replay)

1. Visionarian J: Dennis O'Regan T: Peter Fahey

人気のSole Pretenderが逃げるも最終障害を飛んでから後退。代わって内を突いて出てきたVisionarianがCall Me Lyreenを抑えて勝利した。VisionarianはこれでChaseは2戦2勝とした。Hurdleではハンデ戦を含む2勝をあげた馬で、Rentokil Initial Handicap Hurdle (Grade B)での2着もあるのだが、とはいえ基本的に夏馬といったところで、最終障害からゴールまで若干の距離があるGalwayの特殊な形態も含めると、あくまで夏場の上り馬という認識でよさそうだ。Hurdleでは重賞勝ちもあるCall Me Lyreenはよく2着まできたという飛越の出来の悪さで、もう少し飛越が向上しないと厳しそうだ。

 

Guinness Galway Hurdle (Grade A) 2m11y (Replay)

1. Tudor City J: Liam McKenna T: Tony Martin

The Very Manを制して4歳馬のPrairie Dancerが軽快に逃げる展開。The Very Manは途中からPrairie Dancerに絡んでいくがPrairie Dancerがこれに抵抗。残り2障害あたりから出てきたJesse Evansが最終障害を越えて前に出るが、さらに後ろから出てきたTudor Cityがこれを捉えて勝利した。

Tudor Cityは2019年に続きこのレースは2回目の勝利とした。基本は夏馬といったところだが、どうにも大敗と好走の幅が極端な馬で、少なくとも馬場が少しでも重くなるとからきしのようだ。昨年も5着とはいえ勝ち馬から4馬身差ということで頑張っているようで、この馬とは何度かコンビを組んでいるConditional JockeyであるLiam McKennaにとって素晴らしい勝利となった。11st6lbを背負って頑張ったのがSo You Think産駒のJesse Evansで、NoviceのG1クラスではからきしだったのだが、ハンデ戦に転向して結果を残している。4歳馬Prairie Dancerは10st8lbという軽量もあったが積極的にレースを作っての3着。Joseph O'Brien厩舎にはありがちなのだが、昨年の9月からまったく休みなくほぼ20~40日おきにレースに使っており、それでもへこたれずに走るのだから大したものである。

 

Lion D'Angers (FR) Souple (3.6)

〇 Prix Henri De Barmon

Cross Country Classe 3 Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus, n'ayant pas, cette année, en steeple-chase, reçu une allocation de 10.000. 4500m (Replay)

1. Daffodil Rose J: Romain Julliot T: Jerome Zuliani

このレースに際して放映権を持っていたATRが広告のためにLion D'AngersのCross Country競走のダイジェスト版映像をツイートしており*3、それをnetkeibaのアカウントが引用リツイートしたことで*4、日本の競馬ファンの間でも少々バズっていたようだ*5。しかし、At The Races自体はイギリス・アイルランド系の競馬メディアであり、あまりフランス的なCross Country競走には馴染みがないこと、及びLion D'AngersのCross Country Courseはダイナミックで迫力はあるものの、フランスCross Countryとして並外れて突拍子のないものではないこと等を踏まえると、netkeiba及び/又はATRが用いた「欧州メディア」「クレイジー」という文言には違和感を覚えるし、特にnetkeibaのツイートについているコメントの数々には欧州障害競馬をきちんと理解しようというものに乏しく、障害競馬ファンとしては全体的に残念なプロモーションであった。海外障害競馬はその見た目が派手であることから面白映像のような扱いで消費されることが多いのだが、これだけ海外競馬情報が豊富に入ってくる現状、そのような扱い方が果たして適切なものであるかは大手メディアはもう少し慎重に考えなければいけないように思う。レースは前々で進めたDaffodil RoseがEcoutilleを振り切って勝利した。Daffodil Rose自身はGrand Steeplechase Cross Country De Fontainebleauの3着がある馬だが、基本的に上のクラスではやや役者不足といった立ち位置である。ひとまずLion D'Angersのコースに目途をつけたことに関してはプラス材料で、母父Useful (SF)というなかなか渋い血統を考えると頑張って欲しいところである。

 

7/30(土)

Taumarunui RC @ Te Rapa (NZ) Heavy10

〇 Doug Morris Hurdle RST OPN HDL SWP 3200m (Replay)

1. Kajino J: Shaun Phelan T: Diana Kennedy

公式のレース動画がいまいちバグっているようだ。勝ったのはKajinoで、これでHDLはMDNに続き2勝目とした。前走はHawke's Bay Hurdle (PJR)にてThe Cossackの2着に入っており、前回はいくらなんでも相手があまりにも強すぎたというのはあるのだが、とはいえこの馬も近走好調の上り馬として期待しておきたいところ。2着には初障害のBrucieが入った。6月にMDNを勝ったElusive Aceもいたのだが、途中で落馬に終わった。

 

〇 Stewart Browne Memorial Hurdle RST OPN HDL SWP 3200m (Replay)

1. Abu Dhabi J: Hamish McNeill T: Shaun & Emma Clotworthy

人気の一角Tahuroa Heightが逃げるも、前々で進めたAbu Dhabiが最終コーナーから先頭に立つとそのまま押し切り勝利した。Abu Dhabi自身はこれがHurdleは初勝利となる。Maidenでも今年に入って連続して2着に入っており、比較的力量上位の存在であった。RST OPN HDLとはいえ未勝利馬が多いここにおいていい勝ち方を見せており、最近は2000メートルクラスのレースが多いMDNを勝ちあがった馬とは良い比較対象になりそうだ。昨年の10月にMDNを勝ったIma Wonderがじわじわと足を伸ばして2着。Rocking Good TimeはHDL初参戦ながら人気になっていたが、Ima Wonderを捉えきれず3着に終わった。

 

〇 Woods Contracting Steeplechase OPN STP 3900m (Replay)

1. Carnaby J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

人気のRaucousが前に行くもどうにも飛越が安定せず、代わってCarnabyが先頭に。そのままCarnabyがSuffice to Sayを振り切り勝利した。CarnabyはこれでSTPは2勝目とした。基本的には昨年末から力をつけてきた上り馬で、今シーズンはWaikato Steeplechase (PJR)にてArgyllの2着に入っている。9歳馬Suffice To Sayはしぶとく走って2着だが、この馬自身RST OPNクラスではやや厳しい立ち位置なだけに、レース水準という意味では若干疑問視した方がいいかもしれない。前走RST OPNを勝って人気を集めていたRaucousもいたのだが、さっぱり飛越が安定せず途中棄権に終わった。

 

Niigata / 新潟 (JPN) Good to Firm

The Niigata Jump Stakes / 新潟ジャンプステークス (G3) 3250m

1. ホッコーメヴィウス J: 黒岩悠 T: 清水久詞

2週目からじわじわとペースを上げて逃げたホッコーメヴィウスがそのままゼノヴァース以下の追い上げを凌いで勝利した。ホッコーメヴィウス自身はこれが障害重賞は初勝利となる。勝ち星としては中京及び新潟で挙げているのだが、一方で東京や阪神にも良績があるようで、飛越技術自体も極端に飛越の低いハードラーといった印象も受けなかったことは今後に向けて興味深い内容だろう。この馬の体力を使い切る逃げを打った黒岩騎手の騎乗も見事であった。レコード決着というおまけつきだったようだが、この日は速い時計が連発していたようで、どこまでこの記録に意味があるのかはよくわからない。ディープインパクト産駒のゼノヴァースが2着。父ディープインパクト、母クリソプレーズという驚くべき良血馬ヴァーダイトは小牧加矢太騎手を背に挑んだが、どうにも勝負所でスムーズさを欠き3着に終わった。

 

7/31(日)

Vittel (FR) Bon Souple (3.3)

Grand Cross De Vittel - Prix Maurice Aubry

Cross Country #10 TNC Haras Du Lion Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 5200m (Replay)

1. Destin Sacre J: Wilfried Lajon T: Christophe Herpin

例によってFrance SireでFacebook Liveが行われたのだが、おそらくドローンに取りつけられたスマホかなにかのカメラからの映像であることがよくわかるというなんともほのぼのとした中継であった。Equidiaのレース映像も殆どが美しい景色をお楽しみ状態である。コースはよくわからないところを通って障害コースに入ったりと、この複雑なフランスCross Countryの中でもトップクラスに摩訶不思議で、よく迷わないものと感心する。レースは軽快に逃げたDestin Sacreが好位で追いかけたVent Des Dunesを凌いで勝利した。Destin SacreはこれでCross Countryは4連勝、そのうちVittelのこの条件で3勝とした。2019年頃からCross Countryに参戦しているが、その多くはVittelのこの距離で結果を残しており、要するにこの条件のSpecialistなのだろう。連覇を狙ったベテランの13歳馬Vent Des Dunesが2着で、やはりCross Countryというのは地元のSpecialistが強いものである。チェコのBrunch Royalは後方から進め、じわじわと進出して3着まで頑張ったが、さすがに前2頭がここまで強いとこのレース運びではどうすることもできない。かつてはAuteuilでListed勝ちもある12歳馬Argentierが4着で、Cross Countryは今年になってからの参戦とあまり経歴は長くないのだが、まだまだやれるところを見せてくれた。VichyのGrand Crossを勝ったBlack'N Rosesや古豪Vol Noir De Kerserもいたのだが、いずれも前からは大きく離された大敗に終わった。

 

その他

Hřebčín v Mimoni se prodal za 25,5 milionu, zdejší koně patřili mezi špičku (iDNES.cz)

かつてはチェコの馬産を支えた歴史のあるチェコMimoňのStud Farmが競売に掛けられ、新たな所有者の手に渡ったそうだ。記事中の写真にもあるとおり、現在の設備はだいぶ老朽化しており、それなりの修復が必要そうだ。Mimoňの競馬場は2018年以来開催は行われていない。

Champion horses of Australian jumps racing (Jumps Heroes of Yesteryear)

オーストラリア障害競馬の歴史を彩ったチャンピオンホースに関するブログを見つけたので紹介まで。2014年に開設されたブログだが、残念ながら2022年7月現在においても9頭の馬しか紹介されておらず、気長に更新を持ちたいところ。

Persistence pays off with first win for Matthews (Racing News)

土曜日Te RapaのMDN STPを勝ったPortia Matthews騎手はこれが嬉しい初勝利となったそうだ。元々は英国の生まれだが、騎手を志すようになったのは大学の頃で、最近はMark Oulaghanの元で障害騎手として活動しているそうだ。